リリイ・シュシュのすべて(小説・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『リリイ・シュシュのすべて』とは、岩井俊二によるインターネット小説、およびそれを元に制作された映画などのプロジェクトの総称。2000年ごろから、架空の音楽アーティスト「リリイ・シュシュ」と、そのファンたちの書き込みによって構成された実験的な原作小説の連載を開始し、2001年には実写映画版が公開された。インターネット黎明期における匿名的コミュニケーションの空気感と、思春期特有の閉塞感や暴力性を鋭く切り取った作品であり、その断片的で詩的な語り口と陰鬱な世界観によって、カルト的な支持を集めている。

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『リリイ・シュシュのすべて』の概要

『リリイ・シュシュのすべて』とは、岩井俊二によるインターネット小説、およびそれを元に制作された映画などのプロジェクトの総称。もともとは2000年前後に岩井がウェブ上で発表したテキストコンテンツを起点としており、架空の音楽アーティスト「リリイ・シュシュ」と、そのファンたちの書き込みによって構成される物語世界が展開された。
原作となったインターネット小説は、電子掲示板や個人サイトの日記といった形式を模した断片的な記述によって進行する実験的な試みでスタートした。会話している相手の存在や、情報そのものの不確かさを前提にした、インターネットならではのプロットを持っている。読者は登場人物たちの語る断片的な証言をつなぎ合わせることで物語の全体像を把握していくことになり、現実のインターネット文化と地続きの感覚を強く意識させる点が特徴である。
その後、本作の世界観を基盤として2001年に映画版『リリイ・シュシュのすべて』が公開された。映画版では原作のストーリーを踏襲しつつも、いじめや暴力、思春期の孤独といった要素がより具体的なドラマとして再構成され、市原隼人、忍成修吾らが出演。デジタルビデオによる粗さを残した映像表現や、現場の即興性を活かした演出によって、ドキュメンタリー的な生々しさが付与されている。
また、劇中に登場するリリイ・シュシュの楽曲は、当時新人歌手だったSalyuが歌唱を担当しており、実際に音楽ユニットとしてもデビューを果たした。本作中での音楽は、登場人物たちにとっての精神的な拠り所として機能しており、作品全体の主題である「救済」や「逃避」を象徴する重要な役割を担っている。
さらに、映画公開前後において、実際にインターネット上で掲示板や関連コンテンツを展開するなど、フィクションと現実の境界をあえて曖昧にする試みが行われていたという点でも大きな注目を集めた。こうした手法は、後のメディアミックスやネット発コンテンツの在り方に影響を与えた先駆的事例のひとつとして上げられている。

全体として本作は、インターネット黎明期における匿名的コミュニケーションの空気感と、思春期特有の閉塞感や暴力性を鋭く切り取った作品であり、その断片的で詩的な語り口と陰鬱な世界観によって、カルト的な支持を集めている。

本作に登場する歌手のリリイ・シュシュは、1999年に『リリイ・シュシュのすべて』の小説版と連動する形で、シングル『グライド』を発売。現実の音楽ユニットとしてデビューを飾った。『リリイ・シュシュ』プロジェクトの終了後、2009年に再始動を発表し、以降は断続的にではあるが活動を継続している。また、本作は後の人気歌手であるSalyuのデビュー作としても知られており、彼女の原点としても広く知られている。

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『リリイ・シュシュのすべて』のあらすじ・ストーリー

青猫との出会い

蓮見雄一は、ごく普通の中学生だったが、悪友と共にCDショップで万引きしたCDを売り、小遣いを稼いでいた。ある日、盗んだCDを売りに行った店で、雄一はリリイ・シュシュという歌手の巨大なポスターを譲ってもらう。身長ほどもあるそのポスターを眺めるたび、雄一の心は満たされた。彼はリリイの熱狂的なファンであり、ファン掲示板「リリフィリア」の管理人・フィリアとしても活動していたのである。
雄一が運営する掲示板にはある日、「青猫」というハンドルネームの新しいファンが現れる。雄一は彼を歓迎し、他のファンたちと共にリリイの新譜の話題で盛り上がった。
そんなある日、雄一はCDショップでリリイの新譜を万引きしたところを店員に捕まってしまう。迎えに来た音楽教師・小山内は丁寧に謝罪して、買い取ったCDを帰り道の電車で聴かせてくれた。学校に呼び出された母は、教師たちが擁護する中で雄一を激しく叱りつけた。母は妊娠中で再婚を控えていたが、雄一との会話はほとんどなく、家にはどこか温度差があった。
その夜、友人に呼び出された雄一が廃車場へ行くと、そこには生徒会長の星野修介が率いる不良グループが待ち構えていた。呼び出した友人たちは助けることもせず、ただ暴力を振るわれる雄一を見ているだけだった。帰宅した雄一は、現実から逃げるように掲示板へ言葉を書き殴った。

沖縄旅行の思い出

もともと雄一と星野は剣道部の仲間で、家に泊まりに行くほど親しい友人だった。一年生の頃は5人で青春を過ごし、先輩を見送って2年生になってさらに絆を深めた。夏には沖縄旅行を計画し、偶然見かけた不良たちの強奪現場から星野が金を奪って資金を調達。5人は沖縄へ向かった。
現地では案内役の人々や、島を巡っているという不思議な男性と出会った。夜には海亀の産卵を見に行ったが、星野が懐中電灯をつけて帰ろうとしたことで、光に反応した魚が飛んでくる危険な状況になったが、そんなことも楽しい思い出のひとつになった。
その翌日、海で遊んでいると星野が溺れ、例の不思議な男性に救助してもらう。しかし帰り道でその男性が事故に遭い、楽しい旅行の空気は一変することになった。
星野は突如として海へ金を投げ捨て、仲間たちはただ呆然とその様子を眺める。

