七色いんこ(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

『七色いんこ』とは1981年より手塚治虫が『週刊少年チャンピオン』で連載していた漫画、およびそれを原作とした舞台作品。シェイクスピアなどの海外古典から近代演劇まで、実在の演劇をベースにした1話完結の犯罪活劇。
七色いんこは、代役専門の天才役者。本人そっくりのメーキャップに、時には本人以上の演技力で観客を魅了する一方、劇場内の金持ちから金品を巧みに奪う泥棒でもある。警察から送り込まれた射撃・格闘に秀でた刑事、千里万里子(せんり まりこ)は七色いんこを追ううちに次第に彼に好意を抱くようになる。

『七色いんこ』の概要

『七色いんこ』は手塚治虫が1981年より『週刊少年チャンピオン』で連載していた漫画、およびそれを原作とした舞台作品である。シェイクスピアなどの海外古典から近代演劇まで、実在の演劇をベースにした1話完結の犯罪活劇。

主人公の七色いんこ(なないろいんこ)は舞台俳優だけでなく、今は亡き総理大臣など、あらゆる代役をこなす天才役者。出演料をもらわない代わりに依頼者に出す条件は1つ「劇場内で何が起ころうと目をつむること」だった。七色いんこの正体は、金持ちの観客から巧妙に金品を盗み取る泥棒だったのだ。証拠を一切残さないことから、多額の被害が出ているにも関わらず逮捕できないため、警察は射撃・格闘に秀でた刑事、千里万里子(せんり まりこ)を七色いんこのもとへ送り込む。VIP警護を目指して日々特訓に励んでいた万里子は当初乗り気ではなかったが、七色いんこと関わり、彼を追ううちに恋心を抱くようになる。

『七色いんこ』のあらすじ・ストーリー

七色いんこは代役専門の天才役者。出演料は一切とらず、代わりに「公演中何が起ころうと目をつぶること」を引き換えに代役を完璧にこなす。七色いんこは観客から盗みを働く泥棒だと確信している千里万里子刑事だが、いつもあと一歩で七色いんこに出し抜かれる。実在する演劇をベースにした1話完結の犯罪活劇。

『ハムレット』

王子ハムレットのメーキャップを披露する七色いんこ

『ハムレット』は16世紀のイングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの描いた悲劇である。デンマークの王子ハムレットが、父王を毒殺して王位に就き、母を妃とした叔父に復讐する物語だ。

演出家・土方(ひじかた)による新解釈の舞台『ハムレット』の初回講演が明後日に迫っていた。追い込みの舞台稽古の最中、主演の大手上(おおてあげ)が麻薬の運び屋としてアメリカでFBIに逮捕されたという報が入る。大手上がアメリカから戻るまでの代役も事故で怪我。八方ふさがりの土方のもとに代役専門の役者、七色いんこの話が舞い込んだ。前売り券が売れ続ける中、講演前日に七色いんことしてやってきたのは老人だった。しかし楽屋に通すと、老人がいんこの変装だったと判明。いんこはハムレット王子のメーキャップで姿を変えると、驚く土方に演出をつけるよう促すのであった。演技力は土方が一目でわかるほど素晴らしいものだった。そして七色いんこは出演料をとらない代わりに、劇場で何が起ころうと劇団は目をつむるようにと土方に条件を出す。いんこの正体が泥棒であることに薄々気づきつつも、土方は七色いんこを代役として立てること決心した。

千里(せんり)警部は日々鍛錬に励む、娘・千里万里子(せんりまりこ)を呼び出し、七色いんこの犯行の現場を押さえるよう命令する。七色いんこによる被害は大きいにも関わらず、警察はその尻尾を今だ掴むことができていなかった。VIP警護のために特訓に励んでいた万里子は反発するも、捜査二課七色いんこ担当の小田原(おだわら)に同行することとなる。現場にて、血気盛んな万里子は七色いんこに飛び掛かる。だが彼のペットのインコによって鳥アレルギーによる蕁麻疹を発症。やむなく撤退し、本番開始を待つことにした。

