地獄の花園（映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『地獄の花園』の概要

『地獄の花園』とは、2021年5月21日公開の日本映画である。監督は関和亮が務め、脚本は人気お笑い芸人でありながら脚本家としても活躍するバカリズムが担当した。主演は永野芽郁で、その脇を広瀬アリスや菜々緒、川栄李奈など豪華俳優陣が固める。最終的な興行収入は、約7億2000万円となっている。

本作のプロモーションとして、2021年2月28日に開催された『第32回マイナビ東京ガールズコレクション2021 SPRING/SUMMER』では、主演を務めた永野芽郁をはじめ、広瀬アリス、川栄李奈、大島美幸、遠藤憲一、勝村政信、松尾諭、丸山智己の計8名の主要キャストが作中の衣装そのままに登場しランウェイを歩いている。特に遠藤憲一、勝村政信、松尾諭、丸山智己の4人は男性でありながら女性役での出演だったため、作中と同じスカートの特攻服姿での登場となった。

三富士株式会社に勤める田中直子は、仲の良い同僚OLとランチやコスメ、恋愛の話で盛り上がるようなごく普通のOLである。しかし、そんな直子の部署に北条蘭が途中入社してきたことから、次第にヤンキーOL同士の派閥争いに巻き込まれて行ってしまう。そして蘭を狙うトムスンの赤城涼子らに捕らえられた直子は、不本意ながら実は「私は悲しいほど喧嘩が強い」と本来の姿を姿を見せることになる。これをきっかけに、直子はヤンキーOL同士の熾烈な争いに関わり、蘭からも闘いを挑まれることになっていく。

この物語は、普段の仕事の裏で実は激しい派閥争いを繰り広げているOLたちの、爽快アクション・コメディとなっている。

『地獄の花園』のあらすじ・ストーリー

普通のOL、田中直子

田中直子（たなかなおこ）26歳は、三富士株式会社という企業に勤める普通のOLである。しかしそんな直子が勤める三富士には、同じOLでも「ヤンキーOL」たちによる3大派閥が存在していた。

一つ目の派閥は営業部の佐竹紫織（さたけしおり）率いる佐竹一派で、頭の紫織はキレると何をしでかすかわからず「狂犬紫織」と呼ばれている。二つ目の勢力は、開発部の安藤朱里（あんどうしゅり）が率いる派閥である。朱里は10代の頃から3つの暴走族を束ねていたほどの実力者で、「悪魔の朱里」と呼ばれている。最後の派閥が製造部の神田一派である。神田一派は他のヤンキーとの傷害事件で最近まで服役していた神田悦子（かんだえつこ）が率いており、「大怪獣悦子」と呼ばれ恐れられている。

直子が同僚たちとガールズトークを繰り広げる横で、朱里たち3大派閥は抗争を繰り広げる。最終的に頭同士の対決で朱里が勝利し、三富士の頭は朱里が張ることになった。直子はOLの世界は強さが全てと認めつつも、自分たち堅気のOLには関係ないことだと冷めた目で抗争の結果を眺める。

新たな頭、北条蘭

直子が出勤する途中、同じ三富士の人事部に所属する松浦慎二（まつうらしんじ）がOLヤンキー3人に絡まれているところを目撃する。関わり合いにならないよう遠巻きにそれを眺める直子だったが、突如現れた北条蘭（ほうじょうらん）がその3人をあっという間に倒すのを見て「漫画みたいな強さだ」と驚く。

その後、蘭も倒された3人も同じ三富士の社員だということがわかり、蘭は社内のOLヤンキーたちに目を付けられるようになる。しかし蘭は圧倒的な強さでそれらを返り討ちにし続け、ついに紫織や悦子、朱里までをも倒すこととなった。こうして蘭は瞬く間に三富士の頭になり、社内のヒエラルキーが決まったことで社内の抗争はおさまっていった。

一つだけ予想外だったのは、直子と蘭が意外にもウマが合ったことである。ある日直子がバス停で盗撮されそうになったところを蘭が助けたことで意気投合し、二人は仲の良い同僚であり親友となった。しかしやはり蘭はヤンキーの世界では有名で、和久井物産や矢沢食品、高口商事といったあらゆる企業のOLヤンキーから喧嘩をふっかけられる。蘭はそれらを次々蹴散らし、ついに三富士のみならず周辺企業のOLの頂点に君臨することとなる。

