ごくせん THE MOVIE（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『ごくせん THE MOVIE』の概要

『ごくせん THE MOVIE』とは2009年に公開されたテレビドラマ『ごくせん』の劇場版。原作は森本梢子による漫画『ごくせん』で、監督は佐藤東弥、脚本は江頭美智留と松田裕子が務める。全国409スクリーンで公開されてから、2日間で40万2440人を動員するほどの人気ぶり。週末興行成績ランキングで1位を記録し、配給元の東宝は興行収入目標を40億円と発表した。最終興行収入は34.8億円。ドラマ『ごくせん』が2002年、2005年、2008年の3シリーズでテレビ放送されており、『ごくせん THE MOVIE』は赤銅学院を舞台にした第3シリーズの続編だ。

教師の山口久美子（やまぐち くみこ）は新米の時から不良生徒ばかり受け持ってきた。他の教師が不良生徒を腫れ物のように扱う中、山口だけは彼らを仲間として受け入れて体を張って守る。ある日、赤銅学院の元3年D組の風間廉（かざま れん）やその仲間と再会する。山口は風間から本業だけでは生活していけないから、貯金をするためにアルバイトをすると聞く。しかしそれは薬を運ぶ闇バイトだった。警察から追われる彼の潔白を証明するため、山口は薬の密売に関わっている議員の黒瀬健太郎（くろせ けんたろう）の闇を、彼の出馬決起集会で暴く。しかし黒瀬は突然山口に拳銃を突き付けて、山口を命の危険に晒すのだった。果たして山口は生徒の風間の無実を証明し、無事帰ってくることができるのか。

ドラマ『ごくせん』シリーズから山口は「ヤンクミ」という愛称で生徒から親しまれてきた。視聴者からは「ヤンクミの熱さいいなー！」「毎回ヤンクミがいい教師」などの生徒思いの先生として親しまれている。またヤンクミは生きていく上で覚えておくべき礼儀を生徒たちに毎回教えており「長い人生を生きていくのに必要なことがたくさん詰まった名作」という評価も出ている。

昔生徒だった元生徒とも、現在の生徒とも繋がりを断とうとしない山口の生徒愛に心打たれる青春学園物語。

『ごくせん THE MOVIE』のあらすじ・ストーリー

小田切との再会

山口久美子（やまぐち くみこ、通称：ヤンクミ）は幼い頃に両親を交通事故で失くし、その後すぐに母方の祖父の黒田龍一郎（くろだ りゅういちろう）に引き取られた。小学生のヤンクミはよくいじめられていたが龍一郎から喧嘩の方法を教えられ、強い女の子に育つ。ずっと教師になることを夢見て、努力し高校の数学教師になる。頼りがいのある先生を目指していたのに、教師になってから反抗して問題を起こす生徒ばかりを担当してきた。白金学院高校、黒金学院高校、そして赤銅学院高校へと学校を異動する。赤銅学院高校に赴任してから初めて受け持った3年D組の生徒を全員無事卒業させた翌年も、不良生徒がいるクラスを担当する。毎日生徒の扱いに困っていた時に、ヤンクミの元生徒の小田切竜（おだぎり りゅう）が教育実習生として赤銅学院高校にやって来る。

ヤンクミと新たな3Dの生徒との絆

ヤンクミは赴任してから3年D組の生徒の中で一番喧嘩の強い高杉怜太（たかすぎ れいた）に手を妬いていた。そんな彼が問題を起こす。仲間がカツアゲされそうになったところを助けるために、掴みかかってきた男たちを殴ったのだ。カツアゲしてきた集団はその地区では有名な「ブラックスカル」という暴走族のメンバー。翌日ブラックスカル全員で赤銅学院高校に乗り込みに来てしまい、学校は大騒ぎ。高杉とその友人の望月純平（もちづき じゅんぺい）、松下直也（まつした なおや）、五十嵐真（いがらし しん）、武藤一輝（むとう かずき）らも職員室に呼び出される。ヤンクミ以外の教師は高杉だけが悪いと思い込むが、ヤンクミだけは高杉が潔白であることを信じる。

高杉は自分でケリをつけるために1人でブラックスカルのたまり場に行き、大勢に袋叩きにされる。最後に鉄棒で頭を殴られそうなときに、ヤンクミが乗り込む。途中で小田切も駆けつけて、その喧嘩にはヤンクミが勝つのだった。すぐに望月、松下、五十嵐、武藤の4人もその場に駆け付ける。高杉たちはヤンクミが今まで見てきた教師と違って体を張って生徒を守る奴だと知り、ヤンクミのことを信頼し少しずつ心を開いていくのだった。

行方不明になった風間

ヤンクミが学校でやっと生徒と心から信頼して話し合えると思っていた時。ヤンクミの元生徒の風間廉（かざま れん）が薬物所持の疑いで捜索されていることを知る。ヤンクミは風間はやっていないことを信じていたが、風間は行方が分からなくなっていた。

心配になったヤンクミは駆けつけてくれた風間の友人と、3年D組の生徒と一緒に風間を探し始める。風間の友人の緒方大和（おがた やまと）、本城健吾（ほんじょう けんご）、市村力哉（いちむら りきや）、倉木悟（くらき さとる）、神谷俊輔（かみや しゅんすけ）も風間を心配していた。

