君たちはどう生きるか(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『君たちはどう生きるか』とは、義母を救うために不可思議な世界を旅する少年の姿を描いた、宮崎駿によるアニメ映画。宮崎が「これで本当に最後」と明言して制作した作品で、宣伝も無く、公式HPも無く、一切情報を隠したまま公開されるという独特の手法で話題となった。
太平洋戦争が激化する最中、牧眞人は父と共に郊外へ引っ越し、そこで叔母で新たに自身の義母となるナツコと再会。どう接すればいいのか互いに戸惑う中、ナツコはいずこかへと姿を消し、眞人は彼女を連れ戻すために謎のアオサギに導かれて異界へと旅立っていく。

『君たちはどう生きるか』の概要

『君たちはどう生きるか』とは、義母を救うために不可思議な世界を旅する少年の姿を描いた、世界的アニメ監督宮崎駿によるアニメ映画。本作では「宮崎駿」ではなく「宮﨑駿」を名乗っているが、記事では世間で広く知られている「宮崎駿」の名で表記する。
戦前に書かれた吉野源三郎の小説と同じタイトルだが中身は完全に別物で、同小説は作中で「主人公にとって大きな転機となるもの」として登場するのみとなっている。イギリス人作家ジョン・コナリーの小説『失われたものたちの本』との類似点も多く、ストーリー的なモデルはこちらではないかとする声も少なくない。

幾度も引退を宣言しては現役復帰することを繰り返した宮崎が、「体力的にこれ以上は無理、これで本当に最後」と明言して制作を開始したことで公開前から注目を集める。2000年代以降の作品でありながら、宣伝も無く、公式HPも無く、一切情報を隠したまま公開されるという独特の手法で話題となった。
最終的な興行収入は約108億円。2023年の「イマジン映画祭」で1位、2024年の「第81回ゴールデングローブ賞」のアニメ映画賞、同年の「第96回アカデミー賞」の長編アニメ映画賞など、数々の映画賞に選ばれている。

太平洋戦争が激化する最中、牧眞人(まき まひと)は母を火事で失い、父と共に郊外へと引っ越すこととなる。そこでかつての叔母で、新たに自身の義母となるナツコと再会する眞人だったが、すでに自分の弟か妹がおなかにいるという彼女とどう接すればいいのか戸惑い、馴染むことができないでいた。
そんな眞人に、人語を操る奇怪なアオサギが幾度となく接触。妖怪か何かではないかと眞人がこれを射るための弓を用意する中、ナツコが不意にいずこかへと姿を消してしまう。ナツコと、まだ見ぬ弟妹を助けるため、眞人はアオサギに導かれるまま不可思議な異界へと乗り込んでいく。

『君たちはどう生きるか』のあらすじ・ストーリー

母の死と新たな家

アオサギに対峙する牧眞人

太平洋戦争が始まって3年。小学生の牧眞人(まき ひろと)は、病院で療養中だった母を火災によって失う。火の勢いは激しく、母を助けようと駆け付けた牧眞人の目の前で病院は崩れ落ち、遺体は発見されないままだった。「母を救えなかった」という事実は、眞人の胸にトラウマとして残り続ける。
それから程無くして、眞人は父と共に郊外へと引っ越すこととなる。それは父の仕事の都合でもあったが、彼が再婚する相手の実家がそこにあるというのも大きな理由だった。駅に着いたところで、眞人の叔母でこれからは義母となるナツコという女性が2人を迎えに現れる。

先に職場に向かうという父と別れ、眞人はナツコと一緒に彼女の実家に向かう。ナツコは母を失ったばかりの眞人に親切にしてくれたが、少し前まで叔母だった相手にどう接すればいいか分からず、眞人は頑なな態度を崩せない。しかもナツコはすでに眞人の弟か妹になる赤ん坊を妊娠しており、それはそれで「父は母を裏切っていたのか、だからといって自分の弟か妹になる赤ん坊をおなかに宿した女性に失礼なことをしていいのか」と彼を悩ませる。
家族に対して心を閉ざした眞人は、母の実家近くの探検に精を出すようになる。家の裏にはいくつかの塔が組み合わさったような不可思議な建物があり、住み込みで働く老婆に話を聞けばこれは母の大叔父(祖父の兄弟のこと。眞人からすると曾祖父の兄弟)が作ったもので、その大叔父本人を含めて今まで何人も神隠し騒ぎを起こしているという。家の庭に棲みついているアオサギは、塔に興味を抱き始めた眞人を誘うように、彼につきまとうようになる。

