パルムドール受賞作品! 重厚な人間同士の営みを描く映画「雪の轍」が面白い!

第67回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したトルコ映画。カッパドキアで撮影された本作はその映像美もさることながら、人間の心を奥深くまで掘り出すようなセリフの応酬が特徴です。3時間を超える大作でありながら、全編を通して引き込まれるように魅入ってしまう。映画「雪の轍」をご紹介致します。

あらすじ・ストーリー

世界遺産カッパドキアの「オセロ」というホテルのオーナーである元舞台役者のアイドゥン(ハルク・ビルギナー)は、若くてきれいな妻と、離婚して出戻ってきた妹と生活していた。思い通りに暮らす毎日を送っていたものの、冬が訪れ雪に覆い尽くされたホテルの中でそれぞれの内面があらわになっていき、互いに感情をぶつけ始める。さらに、アイドゥンへの家賃を払おうとしない聖職者一家との関係が悩みの種で……。

出典: movies.yahoo.co.jp

自分に甘く、他人に厳しい人間たちを描いた作品

登場人物の誰もが滑稽な感性の持ち主です。互いに足を引っ張り合いながら、自分だけ優位に立とうとして結局は同じ穴の狢に戻ってしまう。他人がいなければ成り立たない自己。全員が全員、自分というものを勘違いしていて、他人に対してはいつも上から目線。大量に交わされるセリフからそのような醜い内心が浮き彫りになるのですが、聞いていてかなり不快でした。よくもまあそこまで他人をこき下ろせるなと。しかし次の瞬間、自分の中にも同じような感性が潜んでいるのに気づかされ、愕然とするのです。

3時間という長時間の映画ではありますが、そのほとんどが会話劇に費やされている印象。ワンシーンワンシーンの掛け合いがとんでもなく長く、それでいて同じところを堂々巡りしているような会話なので滑稽極まりないです。まるで雪上に記された轍を何度も踏み進んでいくよう。一向に前には進まず、溝だけが深くなっていく。タイトルの意味は、そういうことなのかなと思ったり。

カッパドキアの美観は特に感じられず、ラストも曖昧

カッパドキアの景色の美しさは特に感じられませんでした。そもそもが人間の内面をテーマにしたような作品ですのであまり外でのシーンというものがない。しかしながら、全編をカッパドキアで撮影したというのだからもっと美しい景色を映しても良いのではという感じです。そうでないと、あまりそこで撮影した意味がないというか。

ラストは結局、元に戻ります。誰もどこにも進めないまま、気持ちだけを擦り減らして同じ場所で再び人生を送り始める。和解めいたセリフがモノローグで語られますが、どうなんでしょうね。一時的なものに終わり、しばらく経てばまた同じことの繰り返しになるような気がします。どこにも行けないし、どこにも行かない。肯定するくせに、完全に否定もする。とにかく面倒くさい人々の集まり、なのでしょうね。

まとめ

とにかく長い映画。冗長というわけではなかったのですが、瞬発力のあるシーンもないので途中で集中力が途切れてだれてしまいます。セリフも長々としていて、それが1つの魅力となっている点は否めませんが、セリフを削れば2時間くらいの映画になったような気がします。原案はチェーホフということですが、丸きり原作というわけではない、らしい。今度原案に該当する作品を読んでみようと思います。重厚な作りで、玄人好みの映画となっています。ぜひご観賞ください。

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