アイネクライネナハトムジーク(小説・漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『アイネクライネナハトムジーク』とは、2014年に発刊された伊坂幸太郎の連作短編集を原作とした、2019年に公開された日本映画である。監督は今泉力哉。会社員の佐藤(さとう)は、恋愛したいと思いつつも「出会いがないから」と理由をつけて恋愛に積極的になれずにいた。それを友人の織田一真(おだかずま)や妻の由美(ゆみ)らが見守る中、佐藤と本間紗季(ほんまさき)は劇的な出会いを果たす。この作品は、佐藤と紗季やその周りを取り巻く人々が10年にわたって織りなす物語を穏やかに描き出す作品である。
仙台駅外の歩道橋で、いつも1人ギターを弾きながら歌っている。本作の重要な場面で随所に登場し、優しい歌声を響かせる。歌う歌はいつも「小さな夜」で、彼が歌う場所は本作の登場人物たちがいつも立ち寄る場となっている。
『アイネクライネナハトムジーク』の用語
仙台駅
宮城県仙台市青葉区中央にあり、JR東日本と仙台市地下鉄の路線が通る駅。東北地方最大のターミナル駅(鉄道やバス、タクシーなどの大規模な乗り換え駅のこと)として、西口を中心に多くの商業施設と接続されている。その西口にはペデストリアンデッキという、横断歩道橋と広場を併せ持ち駅と周辺の建造物を接続する歩行者専用デッキがある。
ヘビー級
プロボクシング界において最重量級である。男子は200ポンド(90.179㎏)以上、女子は175ポンド(79.3㎏)が基本のウェイトである。プロボクシングの階級としては、ミニマム(105ポンド)以下からヘビー級まで全17階級ある。日本国内では海外の選手と比べて体格差があり、常にヘビー級の選手不足に悩まされている。
防衛戦
ボクシングの試合において、タイトル(王座)を保持するチャンピオンがその地位を守るために行う試合のこと。防衛戦には2種類あり、1つは定期的にボクシング団体等から挑戦者を指定され、その人物の挑戦を受けて戦うもの。この場合は、チャンピオン側が試合をするかどうかや挑戦者を選ぶということはできない。もう1つはチャンピオンが他の選手に試合を申し込むか、挑戦資格のある選手がチャンピオンに申し込むかである。この場合はチャンピオン側が試合をするかどうかを選択することが出来る。
『アイネクライネナハトムジーク』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
佐藤と紗季の出会い
佐藤と紗季が、仙台駅外の歩道橋で初めて出会うシーン。恋愛をしたいのに「出会いがない」と言っていた佐藤だったが、偶然街頭アンケートを依頼してから紗季を気にかけるようになる。後に2人は交際をはじめ、10年の歳月をかけて結婚に至る。しかし結婚にたどり着くまでには同棲を一時解消することもあり、さらに出会った当初は結婚するとは考えもしなかった2人だった。結果的に、佐藤と紗季は様々な出来事を乗り越えて互いがかけがえのない人物であるということに気づく。2人は一真の言う「自分の幸運にあとで感謝できる出会い」をしたのであった。
小野 学(ウィンストン小野)「僕はまだ、挑戦しなきゃならないことがあります」
学が美奈子と交際する前に、ヘビー級世界戦での勝利インタビューで語ったセリフ。学はこの試合で勝利をおさめたら、美奈子に交際を申し込むつもりでいた。また、この試合の結果は学自身を鼓舞させたことはもちろんのこと、日本中の人々を熱狂させ勇気づけた。後の防衛戦で学は世間からバッシングを受けてしまうが、そんな時美奈子がそばで支えてくれたことで学は再び立ち上がる。そして10年後、再度世界戦に挑戦するのだ。「僕はまだ、挑戦しなきゃならないことがあります」というセリフの通り、何度も何度も挑戦し続ける学の姿を見て、作中の多くの人が勇気をもらうのだった。
佐藤「なんか、色々かなわないなって」
