三つ目がとおる(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

『三つ目がとおる』とは、手塚治虫による漫画及び、それを原作とするアニメ作品である。無邪気な性格の中学生、写楽保介は古代種族三つ目族最後の生き残り。額の絆創膏を剥がすと第三の目と共に超知能、超能力を操る冷酷な人格が現れ悪魔のプリンスと化す。写楽は世界征服を目論む一方で、時にクラスメイトの和登さんらと共に古代遺跡絡みの陰謀に巻き込まれる。オカルトブームの中、人気を博し第1回講談社漫画賞を受賞。漫画の神と呼ばれた作者の没後初のアニメ化作品でもある。

『三つ目がとおる』の用語

三つ目族

出典: video.unext.jp

三つ目族とは、額に目玉のような感覚器官をそなえる古代種族である。またの名を三つ目人。現代に栄える人種を二つ目人(もしくは二つ目族)と呼ぶこともある。現代人を始めとする他種族をはるかに超える優れた知性と超能力を持って超文明を築き、地上に王者のごとく君臨していたが、戦争や公害などによって自滅同然に滅んだ。かつては長耳族と呼ばれる種族と争っていた時期もある(長耳族も滅んでいる)。他の種族に比べ、知性も能力も圧倒的に優れている為、三つ目族であることにいくらかの選民意識を持つ個体(写楽、ゴダル)もいる。

衰退後は生き残りがアジアやインドなどに分散し、今は写楽保介を含め、わずかな生き残りが各地に点在するのみである。また、生き残りが落ち延びた先には三つ目族の痕跡や遺物が残り、それを写楽或いは悪者が狙うというのが『三つ目がとおる』のお約束のパターンである。三つ目族の遺産は大体が現代人の理解の範疇を越える代物であり、その気になれば世界征服も可能。
超能力に関しては主に念力(オーラ)より手を触れることなく物を動かしたり、他者の体の自由を奪ったりするサイコキネシスがよく使われる。能力には個体差があり、既に第三の目を失っているセリーナが写楽以上の念力を発するかと思えば、眼窩しかないゴブリン伯爵が能力を使えないからと写楽に青銅球の解読をさせようとしたこともあった。
また二つ目の体でも念力の使用は可能である。和登さんの体を乗っ取った古代三つ目族の王子ゴダルは、写楽の体に移動しようと和登さんの体に入った状態で念力を使うが、三つ目族の念力には勝てず写楽に競り負けている。
脳細胞の増幅及び第三の目の形成手術で三つ目族と同等の力を得ることもでき、作中では犬のホクサイが三つ目にされた。ホクサイは人工の三つ目犬だが、写楽に念力で勝っている。

無敵というわけではなく、弱点も存在する。それが「三つ目族」と呼ばれる所以となった額の目(第三の目。または三つ目)である。
この器官は脳の一部が伸びて目玉の形に露出したものであり、犬持が言うには昆虫の触覚(もしくは複眼)のようなもの。三つ目の状態であれば超知能と超能力を操れるが、何かで第三の目を封じただけで極端に知能が下がり、超能力も使えなくなる。ゴダルが写楽との念力対決に負けたのは、二つ目族の脳が幼稚な(というより三つ目族の脳が優れている)為である。写楽は罰点型の絆創膏を額に貼られており、通常は幼児のような精神と知能で暮らしている。
作中、第三の目を封じられたのは写楽、吾平、ゴダル、ホクサイ、モエギ(アニメオリジナルキャラクター)。古代三つ目族は知性植物、ボルボックの毒針で額にコブを作る形で第三の目を封じられた。
トルテカ人や長耳族などと戦った挙句に虐殺された背景もあり、他種族との戦いでも負け戦を経験している。

第三の目は「目」ではない為物は見えていないと思われるが、第一話では和登さんの「黒目の部分が動く」とのモノローグがあり、瞼や瞳が動く描写も少なくない。リメイク漫画版では視線と同じ方向に瞳が動いている(触覚あるいは複眼のようなものと考察される為、一応は動くものと思われる)。
24時間テレビ版では眠っている写楽の第三の目が犬持を見据える、本を読んでいるような動きをするなどしていた。テレビ東京版では瞳が動くことも瞼もなく、視覚器官ではないことが強調されている。またテレビ東京版では念力使用時に第三の目が光る。
『三つ目族の謎編』では写楽が第三の目から涙のような液体を流しているが、これに関して写楽は「興奮すると額の目から涎が出る」と言った(普通の「目」からは涙が出ていないがせつなげな表情をしており、取りようによっては泣いているようにも見える)。

