『雪の轍』(ゆきのわだち)とは、2014年に公開されたトルコの映画。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督によって制作され、初公開の場となった第67回カンヌ国際映画祭において、グランプリに当該する「パルム・ドール」を受賞している。とある裕福な夫婦と、その周辺の人物たちがそれぞれに抱える葛藤を鋭く描き出し、人の心を奥深くまで暴いていくかのようなセリフの応酬が特徴の意欲作。全編をトルコのカッパドキアで撮影しており、その映像美も話題となった。
『雪の轍』(映画)の概要
『雪の轍』(ゆきのわだち)とは、2014年に公開されたトルコの映画。ロシアの劇作家で、小説家でもあるアントン・チェーホフの短編小説『妻』に着想を得て、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督が制作した。2014年に開催された、第67回カンヌ国際映画祭において、グランプリに当該する「パルム・ドール」を受賞している。また、映画雑誌『キネマ旬報』が主催する、第89回キネマ旬報ベスト・テンにおいて、外国映画部門の第8位に入賞するなど、日本においても高く評価された。
とある裕福な夫婦と、その周辺の人物たちがそれぞれに抱える葛藤を鋭く描き出し、人の心を奥深くまで暴いていくかのようなセリフの応酬が特徴の意欲作で、上映時間は3時間を超える大作。全編をトルコのカッパドキアで撮影しており、その映像美も話題となった。
『雪の轍』(映画)のあらすじ・ストーリー
裕福な大家と貧しい一家
元俳優のアイドゥンは、年の離れた妻のニハル、妹のネジらと共に、トルコのカッパドキアでホテルを経営し、裕福な暮らしを送っていた。アイドゥンは父の遺産として残されたいくつかの家を貸し出していたが、その中のひとつに暮らすイスマイル家は家賃を滞納しており、訴訟にまで話が進んでいた。
ある日、アイドゥンは使用人のヒダーエットと共に知人を訪ねていた。その帰路で、イスマイル家の息子がアイドゥンの車に投石。ヒダーエットが少年を捕まえたものの、小川を渡って逃げずぶ濡れになってしまった少年を、一度家へと送ることになった。すると、家賃の代わりに家財を回収され、気が立っていたイスマイル家の父は息子の所業を叱った後、アイドゥン達に喧嘩を売ってくる。何度も話し合いを重ねてきたが応じてもらえず、やむなく強制執行官を派遣したことが互いの間に溝を作ったようだった。
そんな日々の中、アイドゥンの元に集会所を新築するために支援して欲しいというメールが届く。慈善事業家であるニハルは、地元の名士である親友と共に支援について相談したが、彼女は支援に反対しているようだった。ニハルは緊急かそうでないかで支援の判断をしているらしく、新築する前に場所の工夫ができるはずだと持論を述べる。
その後、イスマイル家の父の弟のハムディが、先日のトラブルの謝罪をするために訪れる。話によると、イスマイルは何らかの罪で過去に刑務所に収監されていたらしく、出所後は地域に馴染めず仕事にも就けないでいたという。そこに家賃滞納による訴訟が発生したため、窮地に陥っていたのだという。ハムディは訴訟を取り下げて欲しいと頼み込んできたが、妻とヒダーエットに任せきりで全く関与していなかったアイドゥンは、ヒダーエットと弁護士に相談するように伝えるのであった。
悪化する家族仲
アイドゥンの妹、ネジラの元夫はアルコール依存症だった。彼女は夫に抵抗して離婚騒動を起こし、実家へと帰ってきた。それ以来、元夫は依存症を悪化させており、その状況を知ったネジラも落ち込んでばかりいる。近頃は抵抗せずに謝っていれば別れることはなかったかもしれないと考えている。ネジラがニハルに相談すると、ニハルは「悪くもないのに謝るのは違う」と応じた。するとネジラは怒りはじめ、この家と兄夫婦のために自分だけが多大な犠牲を払っていると、強い言葉で抗議するのであった。
その日の夜、ネジラがアイドゥンの書斎を訪ね、彼が書いたコラムについて酷評する。ネジラが読んだアイドゥンのコラムは自己欺瞞のたまものらしく、上っ面だけを装っているように見えるらしい。このことについて激しい議論に発展した。ネジラは贅沢でも退屈な生活に飽き飽きしているようで、逃げられるなら逃げたいと思っていた。日々の生活で感じたストレスを兄へとぶつけるネジラ。兄妹は最終的に互いを詰り合い、険悪な雰囲気となってしまう。
翌日、ニハルが主催する慈善事業の会合があった。アイドゥンは夫として会合へ出席しようとしたが、ニハルは遠慮して欲しいと訪問を断った。彼女が慈善事業を始めてから1年が経過しているが、何の興味も示さなかった夫が、今回に限って参加するとはどういう風の吹き回しかと疑っているようだ。ニハルの意思は固く、アイドゥンが会合に参加するつもりなら自分が別の場所へ行くとまで言い放つ。
その場を離れたアイドゥンは、ホテルに滞在していた客も本格的な冬が来る前に次々と出発して行くのを見つめているしかなかった。