「母がどうして父と結婚したのかわからない」と言う高校生の美緒に対し、佐藤が言ったセリフ。美緒の父である一真はいい加減で自己中心的な性格で、対して母の由美は美人で性格も良い女性である。美緒はそんな父母を見るたび、「どうして母は父と結婚したのだろう」と疑問に思っていた。そしてそんな疑問が爆発した日、偶然一真と学生時代からの友人である佐藤と話すことになる。佐藤は美緒に「あいつね、由美さんのお腹の中に美緒がいるってわかった時、全く迷わなかったんだよ。スパッて大学やめて居酒屋で働きだしてさ。俺それ見た時、すごいやつだなって思った。なんか、色々かなわないなって」と話す。佐藤も普段は一真に手を焼くことも多いが、実は自分にはなかなか出来ない決断をする一真のことを尊敬し大切に思っているのだ。このセリフは、そんな佐藤から一真に対する尊敬の念を感じさせるセリフである。
『アイネクライネナハトムジーク』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
「どこにでもいる」ような主人公を意識した「佐藤」
この作品の主人公である佐藤は、主演の三浦春馬と監督の今泉力哉との間で「隣を見れば存在するような、どこにでもいるようで普遍的な」人物として成立させようという共通認識で作られた。あえて苗字だけで名前をつけずに何のクセもない人物とし、誰もが感情移入できるような人柄にしたのだった。主演の三浦は「(佐藤は)普通にいい人なんですよ。変なクセがないからこそつかみどころがない。(だからこそ)僕にしかできない佐藤を表現したいなと思いました。そこでやったのが、自分のいつものクセを封じること」と、インタビューで語っている。三浦が演じるとなると「普通の一般人」であってもどことなくオーラを感じてしまいそうだが、本作の「佐藤」はまさに「変なクセがないからこそつかみどころのない」人物だった。「普通の人物」を演じるという最も難しい演技を、三浦は見事にやりきったのだった。
監督からの「相手をちゃんと使ってください」というアドバイス
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目次 - Contents
- 『アイネクライネナハトムジーク』の概要
- 『アイネクライネナハトムジーク』のあらすじ・ストーリー
- 交差する出会い
- 劇的な出会い
- 積み重ね
- 10年後
- 『アイネクライネナハトムジーク』の登場人物・キャラクター
- 主人公とその周辺の人物
- 佐藤(さとう/演:三浦 春馬)
- 本間 紗季(ほんま さき/演:多部 未華子)
- 織田家の人物
- 織田 一真(おだ かずま/演:矢本 悠馬)
- 織田 由美(おだ ゆみ/演:森 絵梨佳)
- 織田 美緒(おだ みお/演:恒松 祐里)
- 久留米家の人物
- 久留米 和人(くるめ かずひと/演:萩原 利久)
- 久留米 邦彦(くるめ くにひこ/演:柳 憂怜)
- 久留米 マリ子(くるめ まりこ/演:濱田 マリ)
- 学とその周辺の人物
- 小野 学(ウィンストン 小野)(おの まなぶ/演:成田 瑛基)
- 美奈子(みなこ/演:貫地谷 しほり)
- 板橋 香澄(いたばし かすみ/演:MEGUMI)
- 少年(演:中川 翼)
- 青年(演:藤原 季節)
- 女子高生(演:祷 キララ)
- セコンド1(演:伊達 みきお(サンドウィッチマン))
- セコンド2(演:富澤 たけし(サンドウィッチマン))
- その他の人物
- 藤間(ふじま/演:原田 泰造)
- 亜美子(あみこ/演:八木 優希)
- ストリートミュージシャン(斉藤)(さいとう/演:こだま たいち)
- 『アイネクライネナハトムジーク』の用語
- 仙台駅
- ヘビー級
- 防衛戦
- 『アイネクライネナハトムジーク』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 佐藤と紗季の出会い
- 小野 学(ウィンストン小野)「僕はまだ、挑戦しなきゃならないことがあります」
- 佐藤「なんか、色々かなわないなって」
- 『アイネクライネナハトムジーク』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「どこにでもいる」ような主人公を意識した「佐藤」
- 監督からの「相手をちゃんと使ってください」というアドバイス
- 伊坂幸太郎作品の映画化が怖かった今泉監督
- 『アイネクライネナハトムジーク』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:斉藤 和義「小さな夜」