のぼうの城(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『のぼうの城』とは、和田竜の日本の歴史小説を元にして2012年に公開された映画である。犬童一心と樋口真嗣の共同監督で制作された。主人公の長親(ながちか)は忍城(おしじょう)城代の息子である。関白秀吉の家臣である三成によって、忍城は開城を迫られていた。しかし長親は世の理不尽に真っ向から対抗するため、三成に相対する。長親は周りの力を借り、ついには三成軍を退けることになった。この作品は時にはしんみりしつつも、長親という「でくのぼう」の奇策によって観た人を気分爽快にさせる歴史映画となっている。

意外なオファーだった、長親役

野村萬斎自身は、成田長親役のオファーがきたことが非常に意外だったという。野村は「世間は僕にわりとシャープなイメージを持っているんじゃないかな、と思っていた」と言っており、実際これまでの役どころはハムレットやオイディプス王などの堅い役どころである。伝統芸能をやっていることも影響していると思っていたそうだ。しかも台本を読んでも難しい役どころで、どういう人で何を考えているのかの描写が少ない。しかし周りからは「ピッタリじゃない」とやけにすすめられたそうで、他人から見ると野村本人の普段は結構ぼーっとしている性格なのだそうだ。長親役はつかみどころがなくイメージがつきにくかったそうだが、今までにやったことのない役ということに興味をひかれて快諾。クランクイン前は役へのアプローチに苦労したものの、実際に忍城の面々に会ってからは悩むこともなくなった。それは忍城の面々のキャラクターがすでにしっかりと肉付けされており、長親はその中で「ただ浮いている、ズレている」だけでよかったのだ。野村は本作についてのインタビューで「濃いキャラの中で、ボケのポジションが一人だけ空いている感じだったので、皆さんのおかげで自然に役づくりができたような気がしています」と語っている。

田楽踊りは野村 萬斎の創作

田楽踊りのシーンの台本には「田楽踊りを踊る」としか書かれていなかったという。そこで野村は「どうすりゃいいんだよ」と頭を抱えたそうだが、二万人の殺気立った兵たちをのせるには、音楽や舞だけではだめだと考えた。そこで下ネタをふんだんに盛り込んだり、歌詞や掛け声から創作したのだ。田楽踊り中盤から大合唱になる「れろれろれろ(べろべろばーの意味)やひょろろんひょろろん(高い高いの意味)は、狂言において赤ん坊をあやすセリフだ。おもしろおかしくふざけた感じを装いつつも、野村はこのセリフに可愛がっていた農民の赤ん坊を殺された弔い合戦の意味も持たせている。また、本来「田楽」は五穀豊穣を願うものなので田を水浸しにされたことへの反発や、水攻めを揶揄する小便の表現も盛り込んでいる。一見この田楽踊りのシーンはただ人々をひきつけて長親を撃たせるだけのものに見えるが、実は数々の意図が含まれていたのだ。

『のぼうの城』の主題歌・挿入歌

主題歌:エレファントカシマシ「ズレてる方がいい」

「ズレてる方がいい」は『のぼうの城』のためにエレファントカシマシが書き下ろした楽曲である。ボーカルの宮本浩次が、映画の主人公である成田長親の「ズレてるカッコよさ」にキーワードを得て歌い上げた。宮本は「試写会でエンディングにこの曲が流れた時、この映画の登場人物の一人に自分もなれた気がして心がふるえました」とコメントしている。ミュージックビデオは『のぼうの城』の監督の犬童一心と樋口真嗣が務め、撮影は映画のロケ地のひとつである北海道苫小牧市で撮影された。

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