彼らが本気で編むときは、(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『彼らが本気で編むときは、』とは、家族の在り方やLGBT差別の問題について扱った、萩上直子監督のオリジナル脚本によるハートフル映画である。物語は、小学生のトモの母親が家出をしてしまうところから始まる。トモは母が帰ってくるまで面倒を見てもらおうと、叔父であるマキオの元へ向かうが、マキオは恋人であるトランスジェンダーのリンコと一緒に住んでいた。トランスジェンダーであるリンコにとまどうトモだったが、リンコの優しさやリンコを取り巻く人々との触れ合いを通して、心を開いていくストーリーとなっている。

小川トモの祖母であり、小川ヒロミと小川マキオの母。現在は、認知症でリンコの働く介護施設に入所している。夫に浮気をされて家を出て行かれた過去を持ち、その悲しみや怒りを編み物にぶつけていた。そのため、サユリは編み物で服や小物をたくさん作ったが、子どもだったヒロミは一切それを身に付けなかった。作り続けた編み物は、籍を抜いていなかった夫が亡骸で戻ってきた際に、棺の中に一緒に入れて燃やしたことを語っている。子どもだったヒロミに厳しく当たっていたため、ヒロミはサユリのことを「捨てた」と言っており、二人の間には確執がある。

佑香(演:門脇麦)

リンコの職場の同僚。仕事中によくリンコと他愛もない会話をしており、同棲している恋人との結婚準備の愚痴などを話していた。神社で行われた結婚式の際には、リンコ、マキオ、トモの3人がその様子を見に来ている。

金井(演:江口のりこ)

児童相談所の職員。小川トモが不適切な環境で生活しているとの通報を受け、他の職員と共にリンコとマキオの家にやって来る。トモに「何か困っていることはないか」と聞いたり、体に怪我などをしていないかを確かめたりした後、特に問題はないと判断してその場を去った。

斉藤(演:品川徹)

リンコの働く介護施設に入所している男性。リンコや佑香に介護をされている。

『彼らが本気で編むときは、』の用語

LGBT

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉であり、セクシャルマイノリティの総称のひとつである。レズビアンとは、女性同性愛者、ゲイとは男性同性愛者、バイセクシャルとは、男性、女性どちらにも性愛感情が向く性の在り方のことを指す。トランスジェンダーとは、体の性と性自認が一致しない人のことを指す。

トランスジェンダー

リンコのように、生まれ持った体の性別と、性自認が違う人のことを指す。厳密には、生まれ持った体の性と心の性が一致しない状態を指す、医学用語の「性同一性障害」とは異なる言葉である。トランスジェンダーの中には、体の性別と心の性別と一致させることを望んでいる人や、リンコのように既に体と心の性を一致させるための手術を受けた人も含まれている。また、広義には性自認としての性ではなく、身体的な性に違和感を感じ、体とは違う性の服装をする人も含まれる。

ネグレクト

ネグレクトとは、育児放棄や育児怠慢といった児童虐待のことを指す。具体的には、食事を与えなかったり、風呂に入れないなど不潔にしたり、また怪我や病気の時にも病院に連れて行かないなどの行為が、これに当たる。この映画では、トモの母・ヒロミが子どもを置いて家を出てしまったり、食事を十分に与えなかったり、不潔な家に放置している状態のことを指している。

『彼らが本気で編むときは、』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

マキオ「リンコさんのような心の人に惚れちゃったらね、あとの色々なことはどうでもいいんだよ。男とか女とかもはや関係ないんだ。」

トモとマキオは一緒にサユリの元に見舞いに行った後で、介護施設の外のベンチで二人で話をしていた。トモがリンコとの出会いについて尋ねると、マキオは、出会いはこの介護施設で、サユリの体を拭くリンコに一目惚れをしたことを話す。さらにマキオは、「最初に男の人だったことを知ったときはびっくりした」と話した後、「リンコさんのような心の人に惚れちゃったらね、あとの色々なことはどうでもいいんだよ。男とか女とかもはや関係ないんだ。」と言った。リンコのすべてを受け入れていることが分かる、マキオの思いの深さが表れた言葉である。

リンコ「さっさと供養終わらせて、とっとと女になるって決めた」

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