アバランチ（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『アバランチ』の概要

『アバランチ』とは2021年10月18日から12月20日までフジテレビ系列で放送されたテレビドラマである。主演は綾野剛が務め、共演者には木村佳乃、福士蒼汰、渡部篤郎など豪華キャストが揃っている。このドラマは、謎の集団「アバランチ（Avalanche）」が不正や腐敗した組織に立ち向かう姿を描いたサスペンスアクションドラマである。
物語は3年前に起きたテロ事件で羽生誠一（はぶせいいち）等が爆発に巻き込まれた場面から始まる。
そして3年後、警視庁捜査一課にいた西城英輔（さいじょうえいすけ）が上司を殴り左遷され、山守美智代（やまもりみちよ）の部下として働き始める。山守は秘密裏に「アバランチ」を組織し、彼女の元夫で殉職した藤田高志（ふじたたかし）の死の真相を追っていた。
黒幕である内閣官房副長官の大山健吾（おおやまけんご）を引きずり出すため、彼の周りで不正に関与している政治家、権力者の正体を暴き、インターネット上に公開することで社会的に制裁も加え、解決していく。
「アバランチ（Avalanche）」とは「雪崩」を意味し、雪崩のように物語が繋がる本作を表している。最終回の世帯視聴率は、関東地区で8.2%、個人視聴率は4.5%であった。

『アバランチ』のあらすじ・ストーリー

アバランチの最初の仕事

物語は3年前のテロ討伐事案で情報提供者の裏切りによって起きた爆発に、羽生誠一（はぶせいいち）等が巻き込まれた場面から始まる。
時は移り、警視庁捜査一課にいた西城英輔（さいじょうえいすけ）が上司を殴り左遷され、山守美智代の部下として働き始めることとなった。山守は不正や腐敗した組織に立ち向かう謎の組織アバランチの活動拠点に西城を連れて行く。そこにはアバランチのメンバーである、羽生、牧原大志（まきはらたいし）、打本鉄治（うちもとてつじ）、明石リナ（あかしりな）が招集されていた。
東京の新たな都市開発プロジェクトのリーダーだった風間道明（かざまみちあき）が失踪した。失踪した風間に変わり新たな計画案を打ち出したのは、運送・建設・不動産会社を手掛け、お昼のコメンテーターも務める六車泰次郎（むぐるまやすじろう）であった。六車は風間が失踪した2週間で新たな計画を打ち出しており、風間の失踪を事前に知っていた疑いがあった。風間の失踪の真相を探ることがアバランチに課された最初の仕事であった。
六車は総理大臣の友人だったため、官房副長官の大山健吾（おおやまけんご）が六車の息子和也（かずや）の事件をすべて不起訴にしていたのだった。
アバランチは風間が誘拐された時の車が和也の会社で登録されていたことを突き止める。そこで、和也を拉致し、風間の拉致が六車の主導で実行されたこと、風間がヤクザに引き渡され拉致されていることを聞き出す。そして、羽生たちはヤクザの事務所に乗り込み、風間を奪還するのだった。
次にアバランチは六車を連れ出し、風間の事件が六車によって行われたことを自供させた。その模様はカメラで撮影され、動画公開サイトで世界中に配信され、六車の不正が白日の下にさらされることになった。

独立行政法人の裏金

IMAA（国際相互援助機構）の職員で東南アジアの責任者だった夏川洋子（なつかわようこ）が半年前にビルから転落し死亡した。遺書にはカンボジアの学校建設が遅れたことを悔やんでいたことが書かれていた。一方、夏川が死亡する5日前に黒田正治外務副大臣（くろだまさはる）と言い争う姿が目撃されていた。山守は黒田が夏川の死に関わっているのではと疑っており、彼女の死が本当に自殺かを調査することが次のアバランチの仕事となった。
牧原は現場の監視カメラやSNSの動画を調べていたが手がかりをつかめずに苛立っていた。夏川は牧原の姉であり、夏川の無念を晴らすために牧原は闘っていたのだった。
一方、羽生たちは夏川の部屋で永井というジャーナリストの名刺を見つけ、彼から手がかりを探すのだった。永井は理事長の小森有一（こもりゆういち）がIMAAの予算（5年で30億円）を黒田のペーパーカンパニーに流していたことを夏川から聞いていた。夏川は事件の5日前にそのことを黒田に伝えたが取り合ってもらえず、証拠と共に不正を告発すると黒田に宣言していたた、それが原因で自殺に見せかけて殺害されたのだった。
羽生らは理事長の小森を拉致し、カメラの前で真実を説明させるのだった。その模様はまたインターネットで配信されていた。黒田はその配信時に大山も参加するパーティに参加しており、大山の目の前で失態を晒されたのだった。
大山は腹心を失い、アバランチのことを少しずつ調べるようになった。

