神の手を持つ男 ブラック・ジャックの生い立ちと謎について考察まとめ
手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』。一話完結の作品の中に完璧な人間ドラマを描きだす手塚治虫は間違いなく天才だったといえるでしょう。漫画を読んだことのない人はもちろん、ある人にとってもブラック・ジャックは謎の多い人物です。今回は間黒男がいかにして伝説の無免許医ブラック・ジャックになったのか、ブラック・ジャックとはいったい何者なのか、その本性に迫ります。
ブラック・ジャックとは
漫画『ブラック・ジャック』の主人公は無免許の天才外科医ブラック・ジャックこと間黒男(はざまくろお)。手術の腕は世界一でありながら彼は正規の医師免許を取得せず、ただ一人患者(病気)と立ち向かいます。物語はそれぞれ繋がる部分はあるものの基本的に一話完結です。作品の中でブラック・ジャックは患者から法外な手術料を取ることでも有名です。
ブラック・ジャックの生い立ち
ではまずはその生い立ちに迫ってみましょう。ブラック・ジャックは幼い頃、母とともに不発弾の爆発に巻き込まれます。その事故はその地主が土地を早く売りたいがため、注意書きの立て札を早く回収するように業者に賄賂を渡していたというずさんな処理が原因でした。その事故で体がバラバラになったブラック・ジャックは奇跡的な手術と血の滲むような努力によりその体を取り戻します。
この時の死に物狂いのリハビリの経験から、ブラック・ジャックは何が何でも生きようという意思のある患者かどうか、また家族にそういった強い決意があるかどうか、高額な手術料を請求して試すようになります。またブラック・ジャックはこの事故の経験から、医学はなんと素晴らしいものかと感銘を受け、医師を目指すようになります。
ブラック・ジャックの顔の傷や体の傷は事故の時にできたものです。顔の一部の皮膚の色が違うのは、手術の際に皮膚の移植が必要で、唯一皮膚を提供してくれた幼い頃のブラック・ジャックの親友、黒人とのハーフであったタカシの臀部の皮膚を移植したため、そこだけ皮膚の色が違うのです。
ブラック・ジャックの母親はこの事故で両手足を失い、腹に大きな穴が開き、何もできない人形のようになってしまいました。父親はその間に他に女性を作りマカオへ飛んでしまいます。母親はそんな父親を許しながらもそのまま死んでしまいます。この時の事故の恐怖と、母親が死んでしまった絶望からブラック・ジャックの髪は白くなってしまったのです。この時の経験も後のブラック・ジャックに大きな影響を与えていて、ブラック・ジャックは母親を大事にしない家族や患者に対してとても厳しい態度をとるようになります。「私なら母親の命なら100億円でも安いと思う」といった発言もしています。その後、ブラック・ジャックは父親に憎しみを抱きつつ、不発弾の存在を知りながらそのまま放置した人間たちへの復讐を誓うようになります。
ブラック・ジャックの周りの人々
孤独なブラック・ジャックの周りにも彼を慕ったり、逆に彼が慕う人間もいます。彼の人柄を知るためにその中の何人かを紹介しましょう。
ピノコ
ブラック・ジャックの助手。畸形嚢腫という形で姉の体の中で人間の形をとらず臓器のみで成長していました。本来ならできものとして切除されて処分されてしまいますが、ピノコは生きたいという強い思いを姉の体の中からブラック・ジャックにテレパシーで送ってきました。ブラック・ジャックはその臓器を合成繊維の人間の型の中に収め、人間に作り上げました。姉の体内には18年いましたが、実際にブラック・ジャックに体をもらってからは数年しかたっていないので幼い女の子の姿をしています。
ブラック・ジャックにとっては何かと手のかかる存在だったので一度は養子に出されました。ピノコがそれを嫌がり、ブラック・ジャックの家に帰ってくると、腹膜炎にかかり自分で自分を手術しているブラック・ジャックを発見します。ピノコは見事ブラック・ジャックを助け、それからというものブラック・ジャックはピノコを「優秀な助手」として側に置いています。ピノコが誤って青酸カリを飲んだり、何か命の危険にさらされた時はブラック・ジャックは必死になってピノコを救おうとします。
本間丈太郎
爆発事故でバラバラになった幼いブラック・ジャックを救った医師。ブラック・ジャックが医師を目指すきっかけになった本人でもあります。たびたび物語のキーパーソンとして登場することがあります。大人になってからもブラック・ジャックに慕われていましたが、老衰で亡くなってしまいます。ブラック・ジャックの手術とリハビリについての記録を本にも残しています。
ドクター・キリコ
医者。患者を安楽死させることから「死神の化身」と呼ばれています。戦時中、傷ついたまま死ねないでいた軍人たちを安楽死という手段で救ってきたことから、このような方法で人を救うようになりました。もう治す方法が無いという患者のもとにブラック・ジャックが行くと、別の人物が同じ患者を安楽死させるようドクター・キリコに頼んでいて、二人が出会うという展開がしばしばあります。ブラック・ジャックのライバルの様に描かれますが、ブラック・ジャックと一緒に患者について考える場面も見受けられます。決して患者を殺すことが目的ではなく「私も医者のはしくれだ。患者が助かればうれしいさ」と語っていたこともあります。
琵琶丸
無料で鍼治療を行い全国を回っている鍼師。体を切る外科手術を「くだらない」と言っているが、ブラック・ジャックとの親交は深い人物です。一度針に恐怖心を持っている患者に鍼を刺してしまい、患者が危険な状態になったことがあります。その時その患者を救ったのがブラック・ジャックでした。琵琶丸はそのお礼にとブラック・ジャックに鍼を刺したこともあります。ブラック・ジャックのメスを作っている憑二斉(ひょうじさい)に鍼を作ってもらっています。
如月めぐみ
ブラック・ジャックの医大時代の恋人。お互い深く愛し合っていたが手術で卵巣を摘出することになり、現在は男性として生きています。ブラック・ジャックは孤独な人間ですが、度々患者から好意を抱かれることがあります。そのたびにブラック・ジャックは「私に愛は必要ない」という趣旨の発言をしていますが、めぐみは別でした。また、第57話「ブラック・クイーン」では、どんな手術も淡々とこなす冷酷な外科医として有名であった、ブラック・クイーンこと桑田このみに対して好意を抱いていたような描写も見られました。
山田野
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