シャイニング(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『シャイニング』とは、スタンリー・キューブリック監督の傑作ホラー映画だ。
原作はモダンホラーの巨匠、スティーヴン・キング。
壁から出てきたジャック・ニコルソンの狂気に満ちた顔のポスターで、この映画の怖さが伝わるだろう。
小説家志望のジャックは、冬季閉鎖されるホテルの管理人として雇われ、妻のウェンディと息子のダニーを連れてホテルに住み込むことになる。
だがそのホテルは、過去に殺人事件が起きたいわくつきのホテルだった。
ホテルでのジャック一家の恐怖を描いたのが『シャイニング』だ。
『シャイニング』の概要
『シャイニング』は1980年にアメリカで公開されたホラー映画。原作はスティーブン・キング。『ミザリー』『ミスト』『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』などの恐怖映画の原作も多いが、『ショーシャンクの空に』や『スタンド・バイ・ミー 』『グリーンマイル』といったファンタジックな作品もスティーブン・キングの魅力だ。
この『シャイニング』はホテルで一家を襲う恐怖を描いた作品。
監督と脚本はスタンリー・キューブリック。『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『アイズ ワイド シャット』など、アート要素の強い作品を手がけた監督だ。
キューブリックが描いた『シャイニング』はあまりにも原作とかけ離れていたため、スティーブン・キングはキューブリックを批判している。
映画の舞台となるのは、ロッキーの山間にあり、雪が多いため冬季は孤立状態となるホテル「オーバールック」。
主人公のジャックは、冬の間ホテルを管理する管理人として雇われ、妻と一人息子を連れホテルに住み込むが、ホテルではさまざまな超常現象が起こる。
ジャックを演じるのは、名優ジャック・ニコルソン。彼の代表作ともなった。
妻のウェンディを演じたのはシェリー・デュヴァル。1977年の映画『三人の女』でカンヌ映画祭及びロサンゼルス映画批評家協会賞にて最優秀女優賞を受賞している。彼女にとっても『シャイニング』は代表作である。
そして息子のダニーを演じたのがダニー・ロイド。当時6歳で、5000人の候補者の中から選ばれている。成人後は俳優をやめ、生物学の教授になったそうだ。
現実なのか幻想なのかわからない作りになっているため、作品的には賛否両論あるが『シャイニング』は興行的には成功をおさめ、キューブリックにとっても代表作となる。
「ホラー映画の金字塔」ともいえる『シャイニング』。今でもホラー映画のランキングでは上位に入る作品だ。
『シャイニング』のあらすじ・ストーリー
オーバールック・ホテルの冬季管理人となったジャックは家族とともにホテルに向かう
主人公のジャックは小説家志望で、家族は妻のウェンディと息子のダニー。人里離れたロッキーの山間にあるホテル「オーバールック」では、冬季閉鎖となる5か月間、管理人を置いていた。
教師だったジャックは執筆活動に専念するため管理人の面接に行き、1970年に起きた事件について聞かされる。
それは過去に管理人だったグレーディが、自分の妻と双子の娘を斧で殺害し、自らも自殺をした、というもの。閉ざされた生活により、精神に異常をきたしたのだ。
その話は全く気にしないジャックは管理人に採用され、ホテルが閉鎖される日に家族とともにホテルに向かう。
ホテルに着いたジャック一家は、ホテルの支配人、スチュアート・アルマンに迎えられ、ホテルを案内される。
ダニーとハロランのシャイニング(超能力)
ウェンディとダニーに厨房などを案内していたコックのハロランは、祖母とテレパシーで話せる超能力の持ち主。ダニーには彼の中にもう一人トニーという人物が存在し、トニーには予知能力がある、ということをダニーから聞き、ダニーとはテレパシーで通じ合うようになる。このことはダニーの両親は知らない。
ハロランはその能力「シャイニング(超能力)」の力を大切にするようにダニーに言う。
アルコール依存症だったジャックが、酒に酔って一度だけダニーにケガをさせてしまったこがあり、このころからダニーには超能力が身につくようになったのだ。
