あさが来た（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『あさが来た』の概要

『あさが来た』とは、幕末から明治にかけて活躍した実業家・教育者の広岡浅子をモデルとしたNHKの連続テレビ小説（通称：朝ドラ）。2015年9月から2016年4月にかけて放送された。平均視聴率は23.5%で、朝ドラとしては2016年当時の最高記録となって話題に上った。
主人公・白岡あさのモデルは、実業家で教育者の広岡浅子（1849年 - 1919年）。本作はその生涯を描いた古川智映子の『小説 土佐堀川』（1988年出版）を原案とし、多くの人気ドラマを手掛けた大森美香が脚本を担当した。
京都の豪商に生まれた主人公・あさは、女の子らしくすることより木登りや相撲が好きなお転婆娘だった。女であることを理由に学問を許されず、結婚相手も親に勝手に決められてしまうことに不満が募る。しかし、夫となった新次郎が女性の活躍に理解を示してくれたおかげで、あさは商売人として次第に頭角を現す。あさは家庭と仕事の両立に苦悩しながらも多くの事業を手掛け、社会進出を目指す女性たちの道標のようになっていく。

『あさが来た』のあらすじ・ストーリー

あさと新次郎の結婚

あさは京都の豪商・今井家の次女として誕生した。11歳に成長したあさは姉・はつとは対照的に、お転婆で木登りや相撲が大好きだった。なにより好奇心旺盛で弟が嫌々やっている学問にも興味があったのだが、父・忠興（ただおき）からは女であることを理由に学問を許されず、さらには結婚相手までも勝手に決められてしまう。そのことに猛反発したあさは押入れに閉じこもって抵抗する。そこへ今井家を訪ねてきた将来の結婚相手・白岡新次郎（しろおか しんじろう）がやってきて、あさに「ぱちぱちはん」（そろばん）を贈る。新次郎から贈られたそろばんを使いたいと父に願い出るあさ。そろばんの手習いを許されてからはメキメキと上達し、その才能が開花していく。新次郎からのそろばんは、あさの生涯の宝となるのだった。

この頃、あさは将来の盟友・ 五代友厚（ごだい ともあつ）にも出会う。薩摩藩士だった五代は、藩命を受けてやってきた大阪であさに偶然知り合う。幕末から明治へと世の中が変わっていくことをあさに説明する五代。熱心に話を聞くあさに五代は好感を抱く。

15歳に成長したあさ。相変わらずお転婆でそろばんが大好きという当時としては風変わりな女性で、両親や付き人・うめを悩ませていた。そんな折、はつと同時期にそれぞれの許嫁と祝言を挙げることが決まる。挨拶のために訪れたはつの許嫁・眉山惣兵衛（まゆやま そうべえ）は、無表情で冷淡、その母・菊（きく）は威圧的で、はつは結婚への不安が増していく。あさも許嫁である新次郎から音沙汰がなく不安が募る。実は新次郎の兄が労咳（結核）で倒れ、新次郎たち一家は心を痛めていた。新次郎の兄はあさたちの祝言直前に亡くなり、新次郎の父・正吉（しょうきち）が詫びに訪れ、祝言は延期となった。

はつの祝言から半年後、あさもようやく大阪の白岡家へ嫁入りするが、夫となった新次郎は遊び歩くばかりで家に帰ってこない。あさは白岡家の家業である両替屋・加野屋に関わろうとするが、それを認めてもらえなかった。諦めないあさは加野屋で働く人々と交流し、徐々に経営について学び始める。
ある日、夜遅くに新選組の土方歳三（ひじかた としぞう）が訪れた。加野屋に無理に貸付を迫ってきたのだ。臆する店の面々のため矢面に立ったあさは、土方にしっかり返済するよう言い募る。険悪な雰囲気になりながら、あさと土方は返済の約束を交わした。その出来事をきっかけに、新次郎はあさを子どもだと思っていたことを詫び、夫婦として向き合う。