初日開場1時間前のベルが鳴り、続々と招待されたセレブが入場する。その中には財界の大御所・鍬形隆介(くわがたりゅうすけ)と彼の愛人・狐川イナコ(こがわいなこ)の姿もあった。煌びやかな宝石で着飾るイナコの姿に劇場スタッフが貴重品を預けるよう声を掛けるも、ガードマンがいるから問題ないとイナコに拒絶される。七色いんこは演出家・土方に変装して、イナコに接近。パンフレットに仕込んだ麻酔薬でイナコを気絶させることに成功した。イナコを守ろうと近づいたガードマン達は、ガードマンが七色いんこの変装だと勘違いした万里子によって倒されてしまう。その後気絶したイナコは救急搬送されることになった。
開幕し、代役・七色いんこの出来を心配する土方に反して、第一幕から満場総立の大拍手が起こる。第二幕も順調に進むが、なぜか七色いんこは客席の誰かに怒鳴るようにセリフの一部を変更してしまう。その視線の先には、冷や汗をかきながら退場する鍬形隆介の姿があった。

舞台初日後、喫茶店でくつろぐ七色いんこのもとに万里子が訪れ、イナコのネックレスが偽物にすり替えられていたことを告げる。万里子は七色いんこが演出家・土方に変装して、イナコを介抱すると見せかけ、ネックレスをすり替えたのではないかと七色いんこに問いかける。七色いんこは証拠がないとしらばっくれ、万里子は言い返すこともできず引き下がった。喫茶店を去る七色いんこに万里子は鍬形隆介は七色いんこの父親ではないかと投げかける。更に追及をしようとする万里子に、七色いんこはペットのインコを解き放った。鳥アレルギーによる蕁麻疹で小さくなりながら悔しがる万里子を置いて、七色いんこは去るのであった。

『どん底』

楠本巧(くすもと たくみ)は八百長(やおちょう)と組み、車への当たり屋をして、その日暮らしをしている。ある日、七色いんこの車の乗る車にぶつかる振りをした巧は、七色いんこに演技であることを見破られた上、劇団東光にいたことを指摘される。昔のことを思い出し、巧はヤケ酒をする。そこに同じアパートに住み、八百長に花売り娘をさせられている幼いマユミがやってきた。巧はゴーリキー原作『どん底』の劇中歌をマユミと一緒に唄って心を慰めるも、八百長にサボっているからとマユミは殴られ、花売りへと駆り出されるのであった。
一方、劇団東光には楠本巧について取材にやってきた一人の男がいた。面会した劇団のチーフ安松隆は巧の演技力を称えるも、3年前に劇団をやめてしまったと伝える。巧は自分の演技に厳しく、『どん底』の泥棒ペペル役をやるには、本当に貧しいどん底の人生を送らないと役になりきれないと悩んでおり、スラム街に行ったきり戻ってきていないのだった。巧の天才的な演技を惜しむ劇団に取材にきた男は『どん底』を公演すれば、それを見た巧が戻ってくるのではないかと提案する。泥棒ペペル役を巧以外で公演することを渋る安松のチーフに男は代役役者・七色いんこを紹介するのだった。
後日、巧は町中で劇団東光による『どん底』が公演されることを知る。新聞には安松が太鼓判を押した巧以上の演技力をもつ新人がペペル役をすると掲載され、巧は歯噛みする。舞台初日当日、絶対に観に行かないと逡巡するも、行けば稼ぎを減らすという八百長を押しのけて巧は出かける。巧が舞台を観に行くことに気づいたマユミも『どん底』の歌が歌いたいと巧の後を追うのであった。
その頃、劇団スタッフは巧が果たして観に来るかどうか気を揉んでいた。幕が上がり、安松は七色いんこに巧が戻るかどうかは七色いんこの演技に掛かっていると発破をかけた。大歓声が鳴りやまない中、幕が下りると、もう一度ペペル役に賭けたくなったと伝えるため、舞台裏にマユミを連れた巧が現れた。七色いんこを紹介するため、安松が楽屋を訪れると、そこには置手紙のみが残されていた。置手紙には、初日以降は真のどん底を味わった巧こそがペペル役にふさわしいと記されていた。
劇場の外には、八百長が軽トラに乗って巧たちを追いかけてきていた。劇場から出てきた七色いんこから、巧たちは既に去った後であると告げられると、焦った八百長は七色いんこを軽トラで轢いてしまう。重症を負ってしまった七色いんこに八百長は慰謝料代わりにダイヤを差し出した。すると七色いんこはすんなり立ち上がり、有り金すべてを奪って軽トラで逃走。呆然とする八百長に当たり屋とはこうするのだと七色いんこは告げるのであった。

