渇き。(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『渇き。』とは、2014年公開のスリラー映画である。一人娘の失踪をきっかけに、元刑事の男が崩壊した家庭の再生を求めて奔走するミステリー、サスペンス作品だ。役所広司、小松菜奈、清水尋也などが主要キャストに名を連ねる。監督は中島哲也。原作は深町秋生のミステリ小説『果てしなき渇き』。

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『渇き。』の概要

『渇き。』とは、2014年6月27日に公開された日本のスリラー映画である。一人娘の失踪をきっかけに、元刑事の男が崩壊した家庭の再生を求めて奔走するミステリー、サスペンス作品だ。原作は、第3回「『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞を受賞した深町秋生のミステリ小説『果てしなき渇き』。監督は『告白』で日本アカデミー賞各賞を受賞した中島哲也。脚本は、監督である中島が、門間宣裕、唯野未歩子と共同で執筆を行った。主要キャストとして、役所広司、小松菜奈、清水尋也などが名を連ねる。
海外ではドラフトハウス・フィルムが北米での配給権を獲得し、2015年より『The World of Kanako』のタイトルで公開された。

突然失踪してしまった優等生の娘を、元刑事の父親が捜索するうちに想像もしていなかった事態に巻き込まれていく姿を描く。
本作は、第47回シッチェス・カタロニア国際映画祭・最優秀男優賞(役所広司)、第39回報知映画賞・新人賞(小松菜奈)、第38回日本アカデミー賞 新人俳優賞(小松菜奈)、第69回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞(小松菜奈)、ファンタスティック・フェスト2014 長編部門 最優秀脚本賞(中島哲也・門間宣裕・唯野未歩子)など多数の賞を受賞した。

『渇き。』のあらすじ・ストーリー

失踪と追跡の始まり

元刑事の藤島昭和(ふじしま あきひろ)は、家族から見放され、一人アパートの部屋で酒と暴力に溺れる日々を送っていた。ある日、娘の加奈子(かなこ)が行方不明になったと、別れた妻・桐子(きりこ)から連絡が入る。藤島が2人が暮らすマンションを訪れ、加奈子の部屋に入ると、覚せい剤の入った袋が見つかる。さらに神経科の薬も見つかり、桐子は娘が病院に通っていたことすら知らなかったことに愕然としていた。
警察は事件性はないと判断したが、なぜか藤島の周りには元部下の刑事・浅井(あさい)がうろうろしていた。浅井はコンビニで3名が殺された事件を追っているという。
藤島は単身で娘の行方を追うことを決意した。

崩れていく娘のイメージ

藤島は加奈子の元同級生、森下(もりした)と長野(ながの)に接触。加奈子が行方不明になったというのに、まともに取り合わない森下の態度に藤島は苛立つ。長野はなぜかおどおどとしていた。
その後、藤島は加奈子の他の中学生時代の友人たちと会った。藤島は、彼らから加奈子が中学生の時に付き合っていた男子生徒、緒方(おがた)の話を聞いた。緒方は自殺してしまい、加奈子は緒方の葬儀で彼にキスをしたという。また、加奈子は優等生だったが、一方で不良の男子生徒・松永(まつなが)などガラの悪い連中とも付き合いがあるという噂があったという情報を得た。

時は戻り、3年前。野球部を辞めたことをきっかけにいじめられていた「ボク(瀬岡)」は、加奈子にタオルを差し出され、彼女に淡い恋心を抱くようになる。
屋上で暴力を振るわれていた瀬岡。すると加奈子が現れ、いじめていた連中に何かを囁くと、彼らは慌てて立ち去って行った。

時は戻り、藤島はまた元部下の刑事・浅井に会った。浅井が追うコンビニ殺人事件で殺害された被害者は松永と関わりがあり、松永はヤクザと組んで薬を売りさばいていたという。加奈子の周囲から集まる情報は、どれも驚くべきものばかりだった。藤島の中でだんだんと、真面目で優等生な娘のイメージが崩れていく。しかし娘の知らない一面を知るたびに、藤島は楽しくなっていくのだった。

