
『Nのために』とは、湊かなえの推理小説、及びそれを原作とした純愛ミステリードラマである。ドラマの主演は榮倉奈々で、窪田正孝や賀来賢人などが出演する。高層マンションの野口宅で、野口貴弘と妻の野口奈央子が殺害された。現場に居合わせたのは大学生の杉下希美と成瀬慎司と安藤望と西崎真人だった。その中で西崎が殺害を自供し、殺人罪で懲役10年が言い渡される。それから10年後、元警察官の高野茂が事件に疑念を抱き、真相を追い始める。本作は大切な人を守ろうとする究極の愛が描かれており、多くの賞を受賞した。
『Nのために』の概要
『Nのために』とは、湊かなえの推理小説、及びそれを原作として2014年10月17日から12月19日まで毎週金曜日22時にTBS系の金曜ドラマ枠で放送された純愛ミステリードラマである。小説は2010年1月29日に単行本が東京創元社から出版され、2014年8月23日に文庫本が双葉社から刊行された。内容は5章に分かれており、章ごとに主要人物の視点で描かれている。ドラマの脚本は『八日目の蝉』や『時をかける少女』などを手掛けた奥寺佐渡子が担当する。主演は榮倉奈々で、窪田正孝や賀来賢人などが出演する。
2004年12月24日に高層マンションの野口宅で、大手商社マンの野口貴弘(のぐちたかひろ)と妻の野口奈央子(のぐちなおこ)が殺害される。現場には大学生の杉下希美(すぎしたのぞみ)と成瀬慎司(なるせしんじ)と安藤望(あんどうのぞみ)と西崎真人(にしざきまさと)がいた。その中で西崎が自分が殺したと自供して逮捕され、殺人罪で懲役10年の判決を受ける。それから10年後、西崎は刑期満了で出所した。しかし元警察官の高野茂(たかのしげる)は事件に疑念を抱き、真相を追い始める。
タイトルの通り、主要登場人物は全て「N」のイニシャルがついている。本作は自分を犠牲にしても大切な人を守ろうとする究極の愛が描かれており、キャスト陣の演技や繊細なストーリー展開などが見どころとなっている。第83回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では最優秀作品賞やドラマソング賞、監督賞、窪田正孝が助演男優賞を受賞した。
『Nのために』のあらすじ・ストーリー
野口夫妻殺人事件
2004年12月24日に高層マンションの野口宅で、大手商社マンの野口貴弘(のぐちたかひろ)と妻の野口奈央子(のぐちなおこ)が殺害される。現場には大学生の杉下希美(すぎしたのぞみ)と成瀬慎司(なるせしんじ)と、安藤望(あんどうのぞみ)と西崎真人(にしざきまさと)がいた。その中で西崎が殺害を自供して逮捕され、殺人罪で懲役10年の判決を受ける。それから10年後、西崎は刑期満了で出所した。しかし元警察官の高野茂(たかのしげる)は事件に疑念を抱いていた。実は高野は駐在として長年働いていた青景島で、希美と成瀬のことを以前から知っており、2人がある事件を起こしたことから全てが始まっていると確信していた。
さざなみが火事で焼失
15年前、青景島に住む高校生の希美は、父で杉下建設の社長である杉下晋(すぎしたすすむ)と母の杉下早苗(すぎしたさなえ)と弟の杉下洋介(すぎしたようすけ)と裕福に暮らしていた。しかしある日、突然晋が愛人の宮本由妃(みやもとゆき)と一緒に住むと言い出し、家族を家から追い出す。希美たちは動揺しながらも仕方なく晋が用意してくれた山奥の古い家に住むことになった。
情緒不安定になった早苗は晋が振り込んだ生活費も高級化粧品に使い切ってしまう。食べるものに困った希美は、由妃に土下座して食べ物を恵んでもらった。春になり、希美は高校3年生になって成瀬と同じクラスになった。成瀬と元々幼馴染だった希美は、これを機に彼との仲を深める。
