『幸福の黄色いハンカチ』とは1977年に公開された日本の映画である。監督は山田洋次。刑期を終えて出所した島勇作は妻の島光枝へ、まだ自身を待っていてくれるなら家の前に黄色いハンカチを掲げてほしいという手紙を送っていた。それから勇作は故郷へ向かう道中、東京から北海道に来ていた花田欽也と小川朱美に出会い3人で行動することとなる。欽也の赤いファミリアに乗り、トラブルが相次ぎながらも3人の旅は続いた。光枝のいる家が近づくにつれ不安に襲われる勇作であったが、やがて真実と向き合う覚悟を決める。
『幸福の黄色いハンカチ』の概要
『幸福の黄色いハンカチ』とは1977年10月1日に公開された日本の映画である。監督は山田洋次。脚本を山田と朝間義隆が手がけている。原作は1971年に『ニューヨーク・ポスト』に掲載されたピート・ハミルのコラム『Going Home』。長距離バスが舞台となっている6ページほどの作品である。また1973年にリリースされたトニー・オーランド&ドーンによる楽曲「幸せの黄色いリボン(原題:Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree)」も、この「Going Home」を基に作られた。本作は「幸せの黄色いリボン」から着想を得ている。製作は松竹。主なキャストには島勇作(しま ゆうさく)役の高倉健、島光枝(しま みつえ)役の倍賞千恵子、花田欽也(はなだ きんや)役の武田鉄矢、小川朱美(おがわ あけみ)役の桃井かおりが名を連ねている。高倉、倍賞は本作が初共演。武田は本作が映画初出演となる。そして警官の渡辺勝次(わたなべ かつじ)役として渥美清が出演した。後にキャスティングを変え、テレビドラマ化や海外でも映画化されている。2008年にはアメリカで『イエロー・ハンカチーフ』としてリメイクされた。勇作役はウィリアム・ハート、朱美役はクリステン・スチュワート、欽也役はエディ・レッドメインが演じている。本作では桃井がモーテルの女主人役で特別出演を果たした。テレビドラマ版では1982年に勇作役を菅原文太、光枝役を泉ピン子が務める作品や、2011年には勇作役を阿部寛、朱美役を堀北真希、欽也役を濱田岳、光枝役を夏川結衣が務めたバージョンのリメイクも放送された。また第1回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、優秀主演女優賞、優秀音楽賞を受賞。第51回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画ベスト・テン第1位を獲得し、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、読者選出日本映画第1位、読者選出日本映画監督賞を受賞した。その後も、第32回毎日映画コンクールで日本映画大賞、監督賞、脚本賞、男優演技賞、音楽賞、録音賞を受賞。第20回ブルーリボン賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞を受賞。第2回報知映画賞では作品賞と主演男優賞を受賞し、国内における同年の映画賞を独占した。
殺人罪で服役していた島勇作は6年3ヶ月の刑期を終えて出所し、自宅のある北海道の夕張へ向かおうとする。道中、失恋から北海道に観光に訪れた青年の花田欽也と、彼がナンパした小川朱美と出会い、3人は欽也の新車でともに旅をすることとなった。3人の旅はトラブルが相次ぐが、彼らは1つずつ乗り越えていく。しかし帯広でヤクザ風の男と喧嘩した欽也に代わって勇作が運転していた際、偶然通った道で検問が行われており、勇作が無免許運転であることが判明する。欽也と朱美にも知られたことで、勇作は自身の過去を語り始めた。かつて夕張の炭鉱で働いていた勇作は繁華街での喧嘩の末、人を殺めてしまい服役していたのである。その服役前に勇作は、妻の島光枝に一方的に別れを告げていた。だが本心では復縁を望んでおり、勇作は出所した後、光枝に一通の葉書を送っていた。そこにはもしまだ勇作を待ってくれているのであれば、家のそばにある竿に黄色いハンカチをぶら下げてほしいと書かれている。事情を知った欽也と朱美は、光枝に会う期待と不安がないまぜになっている勇作の背中を押し、3人で光枝のいる家へと向かうのであった。
