トランスポーター（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『トランスポーター』の概要

2002年に公開されたフランス製作のカーアクション映画。『TAXi』シリーズ等で知られるフランスのリュック・ベッソンが製作・脚本を手掛け、ジェイソン・ステイサムが主人公であるプロの運び屋「トランスポーター」のフランク・マーティンを演じる。本作を機にジェイソン・ステイサムは世界的に名が知られることとなった。

フランクは、黒いBMW735i(E38)を愛車としており、どんな品物でも報酬さえ払えば時間厳守、秘密厳守で目的地に運ぶプロのトランスポーターだ。
自分自身に絶対に破ってはならない「契約厳守」「名前は聞かない」「依頼品の荷物を開けない」という3つのルールを課している。また、軍の特殊部隊経験者で、格闘術のプロでありまた、天才的な運転技術を持つ、裏の世界では名が知られている人物だ。

フランクは依頼人のボス仕事を受け、荷物を運ぶため目的地へ向かっている。しかし、途中でタイヤがパンクし、スペアタイヤを取るためにトランクをあける。トランクには目的地に届けるために預かったバッグが入っているのだが、その「荷物」が動いているのに気づく。
自分に課しているルールに背くことはできないので、無視を決め込むフランクだが、どうにも気になり、ルールの一つである「依頼品の荷物は開けない」を破りバッグを開けてしまう。バッグの中には手足を縛られた中国人の女性ライが入っていた。

荷物を開けてしまったフランクだったが、何事もなかったかのように目的地に荷物を届けて契約を遂行し報酬を手にする。
そこで、この荷物の受取人ウォールから別の運び屋の仕事を依頼され、依頼品であるアタッシュケースを渡される。

そのアタッシュケースは実は爆弾で、途中たまたま立ち寄ったドライブインで車から降りたところで車が爆発する。
ウォールはフランクが「荷物」を開けてしまったことを知り、口封じを試みたのだった。

ギリギリで助かったフランクは、怒り心頭で復讐のためウォールのもとに戻る。しかし、ウォールが不在だったため、ウォールの家のガレージから車を盗み帰りの足とするが、車内には先ほど「荷物」として届けたライが乗っていた。
仕方なくフランクの家にライを連れて帰る。

その後、フランクに「荷物」を奪われたウォールはフランクの家を突き止め家を爆破してしまう。

フランクは、自分のルールを破ったがためにこのような被害を被った自分に腹を立て後悔する。しかし結局、中国組織の人身売買にかかわる話だとライに聞かされたフランクは、ライと共に悪のボス、ウォールがいるオフィスへと乗り込む。

しかしフランクは、オフィスで組織に拘束され、ライは実の父親に捕まってしまう。ウォールとその手下に殺される寸前のところで、フランクは知人の警部タルコニに助けられて、人身売買されコンテナで運ばれている中国人を助けるために現場へと向かい乱闘を繰り広げる。
最後には売買される予定だった約400人を救い幕を閉じる。

劇場公開は2002年10月2日のアメリカプレミア上映を皮切りにカナダ、フランス、フィンランド、オーストラリアなど30カ国以上で公開となった。日本では2003年2月1日に劇場公開された。

製作費には約2100万ドル費やし、興行収入は約4400万ドルを記録している。
製作時には続編の予定はなかったのだが、公開後世界中で大ヒットを打ちだし、特にDVDの販売が好調で、後にシリーズ化やテレビドラマ化が決まった。

アメリカの映画評論サイトRottenTomatoesでは、127人の批評家からのレビューの支持率は54％、10点満点中5.6点の平均評価を獲得している。

本作の見どころは何と言ってもドライビングテクニック、プロに徹する姿勢、一対多数での格闘シーンなどの主人公のジェイソン・ステイサムだ。オイルまみれで自転車のペダルを使い応戦するところも必見だ。

『トランスポーター』のあらすじ・ストーリー

フランク・マーティンの出勤

人気のない地下駐車場に1台のBMW が止まっている。車内には裏社会で名の通ったプロの運び屋フランク・マーティンが静かに座っている。

フランクが付けている腕時計のアラームが鳴ると、静かに車を走らせ仕事へと向かった。

一つ目の依頼「銀行強盗犯」のトランスポート

南仏の海岸沿いを進んでいた車が、とある銀行の前で止まる。止まると同時に銀行の正面の時計が10時を指した。すると中から覆面を被った4名の銀行強盗が、お金の入った袋を手に出て来た。フランクは、この銀行強盗を指定の場所まで届けるために雇われたのだった。