政治家たちの裏情報

アバランチの次の標的は黄月ホールディングス会長で芸能界、政財界にもコネクションがある黄月蘭子（きづきらんこ）であった。黄月は各界のVIPが通う会員制の高級サロン悠源館を経営しており、VIPから得た情報で今の地位を築き上げていた。VIPの情報をまとめたものは、「Kファイル」と呼ばれ、国を崩壊させるほどの破壊力を持っていると言われている。山守はそれを裏で指示しているのが大山内閣官房副長官だと疑っており、黒幕である大山をKファイルを起点に引きずり出せると羽生たちに説明した。さらに山守は、悠源館で働くホステスがここ数年で何人も自殺や心臓発作で亡くなっていると続けた。ホステスたちは黄月の芸能事務所に所属する女性たちで、悠源館での接待後にVIP会員と行くヨークヒルズホテルで多くが亡くなっていると伝えた。
この話を聞いた西城は、「大山が黒幕なのか？」と山守に尋ねるのだった。山守は3年前のテロ事件で大切な人（藤田）を亡くしたと伝える。
羽生たちはまず直近の事件の映像を確認した。映像には、ホテルの一室にホステスが入っていった後、民栄党の田淵洋輔（たぶちようすけ）が続いて部屋に入った30分後に田淵が慌てて部屋から出てきて、その後、黄月が大きなキャリーケースを部屋に持って何かを持ち出したところが映っていた。
黄月らのやり方がわかったので、アバランチは明石をスパイとしてホステスに潜り込ませ、田淵、黄月の会話を録音し、証拠を抑えた。
羽生は黄月に接触し証拠を見せた。困った黄月は大山に「悠源館の危機だ」と言って頼ることにした。しかし、大山は既に黄月を切る手を打っており、警察を黄月のもとに送りKファイルを差し押さえるのだった。黄月は為すすべなしとなり、服毒自殺した。
そんな中、大山が山守のもとを訪れ、「君か？アバランチを考えたのは？」と問う。大山はアバランチの狙いが大山自身にあることを把握していると言って去るのだった。

関東医師連合会会長の裏金

次にアバランチが狙うのは、関東医師連合会会長の神崎だった。神崎が経営する病院に別の患者と同時に沢村が運ばれてきた。沢村は肋骨の骨折だけでだったが、別の患者より優先して手術（トリアージ）が行われ、その間にく別の患者は亡くなった。手術をしたのは、谷山という医者だった。沢村は医療機器メーカーを経営しており、神崎の病院は沢村の会社から医療機器の大部分を購入しており、神崎は沢村を使って不正な金を動かしていたという疑惑もあった。
そんな中、大山と神崎が食事をしていたところ、大山に羽生から電話が入り、大山へ復讐することを告げるのだった。そして、アバランチの配信が始まる。画面には谷山が神崎が院長を務める病院で脅される場面が映し出されていた。神崎は病院へ急行し谷山に、トリアージの件は谷山が責任を取れと詰め寄る。しかし、その場面は配信されており、神崎の醜態が全世界に配信されることになり、大山はまた側近を失うのだった。

警察内部の裏切り

羽生がアバランチを主導したテロの容疑者として指名手配された。その2週間前、毎朝ジャーナルの遠山という男が牧原に接触していた。
アバランチが次に狙うのは羽生が外事にいたころ公安部長だった戸倉であった。大道寺からの助言で大山と戸倉がさらなる悪事を企んでいると知らされていたのだった。
アバランチは戸倉を尾行していたところ、戸倉が西城の父親である西城神奈川県警刑事部長と接触し、何か指示を出しているところに遭遇する。さらに戸倉は、今回の依頼の処分を「極東リサーチ」に処理の依頼を出す許可をもらうために大山に面会していた。
アバランチは西城の父親に狙いを定めていたところ、狙いが3年前のテロの証人であるアルベルト・ガルシアであることがわかった。羽生たちはアルベルト・ガルシアを捕まえることで、戸倉だけでなく大山も失脚できると考えた。羽生たちはどうにかアルベルト・ガルシアと接触することに成功する。アルベルト・ガルシアは3年前のテロの際、戸倉から「羽生はミッションが終わったら関係者を消す。そのため逃げたいなら言うことを聞け」と言われ、仕方なくテロを企てたのだった。
アルベルト・ガルシアは神奈川県警に捕まり、極東リサーチに引き渡される情報をつかんだ羽生たちはその引き渡し場所に出向いた。彼らは極東リサーチを襲撃したがアルベルト・ガルシアに連れられて逃げられてしまった。
羽生は戸倉に電話し戸倉と直接対峙することを伝え、あるビルの屋上で落ち合った。羽生は戸倉に「3年前の事件の証言をしろ」というが、戸倉に銃を突きつけられてしまう。アバランチは、ドローンで撮影しようとするが、極東リサーチに妨害され、さらに、戸倉が極東リサーチに狙撃された。大山に見切られたと察した戸倉は、「11月29日、それで全部終わる」と羽生に伝え息絶えた。そして、大山の仕掛けで今回の戸倉刑事部長の殺害はアバランチによる犯行として報道されたのだった。

