相棒 season22（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『相棒 season22』の概要

『相棒 season22』とは、警視庁特命係の刑事コンビが数々の事件を解決していく、テレビ朝日によるテレビドラマである。2023年秋からスタートした。
同シリーズは20年以上続編が作られ続けている人気作品で、映画、小説、漫画などメディアミックスも盛んに行われている。主演となる水谷豊にとっては代表作の1人であり、彼の当たり役としても知られている。

「警視庁特命係」は、不祥事を起こした刑事や辞職してもらいたい刑事が上層部の意向で送り込まれる窓際部署。“人材の墓場”とも揶揄されるここには、優秀過ぎて上層部が隠しておきたい秘密まで暴いてしまう刑事・杉下右京（すぎした うきょう）が籍を置いていた。
様々な事件を調べる中で、何人もの“相棒”との出会いと別れを繰り返してきた杉下だったが、その中でも特に気の合った1人である亀山薫（かめやま かおる）が十数年の時と紆余曲折を経て特命係に帰還。往年の名コンビを復活させた2人は、次々に起こる難事件の調査に乗り出していく。

『相棒 season22』のあらすじ・ストーリー

第1話「無敵の人〜特命係VS公安…失踪に潜む罠」

「人材の墓場」とも揶揄される警視庁特命係。ここに所属する杉下右京（すぎした うきょう）はどんな難事件でも隠されていた暗部ごと鮮やかに解き明かす名刑事であり、熱血漢で人情家の刑事亀山薫（かめやま かおる）と息の合った相棒っぷりを見せていた。
ある時、2人は上原阿佐子（うえはら あさこ）という弁護士から「行方不明になった恋人の牧村克実（まきむら かつみ）を一緒に探してほしい」と頼まれる。その牧村はライターを仕事としており、爆弾テロに関与したと噂もある宗教団体「微笑みの楽園」に偽名を用いて潜入取材していた。

その「微笑みの楽園」は、新たなテロの準備を進めていた。牧村は複数の偽名を使ってこれを調べ上げており、新しい爆弾を作ろうとしていた信者の平井蓮（ひらい れん）を殺害した疑惑までもが持ち上がる。これを知った杉下は、「牧村は公安部の捜査員」だと確信する。
どういう裏があるのか、公安部は警察上層部と結託して「微笑みの楽園」関連の事件の隠蔽工作を繰り返していた。内閣調査室もこれに気付いて動き出す中、そのトップである社美彌子（やしろ みやこ）が「微笑みの楽園」の信者である太田（おおた）という男に銃撃される。

第2話「無敵の人〜特命係VS公安…巨悪への反撃」

社は一命を取り留めるも、公安の態度は相変わらず弱腰だった。特命係を預かる甲斐峰明（かい みねあき）は、今回の一件には複雑な組織力学が働いていることを杉下たちに伝え、「おとなしくしろ」と命じる。
それに反発するように杉下たちが捜査を進めていく中、公安部は施設内で拳銃が発見されたとして突如「微笑みの楽園」の一斉摘発を慣行。杉下はこれを「拳銃も爆弾テロも爆弾の原料も、公安トップの御法川（みのりかわ）が牧村を使って仕掛けた自作自演」だと突き止める。本気で平和な団体へと生まれ変わろうとしていた「微笑みの楽園」を危険な団体として葬ることで、彼らのテロによって傷ついた警察の威信を回復するのが御法川の目的だった。

一方、上原は独自に牧村の居場所を突き止め、彼を殺そうとする。上原の本当の婚約者は爆弾テロで死亡しており、彼女は復讐のために真犯人の牧村を探していたのだ。特命係によって上原は取り押さえられ、同時に牧村こと鶴見征一（つるみ せいいち）も捕らえられる。
鶴見は牢の中で自害し真相は闇に葬られかけるが、特命係の捜査で裏の動きを把握した社は警察上層部を恫喝。御法川は罷免され、公安の弱みを握った社はさらなる出世に意欲を燃やす。自分たちが権力闘争に利用されたことに特命係は憤慨し、社や甲斐に失望した旨を伝えるのだった。