『幸福の黄色いハンカチ』のあらすじ・ストーリー
北海道で出会った訳ありの3人
東京の印刷工場で働いていた花田欽也(はなだ きんや)は失恋のショックから会社を辞め、退職金を叩いて赤いマツダ・ファミリアを新車で購入する。この車で北海道を走ろうと友人を誘うが誰もついてこないため、結局欽也は1人で北海道に向かった。釧路に上陸した欽也は網走に向かう道中でナンパしようとするものの、ことごとく失敗し苛立ちを募らせていた。ちょうど同じ頃、網走刑務所では島勇作(しま ゆうさく)が出所していたところであった。殺人罪で6年3ヶ月服役した勇作は食堂に立ち寄り、久々のビールやラーメンを味わう。その同じ食堂に失恋から一人旅をしていた小川朱美(おがわ あけみ)と、彼女を口説こうとする欽也も居合わせていた。やがて欽也は朱美をナンパすることに成功し、2人はファミリアで観光することになる。その最中に彼らは偶然オホーツク海で休んでいた勇作に話しかけた。通りすがりの出会いであるが、なりゆきから勇作も車に乗ることとなる。
トラブルの相次ぐファミリアの旅
到着した旅館では欽也と朱美で一部屋、勇作は隣の部屋に宿泊。しかし翌朝、欽也と朱美が部屋で揉めていたため勇作が止めに入った。宿を出た3人は気まずい空気のまま陸別駅に向かう。3人はそこで別れる予定であったが、和解のために欽也が蟹を買ってきたことで旅は続行。その際に勇作と欽也が同じ福岡県の出身であることが判明し、親近感が生まれた。それから再び車を走らせている最中、蟹にあたった欽也がトイレを借りるため農家を訪ねる。その間、路上に停めたファミリアを安全な位置に移すため、朱美が運転すると車は落輪。さらには牧場内で積まれた干し草の山に車を突っ込ませてしまう。欽也は激怒し、朱美は泣きながら叫び出した。その後勇作は農夫と話し、一泊泊めてもらうこととなる。そして欽也と同室の勇作は、朱美に対する欽也の行動の数々を叱った。牧場を後にし、一行が帯広の駐車場に車を駐車させた時のこと。そこで欽也がそばに停まっているリンカーン・コンチネンタルを蹴り飛ばした。無人と思っていた車内から出てきたヤクザ風の男に欽也は殴りつけられ喧嘩が始まる。喧嘩に気付いた勇作が加勢し、今度は勇作とヤクザ風の男が揉み合いになる。やがて隙をついて勇作が2人を乗せ、車を走らせたことで、一行はなんとか逃げ切ることに成功した。しかしその先の道で強盗事件の一斉検問が行われており、勇作が無免許で運転していたことが発覚。彼は刑務所に入っていたため免許証を持っていないことを明かし、新得警察署に連行された。そこで勇作はかつて彼の事件を担当した渡辺勝次(わたなべ かつじ)と再会。新得警察署の係長である勝次が取り合ったことで、一件は落着した。警察署の外で欽也と朱美は勇作のことを待っていたが、彼は別行動に出ようとする。そんな勇作を2人は引き留め、3人を乗せた車は再び走り出した。
島勇作と島光枝の間で吉報の合図となった黄色いハンカチ
やがて勇作は自身の過去を語り始める。30歳手前になり人生をやり直したいと思った勇作は、北海道の夕張に来て炭鉱で働き始めた。だが仕事は辛く毎日が面白くない。そんな鬱屈とした日常を過ごしながらも勇作は、いつも寄るスーパーで後の妻となる光枝(みつえ)に一目惚れし、半年かけようやく話しかけることができた。やがて2人は結婚。勇作は父親を戦争で亡くし父を知らずに育ったため、光枝から妊娠したかもしれないと聞いた時には、天にも昇るような気持ちになっていた。病院で確認し光枝がもし妊娠していたら、家のそばにある竿の先に黄色いハンカチをぶら下げる約束をする。勇作は竿を見るのを心待ちにし仕事に出た。そして帰りには竿の先に1枚の黄色いハンカチを見つけ、勇作は心から喜んだ。だが後日、力仕事をしていた光枝は流産してしまう。しかもそれは今回が初めてではなかった。光枝は5年前にも流産をしていたのだ。