リリイ・シュシュのすべて

リリイ・シュシュのすべて

『リリイ・シュシュのすべて』とは、2001年に公開された日本映画。インターネットの掲示板を用いた「誰でも書き込みができる」実験的なインターネット小説を原作としている。インターネット小説が発表されたあと、書籍と映画が制作された。小説の原作者、映画の監督は岩井俊二である。いじめを受けつらい日々を送っていた主人公が、大ファンの女性歌手リリイ・シュシュのファンサイトを運営し、そこで仲間を見つけようとする。市原隼人、忍成修吾 、伊藤歩、蒼井優などが出演している。

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リリイ・シュシュのすべてのレビュー・評価・感想

リリイ・シュシュのすべて
8

邦画の良さを表す映像美

本作品の監督である岩井俊二監督は、日本の四季を音楽とカメラワークで、美しさを上手く表現していると思います。

イエン・タウン・バンド、リリィ・シュシュなど、映画から話題になったアーティストがいるのは、意外と少ないかもしれません。もちろん元々有名なアーティストですが、それぞれが元々アーティストだからというわけでありません。映画の作品がしっかりと評価を得た上で、作品の中で存在感があるからこそ話題になった思います。若い頃の蒼井優さんや、市原隼人さんなど、キャスティングしているので、才能を見る目も間違いなしです。
特に二人が共演している映画の、リリィ・シュシュのすべては、その当時の社会問題であるいじめ、援交を題材にし、14才のリアルを忠実に表現しています。
ネットの書き込みと平行して物語も進んでいくので見応えのある作品になっています。作品全般的にセリフがそこまで多くなく、映像とBGMで視聴者に考えさせ、感じてもらうようなメッセージ性もあるので、観た人、観た時によって捉え方が違うので、何回見ても面白い作品だと思います。
ただ、元祖胸糞映画みたいなところはあるので、気分が落ちているときにいると更に落ちることもあるので、注意は必要かもしれません。気分が落ちているところを作中のリリィ・シュシュに癒され、救われる描写があり、視聴者も一緒に癒されるところがあるので中毒性があります。
エーテルの意味を表現出来ませんが、作品を見て頂いた方には、エーテルを感じて頂けると思います。

光の反射や映像の奥行き感、映像の味わい深さ、色の使い方とても上手く表現されている作品です。映画に音楽と映像美を求めている方、映画を見て自分で答えを出したい方にオススメです!

リリイ・シュシュのすべて
8

十四歳のリアル。

ネットと現実世界のはざまでもがく14歳の物語。主人公の蓮実雄一役を演じる市原隼人はこの映画がデビュー作。数ある岩井俊二監督作品の中でもかなりセンセーショナルな作品だと思う。テーマはいじめ・売春・レイプ・自殺とあまりにもネガティブである。中学生の多感さは計り知れない。僕自身にとっても絶対に戻りたくない時代。大人でも子供でもないような曖昧さを含んでいる。タバコを吸ったり、初めてのセックスを経験する年代。誰の責任も取れない。主人公の雄一もまた周りの大きな負の流れに巻き込まれながら生活していた。ある意味、必死に。かつて、いじめられっ子だった親友の星野修介を演じたのは忍成修吾。沖縄で死にかけた経験が学年トップの優等生を鬼畜に変えてしまった。なんのために生きているんだろう?そんなの考えている暇はない。とにかく今を楽しむことを優先する。たとえ誰かを深く傷つけたとしても。そんな蓮実と星野にも共通の希望があった。それは謎の歌姫、リリイ・シュシュのライブに行くこと。蓮見が運営するサイト《リリフィリア》の中でだけ自分の存在意義を認めることができる。ネットに、リリイ・シュシュの歌声だけがリアル。エーテルという概念がそれに拍車をかける。リリイを聴きながら田んぼで絶叫する星野。日常などただの暇つぶしに過ぎない。それは最も普遍的な感情であったりする。子供も大人も自分に飽きている。灰色の時代。ニンゲンは飛べない。

リリイ・シュシュのすべて
8

電波と田園を描いた理由の一つについて

蒼井優と市原隼人の映画デビュー作としても有名。岩井俊二監督作品としては扱うテーマが非常に暗く、重たい印象を与える。
要約すると、現実の世界と架空のネット世界においての存在価値のギャップを如実に表した初めての作品だと思われる。BGMとしてドビュッシーの『月の光』や『アラベスク』『亜麻色の髪の乙女』をフューチャーしている点も作品に透明感と深みを与えている。
とにかく映像が美しい。これは岩井俊二作品全般に言えることであるが、それでもなお強調しておきたい。岩井俊二監督自身が映画を撮り終わった際にこの作品を遺作にしたいと言っていたのが一時期話題にもなったが、特殊な作品であるのは間違いないので、必ず観ておきたい作品だと言える。
おそらくは岩井俊二監督作品の中では最も画面も感情も歪んだ映画だと思うので、この映画を転機に初期の『ラブレター』のような恋愛映画が増えていくのではないかと思います。いい意味合いにおいてガス抜きになったような感じもします。映画のディテールだけを追ってみるのではなく、独特の世界観や登場人物の台詞などに注目して観るのも面白いと思います。
映画音楽ってやっぱり重要なんだとあらためて感じました。

