64(ロクヨン)のネタバレ解説・考察まとめ

『64』(ロクヨン)とは、横山秀夫による推理小説、および小説を原作としたテレビドラマである。昭和期に起きた少女の誘拐殺人事件が平成に入ってから波乱を巻き起こすストーリー。2015年にNHKで制作されたドラマ版では、ピエール瀧、山本美月、入山杏奈などが出演している。2016年には『64 - ロクヨン - 前編/後編』というタイトルで映画化された。監督は瀬々敬久、脚本は久松真一・瀬々敬久、主演は佐藤浩市。

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『64』(ロクヨン)の概要

『64』(ロクヨン)とは、横山秀夫による推理小説、および小説を原作としたテレビドラマ、映画である。昭和期に起きた少女の誘拐殺人事件が平成に入ってから波乱を巻き起こすストーリー。原作は、文藝春秋の『別册文藝春秋』にて、251号(2004年5月号)、253号から260号(2004年9月号から2005年11月号)、262号から263号(2006年3月号から5月号)まで連載された。単行本は全面改稿の上、書き下ろしとして2012年10月に刊行された。
原作は、「週刊文春ミステリーベスト10」(2012年)第1位、「このミステリーがすごい!」(2013年版)第1位、『ダ・ヴィンチ』「2013年上半期 BOOK OF THE YEAR」第1位に選ばれた。また、2016年には英推理作家協会よりダガー賞・翻訳部門の最終候補に選ばれている。

テレビドラマ版は、2015年4月18日よりNHK「土曜ドラマ」にて全5回で放送された。ピエール瀧、山本美月、入山杏奈などが出演している。ドラマ版は平成27年度(第70回)文化庁芸術祭賞大賞(テレビ・ドラマ部門)を受賞した。
映画版は、2016年に『64 - ロクヨン - 前編/後編』の2部作で構成され、前編は2016年5月7日、後編は6月11日に公開された。監督は瀬々敬久、脚本は久松真一・瀬々敬久、主演は佐藤浩市である。映画は結末が原作とは異なる終わり方となっている。

D県警の広報室と記者クラブが対立する中、重要未解決事件「64(ロクヨン)」の被害者遺族宅への警察庁長官視察が決定した。
わずか7日間しかない昭和64年に起きた、D県警史上最悪の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」。長官慰問を拒む遺族に、ロクヨン関係者に敷かれたかん口令。刑事部と警務部の鉄のカーテンに、謎のメモ。
そして、長官視察直前に発生した新たな誘拐事件は、「64(ロクヨン)」をそっくり模倣したものだった。

『64』(ロクヨン)のあらすじ・ストーリー

未解決の少女誘拐殺人事件

わずか7日間で幕を閉じた昭和64年(1989年)、7歳の少女・雨宮翔子(あまみや しょうこ)が誘拐され、殺害される事件が起こった。捜査一課特殊犯捜査係に所属していた三上義信(みかみ よしのぶ)も初動捜査に加わるが、犯人に翻弄され、身代金2000万円は奪われ、その5日後に翔子の遺体が発見された。県警は犯人を逃がすまいとこの事件を「64(ロクヨン)」という符丁で呼び、解決を誓うが、時は過ぎ、捜査本部は専従班に縮小され、名ばかりの継続捜査状態となっていた。

県警による隠蔽

平成14年(2002年)、捜査二課次席まで出世していた三上は、広報官に任じられる。警務部長の赤間肇(あかま はじめ)からは、自分が考える必要はないと忠告され、三上もそれに従わざるを得なかった。三上の娘のあゆみは、父とよく似た醜い自分の顔を疎み、整形を反対されたことを機に家出をしていた。そのときに全国の警察に口利きしてくれたのが他ならぬ赤間だったのだ。しかしその後、赤間はことあるごとにいまだに帰ってこないあゆみの件を持ち出し、三上を思うように動かそうとする。そんな赤間の態度に、三上は苛立っていた。
そんな中、自宅に無言電話がかかってくる。美那子はあゆみからのものではないかと気にするが、気に病んだことで美那子は引きこもり同然になってしまう。

三上は、時効間近のロクヨンについて行われることになった警察庁長官視察を取り仕切るよう命じられる。こうして、未解決の少女誘拐殺人事件「ロクヨン」が14年の歳月を経てよみがえった。長官による遺族の雨宮芳男(あまみや よしお)宅への慰問を実現しようと三上は奔走するが、翔子の父親である雨宮はかたくなに拒否する。三上は雨宮が県警に強い不信感を抱いていることに疑問を抱き、当時捜査に関わった刑事たちを訪ね歩くが、事件の鍵を握る当時の捜査一課刑事の幸田一樹(こうだ かずき)は退職していた。捜査一課長の松岡勝俊(まつおか かつとし)も固く口を閉ざす。さらに、三上の行動の先には、なぜか三上の同期で人事を扱う警務部調査官の二渡真治(ふたわたり しんじ)の姿がある。二渡はロクヨン関係者に「幸田メモ」という言葉を出していた。なぜ刑事ではない二渡がロクヨンを調べているのか、「幸田メモ」とは何か。
調査のために行った先々で相手の家庭に無言電話がかかっていたことを気にしつつも、調査を進めた三上は、県警による隠蔽を知る。事件発生当時、雨宮宅に犯人からの脅迫電話があったが、科捜研の警察職員のミスで録音に失敗していた。そして当時自宅班を率いていた漆原(うるしはら)は隠蔽を指示していたのだ。そのことに幸田は怒り、一部始終を報告書に記して刑事部長官舎へ投函したが、刑事部はそれを隠蔽。幸田は警察を追われた。「幸田メモ」とは、幸田による内部告発であり、その隠蔽は歴代刑事部長の申し送り事項となっていたのだった。

