超高速!参勤交代 リターンズ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『超高速!参勤交代 リターンズ』とは、土橋章宏が脚本を手がけ、2016年に公開された時代劇映画である。監督は本木克英。湯長谷藩(ゆながやはん)藩主の内藤政醇(まさあつ)をはじめとする一行は、元遊女のお咲を側室に迎え湯長谷への帰途についていた。しかし再び老中松平信祝(のぶとき)の陰謀にまきこまれ、城を乗っ取られてしまう。民を傷つけられた政醇は信祝に対抗することを決める。この物語は個性豊かなキャラクターが見せるコミカルな様子の中に、理不尽に強く立ち向かう男たちの姿を見ることが出来る作品となっている。
江戸時代、全国で250以上ある大名家が1年おきに江戸と自分の領地を行き来していた制度。将軍に対する服属儀礼として始まった。江戸に参勤すると、ある一定期間(藩によって定められている)を江戸で過ごし、また領地で1年を過ごすという繰り返しだった。自分の領地から江戸までの旅費だけでなく、江戸での滞在費も各藩が負担しなければならなかったため、藩にとってはかなりの経済的負担となった。行きを「参勤」、帰りを「交代」と言っていた。
老中
江戸幕府に常設されていた、最高職。2万5000石以上の大名から任用される。江戸に長期間詰めることになるため、関東周辺に領地を構える大名が就任することが多い。4・5人が老中として常駐しており、その中でも老中首座は事実上国政を担う立場であった。老中は朝廷・公家・寺社に関することから、各藩の大名や町に関することまで、ありとあらゆることを統括した。江戸城本丸御殿にあった御用部屋という部屋を執務室とし、重大なことは老中同士で合議していた。
一揆
何らかの目的を果たすために、一致団結した集団が行動を起こすことを言う。江戸時代には主に百姓が一揆を起こし、その理由としては年貢の減免や領主の横暴による生活不安に反対するものだった。一揆の発生はその土地の統治失敗とみなされることもあり、最悪の場合領主(藩主)の処罰や改易の恐れがあった。そのため領主側も穏便な対応をとらざるを得なかった。江戸時代に一揆は約3,200件起こったが、いずれも目的が達成されると解散する持続性のないものだった。
側室
一夫多妻のもと、身分の高い階層の夫婦関係において、夫の本妻である正室以外に公的に認められた側女(そばめ)や妾(めかけ)のことを言う。正室は「家族の一員」であるのに対し、側室は「使用人」という位置づけである。国やその時代によって、側室の置き方が変わる場合がある。特に日本の江戸時代では、側室を複数持ちながら正室を持たなかった例や正室のみで側室を持たなかった例などがある。また側室が世継ぎを産んだ場合、使用人という立場であっても生母である側室は重く見られる。時には正室の力を凌駕して、家中そのものの権力構造が変化することもある。
尾張柳生/新陰流
新陰流は上泉信綱により1560年代に成立した剣術の流派であり、その新陰流を柳生宗厳が開祖として柳生新陰流を伝えた。中でも尾張柳生は宗厳の孫にあたる柳生兵庫助利厳(ひょうごのすけとしよし)が、祖父の認めを得て創始した。利厳が元和元年(1615)に尾張徳川家に仕官したことから、江戸の柳生流と区別してこう呼ばれる。現代で江戸の柳生は途絶えたが、尾張柳生は新陰流の剣技を伝承している。
「怒りは敵と思え。堪忍こそ、無事長久の基(もと)」
徳川家康がのこした遺訓の一部。「我慢することが無事に長く安らかにいられることの秘訣であり、怒りは敵だと思いなさい」という意味。この言葉の前に「不自由が当たり前だと思えば、不満は生じない」ともある。家康は幼い頃から人質に出されたり、大名となってからも周りの大名や一揆に苦しめられてきた。その数々の経験から「辛抱することが何より大切」という言葉を子孫に遺したのだった。
『超高速!参勤交代 リターンズ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
荒らされた湯長谷と、すさんだ百姓の心
信祝の差金で起こされた一揆で、湯長谷は甚大な被害を被っていた。政醇が被害の確認のために村の様子を見に出ると、村の作物で残ったのはたった一本の大根だけだった。政醇は「湯長谷のほんとの主はな、おめのように土と生きる者だ」と百姓を励ます。しかし集まってきた百姓たちは「殿様が留守にしてたから、村がこんななっちまった」「今頃戻ってきても、おせえ」と口々に言う。日頃から民の様子を気にかけ村に顔を出していた政醇を、本当はとても慕っているのに、だ。本来は信頼している政醇をこれほどまでに罵倒しなければならないほど、百姓たちは傷ついていたのだ。百姓たちが政醇を罵倒してしまうシーンは、どれだけ百姓たちが辛い思いをしたのかをあらわしているシーンとなっている。
お咲「内藤様に助けられてから、初めて生きてるって感じたんだ」
