名前をなくした女神（ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『名前をなくした女神』の概要

『名前をなくした女神』とは、2011年4月12日から6月21日までフジテレビ系列で放送された、子どもの小学校受験を控えたママ友たちの間で繰り広げられる、嫉妬、見栄、嘘、裏切り、騙し合いなど、ドロドロした関係がテーマの社会派テレビドラマ。主演はドラマ初主演となった杏で、キャッチコピーは「ようこそ、ママ友地獄へ。」。
ハウスメーカーに勤める秋山侑子（あきやまゆうこ）は出産後も仕事を続けていたが、会社からのリストラと引越を機に、息子の健太（けんた）が通い始めたひまわりの子幼稚園で出会った安野ちひろ（あんのちひろ）、進藤真央（しんどうまお）、沢田利華子（さわだりかこ）、本宮レイナ（もとみやれいな）らと関わりあう。お受験戦争、就職氷河期など焦燥感や孤独感の中で必死にもがき、心のすき間を埋めるようにして作ったママ友であった。苦しい時には助け合い、悩みを打ち明け合うはずが、そこに競争という概念が加わった途端、ママ友たちの奥底に潜んでいたドス黒い感情が現れるというストーリー。
平成に入り、過熱している子供のお受験戦争を軸に、一度入ったら抜け出せないママ友社会に巻き込まれる主婦の怖さを描き、闘いに突然巻き込まれた平凡な主婦が見失いそうになった自分を取り戻して母性の強さを再び自覚していく。
杏は本作が連続ドラマ初主演となった。またEXILEのKEIJIにとっても連続ドラマ初出演作となった。

『名前をなくした女神』のあらすじ・ストーリー

ママ友地獄へようこそ

短大を卒業後、ハウスメーカーに就職した秋山侑子（あきやまゆうこ）は、食品メーカーに勤務する拓水（たくみ）と結婚し、長男の健太（けんた）を出産後も仕事を続けたが、リストラにあい退社を余儀なくされた。
引っ越しを機に、健太は近所の幼稚園に通うことになり、そこで侑子は、健太と同い年の子を持つ安野ちひろ（あんのちひろ）、進藤真央（しんどうまお）、沢田利華子（さわだりかこ）、本宮レイナ（もとみやれいな）と知り合った。ちひろは爽（そう）の母親で、夫の英孝（ひでたか）は銀行員。真央は、トラック運転手の陸(りく）と結婚をして娘の羅羅（らら）を出産したヤンキーママ。利華子は海斗（かいと）の母親で、ネットショップの経営者でもあり、夫は元人気モデルの圭（けい）。前夫との間に生まれた空斗（くうと）という11歳の息子がいる。レイナは、彩香（あやか）の母親で、主婦雑誌のカリスマ読者モデル。夫の功治（こうじ）は会社を一代で興したやり手社長である。
ある日、侑子は利華子から皆がお受験を考えていることを聞く。そんな時に健太が彩香の誕生日会に誘われるが、健太が彩香とぶつかりレイナに「しつけが悪い！子供は親を選べない！」と睨まれ、本宮レイナを崇拝するママ友たちから避けられ始める侑子であった。実は本宮レイナは娘が生まれて以来、夫に女として見てもらえず夫と仲良く食事していた侑子がねたましくて辛くあたったのであった。
落ち込んでいる侑子に対して「母親だって人間よ。だって私たちは初めて母親になったんだから。どんな失敗をしても自分を否定してはダメ」と声をかける深沢雅美（ふかざわまさみ）であった。雅美は息子を同じ幼稚園に通わせるママ友の1人である。しかしある日、侑子が幼稚園へ行くとパトカーが止まっていて侑子を励ましてくれた雅美が自殺を試みたという。

ちひろの怒り

睡眠薬を飲んで自殺を図った雅美は、命は取り留めたもののまだ意識が戻らない。健太が最初に仲良くなったのが雅美の息子の翔（かける）だったので、健太もショックを受けていた。
幼稚園を後にした侑子は、ママ友のちひろ、真央、利華子、レイナとカフェに立ち寄る。そこで侑子は健太のお受験を考え始めたことを打ち明けた。そして彩香がお受験で有名な東郷チャイルドスクールに通っていることを知ると、侑子は利華子たちとともに、東郷チャイルドスクールを見学しに行ったのであった。そしてバスに乗って帰る途中、ちひろは偶然夫がバスの中で女子高生に痴漢をするのを目撃してしまう。ショックでバスを降りることも出来ずにちひろが夜遅くに帰宅すると英孝に激怒され、携帯をチェックされた挙句外へ放り出されるのであった。
翌日ちひろの様子がおかしいので侑子は自宅にお茶に誘った。実はちひろは子供の頃侑子と同級生であったことを打ち明け、「侑子ちゃん！！」とうれしそうに話しかける。しかし侑子はちひろを覚えていなかった。侑子をたった一人の友達と思っていただけにちひろの侑子への気持ちは憎悪に変わった。
一方、利華子は車に靴のレシートが落ちているのを見て、夫の自分への誕生日プレゼントだと思い込んだ。しかしそれは浮気相手へのプレゼントなのであった。