第3話「スズメバチ」

警視庁捜査一課の経理担当、陣川公平（じんかわ こうへい）は、ほんの一時期特命係にも所属していたことがある、思い込みの激しい熱血漢。事件をズバズバ解決する名刑事に憧れ、杉下を崇拝するも、たびたび先走っては厄介事を引き寄せるトラブルメーカー的な体質の持ち主である。
その陣川が久々に特命係に顔を出したある日、都内の公園で加藤星也（かとう せいや）という人物の遺体がスズメバチの巣の近くで発見される。特命係は加藤の恋人である村岡めぐみ（むらおか めぐみ）という女性が何か知っていると見て捜査を進めるが、陣川は「時間をくれ」と言って彼らを妨害する。

加藤は昔から恋人にDVを繰り返しており、陣川はこれに気付いてなんとか村岡を助けようとしていた。そんな折に加藤が殺され、陣川は「村岡の犯行だとしたら出頭させたい」と考えていた。しかし真の犯人は村岡ではなく、彼の前の恋人である藤巻英子（ふじまき えいこ）という女性だった。藤巻は加藤のDV被害に遭っている人間が自分以外にもいることを知り、「あの男は女を狙う毒虫だ、殺すしかない」と結論し犯行に及んだのである。
陣川は村岡に恋心を抱いていたが、「男にひどい目に遭わされ、容疑者扱いされた今の彼女に告白するのは酷だ」と考えて想いを伝えないまま別れる。またも失恋して大泣きする陣川を慰めつつ、杉下と亀山は「これはこれで彼の精神力の強さの証明かもしれない」と語り合うのだった。

第4話「天使の前髪」

劇団員の久保崎美怜（くぼざき みれい）が、工藤祐一（くどう ゆういち）というプロデューサーを殺害。美怜は工藤に強引に口説かれており、自宅まで押し掛けた上でむりやり関係を迫られ、咄嗟に彼を殺したという。あらゆる証拠は美怜の正当防衛を証明していたが、杉下は「出来過ぎている、本当に正当防衛なのか」と疑念を抱く。
事件の様子を記録した音声データを調べた杉下は、前半と後半で反響音（リバーブ）が異なることに気付き、「このデータは別々の場所で記録され、1つに編集されたもの」だと確信。これを突きつけられた美怜は、工藤を意図して殺害したことを認める。

10年ほど前、美怜は妹と共にホタル座という劇団に所属していた。しかしその妹はホタル座に出入りしていた工藤に襲われ、これを苦に自殺する。揉め事を嫌った劇団により事件は握り潰されるも、工藤が活動資金を盗んで消えたことでホタル座は解散。偶然から工藤と再会した美怜は、妹の仇討ちを果たしたのだ。
杉下は美怜に「あなたの妹は無念の死を遂げたが、本当に復讐を望んでいたのか。妹の存在を呪縛にしている」と指摘。美怜は後悔に押し潰されるように泣き崩れるのだった。

第5話「冷血」

特命係の2人は、監察官の大河内春樹（おおこうち はるき）から桐生貴明（きりゅう たかあき）のことを調べてほしいと依頼される。桐生は組対5課に新たにやってきた刑事で、彼が関わった麻薬密売組織の摘発で重要参考人の黒沢秀一（くろさわ しゅういち）が直前で姿をくらませており、大河内は「桐生が黒沢に捜査状況を漏らしたのでは」と案じていた。
桐生自身は善良で熱意のある若者だったが、父親がヤクザの組長であるという本人も知らない秘密を抱えていた。これを知った黒沢は「父親がヤクザと分かれば刑事でいられなくなる」と桐生を脅し、動揺する彼の顔色を見て摘発が近いことを察し逃亡したのだった。

その黒沢も運び屋として利用した男に殺され、事件は後味の悪い解決を見る。亀山や組対5課の刑事たち、そして桐生の実父は寛大な処分を願うが、桐生は黒沢が殺された際に「父が自分を助けようとしたのでは」と考えて報告を怠っており、この咎で刑事を辞めることとなる。
熱意ある若者が警視庁を去ることを惜しむ杉下と亀山に、桐生は「次に何か困った時は、遠慮なく警察を、あなたたち先輩の刑事を頼る」と吹っ切れた様子で伝えるのだった。