しかし早苗がさらに不安定になり、追い詰められた希美は晋たちの家を燃やそうとするが、成瀬に止められて踏みとどまった。その後、成瀬の両親が経営していた料亭さざなみが閉店し、両親も離婚することになる。そんな矢先、料亭が火事になり、中にいた成瀬の父・成瀬周平(なるせしゅうへい)は高野の妻である高野夏恵(たかのなつえ)によって救出された。希美は火事の現場に向かう途中、呆然とする成瀬を発見する。そこへ高野がやって来て成瀬に事情を聞こうとするが、希美が咄嗟に嘘をついて彼を庇った。だが高野は成瀬が放火犯だと疑い、希美と彼が何かを共有していると感じた。その一方、夏恵は火事の際に何らかが原因で声が出なくなってしまった。
希美と西崎と安藤の出会い
東京の大学で2年生となった希美は、バイトをしながら築60年の野原荘に住む。そこで大学生の安藤と西崎に出会い、徐々に親しくなる。
そんな中、管理人から地下鉄開通に伴う土地の買収話を聞いた3人は野原荘を守るため「N作戦」を立てる。そして彼らはこの作戦を通して貴弘や奈央子と知り合い、親しくなった。
後に大学を卒業した安藤は貴弘と同じ会社に就職し、彼の直属の部下となる。そんな中、奈央子が野原荘を訪れたことを機に西崎が彼女と会うようになる。西崎は幼い頃母親から虐待を受けた過去があり、奈央子も貴弘から暴力を受けていることを告白する。やがて2人は互いの傷をなめ合うように深い関係になっていく。しかし奈央子が不倫しているという情報が貴弘の会社に出回り、彼は奈央子の携帯を解約して、家の外側に取り付けたチェーンをかけて彼女を監禁するようになる。
奈央子を助けたい西崎は希美に事情を説明する。希美が同級生の結婚式で成瀬と再会し、彼がレストランで給仕や出張サービスの仕事をしていることを話すと、西崎は奈央子救出のために「N作戦2」として成瀬に協力を要請する。成瀬は迷った末、それを承諾した。
N作戦2の決行日はクリスマスイブとなった。その矢先、希美と安藤は奈央子と貴弘から偶然にもクリスマスイブに野口家に招待される。その後、奈央子は外に出る口実を作り貴弘に隠れて公衆電話から西崎に電話し、クリスマスイブに希美が来た時に貴弘の目を盗んで花屋のふりをして家に来て自分を連れ出してほしいと助けを求める。しかし奈央子は貴弘に見つかって強引に自宅へ連れ戻されてしまった。
殺人事件の真相
2014年現在、火事の一件について調べる高野に夏恵がある手紙を書く。それは火事の犯人を告白する内容だった。夏恵は燃え盛る料亭に飛び込み、そこで周平を見つけて助けようとする。しかし周平は、自分が死ねば生命保険で慎司を大学へ行かせてやれるから死なせてくれと懇願した。夏恵は周平が火をつけたのだと悟ったが、不憫な彼に疑いがかからないよう証拠品のオイル缶を炎に投げ捨てた。犯人隠避などの罪を犯した夏恵だったが、高野が職を失うことになるため、真実を隠しておくことしかできなかった。そのため高野が定年を迎え、自分が時効を迎える前に全てを告白する手紙を書いたのだった。高野は号泣する夏恵に寄り添い、真実を黙っていようと約束した。
事件4日前、西崎は奈央子からの電話で作戦を変更し、希美が貴弘と将棋をして書斎に引き留めている間に花屋に扮した自分が奈央子を連れ出すと決める。