現実の世界では、オーパーツと呼ばれる遺物が存在する。これは古代遺跡などから発掘されたもので、当時の技術や常識では到底作りえないような物として学者だけでなく、マニアの間でも正体や製作の目的に関して意見の割れる物である。作中ではオーパーツの大部分が三つ目族と関係があると描写される。
三つ目族はその高度な文明や超能力、三つ目という特異な外見的特徴から、かつての二つ目族により神として崇拝されていたのではないかとも言われている。実際、世界の伝承には第三の目を持つ超常的な存在が無数に存在する(ヒンドゥー教のシヴァ神、仏教の准胝観音、馬頭観音、大威徳明王など)。

赤いコンドル

三つ目族の遺物。赤い槍のような形状をしており、柄の部分には古代文字が刻まれている。三つ目族の滅亡に伴い、実質封印状態にあった。博物館に三つ目の神の像と共に展示されていたが、絆創膏を剥がされ開眼した写楽により封印が解かれた。

単なる槍状の武器ではなく呪文を唱えることで念力を発し、時には盾の役割や、写楽の組み立てた機械に差し込むことで、レバースイッチの役目を果たす。「アブトル・ダブラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク。我と共に来たり、我と共に滅ぶべし。来たれ赤いコンドル」の呪文で写楽の手中に現れる。ちなみに、この呪文の「我と共に」以前の部分は、単に念力を使用する時や遺産を起動させるときにも使われる。写楽個人のものではなく、古代三つ目族が携帯していたもののようで、『怪鳥モア編』では朽ちたコンドルが描かれたシーンもあった(完全な状態で遺跡に保存されていたが、使用できずに崩れた)。

24時間テレビ版では赤いコンドルではなく「ホコ」と称される。王族の血筋にだけ扱える特別な物とされていた。王家の末裔かどうかを見定めるカギにもなっており、パンドラの支配するネオナチにより連れ去られた無数の三つ目族が殺された。

テレビ東京版では、冒頭から幼い写楽の力に反応。赤く光りながら博物館を揺らすほどの震動を起こした。写楽に絆創膏が貼られたことで再び光を失うも、和登さんに絆創膏を剥がされた写楽が呪文を唱えたことで完全復活を遂げた。使用できるのは開眼時のみで、写楽に絆創膏が貼られるとその場から消え失せる。

魔弾球(まだんきゅう)

アニメオリジナルのアイテム。本来は三つ目族の作った土木作業用のロボット、ガロンの良心に相当するものだが、作中でガロンはこの弾が装填されていない状態で暴れ町を破壊したことを悔やんで土に戻った。
その後は写楽が主に乗り物として使用するようになる。通常はポケットサイズだが、使用時に巨大化し、二人ほど乗れる大きさになる。単なる移動手段ではなく、危険地での戦闘にも役立つ。最終話のスーパーボルボック戦でも活躍した。

ホア・カバリ・キルマ

出典: tezukaosamu.net

『古代王子ゴダル編』に登場した、三つ目族秘伝の術。古代レムリヤの三つ目族の王子、ゴダルが言うには失敗する可能性が高い。実態は、特別に調合した薬を特定の壷の中で飲み、この秘術を行った者の魂を生きたまま肉体から出すことである(猫の体に入れられた和登さんが壷の外で薬を飲み元の体に戻ったことから、必ずしも壷の中で飲まなくてもいいらしい)。

本編では国を滅ぼされた上、強引に連れて来られたことを恨んだウル王朝の王女、シグアナ姫の奸計によってゴダルが秘術を行い、魂が抜けだしている間に肉体を薬で溶かされてしまう。その後、ゴダルの魂を封じた壷は遺跡として発掘され手違いで和登さんが中に入り込む。和登さんの魂はゴダルによって肉体から追い出されることとなる。

ゴダルはシグアナ姫に似た和登さんの肉体を乗っ取り、次いで三つ目族である写楽の肉体への移動を画策するが、失敗している。写楽もこの秘術のことは知らなかった模様。薬の調合方法を知るゴダルが猫の体に入れられたことで、この秘術も事実上消え去った。
逆から読むと「まるきり馬鹿、アホ」となるが、ゴダル曰く「偶然」。