第6話「名探偵と眠り姫」

特命係に「眠り姫事件の犯人は殺された」との差出人不明のメールが届く。眠り姫事件とは、17年前に起きた資産家令嬢誘拐事件で、被害者の蔵本里紗（くらもと りさ）は無事に救出され、誘拐犯は自殺の形で解決したはずだった。その里紗はこの日行われる婚約発表パーティーの会場から、矢木明（やぎ あきら）という私立探偵の手を借りて失踪していた。
矢木は特命係とも何度か関わった優秀な探偵だった。里紗は何者かから「婚約を破棄しろ」と脅迫を受けており、彼女の父の蔵本慎吾（くらもと しんご）から相談を受けた矢木は「状況から見て犯人が身内である可能性がある」と判断。緊急避難的に里紗を匿ったのだった。

特命係は矢木と協力して捜査を進め、里紗を脅迫したのが彼女の婚約者の父の黒崎弘（くろさき ひろし）だと突き止める。黒崎は17年前の誘拐事件の共犯者でもあり、里紗が自分の存在を思い出しかけていることを知って、彼女を遠ざけようとしたのである。
真実が明らかになり、メールの送り主でもあった里紗は家族の下に帰還。特命係相手に隠し事をするのは大変だったと苦笑する矢木に、亀山は「こっちのセリフだ」と言葉を返すのだった。

第7話「青春の光と影」

ミュージシャンの矢崎浩輔（やざき こうすけ）の他殺体が路上で発見される。矢崎は往年の人気歌手で、かつての仲間と共に「ディープクルー」というグループを再結成したばかりだった。警察が捜査を開始する中、特命係も独自に動き始める。
矢崎は天才肌のアーティストにありがちな傲慢な人物で、借金や盗作紛いの楽曲制作など様々な問題を抱えていた。殺される理由については事欠かない人物だったことが明らかとなる中、杉下は矢崎が補聴器を使っていたことに注目する。

矢崎を殺したのは、彼のマネージャーの沢村香音（さわむら かのん）という女性だった。ディープクルーの音楽に憧れてこの業界に入った沢村は、マネージャーとして矢崎に尽くしてきたが、ずっと無視されていた。沢村は「なぜ無視するのか」と矢崎を問い詰め、弾みで死なせてしまったのだった。
矢崎が「ディープクルー」を再結成したのは、耳が完全に聞こえなくなる前に往年の仲間ともう1度音楽を楽しむためだった。声が聞こえていなかっただけで沢村にも感謝しており、彼女にプレゼントまで用意していた。矢崎は死んだが、彼の音楽は世に残り続けるだろうと、特命係の2人は語り合うのだった。

第8話「センチメンタル・ジャーニー」

ある時、特命係は街中で親族らしい老婆と話をしていた若い女性が誘拐される瞬間を目撃する。しかしその老婆は誘拐犯から何事か告げられた上で解放され、知り合いであるように思われた。
ただ若い女性を救出すれば終わる事件ではないと考えた特命掛の2人は、杉田が老婆を、亀山が誘拐犯を追う形で捜査に取り掛かる。

老婆の正体は門脇多恵子（かどわき たえこ）という女詐欺師で、3年前に被害額10億円の国際詐欺事件の主犯として逮捕されていた。この時騙し取られた金は1億円分がまだ見つかっておらず、これを「門脇がどこかに隠した」と判断した彼女のかつての仲間が、門脇の孫の後藤真奈（ごとう まな）を拉致したというのが事件の真相だった。
しかし、実は真奈と名乗っていた女も詐欺師であり、1億円を奪うために門脇の孫を演じていたに過ぎなかった。孫を救わんと1億円の隠し場所に急いでいた門脇は、杉下からこの事実を聞かされて「私が騙されるとは」と肩を落とす。どうしてそうまで金を欲したのかと杉下に問われた門脇は、「貧乏に喘ぐ人生を送ってきた。貧乏が怖かった」と力なく語るのだった。

第9話「男の花道」