ナツコの失踪

幻覚か妖術か、やがてアオサギは人語を操って眞人を塔に誘う。妖怪なのかなんなのか、いずれにしろ尋常な存在ではないと察した眞人は、これを倒すために手製の弓矢を作り始める。矢羽根に落ちていたアオサギの風切り羽根を利用すると、矢は驚くほどの勢いで飛ぶようになる。
そんな折、眞人は転校先の学校で同級生たちに絡まれ、喧嘩に負けてしまう。悔しさのあまり、眞人は1人になってから石で自分の側頭部を殴って“ひどい怪我をさせられた”風を装おうとするも、加減を間違えて派手に出血。本当に大騒ぎになってしまう。

父や住み込みの老婆たちに案じられ、怪我が治るまでしばらく休むこととなった眞人だったが、再びアオサギに話しかけられて「あの矢を試してみよう」と考える。しかし手製の弓矢を持って外に出るとすでにアオサギの姿はなく、これを探す内に眞人はナツコらしい人影が森の中に向かう様を目撃。戸惑いつつもアオサギの捜索を続行する。
結局アオサギは見つからなかったものの、今度は「ナツコがいなくなった」と騒ぎになり、家の者たちが総出で彼女を探す。眞人は「もしやアオサギが何かしたのか」と弓矢を手に森の中へと向かい、ナツコの足跡らしきものを追っていく内に家の裏手の塔へと辿り着く。住み込みの老婆の1人で勝手についてきたキリコから「これ以上近づくと神隠しに遭う」と制止されるも、眞人は彼女を引きずるようにしながら塔の中へと乗り込んでいく。

異界の旅路

塔の中では、アオサギが眞人を待ち構えていた。眞人が矢羽根に使ったアオサギの風切り羽根は、偶然にも彼の致命的な弱点だったらしく、逃げても逃げてもこれを追い続けてそのクチバシを貫く。するとアオサギの口から不格好な男の頭が飛び出し、満足に飛ぶこともできなくなって床に落ちてくる。矢を回収した眞人が「ナツコさんを返せ」と要求すると、アオサギは塔の遥か上の階から自分たちを見下ろしていた何者かと言葉を交わし、嘲るように武運を祈りつつ眞人となんとなくついてきてしまったキリコを床の中に沈み込ませる。
次に気付いた時、眞人は1人どこともしれぬ海岸に立っていた。精悍な女漁師のキリコに助けられた眞人は、彼女が一緒に塔の中に入った老婆と同じ名前であることを不思議に思いつつ、礼を兼ねて彼女の仕事を手伝う。

キリコによれば、この異界は「あの世」もしくは「地獄」と呼ばれる世界に程近い場所らしい。熟成して天高く上がり、新たな人間の赤ん坊に生まれ変わる「ふわふわ」という存在に、滋養のある魚を獲って食べさせてやるのが彼女の仕事だった。そのふわふわたちをペリカンの群れが襲って食べるのを見て、眞人が思わず「やめろ」と叫ぶと、そこに小舟に乗った何者かが海面から巨大な炎の塊を放つ。キリコはその人物のことを「ヒミ様」と呼び、ああしてふわふわを守ってくれている良い人なのだと説明する。
その晩再びアオサギが現れ、うまく飛べなくなった仕返しに眞人を襲う。眞人は矢から回収した風切り羽根を脅しに使ってアオサギを追い払おうとするも、蹴とばされた拍子にうっかりこれを千切ってしまい、アオサギはショックで倒れ込む。これを見ていたキリコは、2人に仲直りしろと言い聞かせ、一緒にナツコを救ってくるよう勧める。

2人の母との再会

クチバシに穴を開けられ、風切り羽根も千切られたアオサギは完全に飛べなくなっていた。あまりに嘆く彼を見ていられなかった眞人は、木を削ってクチバシの穴を塞いでやる。“自分を傷つけた者によって手当された”ことでアオサギはまた飛べるようになり、不平不満をこぼしながらも眞人の旅を積極的に手伝うようになる。
やがて2人は、ナツコがいる場所の近くにまでやってくるも、そこは人を食う巨大なインコが国を作って制圧している地域だった。アオサギが囮となって眞人を先に進ませるも、その先にも大量のインコが待ち構えていた。眞人が逃げ場を失ったところで、突如ヒミがその場に割って入り、眞人を救出する。