子供同士の争い

小学校のお受験を真剣に考え始めた侑子は、利華子、ちひろとともにレイナが娘の彩香を通わせている有名なお受験専門塾東郷チャイルドスクールに入塾を申し込む。一方の進藤真央は子役オーディションに目をつけて羅羅を売り出そうとする。羅羅の載った雑誌を幼稚園の前で他のママ友達に自慢する真央。すると別のページには、羅羅よりも大きく載っている侑子と健太の姿があった。これによって真央の侑子への憎悪が増すのであった。
塾の帰り、侑子やレイナたちが行きつけのカフェに立ち寄った際、気分が悪くなったちひろを見て、侑子はちひろが妊娠しているのではないかと誤解してしまう。
次の日、ひまわりの子幼稚園で健太は羅羅から仲間はずれにされてしまう。幼稚園に健太を迎えに行った侑子は、担任の結城（ゆうき）から健太の様子がおかしかったと教えられる。そして次の日のお迎えの時間に、羅羅は無理矢理健太に腕をつねらせた。泣き出す羅羅をみて、健太がイジメの加害者で羅羅がイジメの被害者となってしまう。侑子は健太に訳を問いただすが、ただ大粒の涙を流ばかり。そして家に帰った羅羅の口から出た真央への言葉は「羅羅がんばった。リベンジしたよ」であった。

真央の陰謀

健太が羅羅のことをつねったという誤解は解けて、侑子が担任の結城（ゆうき）に相談すると、結城は注意不足だったことを詫びた。帰宅後、侑子が健太にどうして本当のことを言ってくれなかったのか聞くと、健太は「僕が意地悪されたって知ったらお父さんとお母さんが悲しいから」と答えた。ママ友の確執で翻弄される健太に対し、健太の父・拓水は「同じ家族でも1人1人違う人間なんだ、もしお父さんが悪いことをしても、健太には関係ない。」と優しく諭した。
真央と話し合うべきだと考えた侑子は進藤家を訪ねると、真央は不在だったが応対した夫の陸（りく）は事情を理解し、これからは仲良くするよう責任を持って話すと伝える。
侑子の携帯に、ちひろから連絡が入っていたことに気付いた侑子が返信してみると、ちひろの夫の英孝が電話に出る。ちひろが妊娠していると勘違いしている侑子は、英孝に「おめでとうございます。爽くんお兄ちゃんになるんですね。」と言ってしまう。
夫の圭（けい）が浮気していると感じていた利華子は、子供たちを連れてイタリアンレストランに出かけると、圭は若い女性後輩モデルのユキと食事をしていた。例の靴をユキが履いていることに気付いた利華子は、動揺して泣いてしまいそうになる。
そして侑子を憎む真央はレイナに「健太くんママがテストで彩香ちゃんよりいい点取ったって勝ち誇ってましたよ。出来のいいはずの彩香ちゃんに勝ったって。」と陰口して侑子を孤立させていこうと企む。

セクハラ事件

レイナは、食事の味付けことで姑の奈津恵（なつえ）から嫌味を言われる。功治（こうじ）はレイナが用意するような凝った洋食ではなく、煮物などの和食が好きだというのだ。さらに奈津恵は、孫の彩香に対するレイナの教育方針に口を出して非難する。
そんな中、侑子は東郷チャイルドスクールの塾長の東郷百合子（とうごうゆりこ）と個別面談をし、百合子は健太に名門明峰学園（めいほうがくえん）の幼稚舎を受験してはどうかと勧めた。それを知ったレイナは大きなショックを受ける。百合子が彩香に勧めたのは、明峰より格下の山吹女子学院の初等科だったからである。こうしてレイナも侑子への逆恨みが激しくなるのであった。
彩香を連れて帰宅したレイナは、意識を失って倒れている奈津恵を見つけ、急いで奈津恵を病院に運んだ。功治に電話をかけるが、幼なじみの加藤弓恵（かとうゆみえ）のアパートにいて電話に気づかなかった。
ちひろは玄関先に英孝の部下の山崎が来ているのを発見する。山崎は、英孝が部下にセクハラをしているという怪文書が銀行内に出回っているため大事になる前に何とかしたい、とちひろに相談した。その話を聞いてちひろは、英孝がバスの中で痴漢をしていたことを思い出し、過呼吸状態になってしまう。そこに侑子が爽を連れてやってきた。落ち着きを取り戻したちひろは、英孝のセクハラの件を侑子に打ち明けた。侑子はそんなちひろを励まして抱きしめた。
しかし次の朝、他のママ友から英孝の噂話を聞いた真央は早速、レイナや利華子たちにその噂話を披露してしまい、さも侑子から聞いたかのように広めて、侑子とちひろの仲を裂こうとするのであった。