家業の危機

本格的に加野屋の家業に携わろうと思ったあさは、加野屋の現状を知る。以前出会った五代からの言葉「世の中が変わる」を常に気にかけていたあさは、変わっていく世の中にあわせ、加野屋も変えていこうと奮闘する。正吉に試されながら、あさは実績を積んでいった。
そんな折、旧幕府軍と戦う新政府がその軍資金の貸付を要請し、加野屋の経営は火の車になる。さらに銀目停止という大打撃が襲う。銀目とは西日本で流通していた貨幣で、それを廃止して東日本で流通していた金目を日本全体の共通貨幣とする動きだった。「銀が使えなくなる」と大混乱した大阪の人々は、加野屋をはじめとする両替屋に殺到して換金を求めた。すでに資金不足だった多くの両替屋が換金を断るが、病床に伏せる正吉に見込まれ対処を任されたあさは、すべての換金に応じることを決断。対処を終えた加野屋は資金がすっかり底をついていた。
あさは加野屋再興のため、借金の申し込みに奈良の豪商・玉利友信（たまり とものぶ）のもとを訪ねる。当初は渋い顔をしていた玉利だが、新たな事業を始めて必ず借金を返すと言うあさに、無利子で資金を貸すことを約束する。玉利は肝の据わったあさを「日本一の女商人になる」と予見した。

一方、はつの嫁ぎ先である眉山家が営む両替屋・山王寺屋も資金不足に陥っていた。はつは姑の菊から井戸に落とされたり蔵に監禁されたり酷い仕打ちを受けていたのだが、窮地の山王寺屋を助けるため、実家の豪商である今井家へ惣兵衛と借金の申し込みに行かされる。忠興は娘を助けたい気持ちを堪え、借金返済の目途がないことを理由に援助を断る。はつと惣兵衛はこれでよかったのだと納得し、家路についた。

新たな事業の発見

時代は明治になり、加野屋は窮地を乗り切って落ち着いていた。同業の山王寺屋に嫁いだはつを心配するあさは山王寺屋を訪れるが、一家は夜逃げしてもぬけの殻になっていた。探し回ったあさはようやく粗末な長屋で暮らす一家を見つけるが、はつからは冷たく追い返されてしまう。はつたちは再び失踪して行方知れずになり、あさは深く落ち込んだ。

その頃、五代はあさを大阪商人の寄り合いに誘う。商人たちはあさが女であることを理由に冷たくあしらっていたが、熱心に質問を繰り返すあさを次第に認め、商売について教えるようになる。

新次郎はあさに代わって眉山一家を必死に探していた。ようやく百姓の納屋を間借りする一家を見つけ、あさに内緒で通って支援を続けたが、挙動を怪しんだあさは新次郎を尾行し、はつとの再会を果たす。はつはあさに冷たくしたことを詫び、姉妹は仲直りした。
その後はつの妊娠が判明したのだが、それを知らない惣兵衛は一家の苦境にはつを巻き込んでしまったと思い悩み、行方をくらませてしまった。

一方、あさは今後の商売として石炭に注目していたが、加野屋の面々からは資金不足や石炭が採れる鉱山が遠いことから反対される。それでも鉱山買収を諦めきれないあさの様子に姑・よのは不満が募り、ついには新次郎に妾を持たせようとする。さらに正吉から新次郎か仕事か選ぶように迫られたが、あさは仕事を諦められない。あさは新次郎に妾を取るよう願い出たが、新次郎は今のままでいいと申し入れを拒絶した。
そんな折、あさが鉱山を探しているという話を聞いた九州の炭坑主の未亡人が、炭坑を買い取らないかと加野屋を訪ねてくる。加野屋は九州の炭坑を譲り受けることになり、あさは新次郎の後押しもあって炭坑のある九州へと様子を見に行くことになった。

