リボンの騎士(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ
『リボンの騎士』とは、手塚治虫による少女漫画、およびそれを原作にしたアニメや舞台などのメディアミックス作品。1953年から1956年まで連載された『少女クラブ』版、1963年から1966年まで連載された『なかよし』版、1967年連載の『少女フレンド』版の3種類がある。異世界を舞台に、男女の心を持ってしまった主人公サファイアが、悪人たちと戦う物語がファンタジックに描かれている。少女向けストーリー漫画の先駆け的な存在として知られており、後続作品に多大な影響を与えた。
『リボンの騎士』の概要
『リボンの騎士』とは、手塚治虫による少女漫画である。1951年から1956年まで連載された『少女クラブ』版と、1963年から1966年にかけて連載された『なかよし』版、そして1967年連載の『少女フレンド』版の3種類が存在する。『少女フレンド』版については、手塚治虫は原案のみで、作画は虫プロ所属だった北野英明が担当している。『少女クラブ』版には続編も存在し、単行本化の際に『双子の騎士』と改題された。『少女フレンド』版のみ未単行本化、他は『講談社手塚治虫漫画全集』などで読むことができる。手塚治虫は、「漫画の神様」と称される戦後日本におけるストーリー漫画の第一人者である。1946年のデビュー以降、『ジャングル大帝』『火の鳥』『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』などの大ヒット作品を次々と世に送り出し、1989年2月9日に亡くなるまでに描いた総原稿枚数は15万枚といわれている。手塚治虫は、1961年に虫プロダクションを設立するとアニメ制作にも積極的に乗り出し、日本初の30分枠テレビアニメ作品『鉄腕アトム』を発表して日本のアニメ界の発展に寄与した。『リボンの騎士』も1967年から1968年までテレビアニメ版が放映され、ファン層の拡大に成功している。『リボンの騎士』は、主人公でシルバーランドの王女サファイアが自らと国を陥れんとする悪に立ち向かう物語であることから、後の『キューティーハニー』や『美少女戦士セーラームーン』『プリキュア』シリーズなどの戦闘美少女ものの先駆的作品と評されている。『リボンの騎士』のメディアミックスはアニメ版に留まらず、アニメ化以前のラジオドラマ版や、1983年以降不定期で上演された舞台版・ミュージカル版がある。
本記事では、テレビアニメ版の原作となった『なかよし』版を中心にストーリーや登場人物を取り上げていく。
『リボンの騎士』のあらすじ・ストーリー
プロローグ
天国では、神様が新たに子供たちを下界に送り出すために、男の子の心と女の子の心をそれぞれ飲ませていた。ある時、いたずら好きの天使チンクは、女の子に産まれるべき子に男の子の心を飲ませてしまう。そうとは知らない神様は、その子に女の子の心を飲ませ、男の子と女の子の両方の心を持つ子供を創ってしまった。チンクのいたずらに怒った神様は、彼から天使の翼を取り上げ、男の子の心を取り上げるべく命令して下界へ下ろした。チンクが下りた先は、シルバーランドという中世風の世界だった。同国では、まさに王妃に子供が産まれようとしている時であり、国を挙げて盛り上がっている。チンクは、その子供こそが男女の心を持つ目的の子だと悟り、何とか接触を試みようとする。
数奇な運命の子サファイア
王妃は無事に赤ちゃんを出産するも、その子は女の子だった。シルバーランドでは、女性が王位に就けない法律がある。東北弁を話す学者のうらなり博士が、国民に「王ズ様が産まれた」と王子とも王女とも受け取れそうな発表をしたことで若干混乱が起きた。同国では、悪人で王様のいとこジュラルミン大公とその腰巾着ナイロン卿が大公の息子プラスチックを王にしようと虎視眈々とその機会を窺っているため、産まれた子が王女だと知られると彼らにつけ入る隙を与えてしまうのだ。そこで、王様は産まれてきた子を男の子として育てる決意をして、国民に改めてそう伝えてしまう。王妃は子供の未来を考えて猛反対するが、事態は既に動き出していた。こうして、サファイアと名付けられた少女は、王子として育てられる。サファイアは1日の半分を王子、残りを王女として過ごす日々を強いられ、徐々に女の子でありたい欲求が強まり、自らの置かれた立場と葛藤するようになった。
