ビギナー（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『ビギナー』の概要

『ビギナー』は2003年10月6日から12月15日までフジテレビの月9枠で放送されたドラマ。法律の専門家を目指す司法修習生達が、司法研修所を舞台に成長していく姿を描いている。主演はミムラとオダギリジョーであり、メインキャストが堤真一、奥菜恵、我修院達也、横山めぐみ、北村総一朗、松雪泰子となっている。尚、ストーリー展開は特定の人物にフォーカスしない群像劇である。ストーリー展開は特定の人物にフォーカスしない群像劇である。入所パーティーで知り合った年齢も経歴も異なる主人公達が、時にはぶつかり合いながらも、成長していく姿が描かれている。法律を扱う作品である為、難解なセリフが登場するが、要所にテロップやイラストを使用する事によって分かりやすく表現されている。また、教官からの課題に取り組むシーンでは、黒板にイラストを書き議論するなど視聴者への配慮がなされている。さらに、主人公達のコミカルなやり取りや、恋愛模様なども取り入れ難解なイメージを払拭している。法律面では、司法試験予備校の早稲田セミナーが制作に携わりクオリティの高い作品になっている。

『ビギナー』のあらすじ・ストーリー

8人の出会い

元OLである司法修習生の楓由子（かえでよしこ）は、教官から出された課題に手間取り入所パーティーに遅れてしまう。会場に着くと他の参加者達は2次会に向かっており、司法研修所教務課の課長である山本宗司（やまもとそうじ）に課題を提出するが期限を過ぎており断られてしまう。その様子を見ていた羽佐間旬（はざましゅん）は、教官に受け取ってもらうよう頼むが、期限が守られていない事を理由に断られる。また、その場に居合わせた森乃望（もりののぞみ）にも、「期限を守らないあなたが悪い」と言われてしまう。森乃から2次会に誘われた2人は崎田和康（さきたかずやす）に場所を尋ねるが、誘われておらず場所がわからなかった。森乃は喫煙所にいた桐原勇平（きりはらゆうへい）に尋ねるが誰からも誘われていない為場所が分からなかった。

そこで桐原は会場に残っていた黒沢圭子（くろさわけいこ）や、松永鈴希（まつながすずき）、田家六太郎（たけろくたろう）を誘い2次会へ向かう。誰も場所を知らないまま歩いていると、楓が教官からの課題について話し、8人は強制わいせつ罪が成立すると判断した。だが翌日の授業では教官の沢口裕子（さわぐちゆうこ）から、「強制わいせつ罪が成立と書いたアホがいる」と叱責されてしまう。その後教官から、「サラ金から金を借りたY子（わいこ）に対し男X（おとこえっくす）が執拗に返済を迫った行為が、脅迫罪に該当するか否か」と言う課題が出される。8人は課題について議論するが、被害者であるY子を守ろうとする羽佐間と、「男Xの行為は脅迫ではない」と主張する桐原が対立してしまう。だが、Y子に届いた電報の内容が決め手となり男Xの行為は脅迫罪に該当すると判断する。だが翌日の講義で楓は教官から、「事件に関係のない人物まで書く必要はない」と注意されてしまう。だが羽佐間達7人は、「名もない人間の事を思うのは無駄ではない」と言い楓をかばうのだった。

教官からの課題に取り組む日々

教官の南ゆり子（みなみゆりこ）から、国立大学病院の職員である男A（おとこえー）と、医療用品の営業マンである男B（おとこびー）の間で「不正な金品のやり取りがあったか」と言う課題が出される。しかし、双方とも容疑を否認しており証拠もないと言う状態だった。だが、目撃者のC子（しーこ）が警察に告発したため事件が明るみになっていた。事件の様子を記したC子の供述を桐原が読み上げると、楓や森乃がC子の供述に曖昧な点があると指摘する。また、事件のあったホテルは偶然桐原が以前訪れた事のあるホテルだった事も判明する。その後8人は桐原の記憶を元に事件の状況を再現し議論する。そこで、C子が写っていないテレビの画面越しに2人のやり取りを見ていた事に気づき、C子の供述に信憑性があると判断する。翌日の講義では、田中一朗（たなかいちろう）のグループと楓達のグループだけがC子が画面越しにやり取りを見ていた事に気づき教官から褒められるのだった。