リリイ・シュシュのすべて
10

美しい自然の映像美で覆われたどん底鬱映画

この映画は岩井俊二監督により2001年に公開された映画です。
主演は市原隼人、出演に忍成修吾、伊藤歩、蒼井優などをおき、今でこそ名だたる俳優である彼らがこの映画ではまだ幼く、あどけない表情で芝居をしている。
あらすじはある中学生の一クラスで起こるいじめや暴走を、傍観者でいるしかない主人公の目線でずるずると描いている。主人公の親友がある事件をきっかけに暴走していったり、その影響でクラス中の男女の関係がぐちゃぐちゃになっていくのを最も近くで目の当たりにする主人公。しかしどうすることもできないまま、どんどん悪化していく状況を見ている事しかできない虚無感や、巻き戻す事の出来ない時間を悔しく思う気持ち壊れた関係は元には戻らず、何もかもが手遅れな状況、この映画はそういう事をとても深く実感できる映画だ。
この映画はただの鬱映画ではない。この映画の主なロケ地は栃木県足利市で、俗に言うド田舎だが、田園の緑と鉄筋コンクリートが馬鹿みたいに美しい。何と言うか、思春期の複雑な心理状況や、美しい登場人物の中の大きな闇を、1シーン1シーンの画で無意識に感じさせられているような気がする。美しさの中の闇、中学生の不安定な心理、そんな物をじっとりと感じられる2時間半にわたる映像美。じっとりとした映画で泣きたい方におすすめ。

リリイ・シュシュのすべて
3

方向性が違うんじゃないか

観たのは1度きりです。たしか中学生の頃でした。一度観て、完全にトラウマになった作品です。この作品が嫌いという人の気持ちはとても分かります。ワタシも嫌いです。でも二十年近く経っても時々思い出す。それだけのインパクトがある作品です。ジャンルや悪質性は違えど「Funny Games(1997:オーストリア)」のトラウマ感に似ているかも。。。

「子供ゆえの想像力の限界」を感じた作品でした。彼らの社会、何をすればどう社会が動くか、誰が傷つくか、自分の行いによる影響における想像力の及ばなさ(彼らなりに彼らの知りうる社会の中で苦しみ、事情を抱え、考え、想像し、でも目の前の感情に負け)、を暴力的に描いていると感じました。最後、彼の行為が暴かれるのは時間の問題で、やはり中学生くらいの少年の限界、を描いていたかなと。

観てもトラウマになるだけだし、あえてお勧めはしない、かなぁ、、、

あと関係ないけど、リリィ・シュシュの音楽も超暗い(大好きだけど)。数年後、「彗星は見たこともないけれど」と踊りながら歌うsalyu(リリィ・シュシュ)のMVをみて、なんとなく救われた記憶があります。
嫌なもの見ちゃったな。
こんな、若者のくだらなくて下劣で惨いイジメなんて見たくない。
伝えたいことがあったのかもしれないけれど何か方向性が違うんじゃないか。
何でこれが評価が良いのか理解に苦しむwww
本当嫌なもの見ちゃったなぁ〜
ごめんなさい。私の中で史上最低作品。

リリイ・シュシュのすべて
8

津田詩織について。

原作では星野たちに集団レイプされた久野陽子(伊藤歩)が自殺するが、映画で実際に死んだのは津田詩織(蒼井優)の方だった。結果的にはその方が印象的でよかったと思うが、映画のオーディションで蒼井優を初めて見た監督(岩井俊二)は『今回はこの子に死んでもらおう』と決めたらしい。
津田詩織がなぜ鉄塔から飛び降りて自殺する必要があったのか?それを考えるのもまた、この作品の大きなテーマの一つだと思う。久野陽子は自ら髪型をスキンヘッドにすることで星野にやられたことを抗議した。それを見た津田詩織は心の底からショックを受ける。あの強い久野陽子でさえも星野に屈したのだと。自分が援助交際の仕事で星野に利用されているというのとは比べものにならない。誰一人として星野を止められる人間はいない。自分は助からない。そう絶望する。涙が溢れて止まらない。主人公である蓮見に無理だとわかっていながら救いを求めるフリをする。『頭スキンヘッドにしたら仕事辞められるかな?』蓮見に返事はなかった。蓮見は久野陽子がレイプされている最中に見張り役をしていたのだ。愛するひとを救えなかった。いや、救わなかったが正しいかもしれない。もはや生きている理由さえ疑わしい。そして、津田詩織は飛んだ。『空飛びたい』という言葉を言い残して。

リリイ・シュシュのすべて
10

電波と田園。

監督・脚本ともに岩井俊二による問題作。2001年公開。
テーマは中学生のいじめ・援助交際・レイプ・殺人事件など陰湿さを極めた内容。今作で俳優デビューしたのが市原隼人であり、蒼井優である。岩井氏の作品に出演の多い伊藤歩や忍成修吾が脇を固めた。
田園風景を流れるドビュッシーの《月の光》《アラベスク》《亜麻色の髪の乙女》をバックに、物語は淡々と進む。岩井作品の中でも一番と言えるほど映像美は素晴らしい。現実世界とネット上に広がる架空の世界の対比を中心に十四歳のリアルは描かれていく。イメージではビョーク主演のダンサーインザダークに近いかもしれない.リリイ・シュシュというのはsalyuが演じる歌手の名前で、主人公を含めた登場人物の多くがファンでもある。映画に先行して公開されたリリイ・ホリックというネット上の一般参加型の掲示板と岩井氏の書いた小説を交錯させるシステムを取り入れたのは非常に斬新な手法であった。誰もが映画に参加することができるというのだ。今現在もその掲示板は残されている。一見の価値アリ。どんより曇った空を自分の放ったテキスト文字で埋め尽くされるのは楽しかった。あれから約17年もの月日が経過した。僕たちは変われたのだろうか?それを問われる稀な作品である。