パッチギ!(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『パッチギ!』とは、2005年に井筒和幸監督にて描かれた映画。1960年代の京都を舞台に、日本人の少年と在日朝鮮人の少女との間で巻き起こる青春ラブストーリーである。府立東高校2年生の松山康介は担任教師に命じられ、生徒同士の争いが絶えない朝鮮高校へサッカーの試合を申し込みに行く。音楽室でフルートを吹いていた朝鮮高校の番長の妹キョンジャに一目惚れし、彼女に近づきたい一心で、朝鮮語を覚え、彼女が演奏していた曲『イムジン河』を練習する康介。だが二人を待ち受ける壁は高かった。
『パッチギ!』の概要
『パッチギ!』とは、2005年公開の日本映画。監督は井筒和幸。キネマ旬報ベストテン1位、毎日映画コンクール最優秀作品賞、ブルーリボン賞作品賞を受賞。2009年には山本裕典主演で舞台化された。舞台演出は茅野イサム(劇団扉座)が務め、映画版の監督だった井筒和幸は総合演出を務めた。タイトルの『パッチギ』は朝鮮語で「突き破る、乗り越える」ならびに「頭突き」の意。オール京都ロケで撮影され、京都の街並みはほとんどが撮影時の風景そのままの姿であり、CGで電線やアンテナ、ビル群などを消すことはほとんどなかったという。エキストラには朝鮮総連協力の下、実際の在日朝鮮人が多数出演した。
1968年、京都にある府立東高校2年生の松山康介は、担任に命じられ、常日常から争いの絶えない朝鮮高校(朝高)にサッカーの練習試合を申し込みに行くことになる。康介と友人の紀夫はしぶしぶ朝鮮高校を訪れるが、たまたま音楽室でフルートを吹いていた少女、キョンジャに一目惚れする。しかしキョンジャの兄、アンソンは同校の番長であった。キョンジャと仲良くなりたい一心で康介は必死で韓国語を勉強し、楽器店でギターを購入。初めて出会った時にキョンジャが演奏していた『イムジン河』を覚え、彼女の前で演奏することを決意する。
『パッチギ!』のあらすじ・ストーリー
1968年 京都
1968年、京都では人気バンド「オックス」のショーが行われていた。ライブ会場では熱狂のあまり倒れるファンが続出、救急隊員は大忙しで対応にあたっていた。「オックス」の髪型は、当時流行のキノコヘアーで、「この髪型にすれば女の子にモテる」と言う紀夫の提案で、二人はキノコヘアーで街を歩く。しかし、女の子たちには見向きもされないどころか、笑い者にされてしまう二人なのであった。
朝鮮高校と対立関係にあった府立東高校
時を同じくして、朝鮮高校の女子生徒キョンジャたちが街を歩いていると、すれ違いざまにぶつかったと文句をつけ、日本人の不良生徒がタバコの灰をキョンジャの制服に吹きつける悪さをする。その場にいた友人が、朝鮮高校の男子生徒を呼びにいくと、間もなく大勢の生徒たちが勢いよく現場に駆けつけた。たまたま近くにいた康介たちは、巻き込まれないように京都観光のバスの中に逃げ込むも、朝鮮高校の生徒たちもバスの中に乗り込み、修学旅行生たちに殴りかかってしまう。最終的にキョンジャに絡んだ不良生徒を見つけると、その生徒をボコボコにし、バスごとひっくり返してしまう。その様子を見て朝鮮高校の生徒たちは歓喜の声をあげるが、巻き込まれてしまった康介たちは、呆然としてその場に立ち尽くしてしまうのであった。
運命の出会い
翌日、府立東高校では、昨日のバス横転事件のことが取り上げられていた。担任は、同じ京都の高校生同士仲良くするには、それぞれが何をするべきか考えるように言い、康介と紀夫に朝鮮高校にサッカーの親善試合を申し込みにいくよう命じる。しぶしぶ、二人は朝鮮高校を訪れることに。
その頃、朝鮮高校の男子トイレでは、番長のアンソン、バンホー、チェドキが人民軍や戦争の話をしていた。サッカー部のアンソンは祖国の代表として、サッカーの試合に出るために祖国に帰ると決心していた。
朝鮮高校で道に迷っていた康介たちは、教室にいた女子生徒に声をかけるが、それはバス横転事件の時に現場にいた女子生徒だった。職員室がどこか聞き、廊下に出ると、アンソンたちに遭遇。危うく絡まれそうになり、慌てて逃げ出したところで、康介は吹奏楽の音色にひかれ、音楽室へ。そこにはフルートを吹くキョンジャの姿があった。ひとめでキョンジャに恋をし、声をかけようとするも、キョンジャは番長アンソンの妹であることを知る。康介はサッカー試合の申し込みの手紙を渡し、慌てて朝鮮高校を後にするのであった。
因縁の相手、大西との対決
街のボウリング場に、アンソンとバンホー、チェドキが遊びに行くことに。バンホーとチェドキがボウリングをしている間、アンソンは、ここで働く彼女の桃子と店裏でイチャついていた。すると、ボウリング会場に因縁の相手である府立東高校の大西たちの姿が現れる。バンホーとチェドキはすぐさま戦いに応じ、室内の騒ぎを聞きつけたアンソンも後から参戦。ボウリングのピンを投げ飛ばし、容赦無く殴りかかった結果、朝鮮高校の生徒が圧勝する。
悩み始める康介
康介は楽器店を訪れて、そこでたまたま出会った居酒屋店員の坂崎と康介は朝鮮や戦争の話をする。レコードで『イムジン河』を聞きながら、康介は朝鮮人と仲良くするにはどうすればいいのか悩み始める。
親善サッカー試合にて