幕間<その1>

札付組(ふだつきぐみ)の商売金を狙う七色いんこは強奪の最中、ミスを犯し追いつめられる。組織の猟犬が七色いんこの匂いを辿って迫る中、突如屋根の上からヘアートニック瓶が降り注ぎ、猟犬に直撃する。強烈な匂いに猟犬の鼻は効かなくなり、組織は撤退。七色いんこは難を逃れた。窓から様子を伺っていた七色いんこは自分にウインクする組織の猟犬とは別の犬を見つけるのであった。

七色いんこは札付組が当分自分を探し回るだろうと踏んで、しばらく身を隠すことにする。逃げ込んだ先は七色いんこの隠れ家の一つで、万が一に備え、食料など当分の蓄えをしてあった。するとそこへ先ほどの犬が七色いんこを訪ねてやってきた。拒む七色いんこが犬を追い出してしまうと、犬は階段から落ちてしまう。窓から血まみれになった犬を目にした七色いんこは慌てて犬を回収、手当てする。しかし血と思われたものは赤いマジックであった。再び追い出された犬は、その後もあらゆる手立てを使って七色いんこの隠れ家に入ろうとする。雨が降り出しても、外に居続ける犬の姿に七色いんこは『ファウスト』に登場する、悪魔の犬を連想するのであった。

七色いんこが再び、窓から犬の様子を伺うと、今まさに首を括ろうとする犬の姿が目に入る。根負けして大雨の中、犬を救いに飛び出す七色いんこが見たのは、犬型の人形を吊り下げて、自分は座っている犬の姿だった。大雨に振られ、風邪をひいた七色いんこを不器用に看病する犬に、七色いんこも次第に絆されていく。風邪が完治しても、居座り続ける犬に七色いんこは自分は泥棒であると実際に盗んだ金品を見せて脅すのであった。

七色いんこは、知らないうちに保管していた宝石が1つ2つと減っていることに気づく。金庫に犬の毛が残っていたことから、七色いんこは夜中隠れ家から抜け出した犬の後をつけることにした。器用に宝石を持ち出した犬の後を追ううちに七色いんこは、病に伏せるかつて演劇の神様と謳われた牛沢(うしざわ)のもとに辿り着く。牛沢は借金取りに追われ、身を潜めているのだった。泥棒と噂される七色いんこの隠れ家には金目のものがあると踏んで犬に盗みをさせたことについて牛沢は謝罪。生まれた時から息子同然に育てた犬・玉サブロー(たまさぶろー)を七色いんこに託し、牛沢は息を引き取った。牛沢の葬儀後、七色いんこは玉サブローに今まで盗んだ宝石をどうしたか玉サブローに尋ねる。玉サブローは宝石を飲み込み、自分の体内に隠していたことを明かす。糞から取り出した宝石を洗って返そうとする玉サブローに受け取りを拒否する七色いんこであった。

『ピグマリオン』

現代のモナリザといわれるプリンセス・ララ・マーガレット・フレンドリボン・プチフラワーが来日するに伴い、万里子は七色いんこ担当を外され王女の警護に任命される。万里子の父親から依頼された男谷マモルは王女来日までの3ヶ月間で万里子を淑女にすべく特訓する。身なりを整え、女性らしく振る舞えるようになった万里子は成果を七色いんこに見せるべく、七色いんこ行きつけの喫茶店に行くも、結局会えない。落ち込む万里子に男谷マモルは七色いんこに惚れているのかと指摘。万里子は動揺するのだった。

王女が来日、万里子は早速彼女の警護につく。王女は誰かを探すように落ち着きがない。万里子は別のSPからテロリストが王室を狙っている可能性があると告げられる。緊張の中、初日を終えた万里子は千里刑事より、翌日予定している観劇の芝居メンバーの中に七色いんこが潜んでいる可能性を示唆される。

