鉄腕アトム(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

『鉄腕アトム』とは、手塚治虫による漫画作品。テレビアニメ版や実写版など様々なメディアミックスが行われていることでも有名であり、手塚治虫の代表作の1つに挙げられている。『鉄腕アトム』の原作漫画は、光文社の月刊漫画雑誌『少年』にて1952年から1968年まで連載された。コミックスは、『講談社手塚治虫全集』全18巻をはじめ様々なバージョンが存在する。人間に似た心を持つ少年型ロボットアトムが、人間とロボットとの関係の狭間で地球の平和のために数々の難事件や敵に挑む姿を描いたSF作品である。

『鉄腕アトム』の概要

『鉄腕アトム』(てつわんアトム)は、手塚治虫によるSF漫画及びそれを題材にしたアニメや特撮ドラマなどのメディアミックス作品。原作漫画は光文社が刊行していた月刊漫画雑誌『少年』にて、1952年4月号から1968年3月号まで連載された。連載終了後も、読み切り形式で数エピソード描かれた。同作品は、横山光輝の『鉄人28号』と並び『少年』の看板作品として知られている。コミックスは『光文社カッパコミックス』版全32巻、『サンコミックス』版全21巻、『秋田書店サンデーコミックス』版全21巻、『講談社手塚治虫漫画全集』版全18巻など様々なバージョンが刊行されたが、電子書籍で読むことが可能なのは『講談社手塚治虫全集』版である。

『鉄腕アトム』の原作漫画は、関連書籍も含めて累計発行部数が1億部を突破した。テレビアニメ化は3度行われており、1963年のアニメ版は日本初の本格的な1話30分の連続アニメ作品として知られている。1963年版がニールセン調べで40.7%、ビデオリサーチ調べで40.3%(いずれも関東地区)の最高視聴率を記録したことで名実ともに手塚治虫の代表作の1つとなった。テレビアニメ版は、1980年と2003年にそれぞれリメイク版が制作・放映された。また、2009年には香港のアニメ会社IMAGI制作の長編映画『ATOM』が公開されている。その他にも1959年放映の特撮テレビドラマ版や、2010年上演のミュージカル版など、多様なメディアミックスが展開された。

『鉄腕アトム』の世界では、「ロボット法」という法律でロボットが人間に準ずる権利を得ていた。主人公の少年型ロボットアトムは、人間や他のロボットたちと密接な関りを持っている。そのような環境下で、アトムが時には喜び、時には苦悩しながらも数々の難事件に挑んでいく物語である。連載当初はアトムと彼が通う学校のクラスメイトを軸に日本国内で起きた事件や敵と戦ったが、作品の内外でアトムの知名度が上がっていくにつれ舞台は世界や宇宙へと拡大していった。

『鉄腕アトム』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

アトム誕生の瞬間。

科学省長官だった天馬博士(てんまはかせ)は、交通事故死した息子の飛雄(とびお)を蘇らせるためにロボット工学の粋を結集させた少年型ロボットを作り上げた。そのロボットは当初「トビオ」と呼ばれて天馬博士から可愛がられた。トビオは非常に優秀なロボットだったが、それ故に「一向に背が伸びない」や「人間の細やかな心の機微がわからない」などの人間との明らかな相違点が浮き彫りとなってしまい、そのことが天馬博士を苛立たせた。そして、トビオが息子の代わりにならないと悟った彼は、遂にサーカスにトビオを売った。トビオはサーカスで「アトム」と名付けられ、見世物として酷使されることになる。しかし、世の中が変化していき「ロボット法」というロボットの権利を認める法律が制定された。そして、かねてからアトムの優秀さに目をつけていた現科学省長官のお茶の水博士(おちゃのみずはかせ)に引き取られて、アトムは奴隷のような生活から解放された。

アトムへの情操教育

お茶の水博士は、アトムが幸せに暮らすためには「教育」と「家族」が必要不可欠だと考えていた。そして、旧知の仲である「ヒゲオヤジ」こと伴俊作(ばんしゅんさく)に彼が教諭を務めるお茶の水小学校へアトムを編入させることを提案する。ヒゲオヤジはこれを快く受け入れ、アトムは小学校に通えることになった。類稀な人工頭脳を有するアトムにとって小学校の勉強内容は簡単なものであったが、お茶の水博士はアトムに人間関係の重要さを学んでほしかったようで、アトムもそのことをわかっていたことが窺える。アトムはクラスメイトの敷島健一(しきしまけんいち)や大目玉男(おおめたまお)、そして四部垣(しぶがき)たちと交流していく過程で、当初は人間とロボットとのギャップに悩んだものの、次第に打ち解けていき友人関係を築いていった。また、アトムはやがてお茶の水博士と別所帯で暮らすようになり、お茶の水博士から父親のエタノール、母親のリン、弟のコバルト、そして妹のウランを与えられた。このようにしてアトムは友人と家族を得て、意志を持つロボットして成長していく。

アトムが挑んだ数々の難事件

アトムの正義感溢れる性格やロボットとしての高度な能力が知れ渡るにつれて、アトムは日本国内で起こる難事件に挑むようになった。PHガラスという特殊な素材で作られたロボット「電光」が、スカンク草井(すかんくくさい)に盗まれて悪用された際には、アトムが電光に物事の良い悪いを教えたことが事件解決へ繋がっている。また、オメガ因子を有することで人間に反抗することができるロボットアトラスと対峙した時にも、アトムのロボットとは思えないほどの人間らしさが強調された。ヒゲオヤジが可愛がっていた飼い犬のペロがホットドック兵団という悪の組織に攫われて「44号」というサイボーグに改造されたエピソードでは、事件解決後に元のペロの体に戻すことに尽力した。こうして、アトムの活躍は日本国内のみならず、世界中に広がっていくこととなる。

