『正体』とは、染井為人の長編小説、およびそれを基に2022年3月から放送されたWOWOWの連続ドラマ、2024年11月に公開された映画である。ドラマ版の主演は亀梨和也で、映画版は横浜流星。埼玉県の民家で起きた殺害事件の犯人として死刑判決を受けた死刑囚の鏑木慶一は、ある日脱獄する。そして鏑木は全国を逃亡しながら行く先々で人々を救い、その素顔と事件の真相が明らかになっていく。本作はドラマがMIPCOM BUYERS' AWARDでグランプリを獲得し、映画版は日本アカデミー賞など多数の賞を受賞した。
死刑判決が無罪に覆り鏑木が涙を流す場面
第4話、涙を流す鏑木
井尾夫婦殺害事件の容疑者として冤罪で捕まり、死刑判決を受けた鏑木は判決を覆すために脱獄し、各地を逃げ回りながら職場を転々とする。誠実な人柄から味方が増えていき、渡辺や沙耶香や舞など、彼の無罪を信じる者たちの協力もあって再審の結果無罪に覆った。その瞬間、鏑木は傍聴席にいる沙耶香たちの方に頭を下げ、号泣したのだった。死刑判決を受けても判決を覆すために脱獄して1人で戦い、誠実な人柄で協力してくれる味方を増やして、ついに判決を覆し涙を流す鏑木の姿に胸を打たれる名場面だった。
『正体』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
人生初の金髪に挑戦した亀梨和也
ドラマ版で主役を務めた亀梨和也は、中田秀夫監督とは『事故物件 恐い間取り』以来の再タッグだった。そのため互いに信頼関係があり、初日から細かい部分の意見交換をして作り上げていったという。特に変装して4つに分類される鏑木のビジュアルについては、話し合いで決めたようだ。例えばメディアトレンダーズでフリーライターとなった鏑木のビジュアルでは、衣装合わせの機会を2回設けたという。最初は金髪で髭を生やして色付きサングラスをかけているという設定だったようだが、沙耶香に初対面から好印象を持たれて家に誘われるという場面があるため、ビジュアルに説得力を持たせるために髭やサングラスをやめたサッパリしたビジュアルに変えたと語る。金髪のカツラを被るという提案もあったが、リアリティに欠けると判断し、5時間ほどかけて人生で初めて地毛で金髪に染めたという。また亀梨は鏑木を演じるにあたって、できるだけ仕草や表情などの部分は不器用な雰囲気を出すよう心掛けたようだ。
原作では死亡する鏑木慶一
本作は原作とドラマと映画があるが、それぞれに内容が異なっている。まず原作の鏑木慶一は19歳で高校卒業後すぐに冤罪で逮捕され、少年ゆえの脆さと怒りを抱えて逃亡する。映画も高校生で逮捕され、原作に忠実な若者像が描かれているが、ドラマでは30代の社会人として就職していた部品工場が倒産してアルバイトを転々としており金銭目的で犯行を犯したとされていた。またドラマや映画では工事現場とライター、工場と介護施設の仕事を転々としていたが、原作ではスキー場の旅館のバイトも加わる。原作では弁護士の渡辺は冤罪の影響で弁護士の職を失い、スキー場の旅館でバイトしていたが、自暴自棄となっていたところを鏑木に救われるという設定になっている。ラストの結末も3作品で大きく異なる。ドラマや映画では銃で撃たれたものの、一命を取り留めて無罪となるシーンがある。だが原作では銃で撃たれた際に鏑木は死亡し、その後被告人不在で裁判が行われて無罪となる。映像作品では感動的なラストへ改変されているが、原作では冤罪が虚しく悲しいものであることを鏑木の死を通して多くの人に感じてもらいたいという作者のメッセージが込められたラストとなっている。
容疑者が警察署から脱走して日本一周を目指した事件がモデル
本作のモデルとなったのは、2018年に樋田淳也容疑者が警察署から脱走し、自転車で日本一周を目指した事件である。逃亡生活の中で樋田は同じく日本一周をしている男性に人懐っこく声をかけて一緒に行動したり、地元の人を手伝ってお金をもらうなどしており、脱獄犯とは思えないほど堂々と人々と交流していたという。だがお金がなかったため旅中に万引きを繰り返しており、逮捕されたきっかけも万引きをしていて万引きGメンに捕まり、警察に通報されて逮捕されたようだ。鏑木とは人物像は全く異なるが、このように脱走して社会と接点を持ちながら生き延びる容疑者の姿が原作者の染井為人が本作を執筆するヒントになったようだ。さらに本作には染井の実体験もストーリーに含まれている。鏑木が逃亡した先で飯場という建設現場作業員用の宿泊施設のある職場や介護施設で働くことになるが、実際に染井も学生時代にこれらの職場で働いていたことがある。そのため職場環境の描写はリアルな描かれ方になっており、染井は逃亡者が潜り込むとしたらどうしてもブラックな職場になるんじゃないかという考えから、これらの職場の描写を入れたようだ。
『正体』の主題歌・挿入歌
主題歌:ヨルシカ『太陽』