ヒミは眞人と同年代の少女にしか見えなかったが、ナツコを「自分の妹」だと言い、彼女の下までの道案内を買って出る。辿り着いた先では、ナツコが大量の護符に守られるようにして眠っていたが、眞人が起こして帰るよう促すと「ここにいたい」と言い出す。父も待っているだろうことを告げると、ナツコは急に感情的になり、眞人に向かって「お前が嫌いだ」と暴言を吐く。ここで初めて、眞人は新しく家族になる相手に戸惑っていたのが自分だけではなかったことを理解する。甥を義理の息子として迎え入れるために、ナツコも必死に頑張っていたのだ。
ナツコの感情に呼応するように護符が荒れ狂う中、眞人は彼女に「お母さん」と呼びかける。これを聞いたナツコは、自分と同等以上に悩んでいただろう眞人にひどいことを言ってしまったと気付いて慌てて手を伸ばすも、護符に巻き付かれて意識を失う。眞人はヒミによって助け出されるも、彼女もまた護符に襲われて倒れ、2人はそのままインコたちに捕まってしまう。

閉ざされる異界と現世への帰還

インコに囚われた眞人を助けてくれたのは、意外にもアオサギだった。彼から「この世界には神にも等しい存在がいる」と聞いた眞人は、インコたちが捕らえたヒミを交換材料にしてその人物と取引しようとしていることを知り、先んじて接触しようと試みる。
インコたちの居城と化した塔の最上階に辿り着くと、そこで待っていたのはかつて塔の中で行方を絶ったという眞人の“母の大叔父”に当たる老人だった。彼は「この塔はいくつかの世界に同時に存在し、それらをつなぐものだ」と説明し、自分に代わってこれを管理してほしいと眞人に乞う。異界に入ってからの眞人の行動を全て見ていた母の大叔父は、その勇気と真っ直ぐな心を認め、彼こそ理想の世界を作る資格を持つ汚れなき賢者だと考え、様々な世界を渡り歩きながら集めた“世界を形作る積み木”を託そうとしていた。

しかし眞人は頭の傷を見せて「これは家族がどれほど自分を心配してくれるかを試したくてつけたもの。自分はあなたのいう汚れなき者ではない」と言って母の大叔父の要求を拒む。そこに密かに一行を追いかけてきたインコたちの長が現れ、「こんなもので理想の世界を作るなど、そんな馬鹿な話があるか」と言って積み木を一刀両断。この瞬間、異界の全てが崩れ出し、眞人はアオサギやインコたちが連れてきたヒミと一緒に慌てて脱出する。人生をかけて理想世界の創生を果たそうとしていた母の大叔父は、こんな形でその計画が無に帰したことに絶望するも、一方で罪を背負ったまま前に進み続ける眞人に期待と羨望を感じてもいた。
ナツコはキリコが助け出しており、眞人たちもここに合流。現世に向かう扉の前まで辿り着いたところで、ヒミは「私は違う」と言って別の扉に手をかける。彼女が若かりし時の自分の母であることに気付いていた眞人は「そのまま行けばあなたは火事で死ぬ」と必死に説得するも、ヒミは「眞人を産めるなんて幸せなことだ」と笑顔を浮かべる。結局彼女はキリコと共に自身が本来いるべき時代へと帰還し、やむなく眞人はナツコとアオサギと共に自分が生きる時代に続く扉を潜る。

扉の向こうには、ナツコの家の裏にある塔があった。アオサギは「とんでもない目に遭った」とぼやきつつも眞人を“友達”と呼んで飛び去り、異界でキリコからもらった人形が老婆のキリコへと姿を変える。そこに父と住み込みの老婆たちが駆け付け、戻ってきた眞人とナツコに抱き着いて帰還を喜ぶ。かくして眞人は異界の冒険を終えて、自分の在るべき世界に戻ってきたのだった。
2年後。物資と人命と尊厳を無駄に浪費した戦争が終わると、眞人は父、新たな母、新しく生まれた弟と共に、再び東京へと戻っていく。

『君たちはどう生きるか』の登場人物・キャラクター

牧眞人(まき ひろと)

