こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)のネタバレ解説・考察まとめ
『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』は渡辺一史のノンフィクション小説。第35回大宅壮一ノンフィクション賞、第25回講談社ノンフィクション賞を受賞している。2018年に大泉洋の主演で映画化された。進行性筋ジストロフィーという難病を抱えた鹿野靖明がおくる、ボランティアたちとの交流が物語を進める。不自由な体だがとことん自由奔放な鹿野の言動がユーモアたっぷりに描かれ、障害と介助の枠を越えた自立生活が垣間見える。
鹿野靖明「思い切って人の助けを借りる勇気も必要なんだよね」
鹿野と障害を持つ他の参加者によるシンポジウムで、「どうして自立生活を始めようと思ったのか」と車椅子の少年から質問があった。それに対して「モテたかったから」と最初の動機を鹿野が話すと会場が盛り上がった。その後、それでも最初はボランティアを集めたりと苦労が多かった鹿野は「結局誰かの助けを借りないと、できないことだらけだったさ」と少年に語る。そして「思い切って人の助けを借りる勇気も必要なんだよね」と伝えた。この少年は物語の後半で、田中が大学を辞めようかと思っていたときに「助けてください」と介助を求めた少年だった。
鹿野靖明「人はできることより、できないことの方が多いんだぞ」
ボランティアを辞めることを田中が鹿野に告げ、大学も医者の夢も田中は辞めようとしていた。そんな中、田中は旅行先で鹿野が倒れたと知らせを聞いて向かうも、それは鹿野の演技だった。翌朝、美咲と付き合っていたことを黙っていた田中に鹿野が冗談っぽく「できる男ぶるなよ」と笑う。誰かのために一生懸命になる田中は、それでも上手くいかない物事に苛立ち、理想と現実のギャップに苦しんでいた。そんな田中に「人はできることより、できないことの方が多いんだぞ」と、鹿野はまた冗談のように軽く投げかける。人に頼ってできないことを補いながら生きる鹿野の言葉は、田中の重く固まった心をほぐしていく。
『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
制作前から鹿野役は大泉
本作を手がけた前田哲監督と石塚慶生プロデューサーは、二人とも原作を読んだ瞬間から鹿野の配役を大泉洋に決めていた。話し合ったわけでもなく、初めから二人の頭に大泉の鹿野が動いていたのだ。初期の脚本は原作に沿ったものだったが、それでは大泉は口説き落とせないということで映画として面白い内容に変化させた。1年以上熟考してやっと納得できる物語が完成した。
美咲と田中はオリジナルキャラクター
原作に登場する鹿野のボランティアは魅力的で、そのボランティアのバックグラウンドにも原作は丁寧に焦点を当てていた。映画でもそれは変わらず、鹿野に惹かれて集まってきたボランティアたちを魅力的に役者が演じている。特に美咲と田中は鹿野と深く関わる存在として描かれている。しかし、原作に二人のキャラクターはおらず、映画だけのオリジナルキャラクターである。また、鹿野と美咲と田中の三角関係も、オリジナルキャラクターとして作っていく初期の段階で決まっていたと監督は話す。
徹底した役作り
筋ジストロフィーで筋肉が徐々に衰える役を演じた大泉は、役作りのために大幅に減量して最高で10キロの減量を行なったという。また、クランクインしてからも体型維持のために撮影の合間はほぼ毎日ランニングを欠かさなかった。また、美咲役の高畑は大泉と初共演だったが、「クランクインからアップまで、気持ちを“よいしょ”って持ち上げることなく、ずっと鹿野さんと美咲の関係でいられたんです」と語り本作で美咲がそうであるように鹿野と仲良くなり、好きになってしまっていたことに驚いていた。共演者も「鹿野」だと自然に思ってしまうほど、大泉は徹底して役作りを行なっていた。
『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の主題歌・挿入歌
主題歌(OP曲):ポルノグラフィティ『フラワー』
これまでも映画主題歌を担当してきたポルノグラフィティだが、「ノンフィクション作品」のテーマ曲は今回が初めてだった。「命」といった深いテーマにノンフィクション作品ということで、曲作りにはポルノグラフィティの二人も慎重になった。シンプルかつ力強いメロディーと、「花」になぞらえた命の輝きが歌詞から伝わる一曲。
挿入歌:THE BLUE HEARTS(爆弾ジョニー cover version)『キスしてほしい』
PVは全てアニメーションで作られており、メンバーの甲本はサルを、真島はペンギンを、河口はブタを、梶原はシロクマをモチーフにしたキャラクターとなっている。軽快で明るく、疾走感のある一曲。
映画では爆弾ジョニーがカバーして作中のバーベキュー会場で実際に歌っている。また、美咲のお気に入りの曲として描かれ、鹿野が他界してからも勤務先の小学校のオルガンで披露する場面がある。
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目次 - Contents
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の概要
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』のあらすじ・ストーリー
- 新人ボランティアと鹿野
- 仲直りと病状の悪化
- 美咲の嘘
- 気管切開と鹿野の声
- すれ違う心
- 再び鹿野の元へ
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 鹿野靖明(しかのやすあき)
- 安堂美咲(あんどうみさき)
- 田中久(たなかひさし)
- ボランティアの人たち
- 高村大助(たかむらだいすけ)
- 前木貴子(まえきたかこ)
- 塚田心平(つかだしんぺい)
- 城之内充(じょうのうちみつる)
- 病院の人たち
- 野原博子(のはらひろこ)
- 泉芳恵(いずみよしえ)
- 田中猛(たなかたけし)
- その他の人物
- 鹿野清(しかのきよし)
- 鹿野光枝(しかのみつえ)
- 由美(ゆみ)
- 加奈(かな)
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の用語
- 筋ジストロフィー
- 人工呼吸器
- 自立生活
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 鹿野靖明「有名になったらボラ集まるっしょ。ボラいないと生きていけないしね」
- 鹿野靖明「思い切って人の助けを借りる勇気も必要なんだよね」
- 鹿野靖明「人はできることより、できないことの方が多いんだぞ」
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 制作前から鹿野役は大泉
- 美咲と田中はオリジナルキャラクター
- 徹底した役作り
- 『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』の主題歌・挿入歌
- 主題歌(OP曲):ポルノグラフィティ『フラワー』
- 挿入歌:THE BLUE HEARTS(爆弾ジョニー cover version)『キスしてほしい』