わたしを離さないで(ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『わたしを離さないで』とは、日系イギリス人のカズオ・イシグロが2005年に発表した長編小説で、日本ではTBS系列で放送された脚本・森下佳子によるテレビドラマである。「臓器提供」を目的としてこの世に誕生した「クローン人間」の子供時代から始まり、成長とともに人生を受け入れ、全うしていく姿がドラマの中で主人公の恭子、友彦、美和の姿を映しながら描いていく。見どころは、作品の中では、現実の人物に近いキャラの恭子が自分の人生を振り返りながらすべてを受け入れ「生きる」ことに前向きになるという作品になっている。
『わたしを離さないで』は原作者の作品のなかで最も日本的な作品
原作の『わたしを離さないで』は実在する世界ではなく、イギリスを舞台にしたパラレルワールドであるにもかかわらず、原作者であるカズオ・イシグロが語っていたのは、『わたしを離さないで』を発表した2015年までのイシグロの作品の中でもっとも「日本的」な小説だという。
イシグロにも流れている日本人としてのDNAと、これまでイシグロが触れてきた日本の映画、書籍などに自然と影響され、それが登場人物のふるまいなどにも表れているという。イシグロが最も影響されたのは、1950年代の日本映画、特に小津安二郎や成瀬巳喜男などの作品である。そして、イシグロ自身も子供のころに過ごした長崎での記憶が「日本の姿」や「記憶」として残り、作品にも反映されているのだ。
原作者が日本人のルーツを持ち、「日本の姿」や」「記憶」が作品に反映しているという点でも、この『わたしを離さないで』は、原作がイギリスを舞台にしている作品だということを忘れてしまいそうになる。
カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)は長崎県長崎市生まれ。5歳の時にイギリスへと渡り、イギリスで教育を受け、1982年にはイギリスに帰化している。
初期の作品『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills)や『浮世の画家』(An Artist of the Floating World)などは日本と関連がある作品となっている。
3作目『日の名残り』(The Remains of the Day)ではイギリスの貴族の邸宅を舞台に主人公の執事スティーヴンスによる1人称の語りの手法が評価されイギリス文学界最高の文学賞ブッカー賞を受賞している。
出典: qetic.jp
原作に登場するクローンの中で、綾瀬はるかも演じることになるキャシーは現実の人物に近い
イギリスでイシグロに会いに行った綾瀬はるかが、原作に登場し、綾瀬はるかも演じることになるキャシーのキャラクターについてイシグロにどう思っているのか尋ねた。この作品には、クローンで作られた人物が何人も登場するが、その中でもキャシーは「現実の人物に近い」と話す。
作品のテーマは、死に直面したときに重要なものはなにかということである
「人生は短いということを書きたかった。すべての人は死を迎える。その短い人生の中で避けられない死に直面したときに何が重要なのか、そういうテーマについて書きたいと思った」
人の数だけ人生があるもので、『わたしを離さないで』の作品はただ、クローンや臓器提供の話ではない、誰もが生まれたときから持っているその人の人生、そして誰にも必ず訪れる「死」について、向き合うきっかけになる作品であろう。
イシグロは「人生は短い」というテーマで多くの人が、流されながら生きているかもしれないその瞬間をもっと大事に生きることの大切さを語っているのであろう。誰かを思うことで、誰かのために生きることで自分が幸せだと感じられた友彦のように、多くの人が人生でそんな風に感じられたら自分の生まれてきた意味があるはずである。恭子や友彦がそれぞれの人生を受け入れていく様を思い返してみると、もう一度見返したくなるような、読み返したくなるような作品である。
『わたしを離さないで』の主題歌・挿入歌
01. Into The Woods
02. FENCE
03. Curriculum
04. Sketch Book
05. Gift
06. DRAWING
07. Blissful Moment
08. Pure -The first-
09. WILL
10. わたしを離さないで -希望-
11. As A Human
12. DONOR
13. PULSE
14. BODY
15. LIVES
16. Pure -The eternal-
17. Memories
18. わたしを離さないで -運命-
19. Never Let Me Go
OP(オープニング):やまだ豊 『わたしを離さないで~運命』
ED(エンディング):やまだ豊 feat.Julia Shortreed 『Never Let Me Go』(第二話)
劇中でも流れる切ないラブソングとして、注目された曲である。恭子と友彦が子供のころ、この曲が流れる中で思い思いのダンスをするシーンは、ひと時の「自由」な場面が描かれているとして、とても印象的である。
挿入歌:やまだ豊 『Blissful moment』
挿入歌:やまだ豊 『Body Pulse ~As A Human』
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目次 - Contents
- 『わたしを離さないで』の概要
- 『わたしを離さないで』のあらすじ・ストーリー
- 第1章:陽光学苑編(第1話~第3話)
- 第2章:コテージ編(第4話~第6話)
- 最終章:希望編(第7話~最終話)
- 『わたしを離さないで』の登場人物・キャラクター
- 陽光学苑出身者
- 保科 恭子(ほしな きょうこ)
- 土井 友彦(どい ともひこ)
- 酒井 美和(さかい みわ)
- 遠藤 真実(えんどう まなみ)
- 大山 珠世(おおやま たまよ)
- 花(はな)
- 三村 広樹(みむら ひろき)
- 内田 聖人(うちだ まさと)
- 陽光学苑 教職員
- 堀江 龍子(ほりえ たつこ)
- 校長・神川 恵美子(かみかわ えみこ)
- 山崎 次郎(やまざき じろう)
- 克枝 (かつえ)
- コテージの住人
- 立花 浩介(たちばな こうすけ)
- 峯岸(みねぎし)
- 金井 あぐり(かない あぐり)
- 譲二(じょうじ)
- 信(しん)
- 桃 (もも)
- その他の人物
- マダム
- 提供者・加藤(かとう)
- 介護人・中村 彩(なかむら あや)
- 古着屋の店長
- 陽光学苑跡地の「ホーム」の少女
- 出版社の男性・古井(ふるい)
- サッカーをしている子供「ひろき」の父親
- 『わたしを離さないで』の用語
- 施設(陽光学苑)
- クローン
- 提供(提供者)
- コテージ
- 猶予
- ルーツ
- 介護人
- 『わたしを離さないで』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 恭子「たとえそれが、私のすべてだった男であろうと」
- 龍子先生「生まれてきてくれてありがとうございます」
- 恭子「わたしを離さないで」
- のぞみが崎でのラストシーン
- 『わたしを離さないで』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『わたしを離さないで』は原作者の作品のなかで最も日本的な作品
- 原作に登場するクローンの中で、綾瀬はるかも演じることになるキャシーは現実の人物に近い
- 作品のテーマは、死に直面したときに重要なものはなにかということである
- 『わたしを離さないで』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):やまだ豊 『わたしを離さないで~運命』
- ED(エンディング):やまだ豊 feat.Julia Shortreed 『Never Let Me Go』(第二話)
- 挿入歌:やまだ豊 『Blissful moment』
- 挿入歌:やまだ豊 『Body Pulse ~As A Human』