ロクヨンを模倣した誘拐事件

警務部と刑事部の軋轢により、刑事部の暴露により警務部の不祥事がマスコミにスクープされる。赤間から催促され、雨宮の家を再び訪れた三上は翔子の遺影を見て思わず涙を流した。すると雨宮は、一転して慰問を受け入れると答えた。

三上は広報官として走り回り、警察庁長官が視察の準備を進めたが、直前となってロクヨンを模倣したと思われる誘拐事件が発生。協定では事件の詳細は記者クラブに逐一発表するはずが、刑事部は被害者である目崎歌澄(めざき かすみ)の実名をはじめとする情報を一切漏らさない。記者の不満は溜まる一方だが、記者が勝手に取材に動けば、警察に通報したことが犯人に知られ、被害者の命さえ危ぶまれる。三上は記者を説得し、協定を再び締結した。三上は犯人の指示を受け車で動く父親の目崎正人(めざき まさと)を追う捜査車両に同乗し、そこから広報へ情報を提供することになる。
しかし実は、歌澄は誘拐されていなかった。犯人は彼女の家出を利用して、誘拐事件を偽装したのだ。そのことを知りながらも、娘の無事を正人に対して知らせようとしない刑事たちに三上は激怒するが、そこで彼は、一連の調査の過程でかかっていた無言電話がすべて「ま」行に集中していたことと、この事件直前にも目崎家に無言電話がかかっていたことに気付く。
そして、この偽の誘拐事件の犯人が雨宮芳男であり、そして彼の命令にしたがって疾走している目崎正人こそ、「ロクヨン」の犯人であることに気付いたのだった。

ロクヨンの真実

脅迫電話でロクヨンの犯人の声を知っていた雨宮は、犯人が県内の人間である可能性が高いことから、事件当時の電話帳に掲載された58万世帯に無言電話をしていた。そして「ま行」まで進んだところで、「目崎正人」の声に辿り着いたのだった。
目崎は娘の無事を知らされぬまま身代金2千万円をガソリンで燃やされ、犯人からのメモを読んで娘は死んだと思い込まされる。しかし直後に娘の無事を知ると、犯人からのメモを食べて証拠隠滅を図ったため、警察は「保護」の名目で目崎を確保した。
決定的な証拠がないことから目崎への捜査は難航するが、ロクヨンでは直近追尾班を束ねていた松岡捜査一課長は、必ず立件すると語った。そして偽装誘拐を引き起こした雨宮と、彼に協力していた幸田は姿を消した。
警察庁長官の訪問、および刑事部長職の「召し上げ」は、一連の事件によって流れた。

自宅への無言電話があゆみのものではなかったことを知った美那子は落胆したが、娘が自身を受け入れてくれる人の元で元気にしていることを知り、気丈に振る舞う。そして三上もあゆみの生存を信じ、帰りを待とうと決める。
二渡と再会したが、二渡は刑事に戻る気はないという。ロクヨンが立件された暁には、「幸田メモ」の真相を明かさなければならない。そのときには、三上も広報官として松岡を支えることを決意した。

『64』(ロクヨン)の登場人物・キャラクター

三上家

三上 義信(みかみ よしのぶ)(演:ピエール瀧(ドラマ版)/佐藤浩市(映画版))

D県警察本部の警務部秘書課調査官〈広報官〉警視。刑事になって3年目に突然広報室への異動を命じられ、1年後に刑事に戻って以降は、捜査一課で盗犯・強行犯・特殊犯などを担当。実績を上げ、次席まで務めあげたが、20年ぶりに広報室勤務となる。

三上 美那子(みかみ みなこ)(演:木村佳乃(ドラマ版)/夏川結衣(映画版))

義信の妻で元ミス県警の美女。娘のあゆみが家出をしてしてからは、家にまた無言電話がかかってくるかもしれないと引きこもり状態となってしまった。

三上 あゆみ(みかみ あゆみ)(演:入山杏奈(ドラマ版)/芳根京子(映画版))

義信と美那子の娘。父親に似た自分の顔立ちにコンプレックスを抱き、高校を不登校になり引きこもる。三上に整形を反対されたことをきっかけに家出する。

D県警広報室

諏訪 尚人(すわ なおと)(演:新井浩文(ドラマ版)/綾野剛(映画版))

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