勇作は光枝が黙っていたことに腹を立て、家で暴れ夜の繁華街に出た。そこで偶然ぶつかったチンピラと喧嘩し、相手を死なせてしまったのである。逮捕され、刑務所に入った勇作は面会に訪れた光枝に離婚の話をする。一緒になる時も別れる時も強引な勇作に、光枝は勝手な人と言いながら涙を流した。自身が光枝にできるのは離婚することくらいであると口にする勇作。なぜこんなヤクザの性分に生まれついたのかと彼は呟く。一通り話し終えた勇作が席を外すと、欽也は泣いていた。翌日、札幌に向かうため車を走らせていたが、勇作は1人で夕張に向かうと言い出す。理由を尋ねると、勇作は出所後、光枝宛に葉書を出していたことを告白。そこにはもしまだ勇作を待ってくれているのなら、竿に黄色いハンカチをぶら下げておくよう書いたという。もしハンカチがぶら下がっていなければ、勇作はそのまま引き返し二度と夕張には来ない約束をしていた。そこで欽也と朱美は勇作を乗せて夕張へ行こうとするが、やはり行くのは止めようと言い出す勇作。欽也は自身を男らしく叱ってくれた勇作が弱気になっていることへの悔しさを募らせる。そこで朱美が勇作を諭し、そのまま夕張へ向かった。家の付近まで来たものの、勇作は光枝に会う勇気が持てない。代わりに欽也と朱美が付近で黄色いハンカチを探し始めた。すると竿にぶら下がった黄色いハンカチが数十枚も風に揺られ、光枝が勇作の帰りを待っていることを示していたのである。2人は勇作を呼び、彼の背中を押す。勇作が家に向かっていくと、ちょうど外にいた光枝と再会。堪え切れず光枝は涙を流した。そのまま勇作と光枝が家に入るところを見届けた欽也と朱美は、車中で手を握り合い心の通ったキスを交わした。
『幸福の黄色いハンカチ』の登場人物・キャラクター
主要人物
島勇作(しま ゆうさく/演:高倉健)
出典: www.twellv.co.jp
手前の男性。
福岡県飯塚市の出身。光枝と結婚してからは北海道の夕張で暮らす。かつて喧嘩で相手を死なせてしまい、殺人罪で服役する。6年3ヶ月の刑期を終え、出所した勇作は光枝に葉書を出し、心に迷いを抱えたまま旅に出た。勇作は葉書に、まだ自身の帰りを待ってくれているのなら、家のそばにある竿に黄色いハンカチをぶら下げてほしいと書いている。道中、勇作は欽也と朱美に出会い、ファミリアに同乗することになる。欽也と朱美の間で揉め事が起きた際には勇作が間に入り、欽也を叱責した。帯広でヤクザ風の男と欽也が喧嘩をしたことで勇作が運転を代わった際、検問に引っかかり無免許運転であったことが発覚する。そこから勇作は、その場にいた欽也と朱美に自身の過去を少しずつ打ち明けていった。その後、2人に背中を押されながら夕張へ向かう。途中で引き返そうとするなど、普段の勇作とは異なる恐怖と不安に押しつぶされそうな様子を見せる。
島光枝(しま みつえ/演:倍賞千恵子)
出典: jp.pinterest.com
北海道の夕張で暮らしている女性。勇作の妻。勇作がよく行くスーパーでレジをしていた。そこで出会い、半年後に勇作から声をかけられ、結婚に至る。勇作との間に子を授かるが流産する。光枝は一度離婚しており、その際にも流産を経験していた。だが一度流産していることを、勇作には話していなかった。このことが勇作を怒らせる原因となる。光枝は勇作の服役中も1人で彼の帰りを待ち続けた。竿に黄色いハンカチをぶら下げることは夫婦の間の合図となっており、そのハンカチを付けるのは光枝の役割。1度目は子供ができた際の合図としてハンカチを1枚、2度目は勇作の帰りを待っている合図として多くのハンカチを竿にぶら下げた。孤独や苦難の中でも夫を信じ、待ち続けた芯の強い女性である。
旅の同行者
小川朱美(おがわ あけみ/演:桃井かおり)
出典: ameblo.jp
右の女性。
自由奔放で掴みどころのない女性。東京から北海道へ1人で訪れていたところを欽也にナンパされる。鉄道パーサーの仕事をしていた。同僚に彼氏の浮気を知らされ、ショックから北海道へ旅行に行く。醤油ラーメンが好物。ドライブは良い雰囲気で楽しんでいたが、旅館に着き欽也と同室の流れになりギクシャクし始める。欽也との間にはその後も喧嘩が起きており、朱美はその度に泣いていた。朱美は自身のことをあまり話さない勇作に興味津々であり、彼に関することをよく訊いている。勇作が恐怖に立ちすくんだ際には、欽也とともに彼の背中を押し、勇作が真実と向き合う手助けをする。朱美は人の痛みに寄り添う情の深さを併せ持つ女性である。