直子はその状況を見て、蘭は良い子だが自分が巻き込まれるのは勘弁してほしいと思っていた。自分はあくまで普通のOLであるし、「彼氏だって欲しい」と思っているため喧嘩の世界とは離れて暮らしていたいのだ。しかしそんな思いもむなしく、直子は夜道で後ろからOLヤンキーたちに殴られどこかへ連れ去られてしまう。

直子の覚醒と蘭の挫折

翌日、蘭や朱里たちの元にトムスンという企業のOLヤンキーから果たし状が届いていた。そこには直子が囚われていることと、直子を助けたければ三富士の頭である蘭一人で指定の場所に来るように書かれている。トムスンは一部上場企業なだけあってOLの数も多く、とてもじゃないが蘭一人で太刀打ちできるような相手ではない。しかもトムスンの頭には「魔王赤城」と呼ばれる赤城涼子（あかぎりょうこ）が君臨している。しかし蘭は「直子を助けるのが最優先だ」として、朱里たちの反対を押し切って一人でトムスンに乗り込むことを決める。

その頃目を覚ました直子は椅子に拘束されており、周りには黒と赤を基調とした制服を纏うトムスンのOLヤンキーたちが囲んでいた。上座にはトムスンの頭で総務部所属の赤城涼子が座り、優雅にほほ笑んでいる。やがて蘭が一人で乗り込んでくると、涼子は嬉しそうに「激突！タイマンメドレー」と称して蘭とトムスンの幹部である「トムスン三銃士」をタイマンで戦わせる。三銃士の「七色の拳を持つ女 工藤早苗（くどうさなえ）」「下関の虎河豚 藤崎真理（ふじさきまり）」と順に戦った蘭は、最終戦の「青い稲妻 冴木妙子（さえきたえこ）」との闘いでついに破れてしまう。

直子は負けた蘭を見て「負けちゃうの！？こういうのって何とか苦戦しながら勝つパターンじゃないの！？」と半ば呆れ、さらに涼子に朱里たちを呼び出すよう強く要求されたことで全てが面倒になり、覚醒する。実は直子は「私は悲しいほど喧嘩が強い」と自分で言うほど喧嘩が強いのだが、普通のOLとして生活したいがためにそれを隠していたのだ。地元でも伝説レベルのヤンキーだった男兄弟を持ち、その血を引いている直子はあっという間に涼子たちを倒し、蘭を置いてさっさとその場を後にする。そして朱里たちに蘭を迎えに来るよう電話をするのだが、朱里たちが駆け付けるころには蘭の姿は消えてしまっていた。

翌日、蘭は会社に来なかった。直子も何も知らないふりをしたため、朱里たちの中でトムスンを倒したのは蘭だということになっており、蘭のカリスマ性はますます上がっていった。しかしそんなある日、直子にやられた傷から回復した涼子たちが「史上最強のOL」と言われる鬼丸麗奈（おにまるれいな）とともに三富士に乗り込み、直子を連れてくるよう朱里たちに要求する。トムスンを倒したのが実は直子だと涼子に聞いた朱里たちだったが、あくまで直子は堅気で三富士の現頭は蘭であるという考えから、自分たちでケリをつける決断をする。しかし紫織の舎弟の一人に赤城たちが乗り込んできたことを聞かされた直子は、トムスンに圧倒される朱里たちのもとに駆け付ける。朱里たちは直子をかばおうとするが、涼子に焚きつけられた直子は「私はさ、普通にOLとして生きていきたかったんだよ。あんたらのせいで全部台無しだよ。全員まとめて殺してやるよ！！」と叫び、トムスンの精鋭たちを次々に殴り倒していく。トムスンを再度撃破した直子は、麗奈とも対峙する。これまで余裕で相手を倒してきた直子に圧倒的な強さを見せつける麗奈だったが、辛くも直子は勝利し三富士のトップになることになった。当の本人の直子は「超ヤなんだけど」と苦笑いである。