ホテルの中でダニーは、普通の人には見えない双子の女の子や、エレベーターから流れる大量の血などを見ていた。
1か月が経ったころ。ダニーは三輪車でホテルの中を走り回るなど、それまでは問題なく過ごしていたが、断酒していたジャックは幽閉生活にも嫌気がさし、執筆活動もうまくいかないことからアルコールを欲しがるようになる。
ダニーとウェンディはホテルの横にある巨大迷路で遊び始めた。
大雪が降り、電話が不通となってしまう。ウェンディは森林警備隊に連絡するが、冬の間は直せないので、連絡は無線でするように言われる。
だんだんジャックがおかしくなっていく。顔つきも狂気を帯びてきた。
ある日ダニーが三輪車でホテルを走っていると、237号室のドアが開いている。その部屋はハロランから入ってはいけないと言われていた部屋だ。だがダニーはその部屋に入ってしまう。
ストーリーは夢か現実かわからない世界になってゆく
ジャックの叫び声でウェンディが駆けつけると、ジャックはウェンディとダニーを殺す夢を見たと言う。
ウェンディが慰めているとダニーが戻ってきた。ダニーは衣服が乱れ、首には絞められた跡があった。ウェンディはジャックを疑うしかなかった。
疑われたジャックは、ホテルのバーに向かった。そこにはいるはずのないバーの支配人、ロイドがいた。ジャックは昔からの知人のようにロイドに話しかける。
ロイドに酒を注がれ、ジャックの断酒は終わった。
ダニーが237号室で女性に首を絞められた、と言ったことからウェンディはジャックを探し、バーにいたジャックを見つける。そこにはロイドもアルコールも存在していない。ウェンディはホテルに別の何者かがいると告げた。
ウェンディに頼まれ237号室に行ったジャック。するとバスルームから若い全裸の女性がジャックを誘う。ふたりはキスをするが、鏡を見るとその女性は老婆であり、腐りかけていたのだ。
あわててジャックは部屋を出るが、ウェンディには何もなかったと嘘を言う。
そのころテレパシーでダニーとつながっていたハロランは、ダニーの身の危険を感じ森林警備隊に連絡をした。
ジャックがまたバーにいくと、そこでは一昔前の衣装を着た人たちがパーティをしていた。そこでジャックはグレーディという男性と知り合う。家族を殺害した元管理人の名前がグレーディだったことから「管理人をしていたか?」と聞くが、グレーディはしてないと言い、ジャックこそが元管理人だと言った。グレーディはジャックの息子が外部から人を呼ぼうとしているので、躾けた方がいいとジャックに告げる。
ジャックはウェンディとダニーを斧で襲う
ウェンディはジャックのタイプライターから次々と流れてくる「All work and no play makes Jack a dull boy(和訳:仕事ばかりで、遊ばないとジャックはバカになる)」の文字に恐怖を覚える。ジャックがおかしくなったこと感じたウェンディは、ダニーと雪上車で逃げようと考えていた。
ハロランから連絡を受けた森林警備隊が、ホテルに無線連絡を入れるが、その音を聞いたジャックは無線機を壊し、さらに雪上車もエンジンを壊し動けなくしてしまう。
無線が通じないと知ったハロランはホテルに向かうため、雪上車を手配する。
ウェンディはジャックと話そうとするが、ジャックは狂気にとりつかれていたため、ウェンディはバットでジャックを殴りつけた。
階段から落ち、気絶したジャックを食糧庫に入れ鍵をかけた。そのジャックに「家族に躾けをするように」と、グレーディがドアの向こうから話しかける。
何故か食糧庫のカギが開く音がした。食糧庫を出たジャックは、斧を持ち家族を探す。ダニーは取りつかれたように「REDRUM」とつぶやき、寝ていたウェンディは目が覚めた。ダニーがドアに書いた「REDRUM」の文字は、鏡越しに見ると「MURDER(殺人)」になり、ウェンディは驚愕する。
ウェンディとダニーがいる部屋を斧でぶち壊すジャック。小さな窓からダニーを逃がし、ウェンディも出ようとするが窓が小さすぎて出れない。
ドアのカギを開けようとジャックが手を出したとき、ウェンディはナイフでジャックの手を切りつけた。
そのとき雪上車の音がして、ジャックは誰かががやって来たことを知り、ロビーに向かい斧でハロランを殺害。ホテルに戻ったダニーを見つけ、後を追う。