教室に入ってきた南は、突然バットを持った男に襲われる。だが、南が修習生達の洞察力を試すための自作自演だった。その後南は、団地での誘拐未遂事件の課題を出す。帰宅途中の少女A子（しょうじょえーこ）が男に連れ去られそうになるが、顔見知りの主婦Z（しゅふぜっと）に助けを求めたと言う内容だった。その後住民の目撃証言により、団地に住む男B（おとこびー）が逮捕される。男Bは仕事をしておらず、捨ててある電化製品を修理して使うなど住民から苦情が来ていた。しかし羽佐間は、事件直後は犯人の顔を覚えていなかった少女A子が、1週間後には詳細に警察の事細かに語っている点が不自然だと指摘する。さらに目撃者の管理人Y（かんりにんわい）の供述には、外来者用の自転車置き場の話が載っており、住民である男Bではないと推察する。さらに事件がワイドショーに取り上げられ、その内容によって少女A子が男Bを犯人だと思い込んでいると判断した。そして翌日の講義では、男Bは無罪であり犯人は近所に住む予備校生だったと教官が話していた。

楓たちは教官の重松幸輔（しげまつこうすけ）からの課題である、公共施設の建設に関する事例に取り組んでいた。男Y（おとこわい）が自分の土地を公共施設建設の為町に売ろうとした所、地元住民から反対の声が上がった。中でもおじいさんXは、男Yの土地の一部は「自分の土地だ」と主張し座り込みを行った為、男Yが法的手段にでたと言う内容だった。森乃は、おじいさんXの主張に「そんな建物を建てられたら何も見えなくなる」の部分に疑問を感じていた。そして楓達は、男Yと町がグルになって儲けようとしている事。さらにおじいさんXは、孫の通う小学校が見えなくなる為反対していた事をつき止める。だが男Yは違法な行為は行っていない為、どうする事も出来なかった。その時楓が、行き過ぎた法律の行使を止める事のできる「権利の濫用」を適用する事を提案する。だが、「権利の濫用は吟味が必要な法律であり無闇に使う事はできない」と羽佐間達に反対される。さらに松永が、この事件を担当した裁判官は自分の父であり、権利の濫用は適用されていないと打ち明ける。だが翌日の講義で松永は、「この判決を下した裁判官は間違っている。権利の濫用のケースだ」と発言する。田中が、「権利の濫用には吟味を重ねる必要がある」と反論するが、桐原や崎田は「吟味を重ねた上での判断だ」と松永を庇うのだった。

弁護修習の日々

楓達は弁護士の仕事を体験する弁護修習の為、それぞれ弁護士事務所を訪れていた。楓と桐原は、教官の重松の事務所。羽佐間と森乃は大手法律事務所。崎田と田家は弁護士の付き添いで、拘置所へ。黒沢と松永は社会勉強の名目で、飲み屋に連れて行かれていた。研修所に戻った8人は、楓と桐原が事件を任されたと聞き羨ましがるが桐原は「大した事件じゃない」と言った。事件の内容は、ビラを配っていた大学生大野（おおの）が道路交通法違反で逮捕されたと言うものだった。大野は、彼女の親が経営している町工場が「銀行の資金援助がなく倒産した」と言う内容のビラを配っていた所を通報され逮捕されていた。楓は「大野さんを無罪にしたい」と主張し、大野の行為が道路交通法違反に当たらないと立証できないかと主張する。8人は大野の証言を元に、実際に路上でビラを配る様子を再現したが思うような成果は得られなかった。その後、桐原と森乃は路上で配られているビラを証拠品として集めればいいと気づく。更に様々なビラがある中で、大野だけを逮捕した事がいかに不当であるかを証明できればいいと判断するのだった。その後、桐原と楓は路上で配られているチラシやティッシュを集め裁判で証拠として提出した。

