地面師たち（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『地面師たち』の概要

『地面師たち』とは、新庄耕による小説および、それを原作として制作され、2024年7月25日よりNetflixで配信開始となった配信ドラマ。
小説は、『小説すばる』で2019年1月号から10月号に連載され、同年12月に集英社から刊行され、第23回大藪春彦賞の候補となった。
土地の所有者になりすまし不動産会社やディベロッパーに売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産詐欺集団、地面師と騙される不動産会社・ディベロッパーおよび彼らを追う警察たちを巡るクライム・サスペンスドラマ。
ドラマでは、恵比寿駅にほど近い物件を10億円で売却をもちかける展開と、五反田の100億円規模の土地を業界最大手企業を相手に不動産詐欺を行う展開が描かれる。
監督は、テレビドラマ『モテキ』や映画『バクマン。』などを手掛けた大根仁。劇伴音楽は、電気グルーヴの石野卓球。そして、ナレーションを山田孝之が担当。主演は、綾野剛・豊川悦司が務めその他主要キャストにピエール瀧、小池栄子、北村一輝がいる。

『地面師たち』のあらすじ・ストーリー

マイクホームズ地面師詐欺事件（エピソード1）

辻本拓海（つじもとたくみ）たち地面師グループが、新興の不動産会社であるマイクホームズをターゲットとし、10億円を騙し取る展開が描かれる。
対象となった物件は、恵比寿駅から徒歩5分の場所にある築54年の一軒屋で、拓海たちが恵比寿の物件を見つけ、マイクホームズをターゲットとし、実際に騙す展開。実際の売買契約の場で、土地の所有者である島崎健一（しまざきけんいち）のなりすましである佐々木丈雄（ささきたけお）に本人確認の面接が行われる。免許書などの確認とともに、生年月日や干支などの質疑応答が行われ、拓海のサポートもあり滞りなく進むように思われたが、「よく使うスーパーマーケットはどこですか」という想定外の質問がなされる。事前の回答を用意していなかったため、回答できずにいたところ、遠隔で様子を監視していた地面師グループのリーダーであるハリソン山中（はりそんやまなか）が音声で近隣のスーパーマーケットを伝え回答することで切り抜け、地面師グループは10億円を騙しとることに成功した。

最大のヤマ・光庵寺の調査（エピソード2・3）

次のターゲットとなる大きなヤマ、100億規模の土地のリサーチと、地面師グループを追う警察、そして、マイクホームズが詐欺に気づいた後の展開が描かれている。
マイクホームズは恵比寿の土地の売買が地面師詐欺であると判明し、警察に相談し取り調べを受けるが、騙されたお金は取り戻せないとわかる。

地面師グループは、次のヤマ・ターゲットを港区高輪にある光庵寺に隣接する駐車場および更生保護施設と定め、作戦会議を行う。拓海は張り込み、地主であり、光庵寺の住職、川井菜摘（かわいなつみ）を探る。日々判を押したような生活を送っていた川井だが、寺の銀行口座から個人の口座に数百万単位でお金を振り込んでいる点、毎週木曜日に都内のホテルに行っていることがわかる。川井が宿泊するホテルの隣の部屋に忍び込んだ拓海は、実は川井が若い男性を複数人連れ込みセックスに明け暮れていたことがわかる。
そのホストを利用し、川井菜摘を外に連れ出せないか画策することにした地面師グループ。拓海は川井が入れ込む楓（かえで）が所属するホストクラブに潜入する。運よく楓に気に入られ、運転手役になることができた拓海は、楓が日々のホストクラブでのストレスから、ホテルにお金で買った未成年女子を連れ込んでいたことを知る。売春現場に突入し、楓を脅迫し川井を連れ出すよう依頼する。

