桐島、部活やめるってよ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
男子バレーボール部のキャプテンだった桐島が部活をやめた。その噂はあっという間に学校中に広まるが、肝心の桐島は恋人の前にも、親友の前にも姿を現さない。桐島はなぜ部活を辞めたのか、そしてどこへ行ってしまったのか。突然の出来事は、あらゆるところで小さな波を立てていき、やがて映画部の前田の所にもやってくる。第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのデビュー作を、吉田大八が映画化した青春群像劇。
『桐島、部活やめるってよ』の概要
『桐島、部活やめるってよ』は、2012年公開の日本映画。原作は小説すばる新人賞初の平成生まれでの受賞者となった朝井リョウ。
CMディレクターとして数々のCMを手掛け、自身初の長編映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待された、吉田大八が監督を務めた。
第36回日本アカデミー賞において最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀編集賞などを受賞。その他にも国内の主要な映画賞で数々の賞を獲得し、8か月にわたりロングラン上映された。
『桐島、部活やめるってよ』のあらすじ・ストーリー
高校2年の2学期、ある金曜日の朝礼。映画部の前田涼也は、同じ部の武文と共に体育館の檀上にいた。映画甲子園で自主制作映画『君よ拭け、僕の熱い涙を』(以降:君拭け)が一次予選を突破したことを紹介されていたのだ。しかしこの映画のシナリオは顧問が書いたものだった。
前田には温めていたシナリオがあった。それは『生徒会・オブ・ザ・デッド』という学園物のゾンビ映画だ。顧問とは『君拭け』を撮った後は前田のシナリオで映画を作るという約束をしていた。
しかし放課後、前田と武文を呼び出した顧問は、『生徒会・オブ・ザ・デッド』にはリアリティがないと一蹴し、『君拭け』の続編を提案する。
納得がいかないまま部室へ戻った前田は、部員たちに「やっぱりやりたいことをやろう」と『生徒会・オブ・ザ・デッド』の強行撮影をもちかける。
その頃、菊池宏樹は友人の友弘、竜汰と3人でバスケをしながら、親友の桐島が部活を終えるのを待っていた。宏樹は野球部に所属しているが、しばらく部活には出ていない。何をやらせても器用にこなす宏樹だったが、何に対しても本気になれなかった。
桐島は部活中だと思っていた宏樹だが、友弘から桐島がバレー部をやめたことを聞かされる。友弘は親友の宏樹なら当然知っていると思って言ったのだが、宏樹は何も知らなかった。そこへ偶然やってきた宏樹の彼女・沙奈は、桐島が部活を辞めたことを知り、急いで桐島の彼女である飯田梨沙の元へ向かう。梨沙もまた桐島を待っていたのだ。
そんな宏樹たちを、屋上で見つめている人物がいた。教室で宏樹の後ろの席に座っている沢島亜矢だ。吹奏楽部の部長である亜矢は、授業が終わると真っ先に部室へ行き、サックスを持って屋上へ向かう。彼女の指定席であるその場所からは、いつもバスケをしながら桐島を待っている宏樹の姿が見えた。
宏樹には沙奈という彼女がいることも知っている。校内で人気者の宏樹が自分など相手にするわけがない、そう思っていた。だからこそ亜矢は後ろの席から、遠く離れた屋上から、彼を見つめることしかできなかった。
日曜日。ひとりで映画を観に来ていた前田は、終わって席を立とうしたとき、同じクラスの東原かすみを見つける。2人は中学が一緒で、お互い映画好きということもあり時々話をしていたが、高校に入ってからはほとんど話すことはなかった。
たまたまひとりで来たというかすみに、意気揚々と映画の話をする前田。話はいまいち盛り上がらず、すぐにかすみは帰ってしまったが、久しぶりに話ができた前田は嬉しさを隠せなかった。
月曜日。バレー部の久保孝介は、朝練にも出ず梨沙を探していた。同じ部の小泉風助は朝練に来なかったことを責めるが、久保は相手にしない。そして梨沙を見つけると、桐島がバレー部を辞めたのは梨沙のせいだと彼女に詰め寄る。しかし梨沙は「負けたからって当たらないでよ」軽くあしらい、そばにいた小泉に「試合に出られて良かったじゃん」と言い放つ。
これまで順調にいい結果を残してきたバレー部だったが、キャプテンである桐島を失ったことで部員たちは動揺し、土曜日の試合で負けてしまったのだ。桐島の代わりにレギュラーになった風助は、試合に出られる喜びもあったが、戸惑いやプレッシャー、そして桐島との歴然とした実力の差に押しつぶされそうになっていた。そんな風助に梨沙の言葉は容赦なく突き刺さり、彼は無言でその場を後にするしかなかった。