当日、観劇の休憩中に万里子は王女の警護をしつつ、七色いんこの姿を群衆に見つける。王女の側を離れられず、七色いんこの行方を目で追うと、2階にいるカメラマンが不自然にカメラを高く掲げていることに気づく。それは王女の命を狙う暗殺者であった。万里子の活躍により、テロリストは確保される。どさくさに紛れて七色いんこがテトリストの財布を抜き取ることに、万里子は目を瞑った。万里子の素晴らしい働きに王女は感激。日本にジェームズ・ボンドのような女性刑事がいると聞き、ひと目会いたいと探していたのだった。

王女は帰国。任務を終えた万里子は、淑女姿からいつもの人民服に戻り、喫茶店で七色いんこと向かい合っていた。ぐったりする万里子に七色いんこは、少しは女らしくなってよかったと言う。万里子は七色いんこに対していつものように罵ろうとするも、思わず丁寧な言葉使いになってしまう。そのことに驚きながら、万里子は店を去るのであった。

『セールスマンの死』

舞台開演に向け楽屋でメーキャップをする七色いんこの元に、ホンネと名乗る不可思議な生物一家がやってくる。楽屋で暴れるホンネ達に七色いんこはスタッフを呼び、追い出すように言うが、スタッフにはホンネがただのボロ布にしか見えない。

本番が始まるも、ホンネ達は舞台上でピクニックを始め、大騒ぎ。舞台上で勝手に喚き散らすホンネ達に七色いんこはセリフの途中にも関わらずホンネを怒鳴りつけてしまう。しかし他の演者にはおろか、観客にもホンネの姿は見えず、七色いんこは舞台をめちゃくちゃにしてしまうのであった。

病院で精密検査を受けた七色いんこはノイローゼの診断を受ける。病気の要因は、24時間別人として生活を送ることにより、自分の本音を言えなくなる欲求不満によるものだった。七色いんこは芝居を続けるために、劇薬の鎮静剤を処方してもらう。医者には副作用が出る可能性を示唆された。

日々、ホンネに舞台をめちゃくちゃにされ、干され気味の七色いんこのもとに、『セールスマンの死』の代役の話が舞い込んだ。『セールスマンの死』は、年老いた63歳のセールスマン、ウィリィ・ローマンとその家族の物語を描いた、アメリカの劇作家アーサー・アッシャー・ミラーの作品だ。最後のチャンスと七色いんこはその役を受けることにする。本番当日、処方された鎮静剤のおかげでホンネたちがいないことに安心する七色いんこであったが、舞台上で突如激しいかゆみに襲われた。薬による副作用がでてしまったのだ。舞台上で掻き続ける七色いんこだが、観客は演出と疑わず好評のまま、幕引きされる。終劇後の楽屋で、薬の効果がきれた七色いんこに再びホンネの姿が見えるようになってしまった。楽屋の外にファンが押しかけてサインを求められるとホンネから告げられるが、七色いんこは心身ともにボロボロで立ち上がることもできない。そんな七色いんこにホンネはファンに悪いからと、手形ならぬ尻形を押し、「セールスマンのしり」としてファンへ手渡すのであった。

『作者を探す六人の登場人物』

作者を脅す七色いんこ

舞台『カリギュラ』初日、突如七色いんこの手が動かなくなる。舞台はめちゃくちゃになり、観客からは笑われてしまった。代役を依頼した劇場関係者からは苦情を言われ、翌日以降の代役を降ろされてしまう。七色いんこは医者にかかるも、精密検査だけでは何もわからなかった。医者は恐らく心身症であると考え、催眠療法によって、そのストレスの原因を突き止めるべきだと七色いんこに伝える。七色いんこは自らの素性が明らかになるのを恐れ、病院をあとにした。