炭坑での攻防

炭坑では、あさが女であることを理由に坑夫たちが働こうとしない。もみ合いになってしまったあさの懐から拳銃が落ち、暴発してしまう。その拳銃は炭坑に行くことを知った五代からお守りとして持たされたものだった。あさが拳銃で脅してきたと勘違いした抗夫やその妻たちは、仕方なく働き始める。心配して追いかけてきた新次郎が状況を知り、あさに武器は似合わないと諭したことで、あさは抗夫たちに拳銃のことを謝罪した。そして、石炭がいかに日本の未来に必要かを訴え、それを採る抗夫たちを称えた。心を動かされた抗夫たちは、炭坑の支配人とあさの相撲勝負で決着させることを提案する。あさは幼少期からの相撲好きの実力を発揮し、支配人に勝利。それ以降、抗夫たちはあさに信頼を置き慕うようになった。

その頃、はつは長男・藍之助（あいのすけ）を出産してから1年が経っていた。新次郎から惣兵衛の話を聞いた五代の協力により、惣兵衛が賭博場に入り浸っていると聞かされたはつ。はつを不幸にしてしまったと嘆く惣兵衛だったが、はつは今までに見たこともないように怒り、惣兵衛と藍之助を引き合わせて自分は不幸ではないと説得する。

あさは九州の炭坑から帰る最中、祖父の危篤の知らせを受ける。急いで京都の実家へ向かうとはつも駆け付け、家族で祖父の最後を看取った。忠興は、今井家が政府からの勧めで銀行を開設することになり、東京へ移り住むと言う。はつのことを案じる母・梨江（りえ）は、和歌山の土地を使わないかと権利書を託そうとするが、はつは頑なに拒む。あさは銀行になぞらえ、これは今後を期待しての貸付なのだとはつを説得し、はつも権利書を受け取ることにした。

今井家の銀行設立を知ったあさは正吉に銀行のことを相談するが、時期ではないとたしなめられる。まずは抗夫たちが夢を持って働けるようにと労働環境の改革を進めるが、抗夫たちをまとめる納屋頭たちに不審がられ反対されてしまう。あさ自身も炭坑で必死に働きながら納屋頭たちを説得し、ようやく改革を進める。

あさの妊娠

加野屋では、新次郎の弟・榮三郎（えいざぶろう）が正吉の後を継ぎ、その襲名披露が行われた。お披露目の場で新次郎がまだ年若い榮三郎の後見人となり、あさが加野炭坑を担っていくことが正式に紹介された。

その頃、惣兵衛ははつが今井家から和歌山の土地を貰ったことを聞き、現地へ視察に行く。そこでみかんに目をつけ、みかん農業を始めることを決断。当初は反対していた菊も、家族に説得され和歌山行きを納得する。こうして、はつは一家で和歌山へ旅立っていった。

あさはその後も大阪の加野屋と九州の炭坑を行き来する日々だったが、ある日、妊娠が発覚する。しかし、炭坑の納屋頭の一人・サトシの不穏な動きが気になり、大阪に帰ることを躊躇っていた。痺れを切らした新次郎とうめが九州まで迎えに行くと、酷いつわりで衰弱しているあさと対面する。驚いた二人は、あさと共に炭坑を任されていた加野屋の番頭・亀助（きすけ）に後を任せ、あさを大阪へと連れ帰る。その後、順調に回復したあさは長女・千代（ちよ）を出産した。

炭坑の落盤事故

大阪で千代との穏やかな日々を過ごしていたあさのもとに、炭坑で落盤事故があったと知らせが届いた。あさは赤ん坊の千代を新次郎に託し、一人きりで九州に向かおうとする。そこに事態を知った五代が駆け付け、あさと共に九州へ向かった。現場検証をした五代は、誰かが故意に起こした落盤だと見抜く。