回想を終えた雄一は掲示板に「もしあの夏に地球が滅んでいたら幸せだったかもしれない」と書き込んだ。それに対して青猫が「人類は滅んだ。今は仮想世界だ」と返してきたことで、2人は奇妙なシンパシーを覚えるのであった。

荒れる星野と被害者たち

新学期、星野はますます荒れ始める。彼は不良を従えて暴力的な振る舞いを見せ、部活にもすっかり来なくなった。雄一と悪友たちは逆らうこともできず、星野の命令で同級生の津田詩織を尾行することになった。詩織は星野に売春を強要され、大人の男性と会って金を受け取っていた。その帰り道、雄一が詩織を送ってやっていると、詩織は突然鬱憤を晴らすように暴れて受け取った金を踏みつけ、川へ飛び込んで泣き崩れた。
雄一にとって、現実世界で縋ることができるものはリリイだけだった。掲示板で青猫にリリイの話をするよう求め、2人は互いに励まし合った。
その年の秋のことだった。合唱コンクールの練習で、ピアノ担当の久野陽子が女子グループから反発され、彼女はピアノなしのアレンジを考えることでその場を乗り切った。しかし、それを見ていた星野は、陽子を呼び出すよう雄一に命じる。逆らえずに彼女を連れて行った雄一は、陽子が廃工場で強姦されるのを止めることができず、自分の情けなさを噛みしめる。しかし、星野の父が経営する会社が夏に倒産していたことも知ってしまい、雄一は複雑な気持ちのまま、鬱々として過ごすしかなかった。
詩織とはあの出来事以来、互いに支え合う関係性を築いていた。詩織は雄一が陽子に密かに想いを寄せていることを察し、献身的に励ましてくれたが、陽子は突然頭を丸刈りにして登校し、クラス中を静まり返らせるのだった。

すべての崩壊

雄一は掲示板で「何度も死のうと思った」と吐露するが、青猫は「エーテルを一番理解しているのは君だ」と励ました。エーテルとは、リリイの持つオーラのようなもので、精神性を表すような言葉だ。ファンの間ではとても大切な概念になっていた。
そしてその年の12月、詩織は自ら命を絶った。親友を喪った雄一は限界を迎え、授業中に嘔吐し、教師に対し、星野から苛烈ないじめを受けていることを告白した。
そんな日々の中、リリイ・シュシュのライブが開催されることになった。雄一もチケットを持ち、救いを求めるような気持ちで会場へ向かった。
しかし、どういうわけか雄一はそこで星野と遭遇してしまう。さらに、雄一は星野から、青猫との待ち合わせの合図だった青林檎を渡される。そこには青猫のアドレスが書かれており、雄一は青猫の正体が星野だったことに気づいてしまった。
人混みの中、星野は雄一のチケットを捨ててしまった。ライブを見ることができなくなった雄一は、呆然と会場前に立ち尽くす。
ライブが終わった。星野は雄一の前を去ろうとする。現実でも掲示板でも追い詰められることになり、逃げ場を失った雄一は、とうとう星野を刺してしまうのであった。

星野は死んだ。そして、騒動の影響でリリイには「不吉」という噂がつきまとうことになってしまった。
中学3年生になっても、雄一の日々は淡々と過ぎた。その頃にはもう、掲示板に書き込むこともすっかりなくなっていた。
星野を刺し殺した犯人は、未だに捕まっていない。

『リリイ・シュシュのすべて』の登場人物・キャラクター

主要人物

蓮見 雄一 (はすみ ゆういち/演:市原隼人)

本作の主人公。中学生。リリイ・シュシュという歌手の熱狂的なファンで、自身で非公式のファンサイト「リリフィリア」を運営している。ハンドルネームは「フィリア」。
中学校入学後、校内で目立つ存在だった星野と意気投合。彼の家へ泊まったことをきっかけに友人関係を築くが、夏休み明けの新学期以降、豹変した星野からいじめを受け、万引きや売春の手伝いを強要されるようになる。
元々は明るい性格で人当たりもいいほうだが、新学期以降は環境が悪化したことで塞ぎ込むような様子を見せる。クラスメートの久野陽子に対して淡い恋心を抱いている。
実の父親を交通事故で亡くしており、母親が再婚して血の繋がらない弟がいる。映画版では剣道部、小説版では陸上部に所属しており、運動神経に優れていて足が速い。

星野 修介(ほしの しゅうすけ/演:忍成修吾)

雄一と同じ学校に通う男子生徒。スポーツ万能で、成績も優秀。生徒会長を務めており、入学式では、新入生代表の答辞を読んでいた。裕福な家庭に生まれ育ったが、中学一年の夏休みに会社が倒産して以来、家族が離散することになる。その年の夏休みが明けてから突然周囲に対する態度が変貌し、以降は辻井らと共に不良グループを結成。万引きや売春の斡旋で金を稼ぎ、友人であったはずの雄一を執拗なまでにいたぶり始めた。しかし、尊大で独裁者めいた態度のせいで、グループの仲間からも不満を持たれている。小学校の時にいじめられていた過去を持つ。
物語終盤、実はリリイ・シュシュのファンで、雄一のサイトの常連だった「青猫」出会ったことが発覚する。

中学校の関係者

津田 詩織(つだ しおり/演:蒼井優)

Dada_05042016
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