常連の喫茶店にて、『カリギュラ』初日の批評を新聞で確認し落ち込む七色いんこに、万里子が声をかける。万里子は今回こそ盗みの現場を押さえてやろうと張り込んでいた際、七色いんこの舞台上の失態を目にしたのであった。医者から心身症であると診断されたと話す七色いんこに万里子は、これを機に足を洗うべきだと説得する。万里子の説得虚しく、七色いんこはこれからも自分の好きな方法で金稼ぎをすると主張。万里子は怒って去ってしまう。やけ酒する七色いんこの元に玉サブローがやってきて、酒を要求する。お代わりを要求する玉サブローが「ワン、モア」と聞こえたことにより、七色いんこはもう一度挑戦することを決意。そこへ方向(かたむき)劇場のマネージャーから明日公演を控えた、『作者を探す六人の登場人物』への代役依頼が舞い込む。そのタイトルから、七色いんこは作者を探すことを思いつく。七色いんこは再び病院に戻り、催眠療法によって自分の素性ではなく作者直接会うと言い張る。渋る医者に、とにかくやってみると七色いんこは催眠療法によって眠りにつく。目を覚ますと、七色いんこはコマを抜け出し、作者・手塚治虫(てづかおさむ)の原稿用紙の上に座っているのだった。七色いんこは勝手に心身症にしたことの怒りをぶつける。手塚治虫は読者からの注文で、主人公の性格をもっとドラマチックにしろと言われたことから、七色いんこを心身症にして、話のスジを面白くするのだと説明する。話が面白くないのは自分のせいではないこと、心身症を治さないと原稿全部にインクをぶちまけると七色いんこは手塚治虫を脅す。締め切りに間に合わなくなると焦る手塚治虫に、心身症を治すことを約束させ七色いんこは目覚める。心身症は完治したのだ。医者がこれからどうするのか七色いんこに尋ねると「白紙です。なにしろ作者が手塚だから、手づかずです」と答え、明日の舞台のため、足早に病院を後にするのだった。

終幕

鍬形陽介(くわがたようすけ)の母・果悠子(かゆこ)は彼の幼い時に病死。口から出まかせだらけの父は病院で大袈裟に悲しむ一方、すぐに次の妻を決めているような芝居上手であった。無関心な義母や学校に馴染めず、陽介は孤独であったが、空き家でこっそり全くの他人に変装し演じることで自らの心を慰めた。
中学に上がると隣の席に座る新聞記者の娘・朝霞モモ子(あさかももこ)と心を通じ合わせる。モモ子は芝居に詳しく、陽介は彼女から借りた演劇の本を貪るように読んだのであった。
ある日、陽介はモモ子の父に呼び出される。彼は鍬形隆介の悪事を暴露する記事を書く予定から、娘との付き合いをやめてほしいと陽介に頼むが、陽介はそれを拒否。暴露記事は発売され、怒りに燃える陽介の父・隆介は刺客を放った。車で逃げる朝霞一家は襲撃により、海から転落する。ニュースで事故を知った陽介は父に追及するが、頭を冷やすためにアメリカへ2、3年留学の名目で追いやられる。

アメリカへ降り立つと陽介は付き添いの目を盗んで逃走。誰の後ろ盾もなく、職も見つからなず、陽介は凍え死ぬ直前だったが、そこをピエロのトミーに救われた。小さな劇場でパントマイムをして生計を立てるトミーの天才的な演技に陽介は惚れ込み、弟子入りを志願。トミーのパートナー七色いんことして演技指導を受けながら、舞台に立つようになった。

一年半が過ぎた頃、それまでどんな劇場からのオファーも断り続けいたトミーが初めて、シカゴの大劇場からのオファーを受ける。舞台開幕直前に、七色いんこはトミーから億万長者バーミンガム氏への復讐を「役者のやり方でやる」と聞かされた。舞台上でトミーは、バーミンガム社がベトナム戦争で悪賢く儲けたこと、同社が作った新兵器でトミーは女子供構わず皆殺しにしてしまい、現地遺族の怒りをかってしまったことをマイムだけで表現する。この戦争が原因で、戦後もトミーは秘密裏にアメリカへ入国したベトナムの組織からの復讐を恐れて素顔を見せずに生活を送る羽目になったのだった。

