クワイエット・プレイス(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『クライエット・プレイス』とは2018年にアメリカで製作されたサスペンス・ホラー映画である。盲目であるが鋭敏な聴覚を使って人を殺すという異星人に襲われた世界。喋ることは勿論、ほんの少しの音を発しただけで即死に繋がるという過酷な状況下を生き抜く家族のサバイバルストーリーだ。異星人の恐怖を描くホラー的要素を主軸にしながらも、親が子を思いやる家族愛を描く温かいヒューマンドラマでもある。昔のサイレント映画をヒントに作られた今作であるが、今までに全く見たことがない新しい映画の扉を開いた。

『クワイエット・プレイス』の概要

『クライエット・プレイス』とは2018年アメリカで製作されたサスペンス・ホラー映画である。低予算ながら全世界での興行収入が3500億ドルを超えるという、異例の大ヒット映画となる。脚本家がサイレント映画からヒントを得て作られたというこの映画は、登場人物がほとんど喋らず手話で会話するという斬新な設定だ。またホラー映画というくくりではあるが、過酷な環境下を生き抜く家族が互いに思いやる姿を描いたヒューマンドラマでもある。映画批評集積サイトでは「『クワイエット・プレイス』となっている容赦ない知的生命体―そのオリジナリティは恐ろしさと同じくらいある―を登場させることで、根源的な恐怖を巧みに利用している。同作によって、ジョン・クラシンスキーは自身が新進気鋭の映画監督であることを立証した」とかなりの高評価を受けている。大ヒットを受けて続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が2021年アメリカで公開された。

主演のイヴリン役を演じたエミリー・ブランドは映画『プラダを着た悪魔』(2006)で注目され、その後テレビ映画『ナターシャの歌に』でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞している実力派女優である。監督兼リー役で出演したジョン・クラシンスキーは、海外ドラマ『The Office』(2005)で一躍人気者となり、ピープル誌の「セクシーな男性」のひとりに選ばれたイケメン俳優だ。耳が聞こえない長女役を演じたミリセント・シモンズは、実際に聴覚障害を持つ少女である。手話と表情を駆使した見事な演技を披露し、その確かな演技力に高い評価が集まった。

音を出すものすべてを襲うという異星人の襲来によって崩壊した現代社会。アボット一家は、その過酷な状況下を逞しく生き抜いていた。しかし異星人の脅威は、少しずつアボット家に近づいていく。そんな中、妻イブリンがお腹に命を宿す。音を出したら最後即死に繋がるという世界で、どうやって子どもを産み育てるのか。愛する者を守るため、絶対不可能と思われる状況下でも家族は決して諦めずに異星人に立ち向かう。果たしてアボット一家は生き残れるのだろうか。異星人との息詰まる攻防と、親が子を思う家族愛が同時に描かれた斬新な意欲作である。

『クライエット・プレイス』のあらすじ・ストーリー

異星人襲来から89日目

異星人が襲来してから89日目。現代社会は崩壊し、ほとんどの人類は死に絶えていた。街は荒廃し、人の姿はなく物音さえ聞こえない。しかしその街をある家族が訪れていた。父リーと母イヴリン、姉リーガンと弟のマーカス、ボーのアボリン一家は、一言も発せず足音さえ立てず、静かに雑貨店の中を物色していた。イヴリンは細心の注意を払いながら薬を見つけ、それを体調がすぐれないマーカスに飲ませる。それを見たリーガンは安心し、ボーと共に手話で会話しながら微笑み合った。リーは無線用の機器を集め、家族は帰宅の途につこうとする。ボーはロケットのおもちゃを持ち帰ろうとするが、音が出るものはダメだとリーに窘められてしまう。可哀そうに思ったリーガンは親の目を盗んで電池を抜いたロケットをボーに渡し、ないしょねという仕草をした。一言も喋らずただ静かに歩いて帰る5人。そこにいきなり電子音が聞こえ始める。ボーがおもちゃのロケットに電池を入れて遊び始めてしまったのだ。リーは慌てて駆け寄るが、何か得体の知れない怪物が、ボーをあっという間にさらっていってしまった。その怪物は「クリーチャー」と呼ばれ、音を感知して人間を襲う異星人だったのだ。