一方で、大手デベロッパーである石洋ハウスでは、当初開発予定だった土地の契約に失敗し、代替の土地が必要となった。会長派と社長派で派閥争いが勃発していた石洋ハウス。社長派の青柳隆史（あおやぎたかし）はなんとしても新しい土地を見つけたいと焦っていた。海外を飛び回る会長、和田島努（わだじまつとむ）の隙をみて、自分の派閥を作り、会長に成り上がろうとするサラリーマ社長安倍川久雄（あべかわひさお）という派閥争いが勃発しており、社長派である青柳は、リカバリーのために奔走していた。そんな中、たまたま近くを通りかかって見つけたのが、見つけた高輪の土地、光庵寺周辺の土地ですぐさま購入するように社内外で交渉を始めた。

同時に、法律屋である後藤義雄（ごとうよしお）は、100億円規模の土地を帰るようなデベロッパーのリサーチをする中、地上げ屋の林利勝（はやしとしかつ）を通じ、石洋ハウスが土地を探していることを知る。そこで、林は、業界最大手である石洋ハウスが地元の不動産会社の話は信用しないと助言し、仲介業者としてABIRUホールディングスを紹介する。

石洋ハウスとの接触・交渉（エピソード4・5）

ABIRUホールディングスから、光安寺の地主が土地を売りたがっているという情報を聞きつけた青柳。他社に追い越されないよう急ぎABIRUホールディングスとの交渉の場を設け、売買交渉を行う。その場に現れた拓海と後藤は、青柳と交渉の末、土地を112億で販売することに合意し、2週間以内に社内決済を済ませること、必ず売り主である川井菜摘との面会の場を設けることなどを条件に、売買契約が成立。
その後、社内決済を急ぐ青柳。会長派の須永（すなが）に地面師詐欺ではないかと疑われるも、これ以上ない物件だと信じ稟議を進める青柳。社長の安倍川に協力を仰ぎ、社内決裁前に社長の現地視察を済ませることで、取締役の決済を急ぎ進める。

地面師グループ側は、川井菜摘になりすますキャスティングを急ピッチで進めていた。熱海の旅館で、病気の子供の手術費用を稼ぐ谷口俶恵（たにぐちよしえ）を口説き、教育する。石洋ハウスの社内決裁が下り次第、本人確認として、ホテルで面会し、売買予定の土地や光庵寺を案内することとなった。

長く地面師グループ、ハリソン山中を追っていた警察官の下村辰夫（しもむらたつお）は、ABIRUホールディングスの張り込み中に、たまたま、青柳との交渉に訪れた拓海と後藤に遭遇する。いよいよ、地面師グループと接触できた辰はふたりを追おうとするがハリソン山中に捕まってしまう。妻と子供・孫を人質にされ、飛び降り自殺するように言われる。最終的には一歩及ばず辰はハリソンに自殺とみせかけて殺されてしまうのだった。

石洋ハウス地面師詐欺事件の結末（エピソード6・7）

川井菜摘と石洋ハウスとの本人確認面会日前日、川井菜摘のなりすまし予定者である谷口俶恵の息子が亡くなり、谷口は面会に来れなくなってしまった。前日ということで、代わりの人物を探すことも難しく、日程変更も難しいということで、キャスティング担当である稲葉麗子（いなばれいこ）が川井菜摘になりすますこととなる。

面会日当日、ホストの楓が川井菜摘を沖縄旅行に連れ出す。しかし、沖縄空港で待ち構えていたのは、ハリソン山中に不満をもっていた、情報屋の竹下（たけした）で彼は楓を殺害する。殺害後、殺されたくなければ、すぐに東京に引き返すよう川井に命じる竹下。川井は恐怖に駆られそのまますぐに東京へ引き返す。
沖縄では、ハリソン山中が楓を殺害した竹下を待ち構えていた。彼はすぐに竹下を捕まえるとウェスタンブーツで顔を踏み潰し、爆破させるという残虐な方法で竹下を始末するのであった。

川井が東京に向かっていることをを聞いた拓海、後藤と麗子は川井菜摘本人が光庵寺に戻るまでに、本人確認・下見を終わらせなくてはならなくなった。本人確認を予定より短く済ませるが、羽田空港に到着した川井菜摘本人が、すぐそこまで近づく。お寺の本堂を麗子が案内し終えたタイミングで、お寺に到着する川井菜摘。なんとかすべて説明を終え、納得して帰る石洋ハウス社員と地面師グループたちと入れ替わる形で川井菜摘は帰宅するも、無事、売買契約がなされたのだ。

