国宝(小説・漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『国宝』とは、吉田修一による小説およびそれを原作として2024年に発売された漫画、2025年6月に公開された映画である。映画の監督は李相日。主演は吉沢亮で、横浜流星や渡辺謙などが出演する。長崎の抗争によって父を失った少年、立花喜久雄は才能を見込まれて上方歌舞伎の名門の当主である花井半二郎に引き取られる。そこで半二郎の息子、大垣俊介とライバルとして互いを高め合いながら芸を磨いていくが、あることがきっかけで2人の関係が揺らいでいく。本作は多くの賞を受賞し、実写邦画興行収入歴代1位となった。

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歌舞伎の演目である。鳥である鷺が娘に姿を変えて踊るという内容。人間国宝となった万菊と喜久雄が演じていた。

『国宝』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

立花喜久雄「守ってくれる血が俺にはないねん」

本番前に俊介に弱音を吐く喜久雄

事故に遭った半二郎の代役を任された喜久雄は、必死で稽古を積んだ。だが本番当日、俊介が楽屋に行くと喜久雄は緊張とプレッシャーで震えが止まらなくなり追い込まれていた。そして喜久雄は俊介に、「今一番欲しいのは俊ぼんの血やわ」「守ってくれる血が俺にはないねん」「俊ぼんの血をコップに入れてガブガブ飲みたいわ」と涙目で語る。そんな彼に俊介は「芸があるやないか」と声をかけ、励ましたのだった。血筋がないことで肩身が狭い思いをし、苦労してきた喜久雄が、俊介を差し置いて代役をするプレッシャーに押しつぶされそうになりながら語った本心が胸に刺さる名言だった。

ボロボロの喜久雄が屋上で踊る場面

泣きながら笑いだす喜久雄

彰子を利用したことにより、千五郎に歌舞伎界を追い出された喜久雄は、彰子と共に地方の宴会場などをドサ回りする生活を送る。ある宴会場で男たちから暴行され、ボロボロになった喜久雄は屋上で酔いつぶれて舞いを踊り出す。そんな喜久雄に彰子は「もうやめよう」と声をかけ、彼に「どこ見てんの?」と問いかける。彰子が立ち去った後、喜久雄は「どこ見てたんやろ」とつぶやき、泣きながら笑いだした。そして再び一心不乱に踊り出すのだった。歌舞伎界から追い出されてどん底まで落ちた喜久雄が、苦しみながらも狂ったように踊り続ける姿が印象的な名場面だった。

俊介が死を前にしながらも『曽根崎心中』を演じる場面

ボロボロになりながら『曽根崎心中』をやり切る俊介

歌舞伎界に復帰した喜久雄は俊介とのコンビを復活させるが、俊介の糖尿病が発覚し、俊介は壊死している左足を切断して義足となる。それでも俊介は『曽根崎心中』でお初をやりたいと言い、喜久雄は相手役の徳兵衛を買って出た。だがその演目の最中、喜久雄は俊介の右足も壊死していることに気づく。右足も切断しなければ死んでしまうが、俊介は切断しないことを選び、その後も痛みに耐えながら『曽根崎心中』の公演をやり続けた。そして喜久雄も俊介を支えながら演じ、最後は決死の思いでやり切った彼を称えたのだった。死を覚悟しながらも歌舞伎をやることを選んだ俊介の鬼気迫る演技と、俊介を心配しながらも彼を支える喜久雄の姿に胸が熱くなる名場面だった。

『国宝』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

1年半を歌舞伎の稽古に費やした吉沢亮と横浜流星

本作で歌舞伎役者を演じた吉沢亮と横浜流星は、1年半をかけて歌舞伎の稽古に臨み、本番では実際に歌舞伎の演目を踊っている。それについて吉沢は実際に歌舞伎役者を演じたことで、その過酷さを知り、稽古をしても全く追いつかないと絶望したという。歌舞伎を演じるために日本舞踊も稽古したらしく、膝を曲げた姿勢やすり足だけで全身が震えるほど大変だったようで、2~3ヵ月はひたすらすり足を練習したそうだ。そのため稽古を重ねれば重ねるほど、歌舞伎役者のすごさを実感したという。だが共に稽古をしている横浜が高い熱量で挑んでいるのを見て刺激を受け、互いにいい影響を与え合いながら演じることができたようだ。また横浜は吉沢が女性らしくやわらかで色気のある踊りをしていたため、喜久雄と俊介の正反対なキャラクターを生かして、自分は反対に可愛らしく華やかに踊ろうと考えたと語っていた。

脚本が完成する前から主役を吉沢亮と決めていた李監督

吉沢は李監督の作品に出ることを目標としており、2016年に公開された映画『怒り』のオーディションを受けたものの、不合格だった。そのため監督の作品には一生出られないと諦めていたが、後に『国宝』で主演に抜擢されて驚いたという。李監督は脚本ができていない段階から「喜久雄という役は彼にしかできない」と吉沢を主演に決めていた。その理由について、「正体不明というか空洞が広い。小さく叩いたら小さく響くし、大きく叩いたら大きく響くような空洞感。終わりが見えない感じがする」と喜久雄のキャラと吉沢の雰囲気が合致したことが決め手になったと語っている。また横浜については困難に立ち向かうストイックな部分を高く評価しており、喜久雄と対を成す存在となるため、その関係性を成立させるために極める姿勢が必要だと感じて彼を抜擢したようだ。吉沢は李監督の撮影はとてもきつかったものの、自分を信じて引き出そうとしてくれていると感じ、根底にとても愛情を感じるため芝居に打ち込めて贅沢で幸せな時間だったと語った。

ほぼアドリブだった屋上で喜久雄が踊るシーン

本作で印象的な屋上で喜久雄が舞うシーンは、ほぼアドリブだったという。初めは夜に撮影する予定だったが、急遽監督の提案で夕暮れの30分で撮影することになった。短い時間で撮影しなければならないため、普段リハーサルは少人数のスタッフで行うが、そのシーンはリハーサルの段階から本番同様に40人ほどのスタッフに集めて演技の感想を言ってもらったという。本番は最初から最後までカットせずに長回しで3テイク撮影し、最後の3テイク目で李監督が森七菜にセリフの指示を出して、吉沢には森の方を見るよう指示したという。そのため吉沢が発した言葉はアドリブで、踊りも感情のままに踊っていたようだ。本作はシリアスなシーンが多いため、吉沢は喜久雄が感じる苦悩や緊張など、そこにどれだけ追いつけるかという日々で精神的にも肉体的にもとても苦しかったという。自分自身をとことん追い込んで、喜久雄になっていったようだ。

『国宝』の主題歌・挿入歌

主題歌:原摩利彦 feat. 井口理「Luminance」

音楽家の原摩利彦が作曲した曲で、ロックバンド・King Gnuのボーカルとキーボードを担当する井口理が歌唱に参加している。李監督がラストシーンに合わせて「女性なのか男性なのか分からない声が降って来る曲」を原にリクエストし、制作された。

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