少林サッカー(Shaolin Soccer)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

監督・主演のチャウ・シンチーを日本で一躍有名にした2001年製作の香港映画。少林拳とサッカーを組み合わせ、最先端のCGを巧みに使用したギャグ満載の大ヒットアクションコメディ。日本では2002年の日韓ワールドカップと同時期に公開された。 かつて八百長で選手生命を断たれた中年男と、少林寺拳法を世に広めたいと願う若者が出会い、少林寺拳法の達人を集めてサッカー・チームを結成、全国大会を勝ち進んでいく。

『少林サッカー』の概要

「少林サッカー」(原題:少林足球)とは、2001年に公開された香港映画。
少林寺拳法の使い手たちがサッカーに挑戦する痛快エンタテインメントで、 地元香港で公開されるやあっという間に歴代興行成績No.1を記録。第21回香港電影金像奨で最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞など7部門で受賞した。
日本での公開は日韓共催のW杯を目前に盛り上がりを見せていた2002年6月1日で、興行収入30億、2002年の年間収入第8位のヒットを記録。その年の日本ブルーリボン賞を受賞している。因みに日本での宣伝キャッチコピーは、「君はまだ、究極のサッカーを知らない」。
この映画は世界32カ国で上映され、イタリアでは公開されたアジア映画として最大のヒット作となった。
アメリカではクエンティン・タランティーノ監督が「ぶっちぎりに凄い映画だ」と絶賛、香港での大ヒットに注目したアメリカのミラマックス社も全米公開に乗り出したといわれている。
監督・脚本・主演は「喜劇王」のチャウ・シンチー。初めての単独監督作品となる。彼は当時日本では知る人ぞ知る存在だったが、この「少林サッカー」で一気に知名度を高めた。アクション指導は「スウォーズマン 女神復活の章」などの監督としても知られ”ワイヤーワークの神様”とも言われるチン・シウトンが担当している。

『少林サッカー』のあらすじ・ストーリー

試合前のロッカールーム。黄金の右と呼ばれたサッカーのスター選手ファンは、チームメイトのハンから八百長するよう小切手を渡される。一度は断るも欲に負けて受け取ってしまい、その試合でPKをわざと外したファンは、激怒した観客に囲まれ、大事な右足を破壊されてしまう。その光景を見ながらほくそ笑むハン。
立場は逆転し、ハンはその後20年もの間スタープレイヤーとして君臨、現在ではサッカーチーム「デビル」の監督でサッカー界の権力者へとのし上がり、ファンは右足を引きずりながらハンの雑用係となっていた。ある時ファンはあるサッカーチームの監督を任されるという話を反故にされてハンに怒る。だがそこでハンの口から「実は観客が君を襲ったのは全部自分が仕掛けた」と真相を聞くことになる。

自責の念と悔しさで酒を飲みながら街をうろついていたファンは、少林拳の達人で清掃員のシンと出会う。シンの夢は少林拳を世の中に広めることで、「少林拳をやれば人生が変わる!」と、シンは熱心に少林拳の素晴らしさをファンに語る。だが、そんなシンの情熱にうっとうしさを感じたファンは、飲んでいた酒の空き缶をシンに向かって投げつける。シンはその空き缶を胸で受け止めると遥か彼方に蹴り飛ばしてしまった。
その後ファンと別れたシンは、通りかかった饅頭屋で太極拳を使って饅頭を作る不思議な少女、ムイと出会う。ムイは顔中の吹き出物のせいで自信が持てない少女だった。そんなムイに興味を持ち、彼女の前で歌やダンスを披露するシン。ムイは次第にシンの優しさや情熱に惹かれるものを感じるのだった。
一方のファンは、立小便をしていたブロック塀に、シンが蹴り飛ばした空き缶が刺さっているのを発見。その場所は蹴った場所からかなり離れた場所であったが、その缶を抜くと塀が崩れてしまった。そこで偶然にもシンが不良の若者たち数人に絡まれる場面に出くわす。シンは暴力を一切使わずサッカーボールだけで全員を圧倒してしまう。そのキック力に感動を覚えたファンは彼にサッカーを勧める。サッカーが少林拳を広める手段に使えると考えたシンはメンバーを集めるため、かつてシンと修行の歳月をともにした5人の兄弟弟子(通称:鉄の頭、旋風脚、鎧の肌、魔の手、空渡り)の処へファンを連れて会いに行く。しかし兄弟弟子たちは武術の道を諦めて仕事に追われたり職探しをしており、一度はシンの誘いを断る。だが現在の生活に満足していない5人は、かつての良き修業時代を思い出すと再起を誓い、やがて全員がシンの元へ結集、ファンの指導下でサッカーを始めることになった。

まったくサッカーの経験が無いメンバーをファンは基礎から指導する。そして最初の練習試合の相手は以前シンが叩き伏せた不良たちが集まったチームでシンへの復讐心に燃えていた。試合が始まると案の定、シンたち少林チームはラフプレーで倒された上、酷いリンチにあってしまう。しかしその屈辱がピークに達した時、5人の兄弟弟子たちは突然覚醒を起こし、超人的な技でボールを操り、不良チームを圧倒する。その見事なプレーぶりに、ファンは全国大会に臨める確信を持つ。そして仲間に入れてくれと頼む不良たち数名もメンバーに加わり、正式なサッカーチーム”少林チーム”が誕生した。

その頃、デビルのオーナーで大会の委員長も務めるハンは、今回の優勝も確信しつつチームの選手たちを科学トレーニングで強化していた。
そこへファンが少林チームを率いて出場登録にやって来る。ハンはその登録を認めるつもりはなかったのだが、少林チームのメンバーを一目見て気が変わった。その滑稽さをあざ笑い、ファンを笑いものにしてやろうと考えたのだ。だがいざ大会が始まってみると、ハンの思惑とは裏腹に、少林チームは少林拳とサッカーの融合で注目を集め、強豪チームを楽々と撃破していくのだった。