事件当日、希美は野口家に向かい、貴弘と書斎で将棋を始める。しかしクリスマスイブで花屋が混んでおり、西崎の到着が遅れてしまう。一方、仕事が終わった安藤も野口家に向かっており、貴弘に電話をかける。貴弘は希美から、安藤に将棋で勝つための方法を聞いていたため、彼に屋上ラウンジで待つよう指示した。希美は時間稼ぎのため必勝法を教えるが、貴弘から安藤と賭けをしていて、安藤は将棋に負けると僻地に海外赴任することになると聞かされて動揺する。そんな中、インターホンが鳴り、西崎が花屋に扮して野口家にやって来る。西崎は奈央子と逃げようとするが、奈央子はそれを拒否し、希美を家から連れ出してほしいと言い出す。奈央子は希美が貴弘と密かに連絡を取り合い、彼をそそのかしていると勘違いしていた。
一方、作戦のことを知らない安藤は野口家の玄関前にいた。希美に好意を持つ安藤だが、彼女が他に大切な人がいることに気づいていた。それでも安藤は希美の気持ちを確かめるため彼女が自分を頼って来ることを願い、家の外からドアチェーンをかけ、屋上ラウンジに向かう。
そんな中、希美は警察沙汰になれば安藤から貴弘を引き離せると考え、今西崎が来ていることを貴弘に伝えてしまう。貴弘は書斎を飛び出し、玄関にいる西崎に暴行を加えた。西崎はドアを開けるが、外側からチェーンがかけられており、逃げることができなかった。奈央子はリビングに逃げるが、貴弘は彼女を追いかけ首を絞める。西崎は台所にあった包丁を手にしたものの、貴弘に包丁を奪われ、襲われそうになる。奈央子はそれを止めようと床に落ちていた燭台で貴弘を殴りつけた。頭から血を流して倒れる貴弘を見て取り乱した奈央子は、自らの腹部を包丁で刺し、自殺を図ってしまう。西崎は呆然とする希美に、奈央子を人殺しにしたくないので自分が殴ったことにしてくれと頼む。そして西崎は貴弘に包丁を握らせ、奈央子を彼が刺したように見せかけた。そこへ成瀬が駆けつけて西崎の指示通りに警察に通報し、安藤もやって来る。その後、警察も到着し、西崎が貴弘が奈央子を刺したのでカッとなって自分が殺したと自供したのだった。
10年後、希美は病を患い、余命1年と宣告された。そのことを知った成瀬と高野は絶縁状態の母親に会いに行くよう希美の背中を押す。早苗は再婚して高松市で仕事をしながら暮らしていた。早苗の元を訪れた希美は病気で死ぬことを告白し、涙を流す。早苗はそんな希美を抱きしめた。
後日、希美は島で店を出す成瀬の元へ行く。成瀬は希美の手を握り、彼女を抱きしめるのだった。
『Nのために』の登場人物・キャラクター
主要人物
杉下希美(すぎしたのぞみ/演:榮倉奈々)

香川県の青景島出身で、両親と弟と4人暮らしである。明るく元気で、芯が強いしっかり者。高校2年生の時に社長である父が愛人を連れてきたため、豪邸を追い出され、山奥の古い家で貧相な生活を余儀なくされた。そのせいで母が情緒不安定となり少ない生活費を浪費してしまうが、「下は向かない前を向く」と自分に言い聞かせ、弟と母を支えながら生活する。同じ高校の同級生である成瀬慎司(なるせしんじ)とは小学校の将棋クラブで一緒の幼馴染で、唯一心を開ける人物だった。高校卒業後は上京し、バイトをしながら仕送りなしで築60年の野原荘に住み始める。そこで安藤望(あんどうのぞみ)と西崎真人(にしざきまさと)と出会って親しくなり、野口夫妻殺人事件に関わることになる。大学卒業後は建築関係の会社に就職したが、その後、病を患い余命1年の宣告を受ける。安藤からプロポーズされたが、それを断り、仕事を辞めて島で店を出す成瀬の近くに住むことを決めた。
成瀬慎司(なるせしんじ/演:窪田正孝)