銀行から出てきた強盗達は、車のトランクに盗んだお金を入れ、座席に座る。落ち着いた様子で、フランクはボタン1つでナンパープレートを差し替えた。しかしフランクは出発しないため、焦った強盗は早く車を出すようフランクに迫る。

切迫した状況でフランクは、「ルール1、契約厳守。契約では輸送人数3名、合計体重254kgだ」と言う。強盗に拳銃を突きつけられて「じゃあ今、再契約だ」と言われても動じない。
そして、強盗に重量オーバーでガソリンが不足し警察に捕まるかもしれないという理論を捲し立て、車の発車を断固拒否した。

銀行強盗を乗せて逃走劇

それでも強盗のリーダー格は、フランクに拳銃を突きつけ車を出すよう脅す。それでもフランクは動じないため、仲間を1人射殺し契約通りだと言い車を出させる。ちょうどパトカーも到着し、ここからはパトカーとのカーチェイスを繰り広げる。

フランク達は、パトカーから逃れるために猛スピードで走っている。ちょうど地元警察署の警部であるタルコニも、同じ方向へと車を走らせていた。ものすごいスピードで自分を追い越していったフランクの車を、タルコニ警部も追跡し始める。
かなり年配のタルコニ警部だが凄腕のドライビングテクニックを持ち、良い調子でフランクを追いかける。

港までカーチェイスを続けていると、港内を通る列車がちょうど前方より来ていた。フランクは、その列車の前をぎりぎりで渡り、警察に足止めを食らわせて無事逃げ切ることに成功する。
目的地である高台に、フランク達は無事到達した。フランクは契約金を貰い、3人の強盗は手配してあった別の車に乗り去った。フランクはボタンを押してナンバープレートを交換してから、ゆっくり自宅へ戻っていった。

任務の翌日のフランク

翌朝フランクは、前日の任務で汚れてしまったBMWを綺麗に磨き、メンテナンスをしていた。その時、知人のタルコニ警部がフランクの家にやってくる。

タルコニ警部の訪問の目的は、フランクの昨日のアリバイを聞くことだった。フランクの車と同じ車種が、銀行強盗が逃走する際に使用されていたためだ。

もちろんフランクは関係ないと答える。しかしタルコニ警部は、フランクに探りを入れるように会話を引き延ばす。タルコニ警部は、最初からフランクを疑っていた。しかしフランクは何も言わないため、タルコニ警部は去っていった。

二つ目の依頼「中国人女性」のトランスポート

タルコニ警部が去った時、フランクに次の仕事の依頼が来る。フランクは依頼内容を聞くため、町のバーへ向かう。バーで伝えられた依頼内容は、カバンを1つ運ぶという物だった。

仕事当日、いつもの黒スーツに真っ白なシャツ、黒いネクタイを締めて荷物を受け取り出発する。フランクは荷物が気になっていた。

途中我慢できず荷物を開けてしまう。するとカバンの中から中国人女性が手足を縛られ、口にガムテープを貼られて入っていた。フランクは少しガムテープを切り、ストローでジュースを飲ませてあげる。

その後女性がトイレに行きたいと言うため、近くでするように指示を出した。指示を出しながら、フランクはルールを破ったことをまずいと思っていた。

ルール破りはトラブルの元

女性を呼び戻そうと声を掛けるが返事がない。女性は走って逃げていた。フランクはすぐに追いかけ、女性を捕まえて車の方へ戻っていく。

フランクが自分の車に戻ると、2人の警察官が不審車かどうかチェックしていた。フランクは警察を瞬殺するが、「ルールを破るとこれだ…」とあきれ気味に言う。そして気を取り直して、荷物を車に乗せ目的地へと向かった。

予定の時間より少し遅れて配達先に到着する。届け先はウォール・ストリートという男の豪邸だった。ここでトランクに入っていた荷物を引き渡した。トランクには先ほどの警官も縛られたまま入っていた。

ウォールの手下の男たちが荷物を家の中に運ぶと、ウォールは荷物を開けたかフランクに聞く。フランクは開けていないと嘘を言い、ウォールからギャラの残金を貰った。

三つ目の依頼「アタッシュケース」のトランスポート

そこで仕事は終わりだと言い、フランクは車に向かう。その時ウォールから、もう1つ仕事を頼まれる。内容は小さなアタッシュケースをグルノーブルに届けるというものだった。前金とアタッシュケースを受け取ったフランクは、車を出し次の目的地へと向かう。