明かされた真実

時は3年前に戻る。加奈子が裏で何かしたのか、瀬岡はいじめられっ子ではなくなった。加奈子に部屋に誘われ、有頂天になる瀬岡。しかし加奈子に誘われたパーティで、松永に薬を盛られた瀬岡は、見知らぬ男に犯された。かつて緒方も同じように騙され、男娼のようなことをさせられていた。それが原因で、緒方は自殺したのだった。

時は現代戻り、藤島の元に加奈子の同級生の森下がやってくる。森下は長野から託されたという、コインロッカーのカギを藤島に渡した。ロッカーの中には、未成年の少年少女らが中年の男性らと性行為に耽る場面を収めた写真が入っていた。その中には加奈子の姿もある。長野も警察官僚の相手をさせられており、浅井はそれを隠蔽するために藤島を嗅ぎまわっていたのだった。

そして加奈子が通っていた神経科医・辻村(つじむら)から話を聞いた藤島は、加奈子が裏世界を牛耳るチョウという外国人を虜にし、売春組織を牛耳っていたという事実を知る。加奈子は若い少年少女らを売春組織に誘い込み、チョウの元へと差し出していたのだ。

破滅へ

加奈子と関係があった人間が姿を消していく。彼らを殺害していたのは、チョウが雇っていた愛川(あいかわ)だった。愛川は藤島の元同僚の刑事で表向きは愛妻家の男だが、その裏の顔はサイコパスな殺し屋である。チョウと対立するヤクザの咲山(さきやま)からその話を聞いた藤島は、愛川が加奈子の行方を知っているのではないかと踏み、愛川をおびき出すため彼の妻を人質にした。デパートの屋上で愛川と藤島はお互いに撃ちあい、血にまみれながら壮絶な決闘をする。しかし最終的には愛川は自身の妻を射殺し、その愛川は浅井が自殺に見せかけて射殺した。

一方、3年前。ボロボロになった瀬岡は、加奈子がいるホテルを探し出した。瀬岡は彼女を殺そうとするが、どうしてもできない。なぜ好きだった緒方にあんなことをしたのかと尋ねる瀬岡に、加奈子はもっと好きになりたかったから殺した、と答えた。そして瀬岡は、背後から愛川と思われる人物に襲われ、殺害された。

時は戻り現代。藤島が加奈子を探しているその裏で、加奈子は中学時代の教師・東(あずま)に殺されていた。加奈子が東の小学生の娘にも売春をさせていたためだ。悪びれない加奈子をアイスピックで刺した東は、加奈子の遺体を雪山に埋めた。そのことを知った藤島は、東を雪山へ連れて行き、加奈子を掘り起こさせようとするが、隙を突かれて逃げられた。
そして無駄だとわかっていながら、藤島は娘を見つけ出して自分の手で殺すため、一人で雪を掘り始めるのだった。

『渇き。』の登場人物・キャラクター

主要人物

藤島 秋弘(ふじしま あきひろ/演:役所広司)

本作の主人公でろくでなしの父親。かつては刑事だったが、問題を起こして退職し、その後は警備員をしている。家族とも離れ、一人孤独にアパート暮らしをしていたが、失踪した娘を探すことに。
消えた家族を異様な執念で追い求め、やがて狂気を一身に宿していく。

加奈子(かなこ/演:小松菜奈)

藤島の娘で高校3年生。成績優秀で容姿端麗、男女分け隔てなく付き合い、誰からも好かれる優等生だが、行方不明となる。

ボク(瀬岡)(せおか/演:清水尋也)

加奈子の中学生時代の同級生。元野球部員のいじめられっ子だったが、加奈子によって助けられる。以来、彼女に思いを寄せるように。
本作におけるもう1人の主人公であり、彼の中学時代の加奈子とのエピソードと藤島の現在のエピソードが交差し、話が進む。

その他の登場人物

浅井(あさい/演:妻夫木聡)

saika
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@saika

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