運命の出会いと罠
サファイアは、その後チンクと出会うが、彼の正体が天使とは知らずに変わった男の子という印象を持つ。ある時、彼女は女の子として思う存分外出したいという欲求を抑えきれずに、亜麻色のかつらを着けて祭へと出かけた。そこで隣国ゴールドランドの王子フランツ・チャーミングと出会い、恋に落ちる。ところが、彼はジュラルミンとナイロンの陰謀で、彼らが犯したシルバーランド王殺害の罪を着せられて投獄されてしまった。この時以来、フランツはサファイアのことを自分を陥れた犯人だと思い込み恨むようになる。サファイアは、亜麻色の髪の少女に変装してフランツを逃がすことに成功するも、自分が彼に恨まれていることを知って苦悩するのだった。そして、シルバーランドでは王様の後継ぎを決める場にて大事件が勃発することになる。
サファイアの投獄
シルバーランド王が亡くなったことを受けて、サファイアが国王として即位する日がやってきた。ここでジュラルミンとナイロンが、罠を仕掛けたことが判明する。サファイアが即位せんとするまさにその時、彼らに自白剤を飲まされたサファイアの母シルバーランド王妃が、自分の子供が実は女の子であることを告白したのだ。サファイアと王妃、そしてうらなり博士とばあやは、長らく国民を欺いた罪を背負わされて投獄されてしまう。サファイアは、牢で多くの迫害を受けながらも優しい人柄を失わず、牢内のネズミにまで慈悲の心を持って接していた。ネズミに脱出口を教えてもらった彼女は、ジュラルミンとナイロンの傀儡であるプラスチックが即位して乱れているシルバーランドを元の平和な国に戻すべく、チンクの助けを得て「リボンの騎士」に変装して悪と立ち向かうようになる。
魔女ヘル夫人の陰謀と海賊ブラッドの登場
フランツはシルバーランドで会った亜麻色の髪の少女を忘れられずにいた。そこにつけ込んだのが魔女ヘル夫人である。ヘル夫人は、自分の娘ヘケートをフランツと結婚させて、ゴールドランドを支配しようと企んでいた。しかしながら、当のヘケートは全く彼に関心を示さず、お転婆な行動ばかりしている。そこでヘル夫人が目をつけたのが、サファイアの女の子の心だった。これをヘケートに飲ませることで、娘をおしとやかな子にしてフランツに近づけようと企てる。一方で、ジュラルミンたちの攻勢で危難に陥ったサファイアは、海賊のブラッドに命を救われて、以降彼らと行動をともにするようになった。
すれ違う2人
サファイアは、ヘル夫人の企みに巻き込まれて、女の子の心を奪われてしまう。ブラッドの助言によってサファイアと亜麻色の髪の少女が同一人物だと知ったフランツは、サファイアに想いを告げようとするも、男の子の心しかない彼女に拒絶されて戸惑うのだった。女の子の心を飲んだヘケートは、フランツに恋心を抱くようになり、逆に彼のために女の子の心をサファイアに返そうと行動を起こす。サファイアとブラッド一行は、シルバーランドに乗り込み全ての決着をつけようとするが、ナイロンの策略にはまりサファイアが毒の矢を受けて死亡してしまう。サファイアの死を知ったフランツは、彼女を生き返らせるべく愛と命を司る女神ビーナスのもとを訪れた。しかし、ビーナスがフランツに一目惚れしてしまい、事態は混沌を極める。
ビーナスの暴走と結末
ビーナスは、フランツの願いを叶えてサファイアを生き返らせた。ところが、彼のことを好きになってしまったこととサファイアの美しさに嫉妬して、2人の仲を引き裂こうとする。なんとかしてフランツの気を惹こうとするビーナスだったが、彼のサファイアへの想いが変わらなかったため、自分の宮殿に幽閉するのだった。一方、サファイアは、ビーナスによってシルバーランド隣国へ追い込まれた。彼女はナイロン卿の追手に殺害されそうになるも、隣国王のウーロン侯と彼の妹フリーべに救われ、逆にナイロン卿が隣国に捕らえらることになる。ビーナスは、最後の手段としてサファイアをブタに変えようとする。しかし、神様の逆鱗に触れてしまい、自分がブタになってしまった。サファイアとフランツは無事に再会を果たし、固く抱き合う2人を見届けたチンクは、ブタのビーナスを抱えて天国へと戻って行ったのだった。
