のぼうの城(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『のぼうの城』とは、和田竜の日本の歴史小説を元にして2012年に公開された映画である。犬童一心と樋口真嗣の共同監督で制作された。主人公の長親(ながちか)は忍城(おしじょう)城代の息子である。関白秀吉の家臣である三成によって、忍城は開城を迫られていた。しかし長親は世の理不尽に真っ向から対抗するため、三成に相対する。長親は周りの力を借り、ついには三成軍を退けることになった。この作品は時にはしんみりしつつも、長親という「でくのぼう」の奇策によって観た人を気分爽快にさせる歴史映画となっている。

現在の埼玉県行田市埼玉にある古墳で、形状は円墳である。国の特別史跡に指定されており、日本最大規模の円墳。円筒型や人型の埴輪が出土している。忍城攻めの際、三成がこの古墳の頂上に陣を構えた。水攻めに際しては、丸墓山古墳を含めて半円形の堤を約28kmlにわたって築いた。

所領の安堵

主君(もしくは支配者)が家臣(もしくは被支配者)に対して、所領(土地の利権や財)の保障をすること。戦に敗れた者が、家財や土地を手放さずに引き続きその土地で暮らしていけるように願い出ることを「所領の安堵を願い出る」と言う。

坂東武者

関東で生まれた武者のこと。古来より勇猛で知られた。古くは平安京を作った桓武天皇から姓を与えられた高望王を祖とし、関東に根付いた。

田楽踊り

作中の田楽踊りで、顔を白塗りにする長親

平安時代中期に確立した、日本の伝統芸能。田植えの前に豊作を祈った、海外から入ってきたなどと由来は確かではない。あまり楽器は用いず、使うとすると太鼓や笛程度である。鎌倉・室町時代には能楽の一つの源流となった。

『のぼうの城』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

成田 長親「イヤになった、降るのがだよ!」

戦をすると決意した長親

忍城まで進軍してきた三成軍は、開戦か和戦かを問いに軍師である正家を差し向けた。氏長と泰季の言う通り開城する予定でいたが、長親は正家の態度や言葉がどうもひっかかる。正家は秀吉の威を借りて高飛車な様子で、忍城をなめてかかっているのだ。そんな正家の言動に長親は「イヤになった、降るのがだよ!」と感情を爆発させる。やはり武士として何もせずに開城するのは悔しいものであるし、相手方の軍師は兵の数にものを言わせて脅してきている。長親はさらに「武あるものが武なきものを足蹴にし、才あるものが才なきものの鼻つらをいいようにかきまわす。これが世のならいと申すなら、儂は許さん」と、世の不条理に真っ向から対抗しようとするのだった。武士として偉ぶるのではなく、百姓や弱い者の立場にも立つことができる長親ならではの発言だった。

百姓の立場にもなることができる長親

互いの顔に泥を塗りつける、長親(左)と甲斐姫(右)

長親はどんな立場の人間の心も理解し、その人たちが求めていることを示すことができる人物である。水攻めによって忍城領内の人々が本丸に逃げて来た時、なぜか百姓らは本丸に上がろうとしなかった。それは自分たちの足元が泥だらけで、本丸の中を汚してしまうのをためらったからである。長親はそんな百姓らの姿を見て、自ら泥の中に飛び込み、城主の娘である甲斐姫をも巻き込んだ。そして心底楽しそうに、2人で泥だらけになった。そんな2人の姿を見せてから「みな、土足で上がれ!」ということで、百姓らが気兼ねなく本丸に上がれるようにしたのである。このように長親自ら相手の立場に立って物事を示してくれるおかげで、みな長親についていくのである。

成田 長親「儂は決めた、儂は悪人になる!」

流れ着いた遺体に駆け寄る長親(中央の白い服)

水攻めにより忍城のまわりが水浸しになった際、忍城本丸に親子の遺体が流れ着いた。それを見た長親が水攻めを破るため、その方法として「儂は決めた、儂は悪人になる!」と宣言した。その方法とは、長親自らが敵の前に出て討たれることでこの戦を弔い合戦とし、忍城方の士気を上げることである。忍城の人々がそれだけ自分のことを好いてくれていることを分かった上で人々を戦に向かわせるので、「悪人になる」という表現を使ったのである。また、長親自身も懇意にしていた百姓の親子が無情にも三成方に殺害されてしまったことで、どうしても相手方を許せないという気持ちもあったはずである。

正木丹波守 利英「儂か、儂はその馬鹿者だからよ」

単騎で敵の前に出る丹波(左手前)

長親が撃たれたことで長親のねらい通り、忍城方の士気は見事に上がった。しかしそれはあくまで長親が仕組んだことであり、本来百姓らは武士に守られる立場である。たへえをはじめ長親を愛する多くの百姓が「討って出ましょうぞ!」と意気込むが、丹波は「(百姓は)戦なんぞで命を落としてはならん。長親に心を酔わせ、命をかけるなど馬鹿者のすることじゃ」と諭す。そして自らは単騎敵の前に向かうのだった。「ならばなぜ、正木様は敵に向かわれるのじゃ」と問われると、「儂か、儂はその馬鹿者だからよ」と答える。幼いころから苦楽を共にし、自身が「将器あり」と信頼を寄せる長親のため、必ずこの戦で勝利をおさめようと命をかけるのだった。忍城一の家老としての、男の気概が感じられる言葉である。

『のぼうの城』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

あまりにリアルな水攻めのシーン

この作品は、当初2011年9月17日公開予定だった。しかし2011年3月11日に起きた東日本大震災の津波被害に配慮するため、公開延期が決定された。『のぼうの城』プロデューサー久保田修は「本作の水攻め描写は大震災を予見していたかのようなリアリティでありスタッフの優秀さに驚いたが、人間が飲みこまれてゆく描写がリアルすぎるため一部カットされた」と発言している。実際、作品中の水攻めで水が押し寄せるシーンは、家屋や人を容赦なく飲み込んでいく様がVFXなどの加工とは思えないほどリアルに描かれている。『のぼうの城』は2012年11月2日に公開されることになったが、震災の影響で公開が延期された映画の中でも最も長期間延期された作品となった。

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