大山との直接対決

11月29日の大山の目的は郷原総理の暗殺だと明らかになった。そこで羽生たちは11月29日当日、郷原総理を拉致する。郷原総理の暗殺は不可能となったが、大山はそのまま次の計画を実行するように極東リサーチに指示するのだった。
そんな中、牧原が極東リサーチに拉致される。さらに、大山が山守達に接触し、大山と山守は直接対峙することになるのだった。そして、大山がさらに14時に一般人を狙って爆弾を爆発させることが分かる。雪崩のような悪夢が始まったのだった。
羽生たちは爆破予定の現場に駆け付ける。そして、あらかじめ準備した映像を流し、一般人を爆弾から逃がすのだった。しかし、本当の爆弾は拉致された牧原に仕掛けられており、爆発まで2分しか残されていない。ここで爆発すると周りのガス管にも届くので、そこで打本が爆弾を抱えビルの屋上に1人で向かうのだった。ビルの屋上には誰もおらず、打本は爆弾を空高く投げ自爆するのだった。
大山の民間人を巻き込んだテロは失敗に終わったが、まだ現場にいるアバランチのメンバーの確保を極東リサーチに指示するのだった。羽生たちは打本の爆死に打ちひしがれており誰1人その場を動けずにいた。そんな中、これまで大山のもとでアバランチの情報収集をしていた、内閣情報調査室の桐島から連絡が入る。桐島は山守や死んだ藤田と昔からの知り合いであり、アバランチの設立メンバーだったのだ。桐島はアバランチの各メンバーの逃走路を用意しており、各人に指示を出すのだった。羽生も桐島に説得されて、1人逃走するのだった。
しかし、桐島の裏切りは直ぐに大山に見抜かれてしまい、桐島と山守は大山に呼び出される。そこで大山はなんと3年前に死んだと思われていた藤田を桐島と山守に引き合わせるのだった。藤田は生きており、現在極東リサーチで働いていたのだった。
アバランチのメンバーはなすすべがなくなっていたが、西城は毎朝ジャーナルの遠山に会い、今回の一連の事件を暴露しようとしていた。遠山はアバランチについて取材をしており、爆発事件の現場にもいた人物だ。2人はまず極東リサーチと西城の父親から探ることにした。西城の父親には昔重火器を横流ししている疑惑があったことが分かった。そこで、西城の父親にこれまでの不正を申告させようとした。

最終決戦

羽生は藤田を呼び出し直接話をした。「大山のもとで働かないか？」と藤田は羽生に尋ねるが、素っ気なく拒否される。藤田は羽生を拳銃を抜き羽生を撃ち抜いた。
藤田に撃たれた羽生は力をふり絞って立ち上がり、なぜ藤田が裏切っているのかを問いただした。藤田は大山に今回の一連の話を持ち掛けられたが、羽生や山守ら周りの人を助けるために1人で背負っていたのだった。
藤田から逃げた羽生は、明石と牧原に助けられ彼らの隠れ家に移動した。山守も隠れ家を訪れるが、「全員自首して欲しい」と全員に自首を勧めた。その時、極東リサーチが隠れ家を襲撃し、全員を暗殺しようとしたが、アバランチに返り討ちにされるのだった。
羽生たちは最後の作戦に出た。羽生は単独で郷原総理に真実が記されたデータを渡しに行き、明石と牧原は警察に自首しにいくのだった。
一方、西城は父親を説得させ、記者会見でこれまでの不正を暴いたのだった。報道を聞いた世間は、「実はアバランチはいい人では？」、「ありがとうアバランチ」などをSNSに書き込み、世間の風向きは一気に変わるのだった。
そんな中、大山は官房副長官を突然更迭されるのだった。羽生は総理暗殺未遂の時に何かを渡そうとしており、総理がわざわざ羽生のもとを訪れ、アバランチの話を聞いてくれたのだった。国民、総理はアバランチを信じており、大山がやりすぎた事を理解したのだった。
そして、大山は警察に連れていかれアバランチの闘いは幕を閉じるのだった。

『アバランチ』の登場人物・キャラクター

アバランチ

羽生誠一（はぶせいいち／演：綾野剛）

本作の主人公。以前は警視庁公安部外事第三課に所属していた。3年前のテロで爆発に巻き込まれたが一命を取り留める。その後は警察を辞めて町工場で働いていたが、山守の誘いを受けてアバランチのメンバーとして活動する。無精ひげを生やしており、耳にはピアスをしている。このピアスは和泉あかりからもらったものだと後に判明する。格闘技や近接戦闘のエキスパート。様々なシーンで煙草を吸うヘビースモーカーである。

山守美智代（やまもりみちよ／演：木村佳乃）