『リボンの騎士』の登場人物・キャラクター
メインキャラクター
サファイア
出典: ogre.natalie.mu
CV:太田俶子/白石冬美/冬馬由美
本作品の主人公にしてヒロイン。シルバーランドの王女に生まれたが、チンクのいたずらで生まれながらにして男の子の心を持ち合わせている。男子しか王位を継げない同国の法律と、政治的争いに巻き込まれたことで王子として育てられた。そのため剣術に長けているが、本心では女子として生きることを望んでいる。祭の日に変装して外出し、そこで出会ったフランツ・チャーミングに想いを寄せるようになった。しかし、彼女の思いと現実はかけ離れており、女の子であることが発覚して以降は投獄されるなど苦境に立たされる。やがて、彼女は自身と家族、そして国の平和を取り戻すべく「リボンの騎士」に変身して悪人たちと対峙するようになる。『なかよし』版ではおしとやかで優しい少女の一面が表に出ており、『少女クラブ』版では運命に立ち向かう戦うヒロインとしての側面が強調された。
チンク
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目次 - Contents
- 『リボンの騎士』の概要
- 『リボンの騎士』のあらすじ・ストーリー
- プロローグ
- 数奇な運命の子サファイア
- 運命の出会いと罠
- サファイアの投獄
- 魔女ヘル夫人の陰謀と海賊ブラッドの登場
- すれ違う2人
- ビーナスの暴走と結末
- 『リボンの騎士』の登場人物・キャラクター
- メインキャラクター
- サファイア
- チンク
- フランツ・チャーミング
- 『少女クラブ』版初出
- 王様
- 王妃
- ジュラルミン大公
- ナイロン卿
- プラスチック
- うらなり博士
- ばあや
- ガリゴリ
- ガマー
- 魔王メフィスト
- ヘケート
- 『なかよし』版初出
- ブラッド
- 魔女ヘル夫人
- ビーナス
- エロース
- ウーロン侯
- フリーべ
- テレビアニメ版初出
- エックス
- チビ
- バロン
- ギロチーヌ
- バグーン
- 天馬
- 眠りの精サンド
- ジェム
- ブラン公爵
- ルージュ公爵
- 『リボンの騎士』の用語
- シルバーランド
- 棺桶塔
- リボンの騎士
- 『リボンの騎士』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- サファイア「私だって晴れ着を着たらみんなくらいにきれいになるのに……私もあんなドレスを着てみんなと踊りに町へ行きたいわ」
- フランツ「もうきみを離さないよ これからきみをお城へつれてたっぷりおきゅうをすえてやるよ きみのそのいたずらっぽいかわいいハートへね」
- フランツ「白鳥よおまえに人間のことばがわかったら私のこの心の苦しみを打ち明けたい」
- 『リボンの騎士』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『リボンの騎士』の元ネタは宝塚歌劇団
- 日本初の男装する女の子を描いた漫画
- 『少女クラブ』版続編にはサファイアとフランツの子供たちが登場
- 『リボンの騎士』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):フール・サウンズ「リボンの騎士(インストゥルメンタル)」(第1話-数話)
- OP(オープニング):前川陽子、ルナ・アルモ二コ「リボンの騎士(王子編)」(おそらく第5話-第25話)
- OP(オープニング):前川陽子、ルナ・アルモ二コ「リボンの騎士(王女編)」(第26話-第52話)
- ED(エンディング):前川陽子、ヤング・フレッシュ 「リボンのマーチ」