CV:山時聡真

10代前半程度の少年。聡明で勇敢、誠実で家族想いな性格。それだけに「叔母が新しい母になる」、「彼女のおなかにはもう自分の弟か妹になる赤ん坊がいる」という事実をどう受け止めればいいか分からず、家族に対して壁を作っている。

ナツコ

CV:木村佳乃

眞人の叔母。眞人の母の死後、眞人の父と結婚することになり、仕事の都合で地元に来ることになった彼を実家に迎え入れる。眞人と再会した頃には、すでに彼の父との子をおなかに宿していた。
甥である眞人のことは赤ん坊の頃に会ったきりで、自分に対して心を閉ざす彼を「仕方のないこと」とは思いつつどう接すればいいのか苦慮している。

牧勝一(まき しょういち)

CV:木村拓哉

眞人の父。航空機のパーツを製造する工場に務める技術者で、戦時中にも関わらず嗜好品の類を多く手に入れるなど暮らしぶりは裕福。眞人が怪我をして帰ってきた時は本気で心配して「父さんが仇を討ってやる」と言い出し、彼とナツコが塔の中で消えた際は日本刀を手に内部に乗り込もうとするなど、やや勇み足気味ではあるが家族のことは心から愛している。

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ハウルの動く城の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

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『ハウルの動く城』とは、2004年公開のスタジオジブリ制作の長編アニメーション作品である。脚本・監督は宮崎駿。 帽子屋の少女・ソフィーは兵隊に絡まれていたところを魔法使いのハウルに助けられるが、魔女の呪いによって90歳の老婆に姿を変えられてしまう。店にいられなくなったソフィーは旅に出、その途中でハウルの動く城に出会うのだった。ファンタジックな世界観や美術、個性的なキャラクターが魅力の作品。ハウルとソフィーの戦火の恋がストーリーの軸となっているため、本作にはロマンチックな名言も数多く登場する。

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もののけ姫の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

もののけ姫の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『もののけ姫』とは、1997年公開のスタジオジブリ制作の長編アニメーション映画である。原作・脚本・監督は宮崎駿。 中世の日本を舞台に、エミシの村で暮らす少年アシタカが村を襲ってきたタタリ神から村を守ったことで、死の呪いを受けてしまう。呪いを絶つために旅立ったアシタカは、山犬に育てられた少女・サンと出会う。人間と自然の対立を描いた壮大な作品である。本作には、人やもののけそれぞれの立場や考え方を表したセリフも多く、考えさせられるような印象的な名言が数多く登場する。

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天空の城ラピュタの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

天空の城ラピュタの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『天空の城ラピュタ』とは、1986年公開のスタジオジブリ初制作の長編アニメーション作品である。原作・脚本・監督は宮崎駿。鉱山で働く少年パズーは、ある時、空から降ってきた不思議な女の子・シータを助ける。追われている彼女を助けようとするパズーだが、自分の古い名前がラピュタであることを打ち明けたシータは、敵に捕まってしまったパズーの身代わりとして連れ去られてしまったのだった。本作には、「バルス!」や「見ろ!人がゴミのようだ!」など有名でキャッチーな名言が多く登場している。

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風の谷のナウシカの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

風の谷のナウシカの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『風の谷のナウシカ』とは、1984年公開のトップクラフト制作の長編アニメーション作品である。原作・脚本・監督は宮崎駿。1982年に『アニメージュ』で連載していた宮崎の同名漫画を原作としている。宮崎駿の長編アニメーション映画としては第2作である。 「火の七日間」という最終戦争から1000年後の世界。近代文明が崩壊し、「腐海」と呼ばれる異形の菌類の森に世界は覆われていた。本作には、この世界の過酷な現状やナウシカの生き様を表した印象的なセリフが数多く登場する。

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紅の豚の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

紅の豚の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『紅の豚』とは、1992年公開のスタジオジブリ制作の長編アニメーション作品である。監督は宮﨑駿。1990年に『月刊モデルグラフィックス』で連載された『宮崎駿の雑想ノート』の『飛行艇時代』を原作としている。 世界大恐慌に揺れるイタリア・アドリア海。豚の姿になった「ポルコ・ロッソ」が、飛行艇を乗り回す空中海賊「空賊」たちを相手に賞金稼ぎとして空中戦を繰り広げる。中年男性向けを意識して制作されたため、「飛行機」や「空軍」などロマンがあり、渋い名言も多い。

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