みんなが風間を必死に探している時に、小田切が夜の学校の3年D組の教室で風間を見つける。小田切はヤンクミにすぐに連絡をし、緒方、本城、市村、倉木、神谷の5人と一緒に駆け付ける。そこで風間は全員に自分が覚せい剤の運搬に関わってしまい、それを知った時には手が引けず警察に捜索されてしまっている状況であることを伝える。風間の無実を証明しなければならなかったが、方法が見つからない。
実は覚せい剤の運搬を風間に頼んだ寺田雅也（てらだ まさや）は、薬密売組織の中心人物だった。さらにその裏には、衆議院選に初出馬する黒瀬健太郎（くろせ けんたろう）が関わっていることを知る。黒瀬は過去に不良だったが、更生してIT企業の社長にまでなった。「Catch the Dream」をキャッチフレーズにして演説をする姿が彼の支持者を集めていた。

黒瀬の正体

ヤンクミは黒瀬が裏では覚せい剤の密売をしながら、政治家として世の中に立つことが許せなかった。彼が罪を犯していることを暴きたくて、ヤンクミは1人で決起集会の会場に乗り込む。そして風間、緒方、本城、市村、倉木、神谷の5人と協力して黒瀬が表では政治家として活動しながら、裏では覚せい剤の密売をしていることを明かす。黒瀬は言い訳ができない状態に追い込まれ、会場にいた支持者が一斉に去る。政治家として長い時間をかけて支持者との信頼関係を持ってきたのに、ヤンクミによって壊されたことに黒瀬は腹を立てた。黒瀬はヤンクミを睨みながら近くのSP4人にヤンクミを襲うよう指示する。特殊な訓練を受けたSPにはヤンクミは簡単に勝てず体力が減っていき、留めにSPがヤンクミの頭を警棒で殴ろうとする。会場に着いた小田切が寸前で守ろうとしたが、他のSPに捕まえられて首にナイフを突きつける。小田切の命を考えると、ヤンクミは手を出せなかった。そして再びヤンクミが複数のSPに叩かれて頭に警棒が振りかざされたときに、ヤンクミの元教え子たちが会場に乗り込んで来る。彼らでヤンクミを守るためにSPに立ち向かおうとすると、ヤンクミは止めた。彼らが政治家候補の黒瀬を殴って問題を起こし、会社をクビになって人生を棒に振って欲しくなかったからだ。そのため自分で元生徒たちを守るために、再びSPに立ち向かう。たった1人で襲い掛かってくる4人のSPをかわすと、SPはヤンクミの強さに怖気図いて黒瀬を残して去ってしまう。

絶対絶命のヤンクミ

取り残された黒瀬はヤンクミに全てめちゃくちゃにされたことを恨んで銃口を向けた。予想外のことでヤンクミも驚く。しかし彼女はそれを恐れなかった。ヤンクミの背中越しにいる生徒は黒瀬が拳銃を出しても一歩も引かなかったからだ。その状況を目の当たりにした黒瀬は、自分のSPが全員逃げてしまったことと比較すると、今まで自分が築き上げていたものはちっぽけだったことに気づく。放心した黒瀬は拳銃を床に落とし、突入してきた警察に抑えられる。

生徒に夢を与えたヤンクミ

ヤンクミが命を危険にさらしてまで黒瀬に罪を償わせようとした様子は、全国で生中継されていた。翌日学校へ戻ると、それを見ていた視聴者から賞賛のメッセージが大量に来ていた。電話も鳴りやまず、ヤンクミの同僚はヤンクミのことを誇りに思う。赤銅学院の3年D組の生徒たちも、ヤンクミが命をはって犯罪を暴こうとしたことに感銘を受け、彼女と本当に信頼できる関係を作ることができたのだった。

『ごくせん THE MOVIE』の登場人物・キャラクター

主要人物

山口 久美子（やまぐち くみこ／演：仲間由紀恵）

赤銅学院の高校数学教師。通称はヤンクミ。幼い頃に両親を亡くし、その後父方の祖父に引き取られる。祖父の黒田龍一郎（くろだ りゅういちろう）は弱い者を助け、強いものをくじく任侠の教えに基づいて古くから続く大江戸一家の3代目である。その祖父にヤンクミは義理と人情の大切さを教えられ、喧嘩の方法も教えられた。そのおかげで小学生のころはいじめられっ子だったものの中学生になると子弟ができるまで強くなっていた。生徒を自分の命よりも大事に思っている。

小田切 竜（おだぎり りゅう／演：亀梨和也）

ヤンクミの元教え子。高校の時から不良をしていたが、生徒思いのヤンクミに出会って初めて信頼できる教師を持ち、卒業後は教師を目指していた。大学の教育実習でヤンクミのいる赤銅学院高校で実習をすることを志願する。不愛想な顔つきをしているが、仲間思いで優しい性格。ヤンクミの仲間を思いやる心は特に大事にしており、教育実習中にも赤銅学院3年D組の生徒に仲間の大切さを熱心に伝える。芯が太く信頼できる影なる存在。

赤銅学院高校3年D組の生徒