大会中のある夜、少林チームは皆で食事をしにムイが働く饅頭屋に集まった。と、そこに派手なメイクと衣装でまるで別人のようなムイが現れる。驚いたシンだったが、そのままメンバーに紹介すると、メンバーは「化け物!」などと、全然似合わないメイクを思い切りけなしてしまう始末だった。店の外で、傷ついたムイの心を慰めようとするシン。ムイは涙を流して彼に愛を告白するが、シンは自分の気持ちに鈍感でなかなかうまく言えなかった。でも彼の気持ちを感じ取ったムイは気持ちを切り替え、店へ戻ってメンバーと明るく振舞う。その姿を見て複雑な想いのシンだった。
少林チームはついに決勝に進む。決勝戦当日、シンはムイに試合のチケットを渡しに饅頭屋に寄るが、ムイは店を辞めていた。店主の話では、作る饅頭が急にしょっぱくなって売れないのでクビにしたという。店の前に落ちていた饅頭をかじってみるシン。その味はムイの涙の味だったのだ。

いよいよ決勝戦が始まる。その相手はハンが監督するデビルチームであった。
大会関係者も審判団もすべてにハンの息が掛かっていた。おまけにハンはアメリカ製の新型薬物のドーピングで選手たちを強化していたのだ。「その中でどうやって勝てるというのだ」とあざ笑うハン。前半が始まると、デビルチームは少林チームのプレイをことごとく跳ね返す上にラフプレーで少林チームの選手を潰しに掛かる。ハンに買収されている審判は当然反則を取ろうともしない。得点は入らなかったものの、ゴールキーパーの魔の手が潰され、恐ろしさで2人が逃げてしまい、ついにメンバーは怪我だらけの8人だけとなってしまう。後半は鎧の肌がゴールキーパーに立って試合を続行するが、その彼までもが潰されてしまう。大会規定で7人では試合続行不可能となってしまい、なすすべもなくなった少林チームだったが、その時救世主が現れた。それは頭を丸めたユニフォーム姿のムイだった。ムイはゴールキーパーをやるという。そんな危ないところに立たせるわけにいかないシンは必死に止めるのだが、ムイの意思は揺るがない。仕方なく試合は続行されることになった。しかし、そこであり得ないことが起こる。ムイはなんとデビルチームの強力な火の玉シュートを、太極拳を活かしたボール捌きによっていとも簡単に受け流すのだ。その驚きによって相手チームの動きが一瞬止まった。ムイからシンへのアイコンタクトから強固な絆を持ったパスがムイから空中高く飛ばされると、シンも空中高く飛びそのボールを渾身の技で蹴り飛ばす。そのシュートはフィールドのすべてを竜巻のように巻き込んで相手ゴールに叩き込まれ、相手チームもろとも吹き飛ばしてしまった。

こうしてチームは優勝し、ハンは禁止薬物使用で逮捕された。そして少林チームの大活躍によって、全国的に武術が大ブームとなった。
数年後、武術の達人だらけになった街角には、武術ブームの立役者であるシンとムイのカップルが表紙になった雑誌「TIME」の広告が掲げられていた。

『少林サッカー』の主な登場人物・キャラクター

シン(演:チャウ・シンチー)

この映画の主人公。
幼い頃から辛い修行に耐えて武術を極め、清掃員のアルバイトをしながら、少林拳を広めることに燃えている青年。
少林チームに入ってサッカーを始めるが、少林拳を広める宣伝のためであり、決してサッカーが好きなわけではない。
鋼鉄の脚と呼ばれている強靭な脚力を誇り、持ち前の運動能力の高さで、あっという間にカンフーと融合させたテクニックを得ることに成功する。
悪気があるわけではないが無神経な面があり、恋愛も苦手。

ファン(演:ン・マンタ)

かつては黄金右脚(黄金の右脚)と呼ばれた名選手だったが、八百長試合に手を出して故意にPKを外し、暴徒と化した観客に脚を潰されて引退。その後20年に渡り、ずっと右脚を引きずりながら、ハンに仕えてきた。
シンと出会い、その脚力に惚れ込んだことからシンを中心とした最強のサッカーチームを作り、ハンを見返す腹を決める。
腹に「黄金右脚」の文字が書かれている。

ムイ(演:ヴィッキー・チャオ)

饅頭屋で働くこの映画のヒロイン。
太極拳の達人で、太極拳を使って生地を自由自在に操り饅頭を作る特技がある。
顔中に吹き出物がある事から、女性としての自信が持てず、前髪を伸ばして顔を隠すようにしている。
シンと出会い、「きれいだ」と誉められたことから、少しずつ自分に自信が持てるようになり、彼に惹かれていく。

ハン(演:パトリック・ツェー)

サッカー界の最高権力者で、国内最強のサッカーチーム「デビルチーム」の監督。
ファンの元チームメイトだが彼を八百長で陥れ、その後トッププレイヤーとして君臨してきた。
金と権力に物を言わせ、卑劣な手段で少林チームの選手を次々と病院送りにしたが、大会後に選手へのドーピングが明るみに出て逮捕される。

鉄の頭(演:ウォン・ヤッフェイ)

かつてシンと修行の歳月をともにした兄弟弟子のひとり。「鉄の頭」は通称で本名は不明。
シンとは一番親しく、兄さんと呼ばれている。
ナイトクラブで働いていたが、経営者にしょっちゅう怒られ頭を瓶で殴られていた。
少林チームでは、鉄の頭でのスーパーヘディングが持ち味。

旋風脚(演:モク・メイラム)

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