前作で政醇に助けられたお咲が、それを感謝し政醇に恩返しをしたいと思うシーンでのセリフである。政醇は村の惨状を目にし、「湯長谷の藩士や民の行く末がこの手ひとづにかかっでっど思うとな」といつになく弱気になっていた。それを聞いたお咲は「内藤様の弱音、初めて聞いた」と喜ぶ。それまで政醇は自分を助けてくれた人であり、自分なんかが手助けできるような人ではないと思っていたからだ。しかし今回のことで珍しく落ち込んでいる政醇をみて、もしかしたら自分にも何かできることがあるかもしれない、と感じた。そして政醇に再び自信を持ってもらえるように「内藤様に助けられてから、初めて生きてるって感じたんだ」と伝えたのだ。それを聞いた政醇は何とか自信を取り戻し、村のためにみんなで炊き出しをすることを決めたのだった。
政醇「揃いもそろってバカばかりよ!」
信祝がついに湯長谷へ軍勢を率いてやってくることになり、政醇は家臣たちを巻き込まないようにしようとした。このセリフは政醇の制止を振り切り家臣たちが戦についていく事を決め、その家臣たちに政醇がかけた言葉である。これまで数度にわたる信祝の妨害も、ついに最終決戦を迎えていた。最終決戦は約1,000人の軍勢を率いる信祝を相手にしなければならなかったため、政醇は家臣たちを巻き込まず、あくまで自分だけで信祝に相対するつもりだった。「これまで大義であった。儂のような藩主によくついてきてくれた。うれしく思うぞ。今から儂が討って出る。もし敗れても儂の首をとれば老中も少しは気が済むであろう。その隙に家臣たちを連れ、すべて落ち延びよ」と家臣たちを諭したが、相馬をはじめ家臣たちは言うことを聞かない。相馬は「はははは!殿!軍師なしで戦に行くなど、古今東西いかなる戦略にもございませぬ!私もお供いたします」と言い、ほかの家臣たちもそれに続く。これまで築かれてきた政醇と家臣たちの絆がみられるシーンである。そして政醇は「揃いもそろってバカばかりよ!よし、着いてまいれ。狙うは信祝の首のみぞ!」と言い、7人で信祝の軍勢に向かっていくのだった。
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目次 - Contents
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の概要
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』のあらすじ・ストーリー
- 湯長谷(ゆながや)へ
- 湯長谷藩の参勤後
- 一揆
- 祝言の前祝い
- 湯長谷へ急ぐ
- 一日目
- 大沼宿(おおぬまじゅく)
- 江戸城
- 二日目
- 信祝のたくらみ
- 段蔵との再会
- 湯長谷城
- 江戸の秋山
- 一揆の真相
- 江戸南町奉行所
- 動き出す政醇たち
- 湯長谷の現状
- 信祝、湯長谷へ
- お咲の想い
- 踏みにじられる湯長谷領
- 信祝の野望
- 湯長谷城奪還
- 対峙する政醇と信祝
- 信祝の失脚
- 平穏が訪れる湯長谷
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の登場人物・キャラクター
- 湯長谷藩の人物とその仲間
- 内藤 政醇(ないとう まさあつ/演:佐々木 蔵之介)
- お咲(おさき/演:深田 恭子)
- 雲隠 段蔵(くもがくれ だんぞう/演:伊原 剛志)
- 相馬 兼嗣(そうま かねつぐ/演:西村 雅彦)
- 荒木 源八郎(あらき げんぱちろう/演:寺脇 康文)
- 秋山 平吾(あきやま へいご/演:上地 雄輔)
- 鈴木 吉之丞(すずき よしのすけ/演 :知念 侑李)
- 増田 弘忠(ますだ ひろただ/演:柄本 時生)
- 今村 清右衛門(いまむら せいえもん/演 :六角 精児)
- 瀬川 安右衛門(せがわ やすえもん/演:近藤 公園)
- 福田 弥之助(ふくだ やのすけ/演:橋本 じゅん)
- 荒木 富江(あらき とみえ/演:富田 靖子)
- 江戸の人物
- 琴姫(ことひめ/演:舞羽 美海)
- 松平 信祝(まつだいら のぶとき/演:陣内 孝則)
- 松平 輝貞(まつだいら てるさだ/演:石橋 蓮司)
- 徳川 吉宗(とくがわ よしむね/演:市川 猿之助)
- 大岡 忠相(おおおか ただすけ/演:古田 新太)
- 尾張柳生の人物
- 柳生 幻道(やぎゅう げんどう/演:宍戸 開)
- 諸坂 三太夫(もろさか さんだゆう/演:渡辺 裕之)
- 森 極蔵(もり きょくぞう/演:中尾 明慶)
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の用語
- 参勤交代
- 老中
- 一揆
- 側室
- 尾張柳生/新陰流
- 「怒りは敵と思え。堪忍こそ、無事長久の基(もと)」
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 荒らされた湯長谷と、すさんだ百姓の心
- お咲「内藤様に助けられてから、初めて生きてるって感じたんだ」
- 政醇「揃いもそろってバカばかりよ!」
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- やりきった死人メイク
- やっと実現した、福島県いわき市でのロケ
- 「これをやらせるのか!」と感じたアクションシーン
- 『超高速!参勤交代 リターンズ』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:斉藤和義「行き先は未来」