妻の決意と夫の想い
翌日、アイドゥンはニハルに寄付を考えていることを話した。すると、妻は「互いに干渉せずに上手くやってきたのに、台無しにするのか」とアイドゥンを罵る。これに対してアイドゥンは「ニハルは恵まれた人生を送ってきたから、本当の感謝もできない」と指摘し、ニハルへと一方的に不満を述べる。
さらに、アイドゥンはニハルに慈善団体の収支と活動の詳細を明かし、自分に全て預けろと言い始めた。ニハルはとうとう全てを諦め、アイドゥンに慈善団体の書類を全て明け渡す。
ところが、夜遅くになって手間取る作業が面倒になったのか、アイドゥンは首を突っ込むのはやめると言って書類を戻してくる。
ニハルはそんな夫に対し、内心を全て吐き出して「別れたい」と告げるが、アイドゥンはそれを受け流した。
翌日、外は一面の雪景色になっていた。ヒダーエットに駅まで送ってもらったアイドゥンは線路へと出て、ふと本来の目的地であるイスタンブールではなく、親友が営む牧場へと向かうことにした。
牧場に着くと、親友はヒダーエットとアイドゥンを歓迎した。アイドゥンはヒダーエットに自分が牧場にいることは秘密にしろと言う。親友の家には、ニハルの慈善団体へ協力している教師も来ていた。
はじめは教師を警戒していたアイドゥンだが、夕食を共にして和やかな雰囲気になると彼への警戒を解き始める。
同じ頃、ニハルは1人でハムディの家を訪ねていた。先日ハムディと共に自宅を訪ねてきた際、倒れたイスマイル家の息子が肺炎を患ったと聞いたためだ。快く彼女を家へ迎えたハムディから、ニハルはイスマイル家の抱える事情を聞き出した。
イスマイルは服役前に鉱山で働いていたが、自身の妻に付きまとう連中を追い払ったことで逮捕されたらしい。被害者への治療費と賠償金のために借金は膨れ上がり、服役後は怖がられて仕事に就くこともできない。一家の暮らしはハムディだけの収入ではとても賄いきれるものではなかった。そこで、ニハルはアイドゥンから預かっていた寄付金をそっくりそのまま、ハムディへと渡すことに決めた。しかしそこへイスマイル当人が現れ「いきなり大金を貰う理由はない」と怒った彼に、渡した金を暖炉へと投げ捨てられてしまう。
春まで戻らないつもりだったアイドゥンは、農場に一泊した後、帰路へと就いた。別れたいと言う妻に対し、アイドゥンには別れるという選択肢はなかった。ニハルには申し訳ないと感じつつも、アイドゥンは自分を見つめ直す決意を固めるのであった。
『雪の轍』(映画)の登場人物・キャラクター
主要人物
アイドゥン(演:ハルク・ビルギネル)
亡父からの膨大な遺産を受け継ぎ、ホテルの経営をしながら物書きとして日々を過ごしている元俳優。穏やかで比較的温厚ではあるものの、傲慢で自分勝手な面が目立つ。年下の妻であるニハルを溺愛しており、彼女の行動に口を出しすぎてしまう。
アイドゥンの家族・関係者
ニハル(演:メリサ・ソゼン)
アイドゥンの妻。彼よりもかなり年下で、黒髪の美しい女性。妻として尊重している体を装い、実は自分を子ども扱いしている夫に辟易としている。聡明で心優しく、熱心に慈善事業に取り組んでいるが、人を見下すような目つきをすることがあり、驕った考え方を押し付ける節が目立つ。
ネジラ(演:デメット・アクバァ)
画像右奥がネジラ
アルコール依存症の夫と別れ、実家へと出戻ったアイドゥンの妹。苦しむ夫を見放してしまったことに対して強い未練を残しており、兄の書いたコラムを酷評して日々のストレスを発散している。ニハルの人を見下すような目つきや驕った考え方にうんざりしている。
ヒダーエット(演:アイベルク・ペクジャン)
アイドゥンの使用人。右腕のような存在で、弁護士と共に資産の管理を行っている。アイドゥンの最側近。
イスマイル家
目次 - Contents
- 『雪の轍』(映画)の概要
- 『雪の轍』(映画)のあらすじ・ストーリー
- 裕福な大家と貧しい一家
- 悪化する家族仲
- 妻の決意と夫の想い
- 『雪の轍』(映画)の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- アイドゥン(演:ハルク・ビルギネル)
- アイドゥンの家族・関係者
- ニハル(演:メリサ・ソゼン)
- ネジラ(演:デメット・アクバァ)
- ヒダーエット(演:アイベルク・ペクジャン)
- イスマイル家
- イスマイル(演:ネジャット・イシレル)
- ハムディ(演:セルハット・クルッチ)
- 『雪の轍』(映画)の用語
- カッパドキア
- 『雪の轍』(映画)の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「自分に甘く他人に厳しい人間たち」の会話劇
- 『雪の轍』(映画)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 特に登場しないカッパドキアの美観
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