後日、朝鮮高校では府立東高校とのサッカーの親善試合が行われることに。朝鮮高校は強豪校で、府立東高校は早速一点入れられてしまう。すると、それに焦った日本人選手は朝鮮高校の選手にファールをけしかけ、試合会場は騒然とし始める。その様子を屋上で見ていたアンソンは、頭に血を登らせ、日本人選手に襲いかかり、最終的に審判をしていた教師にまで手を出した。
その後、街を歩いていたアンソンやバンホーたちは、府立東高校の大西たちから不意に襲撃を受け、ボコボコに。反撃するも、鉄棒で殴られ、溶けたコンクリートの塊をつけられ、やられてしまう。
キョンジャをデートに誘う康介
康介が『イムジン河』の楽譜を買い、ギターで歌う練習を始めた頃、街中を歩いていたアンソンたちは公衆電話を集め破壊、その中に入っているお金を集め始める。公衆電話にガソリンで火をつけ、アンソンたちはその場を立ち去るのであった。
翌日、康介は朝鮮語の練習をしながら電話をしにいこうとするが、なぜかそこには公衆電話はない。康介は別の場所にいき、キョンジャに電話をし、『イムジン河』が演奏されるコンサートに誘うのだが、その日はキョンジャもコンサートがあり、行くことができず。するとキョンジャは自分のコンサートに来るよう誘い、康介はふたつ返事で「絶対に行く」と約束をするのであった。
番長アンソンの送別会
公園ではアンソンの送別会が行われていた。キョンジャや友人たちが演奏をし、暖かな雰囲気が会場に流れる。アンソンは皆の前で、社会貢献のために精進すると約束し、母と妹のことを頼むと話す。キョンジャは祖国に帰るかは母次第と言い、帰国を迷っていた。祖国が楽園だという人もいれば、複雑な思いを抱える人もいて、思いはそれぞれだった。
そこに突然ギターを持った康介が登場。身構えるアンソンたちであったが、キョンジャは自分が康介を招いたと説明し、みんなに理解を求める。キョンジャ家族は康介を暖かく迎え入れ、キョンジャと康介は一緒に『イムジン河』を演奏。その場にいた朝鮮人たちは歓迎ムードに。するとそこにたまたま通りかかったラジオ局の番組ディレクターが康介に目をつけ、番組で演奏をしてみないかと声をかけるのであった。
立ちはだかる壁
夜の鴨川近くを自転車で走っていた康介は、向こう岸で演奏しているキョンジャに遭遇する。川を渡った康介は、彼女に交際を申し込むが、「もしもの話よ。私とコウちゃんがずーっと付き合って、もし結婚するなんてことがあったら…朝鮮人になれる?」と問われ、答えに詰まってしまう康介なのであった。
アンソンの子供を身篭る桃子
アンソンに何も言わず別れを切り出した桃子は、病院で大きなお腹をさすっていた。誰にも告げず一人で出産に挑もうとしていることを知った看護師のガンジャはアンソンの家に乗り込み、今すぐ桃子に電話をするようせき立てる。
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目次 - Contents
- 『パッチギ!』の概要
- 『パッチギ!』のあらすじ・ストーリー
- 1968年 京都
- 朝鮮高校と対立関係にあった府立東高校
- 運命の出会い
- 因縁の相手、大西との対決
- 悩み始める康介
- 親善サッカー試合にて
- キョンジャをデートに誘う康介
- 番長アンソンの送別会
- 立ちはだかる壁
- アンソンの子供を身篭る桃子
- チェドキの死
- 歌ってはいけない歌なんてない
- これがパッチギだ!
- 『パッチギ!』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 松山康介(演:塩谷瞬)
- リ・キョンジャ(演:沢尻エリカ)
- リ・アンソン(演:高岡蒼甫)
- 康介とキョンジャ、アンソンと親しい仲間達
- 吉田紀夫(演:小出恵介)
- モトキ・バンホー(演:波岡一喜)
- チェドキ(演:尾上寛之)
- 桃子(演:楊原京子)
- チョン・ガンジャ(演:槙ようこ)
- その他の登場人物
- 大西(演:ケンドーコバヤシ)
- 近藤(演:桐谷健太)
- 坂崎(演:オダギリジョー)
- 担任・布川先生(演:光石研)
- ラジオ局ディレクター 大友(演:大友康平)
- ラジオ局長 椿(演:松澤一之)
- 『パッチギ!』の用語
- パッチギ
- 『パッチギ!』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- リ・キョンジャ「もしもの話よ。私とコウちゃんがずーっと付き合って、もし結婚するなんてことがあったら…朝鮮人になれる?」
- 番組ディレクター「どんな理由があろうとな、歌ったらあかん歌なんかあるわけないんだ!この銀河系探してもな、天体望遠鏡で見渡してもな、そんなものどこにもないんだよ!」
- 『パッチギ!』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 波岡一喜にとって撮影は「地獄の2ヶ月」だった
- ケンドーコバヤシ「井筒監督に騙された!」
- 『パッチギ!』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:ザ・フォーク・クルセダーズ「イムジン河」
- 挿入歌:ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」
- 挿入歌:ザ・フォーク・クルセダーズ「あの素晴らしい愛をもう一度」