舞台を終えると二人は駅や空港を避けて、車で逃走を始めた。だがバーミンガムの手先によって車もろとも海に転落させられる。その際、七色いんこは初めてトミーの素顔を目にした。レンタカーで再び逃走する二人にラジオからバーミンガム氏が殺害されたことを知る。しかし素顔を晒したトミーもまたベトナムの組織に追いつめられ遂に射殺されてしまうのだった。七色いんこはその後、トミーの芸を継ぎ、実父・鍬形隆介の悪事を暴くことを人生の目的として生きる。

数年後、七色いんこは朝霞モモ子が一家で唯一生き残ったことを知り、こっそり日本へ帰国して彼女を探し始めた。意識が回復したものの、記憶喪失になってしまったモモ子が、遠い親戚に預けられたことを突き止める。七色いんこは男谷マモルとしてモモ子の養父に会うが、モモ子は名前も変えて、性格もすっかり変わって自暴自棄になっていると告げられる。養父の反対を受けながらも、今度はモモ子の父親の変装をして、七色いんこは彼女に会いに行った。三年遅れで高校へ通うモモ子は不良グループのリーダーをしており、かつての自分の父親の顔に一瞬反応を見せるものの、思い出すことはなかった。機嫌を損ねたモモ子は男谷マモル/七色いんこを仲間に襲わせようとするが、七色いんこは事前に知らされていたモモ子が“トンビに襲われて海に車ごと落下したことによる拒否反応で、蕁麻疹が起こり、事件当時の体に縮んでしまう”ことを利用する。七色いんこはペットのインコを放ち、その場を立ち去った。そう、モモ子は千里万里子と名前を変えて生きているのだった。

その後、七色いんこの隠れ家で全てを知った万里子はそれを否定し、七色いんこを逮捕した。しかし七色いんこを連行中の車内でそれ以前の記憶を取り戻す。七色いんこは素顔の陽介に戻り、二人は再会を喜び、同時にモモ子の両親の仇をとることを誓った。
後日、新聞には七色いんこによる鍬形隆介の暴露公演が開催されることが掲載される。それを知った鍬形隆介は何としても公演をさせないように部下へ命じる。公演当日、七色いんこはそれまで泥棒稼業で稼いだ金をばら撒き、劇場を満員にする。万里子には劇場中に私服警官を配備させ、何かあれば頼むと言いのこす。開演に向け、七色いんこは今は亡きトミーに演技を見守るよう舞台へ向かうのだった。

『七色いんこ』の登場人物・キャラクター

主要人物

七色いんこ/鍬形陽介(くわがた ようすけ)

七色いんこ

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上を下へのジレッタ(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

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『上を下へのジレッタ』とは、手塚治虫がバーチャルリアリティーのような妄想世界「ジレッタ」を巡る騒動を描いたブラックユーモア漫画。才能と野心あふれるプロデューサー門前市郎(もんぜん いちろう)が「空腹の間だけ絶世の美女になる」という特異体質を持つ越後君子(えちご きみこ)と、その恋人の山辺音彦(やまべ おとひこ)を利用して名誉欲を満たそうと七転八倒する物語。 手塚作品の中では知名度は高くないが、2017年には妄想歌謡劇『上を下へのジレッタ』のタイトルで舞台化され、横山裕が主演を務めた。

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ぐるなびにて連載のエッセイ漫画【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】をご存知ですか?

ぐるなびにて連載のエッセイ漫画【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】をご存知ですか?

田中圭一先生と言えば、漫画界の巨匠・手塚治虫先生の絵柄で下ネタギャグな作風を確立したパイオニア。その田中先生が現在webサイト「ぐるなび」にて、漫画家ご本人とそのご家族にまつわる“食”にスポットを当てたエッセイ漫画を連載しており、これが大変おもしろい!ですのでこちらでは、田中先生の作品を通して、ご自身も漫画家や他分野で活躍されているご家族も紹介させて頂きます。

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宮崎駿とウォルト・ディズニーはどっちが上かアニメファンが大論争!「手塚治虫と比較するべき」という声も【ジブリ】

宮崎駿とウォルト・ディズニーはどっちが上かアニメファンが大論争!「手塚治虫と比較するべき」という声も【ジブリ】

数々の名作を世に送り出してきた宮崎駿とウォルト・ディズニー。どちらがすごいのか、アニメファンの声をまとめました。両者が偉大過ぎて比べられないといったものや、それぞれを支持する理由を掲載。中には「宮崎駿ではなく、手塚治虫とウォルト・ディズニーを比べるべきだ」といった声も。ファンたちのツイートや、宮崎駿の反応を紹介しています。

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松本零士が保管していた「手塚治虫の初期未発表原稿」!天才性漂う全9枚!