アボリン家の暮らし

宇宙人襲来から472日目。アボリン一家は自宅の周りに安全基地を築きながら暮らしていた。足音がしないように歩く道筋には細かな砂を敷き詰め、監視カメラを至るところに配置して、家族の安全をいつも見守った。リーは無線でSOSを発して救助を求めていたが全く反応がない。また耳が悪いリーガンのために、リーは無線の機器を応用して補聴器も作っていた。とにかく音をたてないよう細心の注意を払いながら、一家はひっそりと暮らしている。料理は地下に埋めた調理器具を使うことで音が漏れないようにした。また食べる時は食器音がしないように葉っぱをお皿に使う。日常生活のあらゆることを工夫することで家族は生き抜いてきたのだ。制限の多い日々ではあったが、一家は手話でコミュニケーションし、ヘッドホンで音楽を聴きながらダンスするなど生活を楽しむことも欠かさなかった。そんな状況下の中で、イヴリンのお腹には新しい命が宿っていた。イヴリンは音がでないよう布で作った赤ちゃん用モビールを用意し、泣き声が聞こえないように赤ちゃんを収める箱と酸素吸入器を準備した。

ある老夫婦の死

ボーにおもちゃを渡してしまったリーガンは、ボーが死んだのは自分の責任だと罪悪感を抱えていた。そしてリーは我が子を亡くした悲しみが癒えず、父娘の仲はギクシャクとしていた。悲しむリーの心情を思うリーガンは父と距離を取るようになり、リーは娘につい厳しい態度を取ってしまう。そんな状況の中で、耳の悪いリーガンのためにリーが新しく作った補聴器を試させようとする。しかし普段の軋轢からか彼女は頑として補聴器を受け入れない。リーは補聴器を静かにリーガンに渡し、その場を後にした。

一方、リーとマーカスは食料調達のために釣りに出かける。危険を伴う外出に怯えるマーカスのために、リーガンは代わりに自分が行くと申し出た。しかしリーにイヴリンと留守番をしているように言い渡される。納得がいかないリーガンだったが、ふと思い直して父にもらった補聴器を耳に付けてみた。すると初めて音を感じることができ、リーガンは喜びに打ち震えた。そしてリーガンは思い立ってボーがクリーチャーにさらわれてしまった場所に行く。そこには弟の墓標がたてられており、そこにそっとロケットのおもちゃを供えた。

その頃、魚釣りを終えたリーとマーカスは滝の傍で会話をしていた。近くで大きな音がしていれば、クリーチャーは襲ってこないのだ。マーカスは父と姉のギクシャクした関係を心配していた。そしてリーガンに「愛してる」と言ってあげてほしいとリーに伝えた。釣りの帰り道、2人はある老人に出会う。老人の足元には彼の妻であろう老女の死体が横たわっている。老人は苦し気な表情を浮かべた後、思い切り大きな声をあげた。リーはマーカスを抱えてその場を去った直後、老人は風のように現れた異星人にあっという間に殺されてしまった。

死と隣り合わせの出産

その頃、家で留守番をしていたイヴリンは突然破水してしまう。急いで地下室に移動したイヴリンだったが、階段で出っ張っていたクギが足に刺さり、思わず叫び声を上げてしまった。イヴリンは陣痛に耐えながら、緊急事態を知らせる赤ランプを点灯させる。イヴリンの声を聞きつけて、すぐにクリーチャーが家の中に入り込んできた。波のように襲ってくる陣痛に耐えながら、イヴリンは目覚まし時計をセットする。やがて目覚まし音が鳴ると、クリーチャーがそちらに気を取られた。その隙にイヴリンはその場を逃げ出し、なんとか風呂場に身を隠す。しかし赤ちゃんはもう生まれる寸前であった。ようやく戻ってきたリーは異常事態の赤ランプに気付く。マーカスにクリーチャーの気を引くために離れた場所で花火を上げるよう指示して、リーはイヴリンを救うため自宅に急ぐ。そこでタイミング良く花火が上がり、その隙にイヴリンは赤ちゃんをなんとか無事出産した。泣き声を上げる赤ちゃんとぐったりとしたイヴリンを抱え、リーは地下室に逃げ込んだ。そして赤ちゃんに酸素マスクを着け、箱の中に隠す。そしてリーは次にリーガンとマーカスを探しに外へ出た。しかしクリーチャーが暴れたせいか貯水槽から水が漏れだし、地下室にどんどん水が浸水していく。産後の疲れで眠っていたイヴリンが目を覚ますと、水音を聞きつけたクリーチャーがいつの間にか地下室に侵入していた。イヴリンは赤ちゃんを抱きかかえて流れ落ちてくる水と壁の間に身を隠し、なんとか事なきを得る。