花田欽也(はなだ きんや/演:武田鉄矢)
出典: ameblo.jp
失恋のショックから工場を退職し、退職金を叩いて新車の4代目ファミリアを購入。その車で北海道を走る計画を立てる。友人らを誘うが誰もついて来なかったため、旅行は1人でスタートした。荒っぽく落ち着きのない性格であり、喧嘩っ早いところがある。ナンパ中に出会った朱美を口説き、ともにドライブをした。その途中で勇作と出会い、なりゆきから彼も乗せて3人の旅が始まる。朱美と同様に醤油ラーメンが好物。九州の博多出身。欽也と朱美の間の問題に勇作が度々入ってくるため、勇作のことを始めは煙たがっていた。彼は女性を守ることが男性の役目と考えており、朱美の味方をする。その様子を面白く思っていなかった欽也であるが、勇作の過去を知るうち彼に対する態度が変化していく。勇作が光枝に会うのを躊躇い引き返そうとした際には、朱美とともに彼の背中を押した。欽也は未熟さを残しながらも、他者の痛みに寄り添う純粋さと情熱を持っている。
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目次 - Contents
- 『幸福の黄色いハンカチ』の概要
- 『幸福の黄色いハンカチ』のあらすじ・ストーリー
- 北海道で出会った訳ありの3人
- トラブルの相次ぐファミリアの旅
- 島勇作と島光枝の間で吉報の合図となった黄色いハンカチ
- 『幸福の黄色いハンカチ』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 島勇作(しま ゆうさく/演:高倉健)
- 島光枝(しま みつえ/演:倍賞千恵子)
- 旅の同行者
- 小川朱美(おがわ あけみ/演:桃井かおり)
- 花田欽也(はなだ きんや/演:武田鉄矢)
- 道中で関わる人々
- 渡辺勝次(わたなべ かつじ/演:渥美清)
- 旅館の親父(演:太宰久雄)
- チンピラ(演:赤塚真人)
- ラーメン屋の女性店員(演:岡本茉利)
- 警官(演:梅津栄)
- 警察署で泣く女(演:三崎千恵子)
- 検問の警官(演:笠井一彦)
- 町工場の社長(演:里木左甫良)
- 農夫(演:小野泰次郎)
- 農夫(演:河原裕昌)
- 帯広のヤクザ風(演:たこ八郎)
- 交通課長(演:山本幸栄)
- 朱美の同僚(演:川井みどり)
- 警官(演:長谷川英敏)
- 旅館の仲居(演:谷よしの)
- 警官(演:羽生昭彦)
- 統一劇場(とういつげきじょう)
- 『幸福の黄色いハンカチ』の用語
- マツダ・ファミリア
- 網走刑務所
- 民事事件
- 『幸福の黄色いハンカチ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 島勇作「そういうのを草野球のキャッチャーってんだ、ミットもないってことだ!」
- 渡辺勝次「まああれだな、つらいこともあるんだろうけども、辛抱してやれや。一生懸命辛抱してやってりゃ、きっといいこともあるよ。」
- 夫の帰りを待つ合図として竿にぶら下げられた無数の黄色いハンカチ
- 『幸福の黄色いハンカチ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 倍賞千恵子の口ずさむ「幸せの黄色いリボン」を山田洋次が聴いたことで始まった本作の企画
- 2日間絶食して撮影に臨んだ高倉健
- 武田鉄矢が歌手から俳優の道に進むきっかけとなった作品
- 『幸福の黄色いハンカチ』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:高峰秀子「銀座カンカン娘」
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