正吉は加野屋の大番頭・雁助（がんすけ）に炭坑復興を任せることにする。炭坑を訪れた雁助は、そこで見かけたサトシに見覚えがあることに気付く。サトシは過去に加野屋から独立して失敗した大番頭の息子・松造（まつぞう）だったのだ。そのことを雁助に指摘されたサトシは、炭坑から姿を消す。
大阪のあさと新次郎の元にサトシが現れると、自分が松造であること、加野屋に恨みを晴らすため落盤事故を起こしたことを自白する。過去の罪悪感からサトシを許そうとする新次郎だったが、あさはサトシを叱責し、サトシもそれが正しいと頷く。病に倒れていた正吉はサトシを家に招き、過去のことを謝罪してサトシの父との思い出を語った。それを聞いたサトシは改心し、自ら警察へ出頭しに行った。
その後、長らく病を患っていた正吉はよのに見守られ、この世を去った。

心の友

あさは再び大阪と九州を行き来する日々に戻っていた。そんな中、五代から誘われて初めて東京に行ったあさは、五代の友人で内務卿を務める大久保利通（おおくぼ としみち）を紹介される。また、東京で銀行を開業していた父と、アメリカ留学から帰ってきた弟とも再会した。
あさは家族で外食をしていたとき、たまたま隣り合った席の福沢諭吉（ふくざわ ゆきち）と話をする。あさは福沢と知らぬまま、福沢の話に耳を傾ける。

あさが大阪へ帰ろうとした矢先、先日知り合ったばかりの大久保が暗殺されたことを知る。あさは五代を心配して大阪へは帰らず、五代の元へ駆けつける。憔悴していた五代だが、あさに励まされ、あさと五代は心の友となることを誓い合った。

それぞれの決意

新次郎の弟・榮三郎にも縁談があり、妻を迎えた。
落盤事故から立ち直った加野炭坑の借金もようやく返済し終わり、あさは再び銀行設立のことを持ち出す。亀助と入れ替わりで大阪に戻ってきていた雁助から銀行のことを反対され、あさはひとまず銀行のことは保留にして、新たな炭坑を買って事業を拡大することにした。

その頃、新次郎は五代のあさへの気持ちに気付きながらも、友として酒を酌み交わすようになっていた。
成長した千代は、男の新次郎が働かず女のあさが働くことが普通でないと気付き始める。

五代は北海道の開発に力を入れるようになっていたが、そのための計画が官民癒着であると新聞に取り沙汰され、信頼関係を築いてきた大阪商人たちからも非難を浴びてしまう。責任を感じて大阪商法会議所の職を辞そうとした五代だったが、あさが大阪商人たちにこれまでの五代の尽力を説く。また、新次郎と榮三郎の協力で五代が癒着などしていないことが分かり、五代への疑いは晴れた。感謝した五代は、今後は大阪の繁栄のために生涯を尽くすと誓うのだが、その身体はすでに病に冒されていた。

銀行設立と五代の死

加野屋が新しく買った炭坑が当たり、あさは次々と九州の炭坑を買い進め、加野炭坑を大きくしていった。その成功を見た榮三郎と雁助が話し合い、ついに3年後を目標に銀行設立に向け動き出すことを決める。これまで銀行に反対してきた雁助は店を去ることを決意した。雁助は心を通わせていたうめを誘おうとするが、うめのあさへの忠誠心を知って身を引く。うめの雁助への気持ちに気付いていたあさは、二人の関係にやきもきするしかなかった。
あさから銀行のことを相談された五代の助言により、銀行の頭取に榮三郎が就き、その他の事業は別の会社を起こし、その社長に新次郎が就くことになった。これまで商売に関わってこなかった新次郎は難色を示したが、ついに引き受けることにする。

精力的に活動していた五代だが、病が悪化して東京で療養生活をすることにした。東京に旅立つ前、あさと五代は最後の会話をする。その後、五代は東京で息を引き取った。

3年後に銀行を設立するため、加野屋に新たな仲間が加わった。大蔵省の会計検査院で働いていた山崎平十郎（やまさき へいじゅうろう）である。
はつが藍之助と菊とともに、10年ぶりに加野屋を訪れる。藍之助は加野屋の商売に興味が湧く。千代は初めて会う伯母のはつが理想の母親像そのもので、あさとの違いに困惑する。

加野銀行の始まり