ゴモラ

出典: video.unext.jp

『古代王子ゴダル編』に登場。空気中の水分を凝結させ、氷の塊にする兵器。レムリヤ王国の生き残りの三つ目族が京都に流れ着き、龍安寺の地下に遺した。京都のみやびホテルに集まっていた各国の首脳を脅すのに使われた。もう一つ、火の硫黄を降らせるというソドムなる遺物もあるが、こちらは使用されることはなかった。

グリーブ

『グリーブの秘密編』に登場する。現地のインディアン(作中の表記に準ずる)により崇め奉られていた。頂上が10m四方の平らなピラミッド状。調査に来た白人が無残な姿で見つかることが多く、神秘の力が眠っているとされた。力の正体はグリーブの中にある重力制御装置であった。写楽並びにブラックホーンはこの謎を解いたが制御できず、満月の夜、地球にもたらす重力の影響もあって重力制御装置が暴走。内部のメカも含め滅茶苦茶に自己破壊して機能を停止した。

24時間テレビ版にも似たものが登場している。写楽が言うにはデビルコンピュータという名前であり、引力を操る最終兵器とのこと。24時間テレビ版における三つ目族滅亡の原因である。こちらは世界征服を目論むネオナチの統領、パンドラが押してはいけないボタンを押してしまい、装置が眠る島もろとも崩壊した。

天人鳥

出典: video.unext.jp

『三つ目族の謎編』に登場。犬持邸に贈られて来た青銅製の球体に入っていた。人間の女性を思わせる頭部に、鳥のような脚と翼を持つ。三つ目族の命令に忠実に従う僕。鳴き声が琵琶湖の底に眠る遺跡の扉のカギとなっていた。

ボルボック / スーパーボルボック(テレビ東京版のみ)

出典: ameblo.jp

『怪植物ボルボック編』に登場。古代の三つ目族により知性を与えられた植物。土の性質を変え、他の植物を枯らせるも咲かせるも自由な能力を持つ。現代では自分の出自を知らない三つ目族の子孫、吾平がその苗をこっそり育てている。苗はナマズに似ており、和登さんたちは当初ボルボックの苗を持ち歩く吾平を「ナマズ男」と呼んでいた。

ボルボックは古代三つ目族の食糧需給に大いに貢献したが、おごり高ぶった末戦争や人心の荒廃によって自滅の道を進む三つ目族に愛想が尽き、突如野菜作りをやめてしまった。これにより三つ目族とボルボックの間で戦争が起きる。三つ目族はボルボックを火や薬品で痛めつけるが、ボルボックは第三の目を毒針で封じる術を身につけていた。目そのものを潰すのではなく、コブで覆う形であり、写楽と吾平はボルボックの毒針で三つ目を封じられる。
写楽は初め、ボルボックを手懐けようとしたが、ボルボックが植物作りをやめ、それに端を発する兵糧攻めの形で三つ目族滅亡のきっかけになったことを知る。三つ目族の生き残りは衰退しても尚食糧の需給をボルボックに頼り切っていた(自力で食糧を作る力がなかった)為、滅亡の原因となったボルボックを捨て去ることができなかった。それを知った写楽は先祖とボルボックの両方に怒りを覚え、ボルボック打倒を誓う。
写楽はボルボックが海岸付近に植えられなかったことや、先祖の遺した文字盤から、海水がボルボックの弱点であることを突き止める。環状列石を直したことで海水の雨をボルボックに浴びせ、ボルボック本体を倒すことはできたが、吾平がボルボックの苗を持って逃走したため、どこかでまたボルボックが育っているかもしれないとされた。

テレビ東京版では、三つ目族の少女モエギが吾平の役割を受け継いでいる(モエギはボルボックの苗に因んで、住んでいた村で「ナマズっ子」と呼ばれていた)。モエギは『怪植物ボルボック編』の後放浪の旅を続けていた。ボルボックはある遺跡で生体強化細胞を植え付けられて、スーパーボルボックとしてパワーアップ。ビルをも超える巨体と、戦艦に巻き付き沈めるほどの力を得た。海水という弱点を克服し、海から日本へ上陸して、自然を汚す人間たちを三つ目二つ目関係なく滅ぼそうとした。
モエギとは友達のような関係であり、モエギが人間に殺されたことを受けて人間たちへの憎しみを強める。一騎打ちの果て写楽を追い詰めるが、和登さんの「五十年待ってほしい、その間に人類はやり直す」との説得に心を動かされて活動を停止。これは一時的な休眠であり、五十年後に人間と自然との関係が変わっていなければ今度こそ人間を滅ぼすとした。

環状列石(ストーンサークル)

えどまち
えどまち
@edono78

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