途中ドライブインで食事をしていた。車に戻ろうとした時、フランクの車が大爆発を起こした。怒り心頭のフランクは、すぐにウォールの屋敷に戻っていく。彼から渡されたアタッシュケースは爆弾だったのだ。

フランクは屋敷のドアを蹴り破り、華麗な動きで次々と敵を倒していく。しかしウォールが不在と分かったフランクは、車庫にあったメルセデスを盗み屋敷から出ていった。

ウォールの屋敷から出てある程度落ち着いたところで、フランクがバックミラーを見ると、先ほど荷物として届けた女性が車内にいることに気づく。フランクは女性をトランクに詰めて、自分の家に連れて帰る。

自宅に着いたフランクは、女性に質問を始める。女性はライ・クワイという名の中国人で、フランクが「俺の状況は？」と聞くと、ライは「ヤバイわ」と答えた。

一方ウォールは自分の部下が病院に運ばれたことを知り、病院へ向かう。そこで部下からフランクが死んでいないことを知る。ウォールは部下を口封じのため、殺害して病院を後にする。

どんどん窮地に陥るフランク

翌朝フランクが朝食を準備していると、タルコニ警部が訪ねてきた。タルコニ警部はライに「君は誰だ」と質問すると、ライはとっさにフランクの専属シェフだと言う。

タルコニ警部は、フランクの焼け焦げたBMWのナンバープレートを持ってきていた。昨日ウォールに燃やされた車のナンバープレートだった。先日フランクの車を見ただけで、タルコニ警部はフランクの車のナンバーを覚えていたのだった。

なぜ車が燃えたのか事情を聞くと、フランクは盗まれたと言う。タルコニ警部が「ずいぶん遠いスーパーからどうやってここまで帰ってきたのか？」と聞くと、ライがヒッチハイクで乗せてきたと言ってごまかした。

タルコニ警部がライの車を見たいと言うので、ウォールの屋敷から盗んだメルセデスを見せる。タルコニ警部は、シェフがメルセデスなど高級車を買うはずはないと疑惑を深める。

最後にタルコニ警部は、フランクのBMWから2人の警察官の遺体も見つかったと言う。そしてフランクとライに昼食後警察署まで来るようにと言って帰っていった。

タルコニ警部が帰った後、ライはフランクに警察署には一緒に行かないと言う。フランクはライをどうするべきか決めかねていた。

その時フランクは辺りが妙に静かなことを感じるや否や、ロケットミサイルがフランクの家に発射される。家が爆破されてしまい、間髪入れず銃が乱射される。乱射が止んだかと思うと、ロケット弾が撃ち込まれて家は木っ端みじんとなった。

警察署にて事情徴収

爆発を受ける前に、フランクとライは家の中に設置されているエレベーターに乗り、海から脱出していた。
フランクはまだ自分がルールを破り荷物を開けてしまったことを後悔しており、「すべての諸悪の根源は自分がルールを破ったことだ」と繰り返し口にしていた。

落ち着いたフランクとライは、警察署へと出頭し事情聴取を受ける。「警部が帰った後、海岸を散歩して、岬の先で泳いでいたら家が燃えていた」と報告するが、タルコニ警部はもちろん信じない。

目撃者もいないし、フランクの家の周りに落ちている5000本近い薬莢も普通ではない。フランクは「襲撃する家を間違えたのだろう」と言うが、タルコニ警部は全く信じず探りを入れてくる。
フランクはしらを切り通し、タルコニ警部は納得していない様子だった。

犯人捜し

事情聴取の途中、タルコニ警部が部下に呼ばれ退席した。その隙に、ライは警部のコンピューターを使って警察のデータベースに侵入する。ウォールの情報を警察の車のデータベースから探し出し、印刷して席に戻ると同時にタルコニ警部が部屋に戻ってくる。

そのまま事情聴取が終わり、タルコニ警部に見送られて2人は外へ出た。ライはタクシーでウォールのところへ行くと言うが、フランクは勝手にどうぞと言いタクシーへの乗車を拒否した。

その後もライは、車や家の件で復讐をしないのかと言うが、フランクは意見を変えない。立ち去ろうとしたフランクにライは、「400人もの中国人が船のコンテナに積まれてるの」と言う。そして「そのコンテナの番号を知っているのは奴（ウォール）だけなのよ」と言うとフランクは立ち止まり、振り返る。

結局フランクは、ライと一緒にウォールのところへ向かった。