昼休み、仲良しの宮部実果を見つけた沙奈は、朝のバレー部と梨沙のやりとりを笑いながら話す。いつもは梨沙や沙奈に対し意見を言わない実果だったが、苛立ちを隠せずその場を立ち去ってしまう。
バドミントン部の実果は、同じ体育館で練習する風助のことを時々見ていた。同じ部のかすみとの能力差を感じていた実果は、どんなに努力しても敵わない相手がいるということを悟っていた。そして絶対的エースの陰に隠れて努力し続ける風助に、自分を重ねていたのだ。
火曜日。前田は顧問に呼び出され、『生徒会・オブ・ザ・デッド』の撮影をやめるよう注意されてしまう。武文に相談すると、「こんな楽しいの初めてなんだ。だからお前は折れちゃだめだ」と言われ、撮影を続けることを決意する。
放課後、撮影を始めようとすると、どこからか楽器を吹く音が聴こえた。見に行ってみると、そこにはいつも屋上で音出しをしているはずの亜矢がいた。
亜矢はこの日偶然、沙奈が宏樹に「放課後待ち合わせてどこかへ行こう」と話すのを耳にしていた。そして放課後、屋上ではなく待ち合わせ場所の近くで音出しをしていたのだ。前田は「音が入るから移動してくれないか」と頼むが、どうしてもここで吹きたいと切実に訴える亜矢に根負けし、屋上で撮影することにした。
しばらくすると沙奈が現れた。亜矢がいるのを見つけた沙奈は、宏樹が来ると「ここでキスして」と言い、亜矢の前で宏樹とキスをする。亜矢は必死に音出しを続けようとするが、我慢できずにその場を去ってしまう。音楽室に戻った亜矢は、迷いを吹っ切るように演奏に没頭する。
その頃、ひとりバスケをしていた友弘は、屋上に桐島らしき男子生徒の姿を見つけ、急いで屋上へ向かう。それを見つけた竜汰は宏樹に連絡し、沙奈と帰ろうとしていた宏樹も合流する。バレー部や梨沙、沙奈、かすみや実果も後を追い、みんなが屋上へと駆け込む。しかしそこに桐島の姿はなく、映画部が撮影をしているだけだった。
撮影を荒らされた前田は久保らに謝れと詰め寄る。謝るどころか八つ当たりをされた前田は、ゾンビに扮した部員たちに対し「こいつら全員食い殺せ!」と叫ぶ。そしてドキュメンタリータッチのゾンビ映画の撮影が始まるのだった。
『桐島、部活やめるってよ』の登場人物・キャラクター
前田 涼也(神木 隆之介)
映画部所属。顧問がシナリオを書いた『君よ拭け、僕の熱い涙を』の監督を担当し、創部して初めて映画甲子園で一次予選を突破。続編を作れと顧問に言われるが、「やりたいことをやろう」と自ら脚本を書いた『生徒会・オブ・ザ・デッド』の強行撮影を始める。
中学時代、映画好きという共通点があったかすみのことが気になっているが、高校に入ってからはほとんど話すことがなかった。クラスでは目立たない存在で、いつも同じ映画部の武文と映画の話をしている。
東原 かすみ(橋本 愛)
バドミントン部所属。梨沙、沙奈、実果と仲が良く、いつも4人で行動している。輪を乱さないよう気を使っているが、女子特有の友達付き合いが苦手で、特に目立つ存在の梨沙や沙奈との間には少し壁を感じている。そのため、仲のいい友人たちにも自分の話や本音をあまり話さない。映画館で偶然前田に遭遇し、それ以降は学校でも話しかけるようになる。
菊池 宏樹(東出 昌大)
野球部に所属しているが、最近は部活に出ていない。運動神経が良く何をやっても器用にこなすので、周りからは完璧な人間だと思われている。その一方でこれだというものを見つけられず、進路に関しても漠然とした不安を抱いている。桐島とは塾が一緒で親友だったが、何の相談もなく部活をやめてしまったことにショックを隠せない。
沢島 亜矢(大後 寿々花)
吹奏楽部で部長を務め、コンクールに向けて部員をまとめている。クラスで前の席に座る宏樹のことを密かに思っていて、授業が終わると一目散に楽器を持って屋上へ行き、バスケをする宏樹の姿を見ながら音出しをするのが日課。部長としてしっかりしなければならないのに、宏樹への思いで集中できない自分に腹を立てている。
飯田 梨沙(山本 美月)
帰宅部。学校では誰もが知るマドンナ的存在。自分でも特別な存在であることを自覚しており、どこか周りを見下したような態度をとることがある。桐島と付き合っていたが、部活を辞めることは聞かされておらず、その後も全く連絡が取れないことにイライラしている。
野崎 沙奈(松岡 茉優)
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