香川県青景島出身で、希美の高校の同級生で幼馴染である。優しく落ち着いた性格で、家を追い出された希美のことを心配しており、高校3年生の時に同じクラスになったことで彼女と急接近した。島で1番の料亭の息子だが、経営不振に陥り、両親も離婚して閉店することになった。だがその後、父が焼身自殺を図ったことで店と家が焼失してしまう。そのため大学進学も危ぶまれたが、希美が奨学金を譲ってくれたことで東京の大学に進学することができた。しかし大学2年生の時に父が死に、自暴自棄になって大学の同級生の誘いで犯罪に手を染めてしまう。大学も辞めることになったが、心を入れ替えて高級レストランで働きながら、料理人の道を歩み始める。その際に希美と再会したことで、野口夫妻殺人事件に関わることになる。その10年後、島に帰って自分の店を出すことになった。
安藤望(あんどうのぞみ/演:賀来賢人)

長野県千早島出身である。頭がよく、人付き合いが上手い。希美の1歳年上で、野原荘で彼女と知り合う。後に野口貴弘(のぐちたかひろ)と同じ会社で働くことになり、彼の直属の部下となった。西崎と共に希美と親しくなり、野口夫妻殺人事件では直接彼らの計画に関わっていなかったが、現場に居合わせることになってしまう。貴弘死亡後は彼の後釜のポジションになり、出世した。共通点があり、たくましく生きる希美に惹かれてプロポーズもしたが、フラれてしまった。
西崎真人(にしざきまさと/演:小出恵介(少年期:若山耀人))

目次 - Contents
- 『Nのために』の概要
- 『Nのために』のあらすじ・ストーリー
- 野口夫妻殺人事件
- さざなみが火事で焼失
- 希美と西崎と安藤の出会い
- 殺人事件の真相
- 『Nのために』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 杉下希美(すぎしたのぞみ/演:榮倉奈々)
- 成瀬慎司(なるせしんじ/演:窪田正孝)
- 安藤望(あんどうのぞみ/演:賀来賢人)
- 西崎真人(にしざきまさと/演:小出恵介(少年期:若山耀人))
- 野口貴弘(のぐちたかひろ/演:徳井義実)
- 野口奈央子(のぐちなおこ/演:小西真奈美)
- 高野茂(たかのしげる/演:三浦友和)
- 青景島の人々
- 高野夏恵(たかのなつえ/演:原日出子)
- 宮本由妃(みやもとゆき/演:柴本幸)
- 成瀬周平(なるせしゅうへい/演:モロ師岡)
- 成瀬瑞穂(なるせみずほ/演:美保純)
- 池園和幸(いけぞのかずゆき/演:山中崇)
- 杉下洋介(すぎしたようすけ/演:葉山奨之)
- 磯野友子(いそのゆうこ/演:梨木まい)
- 杉下晋(すぎしたすすむ/演:光石研)
- 杉下早苗(すぎしたさなえ/演:山本未來)
- その他
- 桐野繭子(きりのまゆこ/演:伊藤裕子)
- 広田公之(ひろたひろゆき/演:福田転球)
- 溝口(みぞぐち/演:山田裕貴)
- 西崎寛(にしざきひろし/演:神崎孝一郎)
- 野原兼文(のばらかねふみ/演:織本順吉)
- 西崎美雪(にしざきみゆき/演:中越典子)
- 津嘉山(つかやま/演:渡辺憲吉)
- 柴田(しばた/演:桜井聖)
- 前田(まえだ/演:山田明郷)
- 多田(おおた/演:財前直見)
- 鈴木健一(すずきけんいち)
- 『Nのために』の用語
- 青景島
- 野原荘
- 料亭さざなみ
- 将棋
- 『Nのために』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 希美が成瀬を庇う場面
- 成瀬慎司「大丈夫。全部偶然だっていえばいい」
- 希美と早苗が和解する場面
- 『Nのために』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 10年の女優人生の中で1番プレッシャーを感じていた榮倉奈々
- ドラマの共演がきっかけで結婚した榮倉奈々と賀来賢人
- 青景島のロケ地は香川県の小豆島
- 『Nのために』の主題歌・挿入歌
- ED(エンディング):家入レオ「Silly」