日本のロックバンドであるヨルシカが2024年11月22日にデジタルシングルとしてリリースした楽曲である。映画版の主題歌で、太陽をモチーフとして陽の光を蝶の羽に見立てて歌詞が書かれた。
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目次 - Contents
- 『正体』の概要
- 『正体』のあらすじ・ストーリー
- 逃亡する鏑木慶一
- 明かされる真実
- 鏑木の運命
- 原作版
- ドラマ版
- 映画版
- 『正体』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 鏑木慶一(かぶらぎけいいち/演:亀梨和也(ドラマ)、横浜流星(映画))
- 井尾由子(いおよしこ/演:黒木瞳(ドラマ)、原日出子(映画))
- 野々村和也(ののむらかずや/演:市原隼人(ドラマ)、森本慎太郎(映画))
- 安藤沙耶香(あんどうさやか/演:貫地谷しほり(ドラマ)、吉岡里帆(映画))
- 酒井舞(さかいまい/演:堀田真由(ドラマ)、山田杏奈(映画))
- 又貫征吾(またぬきせいご/演:音尾琢真(ドラマ)、山田孝之(映画))
- 渡辺淳二(わたなべじゅんじ/演:上川隆也(ドラマ))
- 介護施設アオバ
- 四方田保(よもだたもつ/演:濱田崇裕(ドラマ))
- 佐竹(さたけ/演:温水洋一(ドラマ))
- 鷲生(わしゅう/演:越村公一(ドラマ))
- 工場バイトの同僚とその関係者
- 笹原浩子(ささはらひろこ/演:若村麻由美(ドラマ)、西田尚美(映画))
- 近野節枝(こんのせつえ/演:高畑淳子(ドラマ))
- 大久保信代(おおくぼのぶよ/演:藤吉久美子(ドラマ))
- 尾根(おね/演:野間口徹(ドラマ))
- 近野博(こんのひろし/演:戸田昌宏(ドラマ))
- 近野拓海(こんのたくみ/演:黄地裕樹(ドラマ))
- 牛久保土木関係者
- 金子(かねこ/演:神尾佑(ドラマ))
- 柳瀬(やなせ/演:窪塚俊介(ドラマ))
- 平田(ひらた/演:日野陽仁(ドラマ))
- 前垣(まえがき/演:増田修一朗(ドラマ))
- 千川(せんかわ/演:西山潤(ドラマ))
- メディアトレンダーズ社員とその関係者
- 稲本美代子(いなもとみよこ/演:奥貫薫(ドラマ))
- 楠木花凛(くすのきかりん/演:中村里帆(ドラマ))
- 矢川直樹(やがわなおき/演:柏原収史(ドラマ))
- その他
- 足利清人(あしかがきよと/演:桜田通(ドラマ)、山中崇(映画))
- 諸岡(もろおか/演:諏訪太朗(ドラマ))
- ドラマ版ゲスト
- 岩橋(いわはし/演:西村元貴)
- 生島ヒロシ(いくしまヒロシ/演:生島ヒロシ)
- ヒナノ(演:卯内里奈)
- 井尾洋輔(いおようすけ/演:伊東潤)
- 井尾千草(いおちぐさ/演:和田瞳)
- 1話に登場する男性アナウンサー(演:竹内義貴)
- 1話に登場する女性アナウンサー(演:渋佐和佳奈)
- 三好(みよし/演:安田カナ)
- 駅員(演:久保田武人)
- 近野惣一郎(こんのそういちろう/演:品川徹)
- 服部(はっとり/演:綾田俊樹)
- 高校生(演:石岡飛鳥)
- 3話に登場するアナウンサー(演:田中大士、多田羅りか)
- 冬本正治(ふゆもとせいじ/演:山崎画大)
- 裁判長(演:信太昌之)
- アナウンサー(演:横内洋樹)
- 裁判官(演:長島竜也)
- 映画版オリジナルキャラクター
- 井澄正平(いずみしょうへい/演:前田公輝)
- 黒島(くろしま/演:田島亮)
- 宮村勇太(みやむらゆうた/演:遠藤雄弥)
- 小田花梨(おだかりん/演:宮崎優)
- 四方田雄一(よもだゆういち/演:森田甘路)
- 舞の父(演:矢柴俊博)
- 舞の母(演:田村たがめ)
- 後藤鉄平(ごとうてっぺい/演:宇野祥平)
- 金子健介(かねこけんすけ/演:駿河太郎)
- 野口正恵(のぐちまさえ/演:木野花)
- 安藤淳二(あんどうじゅんじ/演:田中哲司)
- 川田誠一(かわだせいいち/演:松重豊)
- 『正体』の用語
- 牛久保土木
- メディアトレンダーズ
- カスガパン製造工場
- 介護福祉施設「アオバ」
- 『正体』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 鏑木慶一「信じて。僕はやってない」
- 希望を失いかけていた鏑木を沙耶香が奮い立たせる場面
- 死刑判決が無罪に覆り鏑木が涙を流す場面
- 『正体』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 人生初の金髪に挑戦した亀梨和也
- 原作では死亡する鏑木慶一
- 容疑者が警察署から脱走して日本一周を目指した事件がモデル
- 『正体』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:ヨルシカ『太陽』
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