松本零士が保管していた「手塚治虫の初期未発表原稿」!天才性漂う全9枚!

日本を代表する漫画家、手塚治虫がデビューから3年後に書き下ろした漫画『メトロポリス』などの未発表の原稿が新たに見つかり、公開されることになりました。原稿を見つけ保管していたのは、これまた有名な漫画家の松本零士。手塚の天才性がうかがえるすごい原稿についてまとめました。

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【ブラック・ジャック】記念すべき第1話「 医者はどこだ!」のネタバレと感想

【ブラック・ジャック】記念すべき第1話「 医者はどこだ!」のネタバレと感想

「鉄腕アトム」や「火の鳥」「ジャングル大帝」などの名作を世に生み出した手塚治虫先生。そんな彼の作品の中で「医療漫画の傑作」と言われ、現在でも高い支持を集めているのが「ブラック・ジャック」です。今回は2004年に発売された新装版の特徴を踏まえながら、第1巻収録話についてまとめていきます。(※参考画像なし)

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ブラック・ジャック名言・名セリフまとめ【それを聞きたかった】

ブラック・ジャック名言・名セリフまとめ【それを聞きたかった】

ここでは手塚治虫の傑作漫画の一つ、『ブラック・ジャック』に登場する名言・名セリフを紹介する。ブラック・ジャックの台詞だけでなく、彼の恩師の「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」など、手塚治虫の哲学がうかがえる台詞をまとめている。

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いつの時代も面白い!テレビアニメ『ブラック・ジャックシリーズ』

いつの時代も面白い!テレビアニメ『ブラック・ジャックシリーズ』

どうも。最近話題になっている「ヤング ブラック・ジャック」効果で再びB・Jブームが到来した筆者です。子供の頃に何気なく見ていたストーリーは、今改めて見ると中々に感慨深いものがあったりします。という事で今回は、テレビで連続放送されていたB・J各シリーズを1話無料動画と合わせてご紹介。

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手塚治虫の名作『ブラックジャック』の集大成! 『ブラックジャック大全集』

手塚治虫の名作『ブラックジャック』の集大成! 『ブラックジャック大全集』

手塚治虫の名作が最も美しく甦る。 『ブラックジャック』は過去、秋田書店等で何度か単行本化されているが未収録作品がいくつかある。 しかし本書は、過去の単行本化された中で未収録作品が3話と一番少ない。 なお、この3話(「指」・「植物人間」・「快楽の座」)は手塚プロダクションの意向により今後も掲載されることはないため、この『ブラックジャック大全集』が〈完全版〉と言えるだろう。

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心揺さぶられる!漫画に登場する名言・名セリフまとめ

心揺さぶられる!漫画に登場する名言・名セリフまとめ

日常的に何気なく読んでいるマンガのセリフに、ふと心を揺さぶられて思わず涙を流したことがあるという人は多いのではないだろうか。スポーツ・医療・ファンタジーなどマンガには様々なジャンルがあるが、その中には著者の想いが込められた「アツい」名言・名セリフがちりばめられている。本記事では漫画に登場する「名言・名セリフ」を、五十音順にまとめて紹介する。

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「火の鳥」ビギナーは何編から読むのが正しい?漫画マニアたちの大激論を紹介!【手塚治虫】

「火の鳥」ビギナーは何編から読むのが正しい?漫画マニアたちの大激論を紹介!【手塚治虫】

漫画の神様とされる手塚治虫が、ライフワークとして描き続けた『火の鳥』。人間の愚かさと命の儚さを容赦なく描いた傑作で、いくつかのほぼまったく関連性のない長編エピソードによって構成されている。どのエピソードを読んでもおもしろいが、「では初めて読む人はどのエピソードを読むべきか」でたびたび激論が繰り広げられる。ここでは、漫画マニアたちの白熱の議論を紹介する。

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