誘拐事件

ちひろから夫が会社でセクハラをしているらしいと打ち明けられていた中、それをさも侑子がママ友たちにしゃべったように真央に仕向けられてしまった侑子。これによって、侑子はちひろからの信頼を失ってしまう。
ある日、東郷チャイルドスクールでは父親受験セミナーが開かれる。参加した拓水、英孝、圭、功治は、塾長の東郷百合子からお受験を控えた父親としての心構えを説かれる。この受験セミナーは、父親たちにさまざまな影響を及ぼしていた。圭はいままで以上に家事に積極的になっただけでなく、早起きをして子どもたちと散歩すると言い出す。そんな圭を利華子はほほ笑ましく見守る。
以前からお受験に懐疑的だった功治は、レイナの過度な教育に嫌気がさし、彼女との溝をより深めてしまう。
ちひろがどうしても幼稚園に行くのが嫌だというので、翌朝、英孝は自分で爽を幼稚園に連れて行く。そして自分が会社でセクハラをしているという噂がママ友の間に広まっていることを知る。
普段から家計が火の車だったのに加え、陸のボーナスも出ないと知った真央は羅羅を夜ひとりで家に残し、キャバクラで働き始める。
5人それぞれ様々な思いを抱えながら、ひまわりの子幼稚園の保護者同伴の遠足の日がやってくる。
しかしママ友に会うのが怖いちひろは当日爽を遠足に行かせなかった。とても楽しみにしていた遠足に行けなかったショックから爽はちひろに「お母さんは嘘つきだ。なんで僕はお母さんの子供なんだよ！」と言ってしまう。呆然としてしまったちひろは、ひとりで遊園地にやってくる。そして健太の手を取り薮の中へと歩き出す。侑子は、健太が他の園児たちと一緒に居ないことに気付き探し始める。

それぞれの悩み

遠足で遊園地を訪れたひまわりの子幼稚園の園児と母親たちだが、健太が行方不明になってしまう。利華子や結城らと手分けして遊園地内を探して回り、ようやくちひろに手を引かれて嫌がっている健太を見つける。そして侑子は、関係のない子どもを巻き込むのは卑怯だと怒りをぶつけて頬をはたいた。拓水は安野家を訪ねて英孝に強い口調でちひろの行為を非難した。英孝は拓水に謝罪し、「会社でセクハラの嫌疑をかけられていることが幼稚園でも噂になったことが原因だと思う」と説明した。そして「何度恥をかかせればすむんだ」と、激しくちひろを責め立てた。
真央は生活費のために夜キャバクラで働き始め、羅羅はたったひとりで寂しさを抱えながら留守番をしている。
ある日奈津恵が、功治の幼馴染みの弓恵と娘の美也（みや）をマンションに連れてきた。美也は「パパ～！」と功治の脚にしがみついた。耐えられなくなったレイナは、買い物をし忘れたと言って外に出てしまう。そしてベンチに座って泣いていると、フットサルをしている結城が通りかかる。レイナの泣いていることに気づいた結城は、彼女のことを気遣い「気分転換したいときはグラウンドに遊びに来てください」と声をかけた。
利華子の家で仕事をしていた侑子は、ハローワークから出てきた拓水と偶然会ったと聞かされた。その夜、侑子は帰宅した拓水を問い質すと拓水は会社をリストラになったと告白した。侑子は、リストラの対象になったことを黙っていた拓水に怒りをぶつける。そんなふたりの激しいやりとりを偶然聞いてしまった健太は部屋でひとり涙を流すのだった。

ひまわりの子バザー

名門私立明峰学園幼稚舎のオープンスクールの日に、侑子は拓水と健太を連れて参加した。健太は校内で出会った幼稚舎の職員から「頑張って」と声をかけられるが、「頑張りません。僕はお受験をしたくないです。」と答えてしまう。健太はケンカの理由を教えてくれない侑子と拓水に怒っていた。それを知って深く反省した侑子たちは、健太にすべてを打ち明けて今後のことを話し合い、今まで通りお受験に向けて頑張る決意を固める。
真央は、キャバクラでのアルバイトを続けていたが、深夜の仕事のせいで、羅羅がお腹をすかせていても食事を作らないなど、生活は次第にすさんでいく。ある夜、仕事帰りの功治はパジャマ姿のままでマンションのロビーをうろついている羅羅を見かけ、自宅に連れて帰る。
またある日、レイナは彩香を目黒の実家に預けて結城とドライブデートに出かける。しかし、その現場を真央が目撃して写真を撮っていた。そしてひまわりの子バザーの日にそれぞれの子どもたちが楽しく過ごしている中、その様子を高いところから携帯片手に怪しげに眺めている真央。すると母親たちの携帯がメールを着信する音が一斉に鳴り始めた。みんなレイナの方をちらちら見ている。レイナがそのメールを見ると、「幼稚園担任の先生と母親。著しく風紀を乱すこの2人を追放しましょう」という文とともに結城の手を取って向かい合っている自分の姿が映っている画像があった。ショックで倒れ込むレイナ、そしてメールを配信した犯人が真央だということに侑子は気付いた。

利華子の嫉妬