売買契約から、1週間後早速土地の計測や調査を開始する石洋ハウス。しかし、売った覚えのない川井菜摘本人は寝耳に水という反応で、警察を呼んでしまう。それを聞いた青柳は現場に向かうが、川井菜摘が自身が面会した人物ではない、詐欺にあったことがわかると、放心し、そのままトラックに轢かれてしまうが、実はこのトラックもハリソン山中が手配したものである。

そして、辰の思いを引き継ぎ、地面師グループの調査を続けていた倉持（くらもち）。情報屋から、拓海自身も地面師詐欺にあっており、その犯人は今フィリピンにいるがもともとはハリソン山中と繋がっていたことを知らされる。倉が、その事実を拓海に伝えると、拓海は、自首し、罪を償うとハリソンに伝え、ハリソンを始末しようとするが、最終的には、ハリソンが手榴弾を使い逃げてしまう。

『地面師たち』の登場人物・キャラクター

地面師集団・周辺人物

辻本拓海（つじもと たくみ／演：綾野剛）

本作の主人公。地面師集団の中では、交渉役を務める。真面目なサラリーマン風の風貌。かつては横浜で父が経営していた小さな不動産会社で営業をしていたが、自身が成立させた取引で地面師詐欺に遭い、会社は倒産。そして、辻本の留守中に父親が放火による一家心中を図り、母親と妻と幼い息子を亡くした。その後、自暴自棄になっていたが、生活のため、高級デリヘルの送迎ドライバーを始める。しかし、デリヘル嬢がハリソン山中を接客中に一線を超えるプレイ（首絞めながらのプレイ）中に意識を失ってしまったことをきっかけにハリソン山中と接触。地面師になることを誘われた。
地面師をしながら、自分を騙した地面師、西谷哲也（にしたにてつや）を探し復讐できないか機会を伺っている。実は、西谷哲也とハリソン山中が裏で繋がっていたことが判明し最終的にハリソン山中に復讐しようと企むが逃げられてしまう。自身は、倉玲に自首し罪を認めてた。

ハリソン山中（はりそん やまなか／演：豊川悦司）

本作のもう1人の主人公で地面師集団のリーダー。元暴力団幹部。1980年代後半のバブルで地上げ屋として名を馳せ、地面師詐欺集団を束ねて大規模な不動産詐欺を複数仕掛けた。バブル崩壊後、一度は実刑判決を受け、出所後は大人しく、なりを潜めていたが、ITバブル・東京オリンピックを機に再び動き出した。英語が堪能で趣味はハンティング。ワインやウイスキーなど高級酒にも精通している。誰に対しても敬語で話すという紳士的な性格。
しかし、地面師詐欺が成功した後、なりすまし役となった人間や関係者たちに猟奇的な方法で殺人を指示している。マイクホームズのなりすまし役を努めた佐々木丈雄（ささきたけお）は交通事故に見せかけて殺し、石洋ハウスの仲介役を紹介した林利勝（はやしとしかつ）は首を締めて殺している。さらには、その殺人の様子をライブ中継で見ながらワインやウイスキーを愉しむ猟奇的な一面がある。

後藤義雄（ごとう よしお／演：ピエール瀧）

元司法書士でそれ以外にも複数の不動産関係の資格を持つ法律屋。法律の知識を活かし、買い手との交渉や仲介を担当。地面師グループ内では、常識的な振る舞いを行っている様子だが、口が達者で関西弁を駆使し、不動産会社・ディベロッパーとの面談中は、疑われないよう高圧的な態度で無理に進行を進めようとする場面も見られる。妻子持ちで、石洋ハウスの詐欺成功後は、家族とともに海外へ逃亡しようとするが、ハリソン山中に消されてしまう。

稲葉麗子（いなば れいこ／演：小池栄子）