罪の声(小説・漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『罪の声(映画)』とは塩田武士の同名小説を2020年に土井裕泰監督、小栗旬主演で映画化されたサスペンス映画である。1984年に実際に起こった「グリコ森永事件」を題材にした、フィクションでありながらも限りなく事実に近い作品としてサスペンスフルに仕上がっている。実際の事件でも犯人が使用した「子供の声」を中心に、自分の声が使われていたことを知ってしまった人物と過去の大事件の犯人を追うジャーナリストの2人の視点から犯人を追い詰めていく物語である。

大日新聞文化部の記者。ずっと社会部の記者をやっていたが東京である事件の取材中、自分の仕事に疑問を感じ、社会部の記者を続けられないと文化部に異動してきた過去がある。
文化部では当たり障りのない記事を書き、上司や先輩からは「カッスカスの記事」と揶揄されている。
大日新聞がギン萬事件を扱う特集を組んだ時、文化部から社会部にレンタルされることになる。英検準1級で、英語力を買われてロンドン出張にも行かされた。
もともと社会部記者としての資質は高く、社会部長の鳥居や今は子会社の社長だがギン萬事件当時は第一線の記者だった水島からはボロカスに言われながらも愛されている。
ギン萬事件については「もう終わった過去の事件」だと最初は全く気乗りせず加わっていた。しかし取材が進み犯人グループが明らかになるにつれて、事件について深く考え自ら進んで取材に行くようになる。
俊也と最初に出会ったときは「真実を明らかにすることに意義がある」と言うが、俊也の人生を犠牲にしてまで明らかにする意義はあるのかと考えてしまい強く出られなかった。
その後も記者の矜持も世の中に訴えたいことも何もないと自嘲気味に話す。

人の人生に踏み込むことが記者の宿命ならば、自分はその声に寄り添っていこう、小さな声に耳を澄ませようと誓うのであった。

曽根俊也(そねとしや/演:星野源)

京都で父の代から続くテーラーを営む。妻と娘に囲まれ、なんとか3人食べていけるぐらいだというが、幸せな生活を送っている。
父はすでに亡くなり、母は入院中で余命わずかだと医師から聞かされている。
性格は温厚実直、彼の好きなブリティッシュスタイルのスーツ、流行り廃りに左右されない頑固でつつましいに現れている。
父の遺品の中から見つけたカセットテープを聞くことで、ギン萬事件に自分の声が使われたことを知り、苦悩する。
また父の幼馴染からもらった写真からいち早く生島望と聡一郎があと2人の声の子供なのではないかと推測し、望が通っていた中学校にも足を運び話を聞いていた。
阿久津の訪問を受け、今の幸せな生活と娘の未来が壊されてしまうことに怯えた。そのため最初は強い口調で拒絶するが、その後望の同級生天地幸子から事件後の望たちの壮絶な人生を聞き、彼らの無事を確かめることを条件に阿久津に力を貸すことを決意する。
聡一郎を絶する人生を聞き、自分の恵まれた人生に罪悪感を抱くが阿久津に励まされる。
自分の声を録音したのは伯父の曽根達雄ではなく、母親ではないかと疑いを抱き、曽根真由美の告白を聞く。
息子の自分が声の罪を背負って一生苦しむのが母の望みだったのかと詰問する。
エンディングではスーツの依頼に来た阿久津にぴったりのスーツを作ることを笑顔で約束する。

曽根家の人々

曽根亜美(そねあみ/演:市川実日子)

左から亜美、詩織、俊也

俊也の妻。
入院中の姑曽根真由美の世話もかいがいしくやっている
真由美が亡くなった時は「詩織のことをかわいがってくれてありがとうございました」と礼を言う。

事件について悩む俊也を最初は不倫でもしているのかと疑っていた。事情を聴いた後は「辛気臭い顔でいられると迷惑だから好きなようにしろ」と俊也の行動を後押しする。
阿久津からは「厳しいですね」と言われるが、俊也は「優しいんです」と答える。

曽根詩織(そねしおり/演:朝日湖子)

俊也と亜美の娘。愛情いっぱいに育っている。
動物園にレオポンがいなかったことに不満を言う。
口癖はえーこえーこ

曽根光雄(そねみつお/演:尾上寛之)

俊也の父。テーラー曽根の創業者。俊也と同じくつつましいブリティッシュスタイルのスーツを好む。
学生運動に参加していた兄達雄とは違う人生を送ったが、兄が開業祝に訪れた時は久しぶりの再会に喜ぶ。

曽根真由美(そねまゆみ/演:梶芽衣子/若き日の真由美:阿部純子)

曽根真由美(演:梶芽衣子)

曽根俊也の母、2020年には病に倒れ、余命数ヶ月と診断されている。
高校生の時、父が警察の不正で無実の罪に問われ、仕事を首になり自殺するという事件があったことから警察に対し非常に憤りを感じており、そのことが原因で学生運動に身を投じた。
過激な運動の中、曽根達雄と知り合うが運動も下火になり百貨店に就職する。そこで曽根光雄と知り合い、結婚する。
結婚後は過去の学生運動を隠し、俊也を設け穏やかな日々を暮らしていた。しかし光雄の兄だった達雄と偶然再会し、達雄の「警察に対し一矢報いたい」という言葉に奮い立ち、言われるがまま俊也の声を録音する。
最後には俊也からその行為が本当に自分の望みだったのかと問われ、涙ながらに謝罪する。
令和に元号がが変わる頃に俊也や亜美、詩織に看取られながら息を引き取る。

生島家

生島千代子(いくしまちよこ/演:篠原ゆき子)

生島千代子(演:篠原ゆき子)

秀樹の妻、望、聡一郎の母。
生島が殺された後、達雄と山下に連れられ一家は山下の家に隠れていたが青木たちに見つかり青木組の会社の寮に軟禁される。
青木組が経営するスナックでホステスとして働かされるなど悲惨な生活を送っていた。しかし聡一郎が会社に火を放ち逃げようとしたときは足手まといになることを恐れ、「自分は大丈夫だから一人で逃げろ」と叫ぶ。青木組解散後は老人ホームで暮らしていたが、聡一郎が記者会見をしたおかげで再会を果たす。

生島望(いくしまのぞみ/演:原菜乃華)

生島望(演:原菜乃華)

事件に声を使われた子供の一人。生島家の長女。当時中学生だったが、英語が得意で映画の翻訳家になるという夢を持っていた。父が殺された後母と弟と一緒に青木組に拉致され、軟禁される。母と同じスナックで皿洗いなどをさせられていたが、映画への夢は片時も忘れたことはなかった。
16歳の時一人青木組から逃げ出し、通信制の高校に通い英語の勉強をするという計画を立て実行に移すが、感づかれたキツネ目の男である林に殺されてしまう。

生島聡一郎(いくしまそういちろう/演:宇野祥平/子ども時代 演:石澤柊斗/中学生時代 演:杉田雷麟)

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