ホテルでダニーを探しまわるウェンディ。頭から血を流した男など、あり得ないものがウェンディの前に現れる。
巨大迷路の中は雪が積もっていて、ジャックはダニーの足跡を追っていた。積雪で足跡が残ることを逆に利用し、ダニーはジャックから逃れ、巨大迷路から脱出する。何度もその迷路で遊んでいたので、迷路のことはよくわかっていたのだ。
ダニーを探してホテルから出てきたウェンディとダニーはそこで再会し、ハロランが乗ってきた雪上車でホテルから脱出。翌朝巨大迷路の中に、凍死したジャックの遺体があった。
映像はホテルの中を映していた。ホテルの壁に「1921年7月4日」の日付が入ったパーティの写真があり、そこには楽しそうに笑うジャックの姿が映っているのだった。
『シャイニング』の登場人物・キャラクター
ジャック・トランス(演:ジャック・ニコルソン)
小説家志望の教師。静かな環境で執筆活動をするため、冬季閉鎖されるオーバールック・ホテルの管理人に応募し採用される。
アルコール依存症で、一度だけ息子を誤って傷つけ断酒している。
妻と息子を連れ隔離されたホテルで生活を始める。タイプライターに向かうもなかなか進まず、壁にボールをぶつけたりする日々を送っていたが、やがてアルコールを欲するようになり、精神が崩壊していく。
ウェンディ・トランス(演:シェリー・デュヴァル)
ジャックの妻。ジャックとともにオーバールック・ホテルで暮らすようになるが、だんだんジャックから執筆活動の邪魔だと言われるようになる。
ホテルの敷地にある巨大迷路で、息子のダニーとよく遊んでいた。
ある日ジャックのタイプライターに、同じ言葉が連なって印刷されていたのを見て、ジャックが普通ではないことを知り、ダニーを連れて逃げようとする。
ダニー・トランス(演:ダニー・ロイド)
ジャックとウェンディの息子。両親も気づかなかった超能力をもっている。またダニーの中にはトニーという、予知能力を持った人格が存在していた。
オーバールック・ホテルのコック、ハロランとは意思で通じ合うことができる。
ホテルの中を三輪車でまわって遊んでいた。
ホテルでは普通の人には見えない双子の女の子など、いろいろなものを見ていて、ジャックが自分と母親を殺しに来ることも予知した。
ディック・ハロラン(演:スキャットマン・クローザース)
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目次 - Contents
- 『シャイニング』の概要
- 『シャイニング』のあらすじ・ストーリー
- オーバールック・ホテルの冬季管理人となったジャックは家族とともにホテルに向かう
- ダニーとハロランのシャイニング(超能力)
- ストーリーは夢か現実かわからない世界になってゆく
- ジャックはウェンディとダニーを斧で襲う
- 『シャイニング』の登場人物・キャラクター
- ジャック・トランス(演:ジャック・ニコルソン)
- ウェンディ・トランス(演:シェリー・デュヴァル)
- ダニー・トランス(演:ダニー・ロイド)
- ディック・ハロラン(演:スキャットマン・クローザース)
- スチュアート・アルマン(演:バリー・ネルソン)
- デルバート・グレーディ(演:フィリップ・ストーン)
- ロイド(演:ジョー・ターケル)
- 双子の姉妹の霊(演:ルイーズ・バーンズ、リサ・バーンズ)
- 237号室のバスルームにいた若い女の霊(演:リア・ベルダム)
- バスルームにいた老婆の霊(演:ビリー・ギブソン)
- 『シャイニング』の用語
- シャイニング
- オーバールック・ホテル
- 237号室
- 『シャイニング』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ジャックが斧でドアを壊し顔をのぞかせるシーン
- エレベーターから血があふれ出すシーン
- ブルーのおそろいのワンピースを着た双子の姉妹
- 巨大迷路
- 「All work and no play makes Jack a dull boy」の文字
- 『シャイニング』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
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