貯蔵庫での攻防

一方、花火を打ち上げたマーカスは、帰り道でクリーチャーに出くわしてしまう。花火を見て異常事態に気付いたリーガンは、ボーの墓を後にし家路を急いだ。途中でマーカスと出会ったが、そこにはクリーチャーの姿もあった。すると突然リーガンの補聴器から「キーン」という大きな金属音が聞こえてくる。その音になぜかクリーチャーはもだえ苦しみ、慌てふためいて逃げて行ってしまった。不思議に思いながらも、畑にある大きな貯蔵庫の上で2人は父の迎えを待った。しかし突然床が抜けマーカスが貯蔵庫の中に落ちてしまう。穀物に埋もれそうになるマーカスを救うために、リーガンも貯蔵庫に飛び込んだ。そしてその音を聞きつけたクリーチャーがすぐさまやってくる。襲われそうになった2人だが、またしても補聴器から金属音が聞こえ始めると、クリーチャーはまた逃げるように姿を消したのだった。そして子ども達はリーと再会し、無事に会えた喜びに3人はしっかりと抱きしめ合った。

父の死

しかしまたもやクリーチャーの気配がする。リーは子ども達を近くにあったトラックに隠し、自らは農具で武装しながら周囲を見回した。しかし屋根の上に潜んでいたクリーチャーに一撃され、吹っ飛んでしまう。思わず「パパ!」と叫んでしまったマーカスに気付いたクリーチャーが、今度は攻撃の矛先をトラックに向ける。クリーチャーは激しい攻撃でトラックを壊そうとし、リーガンとマーカスは恐怖に慄く。そこでリーは最後の力を振り絞って立ち上がり、リーガンにむかって手話で「お前を愛している」と表現した。そして思い切り大声を張り上げた。クリーチャーはあっという間に移動し、リーを殺してしまった。

クリーチャーの弱点

その隙にマーカスがブレーキを外し、走り出したトラックに乗って子ども達はなんとかイヴリンの元に帰ることができた。3人は地下室に逃げ込み、イヴリンは生まれたての赤ちゃんをマーカスに託して、身を潜めさせた。父の死を悲しむ間もなく、そこにゆっくりとクリーチャーがやってくる。そこでリーガンは今までの出来事からひらめきを得て、補聴器のスイッチを入れた。するとやはり「キーン」という金属音がして、クリーチャーが突然苦しみだしたのだ。父の仕事場にあったマイクでその金属音を増幅させると、クリーチャーはよりもだえ苦しみ、気絶してしまった。あまりの出来事にイヴリンとリーガンは茫然となる。その間に意識が戻ったクリーチャーが再度襲い掛かってきたが、そこをイヴリンが銃でトドメをさした。監視カメラを見ると、音を聞きつけたクリーチャーが次々とこちらに向かってくる。これから始まる戦いに向けて、リーガンはマイクの音量をマックスにし、イヴリンは銃の引き金を力強く引いた。

『クワイエット・プレイス」の登場人物・キャラクター

イヴリン・アボット(演: エミリー・ブラント)

吹き替え:園崎未恵

リーの妻で、リーガンとマーカスの母親。
ボーが襲われた時、親として守ってやれなかった後悔を強く感じている。
そして生まれてくる子は絶対に守る、という強い決意を持って出産に臨む。
その強い思いと機転を持って、クリーチャーに狙われながらもなんとか我が子を産み落とす。
リーガンがクリーチャーの弱点を発見したことで闘争心に火が付き、異星人退治を決心する。

リー・アボット(演:ジョン・クラシンスキー)

吹き替え:星野貴紀

イヴリンの夫で、リーガンとマーカスの父親。
妻と共に創意工夫しながら、全力でクリーチャーから家族を守ろうとしている。
ボーを救えなかった悲しみが癒えず、末息子の死の原因を作ったリーガンとの確執を抱えている。
また耳の悪いリーガンのために、補聴器の改良に力を尽くした。
最期は手話で「愛している」とリーガンに伝え、クリーチャーに襲われている子ども達を救うために己を犠牲にした。

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