ある日研修所に伊勢今日子（いせきょうこ）と名乗る女が現れ、森乃を「姉さん」と呼び突然抱きついた。その様子を見ていた7人は、森乃の昔の仲間だと気づいたのだった。伊勢の目的は通りすがりの喧嘩を囃し立てた所、警察に事情を聞かれてしまいどうすればいいのか森乃に相談する事だった。詳しく事情を聞くと、喧嘩をしていたのは知り合いであるしんちゃんであり、相手の男は知らなかった。話を聞いた森乃達は、伊勢も罪に問われてしまうと説明すると伊勢は怒って出ていってしまう。伊勢を追いかけた楓は、殴られた相手である男Y（おとこわい）が入院している病院を聞きお見舞いに訪れる。そこで楓は、入院している男Yから、伊勢からしつこく付きまとわれていた事を知らされる。そして喧嘩の発端は、しんちゃんが男Yの彼女にちょっかいを出した事がきっかけであり、先に手を出したのはしんちゃんだった。楓の話を聞いていた羽佐間は、実は伊勢の言動はしんちゃんでなく男Yに対してだったと気づく。そしてその事が証明されれば、伊勢が罪に問われることもないと判断する。その後、森乃は伊勢に会い警察に事情を話すよう説得する。

楓達は教官の野佐木恍也（のざきこうや）から、ある夫婦の事件に関する課題を出される。夫婦は仕事の為上京したが、手違いにより仕事につけなかった。その後公園に寝泊まりをしていたが、仕事は見つからず所持金が底をつき妻が夫に「殺して下さい」と懇願し夫は妻を殺害してしまう。羽佐間は殺害に至るまでの経緯を考慮し、夫の男A（おとこえー）の罪を殺人罪よりも軽い同意殺人だと主張する。だが桐原は、「しっかりとした殺意を持っていた」と主張し殺人罪と判断した。更に桐原は事件について、「短絡的な犯行だ」と断言する。羽佐間は桐原と意見が対立した事で投げやりになり、「人は分かり合えない」と楓に話した所「分かり合おうとする事から逃げちゃいけない」と言われる。その後やる気を取り戻した羽佐間は、再び楓と事件について検証を始める。翌日皆で集まり再度議論するが、桐原の意見は変わらず羽佐間と言い合いになり互いに声を荒げてしまう。その後楓は、裁判官の仕事を学ぶ刑裁修習の為裁判所に行き男Aの裁判に出席する。男Aに対して最後に裁判官は「何か言いたいことはありますか」と聞かれ、「あんぱんではなくジュースを買ってあげればよかった」と言い泣き崩れてしまう。楓は目に涙を浮かべて聞いており、傍聴席にいた桐原は涙を流していた。

楓たちは業務研修の為、検察庁で検察実務修習を受けていた。8人は2人で組になり、自転車泥棒やスーパーでの万引き犯などを取調べていた。そして松永と楓は、カード詐欺で逮捕された元OLの相模冬子（さがみふゆこ）の取調べを担当した。事件当日の内容に不自然な点があると松永が指摘するも、相模は真面目に答えようとせず感情的になってしまう。だが、楓が元OLだったと話した事により相模の態度が変わり、事件の真相を語った。そして相模が語った内容は、「ホストにカード詐欺を吹き込まれた」と言った物だった。松永は余罪は無いと判断し終わらせるつもりだったが、楓は犯人が他にもいると判断していた。そして楓はホストのジョンから事情聴取し、窃盗詐欺団の存在を突き止めた。その後、相模は「罪を反省し新しい仕事を見つけて頑張る」と楓に約束した。

それぞれの道へ

楓達は卒業に向けた2回試験を控えており、教官からも大事な時期であると言われていたが楓が警察に参考人として事情を聞かれてしまう。教官から事情を聞いた黒沢によると、帰宅途中の男性を後ろから突き飛ばし、持っていた紙袋を奪って逃げたとの事だった。楓は、男性が奪われた紙袋を所持しており、その事が事情を聞かれた原因だった。羽佐間達は楓が「紙袋を拾った」と言っていたのを聞いていたが、目撃者がいた為、楓の疑いは晴れていなかった。目撃者である女性X（じょせいえっくす）は、偶然会社員A（かいしゃいんえー）の叫び声を聞いた。そして、男Aが「あいつだ」と指差した白い紙袋を持った女性の跡をつけた所、寮に入っていったとの事だった。その頃警察に事情を聞かれた楓は、事件当日の行動を説明するが不自然な点が多く取調べを担当した警察官は不信感を抱いていた。だが、容疑者が出頭した為、楓の容疑は晴れた。研修所に戻った楓は、皆に容疑が晴れた事と事件の詳細を説明した。楓の話では帰宅途中に酔っ払った男Aが、しつこく容疑者の女性に言い寄った為突き飛ばして逃げたとの事だった。そして事件当日の不自然な行動については、落とし物を探していた事が原因だったと楓は打ち明けた。