最後の闘い

それから数日がたち、「最強」などに興味がない直子がトップにたったことで社内は平穏な毎日となっていた。しかし蘭は相変わらず会社に来ず、みんなを心配させている。その頃蘭は、自分の代わりに直子がトムスンを倒したことで自分の存在意義がわからなくなってしまっていた。結局親友の直子に対して負けたくないという気持ちから「自分には喧嘩しかない。私はまだ強くなる」と一念発起、最強のOLになるため「日本最初のOL」である七瀬小夜（ななせさよ）の元で修行をすることになる。OLの所作には強くなるための全ての要素が詰まっていると教えられた蘭は、電話応対やコピーなどの厳しい修行を耐え抜き、ついに小夜に「もう教えることは何もない。お前の生き様を皆に見せてやれ」と送り出される。

直子と会社の更衣室で対峙した蘭は「勝負しろ。てめえを倒さないと前に進めねえんだよ」と殴りかかる。初めは相手にしていなかった直子だったが、蘭が相当な修行を積んできたことに気づき「上等だよ、殺してやる」と本気で相手をすることになる。互いを罵りあいながら激しい闘いを繰り広げる直子と蘭だったが、ついに屋上で決着の時がやってくる。直子の重い一撃が蘭に入り、蘭の負けが決定した。立ち去ろうとする直子に蘭は「なお、また明日ね」と泣きながら声をかける。直子も「うん、お茶も行こうね」と笑顔で返し、二人は再び親友となったかに思えた。しかしそこに慎二が駆け寄ってきて倒れ込む蘭の元に「どうしたの！？」と跪く。すると蘭はこれまでと打って変わったような女の子らしい泣き方で「慎二ぃ、負けちゃったよぉ」と慎二の胸に縋りつく。実は慎二と蘭は交際していたのだ。「俺は喧嘩とか関係なく蘭が好きだし、蘭は世界一の彼女だから」という慎二の言葉に蘭は直子との喧嘩など一切忘れたような表情で笑顔になる。それを見た直子は「試合に勝って勝負に負けた」といった疲れ切った表情で屋上を後にするのだった。

『地獄の花園』の登場人物・キャラクター

三富士株式会社の人物

田中 直子（たなか なおこ／演：永野 芽郁）

三富士株式会社に勤める、ごく普通のOLを夢見る女性。社内の派閥争いには目もくれず、同僚との恋バナやおいしいご飯のお店、ファッションの話題に花を咲かせる。蘭の誰にでも人懐っこい性格にほだされ、次第に蘭と行動をともにすることが多くなる。しかし蘭を狙うトムスンのOLたちによって誘拐され、助けに来て倒されてしまった蘭のかわりにトムスンを壊滅状態に追い込む。実は直子の兄弟はみな地元では知らない人がいないというほどの不良で、直子もその影響で喧嘩が強かったのだ。意図せず企業同士のOLの争いに巻き込まれた直子は、不本意ながらも三富士をしょって立つこととなる。

北条 蘭（ほうじょう らん／演：広瀬 アリス）

三富士株式会社に途中入社してきた、カリスマヤンキー。初出社の途中でヤンキーOLに絡まれている松浦を助けているところを、直子に目撃されていた。喧嘩はかなり強く入社一日目にして三富士のトップに立つが、仕事は苦手。直子に仕事を教えてもらっているうちに仲良くなり、親友となる。しかし自分のせいでトムスンにさらわれた直子を助けに行くが返り討ちにあい、しかもかわりに直子がトムスンを撃破するところを目の当たりにして自信喪失してしまう。立ち直ったのちは修行を積み、直子に勝負を挑む。

安藤 朱里（あんどう しゅり／演：菜々緒）

三富士株式会社開発部に所属するヤンキーOL。通称は「悪魔の朱里」で、蘭が来る前は安藤一派として紫織と悦子を抑え三富士のトップに立っていた。蘭に負けてトップを譲ってからは、蘭の右腕として三富士を束ねている。ヘアスタイルはコーンロウでメイクも濃く、スタイルを維持するためにピラティスに通っている。性格はキツめだが仲間想いで仕事も有能なため、他のOLからも一目置かれている。

佐竹 紫織（さたけ しおり／演：川栄 李奈）