地上最大のロボット

自国を追われた元王族のサルタンは、自身の威厳を取り戻すべくアブーラ博士(アブーラはかせ)にプルートゥというロボットを作らせた。プルートゥはサルタンの命令に忠実に動き、地上最大のロボットになるべく世界にいる7体のロボットの破壊を実行する。7体の中にはアトムも含まれており、1度は対峙したプルートゥとアトムだったが、お茶の水博士の懸命な抵抗とウランの存在がプルートゥを躊躇させ決着は持ち越しになった。サルタンは、目的完遂の障害となるお茶の水博士を誘拐し人質に取った。一方、10万馬力ではプルートゥに勝てないと悟ったアトムは、陰から見守ってくれていた天馬博士の協力を得て100万馬力のロボットへと進化を遂げる。ロボットを倒すだけの存在だったプルートゥは、ウランとの邂逅を経て感情のようなものが芽生えつつあった。こうして、アトムとプルートゥは阿蘇山にて最終決戦に臨んだ。そこへ、ボラーというロボットが現れて2体の邪魔をした。3体のロボットが睨み合う中、阿蘇山が噴火活動を始めてしまう。アトムは必死に噴火を止める活動をし、はじめは傍観していたプルートゥもアトムを手伝うようになった。アトムとプルートゥの間に奇妙な友情が芽生えたのも束の間、ボラーがプルートゥを襲って破壊する。アトムはボラーを破壊した。ボラーを作ったゴジ博士(ゴジはかせ)の正体はアブーラ博士で、さらにその正体はサルタンの召使ロボットだった。召使ロボットは、世界一になることの馬鹿馬鹿しさをサルタンに知ってもらうためにプルートゥとボラーを作ったことが判明した。

青騎士

「青騎士」と呼ばれるロボットが、世間を騒がせていた。その理由は、本来ロボットは人間に反抗したり手を出せないはずなのに、青騎士がそれを平気で行うことにあった。ある日、アトムのクラスにトントというロボットが転校してきた。トントは初日に四部垣を殴ってしまう問題を起こした。また、青騎士はアトムのもとを訪ね、「ロボットの独立国家を作るサポートをしてほしい」と言ってきたが、アトムはこれを断わる。青騎士は、どうやらブルグ伯爵(ブルグはくしゃく)と関りがあるらしい。青騎士の存在を重く見た日本の警察は、青騎士の剣をロボットに持たせる実験を開始した。アトムを含めたほとんどのロボットは痺れを感じて持てないのだが、中には痺れないロボットもいてエタノールとリンが該当した。痺れなかったロボットは青騎士同様に人間に反抗を起こす可能性ありと判断され、エタノールとリンも連行されてしまう。アトムは両親を助けるために遂に人間に手を出した。そして、一家で青騎士のもとへ行き、青騎士が提唱する「ロボタニア」設立に手を貸すことになった。しかし、青騎士が自衛隊員を殺害しようとした場面を見て反旗を翻した。青騎士の正体は、ブルグ伯爵のわがままに振り回されたブルー・ボン、マリア、トントの三兄妹ロボットだった。青騎士は、自分達を作ったロッス博士を殺そうとするがアトムが身を挺してそれを制止する。お茶の水博士は、ブルグ伯爵の非道ぶりに怒りを露わにして彼を殴ると、傷ついたアトムを抱き上げて科学省へと戻って行った。

エピローグ

ある日、アトムは自分が誕生してから16年になることで感慨に耽っていた。その状況下で、宇宙へ逃げていた悪人のユダ・ペーターが時効を迎えて地球へと戻ってきた。ユダは、火星人から体内の電気を集中させる訓練を受けて自由に操れるようになっている。そして、ユダは自分を追っていた下田警部(げたけいぶ)を殺害した。しかしながら、明確な証拠がない。アトムはお茶の水博士の指示で、ユダを北海道まで運んだ。北海道で2人は戦うこととなり、アトムは壊れてユダは両腕を失ってしまう。この戦いで改心したユダは、自らの身体を発光させることで救助を呼び、アトムを救って死亡した。直ったアトムは、お茶の水博士の前で「死ぬ直前ユダの心に人間らしさが戻った」と話す。こうして、『鉄腕アトム』の本編は完結したのだった。

『鉄腕アトム』の登場人物・キャラクター

主人公(しゅじんこう)

アトム

講談社手塚治虫漫画全集版『鉄腕アトム』4巻表紙

CV:清水マリ(第1作・第2作)/田上和枝(第1作97話-106話)/津村まこと(第3作)/上戸彩(ハリウッド版)/村川梨衣(ろぼっとアトム)/朴璐美(GO!GO!)/日笠陽子(PLUTO)

同作品の主人公。誕生日は2003年4月7日、身長135cmで体重は30kg。交通事故死した天馬飛雄(てんまとびお)を蘇らせるために、当時科学省長官だった天馬博士(てんまはかせ)が作った少年型のロボット。顔の造形は飛雄に生き写しかと思われるほど似ており、当初は「トビオ」と呼ばれていた。ロボットであるが故に天馬博士に嫌われ、サーカスに売られてしまう。「アトム」と名付けたのは、サーカス団の団長だった。お茶の水博士(おちゃのみずはかせ)に引き取られて以降は小学校に通い、家族を得るなど幸せに暮らしている。ひとたび事件が起こるとアトムに解決要請が来ることも多く、やがて世界にその名声と活躍が広がっていった。正義感が強く真面目な性格の持ち主であり、人間とロボットとの関係性に悩みながらもロボットとして成長を見せている。頭脳明晰で戦闘能力も高く、物語内で多くの敵と戦い人間とロボットの平和のために尽力した。

アトムの家族(アトムのかぞく)

エタノール(アトムのパパ)

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