2回試験を終えた楓達は、それぞれ卒業後の進路を決め始めていた。だが、森乃は教官から勧められた札幌の弁護士事務所への内定が突然取り消されていた。原因は森乃がかつて暴力団の内縁の妻だった事であり、教官からは「君を受け入れてくれる所は無い」と言われてしまう。その頃田家は裁判官に内定が決まっていたが、羽佐間は2回試験の成績が目標に届かず授業も無断で欠席していた。そして授業に出席した楓達は、最後の課題であるマグロの不当表示について課題を出されていた。楓は皆で課題について議論する為研修室に向かったが、そこには松永しかおらず皆はそれぞれ予定があり不在だった。松永も既に結論を出しており、「話し合う程の事じゃない」と言い出ていってしまう。その後楓は、研修室で皆が来るのを待っていたが誰も現れず1人で課題に取り組んでいた。翌日黒沢は森乃に「主婦に戻る」と告げ、松永は検察官の内定がでた事を2人に報告していた。さらに森乃は野佐木教官から、検察官として森乃を欲しがっている所があると聞かされる。先方は森乃の過去を知った上で希望しており、異例の抜擢だった。森乃が皆に報告すると、桐原は「森乃を利用しようとしている」と反対したが、羽佐間は「森乃さんが検察官に抜擢された事を誇りに思う」と応援していた。そして楓は、課題について議論しようと誘ったが「皆で話し合う事もない」と言われ、怒って出ていってしまう。楓は1人で課題に取り組むが、沢口教官から書き直すように言われてしまう。授業が終わり楓が教室に戻ると羽佐間達がおり、皆で最後の課題について議論を始めた。そして最後の課題を終えた8人は、「ここでの事は忘れない」と話しそれぞれの道に進んで言った。最後の教室をでた楓は廊下で待っていた羽佐間に、「ここを出たら映画でも見に行こう」と誘われた。

『ビギナー』の登場人物・キャラクター

主要人物

楓由子（かえでよしこ／演：ミムラ）

元OLであり仕事の合間に勉強をし、司法試験の合格は奇跡だと語っている。度々教官に注意されたり、有名な事件を知らなかったりと言った面もあるが納得するまで議論をする。同期である黒沢（くろさわ）が友人の事だと偽って話していた事を間に受けてしまうなど天然な部分もあるが、1度決めた事は周りに反対されても変えない性格である。また、物を取っておいたり捨ててある物を拾う事があり犯人に間違われた事もある。同期の羽佐間（はざま）から、しおりを貰い「頑張ろうな」と言われて以来好意を抱くようになり、最終回ではデートの約束をする。

羽佐間旬（はざましゅん／演：オダギリジョー）

祖母が詐欺にあった事がきっかけで弁護士を目指した過去があり、教官からの課題に立場の弱い人物が出てくるとすぐに「無罪だ」と発言する。気が短く情に流されやすい性格だが、恋人と別れた松永（まつなが）を励ましたり楓（かえで）が教官から「出直してこい」と言われた際には庇うなど仲間思いな面もある。また、金の為に弁護士をする事を嫌っており、「弁護士になれば経済的に余裕ができる」と言った楓に対して感情的になる面もある。桐原（きりはら）からは未熟な点を度々指摘され、口論になっていたが卒業を控える頃には信頼関係が芽生えアドバイスを受けている。

桐原勇平（きりはらゆうへい／演：堤真一）

元財務省の官僚であり、汚職の責任を取らされ辞任した過去を持つ。東大出身であり司法試験には在学中に合格しており、序盤では周りの修習生達を見下した様な態度を取っている。東大出身で元官僚という経歴の為、羽佐間達に挫折を味わった事がない様に思われているが、財務省を辞めさせられ妻もいなくなるという試練を乗り越えた過去を持つ。森乃（もりの）とは頻繁に口論になるが、徐々に惹かれ合い最終的にプロポーズしている。また当初は、羽佐間に対して「知的レベルが低い」などと発言したり、事件について議論している際も正反対の主張をしていた。だが、悩んでいる羽佐間を見てアドバイスを与えるなど信頼関係が芽生える。愛煙家であり、度々タバコを吸うシーンが登場する。

森乃望（もりののぞみ／演：松雪泰子）