小さいおうち(小説・映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『小さいおうち』とは、中島京子の同名小説を元に2014年に映画化された日本の恋愛映画である。山形から東京に女中奉公に上がった布宮タキ(ぬのみや)は、赤い屋根のちいさなおうちに住む平井時子(ひらいときこ)の元で働いていた。時子はその外見と内面から、誰でも虜にしてしまう女性だった。そして時子は夫の部下である板垣正治(いたがきしょうじ)と道ならぬ恋をしてしまい、日本も戦争への道を着実に進み始めていた。この作品は昭和という激動の時代を生きていた人々の、血の通った温かい生活と小さな秘密を描いた物語である。
時子の夫で恭一の父。オモチャ会社の常務。時子とともに、丘の上に赤い屋根の小さな家を建てる。他の一般的なサラリーマンと同じように、戦争に対して楽観的な考えを持っていた。そのため、「支那事変もじきに終わる」「2年後には東京オリンピックだ」等と将来に明るい展望を持っていた。もともと時子との夫婦仲は悪くなく子煩悩だったが、板倉の見合いに消極的な時子に対していらだちを隠せないでいた。最期は東京大空襲の際、時子とともに庭の防空壕で亡くなる。
幼年期の平井 恭一(ひらい きょういち/演:秋山 聡)
時子と平井の1人息子。小児麻痺になり、歩けなくなる。毎日タキにおぶってもらって治療院まで通い、足のマッサージを受けていた。治療師や時子のマッサージは嫌がるが、タキのマッサージは喜んで受ける。板倉と初めて会った時に絵本を読んでもらい、仲良くなる。
少年期の平井 恭一(演:市川 福太郎)
幼年期の小児麻痺により、小学校入学を一年遅らせることになる。しかし足はだいぶ回復しており、少年期終盤には友達と走り回る様子が描かれる。タキがスイカを切るのを邪魔したり、家の中を走り回ったりとだいぶやんちゃな様子である。板倉の招集前には「立派な大人になるんだぞ」という言葉をかけられる。
晩年期の平井 恭一(演:米倉 斉加年)
東京大空襲を生き残り、晩年は北陸で静かに暮らす。どのようにして東京大空襲を生き延びたのかは不明。健史とユキが訪ねて行った時は車いす姿で盲目になっており、タキの遺品の中から出てきた時子の手紙を健史に読んでくれるように頼む。幼い頃にタキによく海に連れて行ってもらい、その影響で北陸の海沿いで暮らすようになった。時子の不倫を幼いながらに感づいていたようだが、年老いてから時子の板倉への手紙に触れて涙している。
平成の人物
荒井 健史(あらい たけし/演:妻夫木 聡)
タキの親戚で康子の弟。作中の初登場時は大学生。タキに回顧録を書くようにすすめる。タキの家にはおいしい食事を目当てによく通っており、いつもタキの食事を絶賛している。タキに辛辣な言葉を浴びせられても、意に介さず言い返す。タキが亡くなった時の第一発見者で、遺品の整理にも参加する。大学卒業後に建設関係の会社に就職し、恋人のユキとともに恭一を訪ねていく。移動手段としては、もっぱらバイクを使用している。
荒井 軍治(あらい ぐんじ/演:小林 稔侍)
康子の夫。タキの葬儀や遺品整理に参加している。笑顔のやさしい雰囲気の中年男性で、健史とも仲が良い。遺品の中から出てきた時子とタキ、恭一の写真をみて、「恭一は生きているかもしれない」と冷静に考えを話している。
荒井 康子(あらい やすこ/演:夏川 結衣)
健史の姉で軍治の妻。笑顔が明るい朗らかな女性。タキの葬儀や遺品整理にも参加し、生前のタキの家にも顔を出している。健史同様タキに何を言われてもあまり気にしておらず、帰った後にタキに「あの子は疲れるねぇ」と言われている。健史に対しても強気で、健史はたじたじである。
ユキ(演:木村 文乃)
健史の大学時代からの恋人。笑顔でハキハキと話すかわいらしい女性。作中で健史がバイク事故により足を怪我した際は、タキの家まで車で迎えに来ていた。その後タキにとんかつをごちそうになる。大学を卒業してからも健史との交際は続いており、本屋で健史に本をプレゼントしている。イタクラ・ショージ記念館や恭一のもとに、健史に同行して行っている。
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目次 - Contents
- 『小さいおうち』の概要
- 『小さいおうち』のあらすじ・ストーリー
- 赤い屋根の小さいおうち
- 時子と板倉の出会い
- 破滅への道
- 残されたもの
- 『小さいおうち』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 平井 時子(ひらい ときこ/演:松 たか子)
- 晩年期の布宮 タキ(ぬのみや たき/演:倍賞 千恵子)
- 若年期の布宮 タキ(演:黒木 華)
- 平井家の人物
- 平井 雅樹(ひらい まさき/演:片岡 孝太郎)
- 幼年期の平井 恭一(ひらい きょういち/演:秋山 聡)
- 少年期の平井 恭一(演:市川 福太郎)
- 晩年期の平井 恭一(演:米倉 斉加年)
- 平成の人物
- 荒井 健史(あらい たけし/演:妻夫木 聡)
- 荒井 軍治(あらい ぐんじ/演:小林 稔侍)
- 荒井 康子(あらい やすこ/演:夏川 結衣)
- ユキ(演:木村 文乃)
- 平井家のまわりの人物
- 板倉 正治(いたくら しょうじ/演:吉岡 秀隆)
- 小中先生(こなかせんせい/演:橋爪 功)
- 小中夫人(こなかふじん/演:吉行 和子)
- 貞子(さだこ/演:室井 滋)
- その他の人物
- 松岡 睦子(まつおか むつこ/演:中嶋 朋子)
- 柳社長(やなぎしゃちょう/演:ラサール石井)
- カネ(演:あき竹城)
- 花輪和夫(はなわ かずお/演:笹野 高史)
- 花輪の叔母(演:松金 よね子)
- 酒屋のおやじ(演:螢雪 次朗)
- 治療師(演:林家 正蔵)
- 『小さいおうち』の用語
- 尋常小学校
- 女中奉公
- 関東大震災
- 二・二六事件
- 軍国主義
- 小児麻痺
- 南京陥落(戦)
- 支那事変
- 徴兵検査/丙種
- 配給制
- 女学校
- 『小さいおうち』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 嵐の中のキス
- 板倉 正治「もし僕が死ぬとすると、奥さんとタキちゃんを守るためだからね」
- 晩年期の平井 恭一「そんなちいさなちいさな罪は、とっくに許されているんだから」
- 『小さいおうち』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 細かい所作にひそむ感情表現
- 緊張感に包まれた長いワンカット
- タキをときめかせるように演じた時子
- 『小さいおうち』の主題歌・挿入歌
- オリジナルサウンドトラック:『赤い屋根のおうち』