奇子（手塚治虫）のネタバレ解説・考察まとめ

天外家（てんげけ）

天外佐右衛門（てんげさくえもん）

青森県淀山にある旧家、天外家の当主。極めて自己中心的な性格の持ち主で、家族を思い通りにコントロールしていた。末娘の奇子のことを溺愛しており、日和見主義の市朗や逆に自分の主義主張に反する行動をする仁朗と志子のことを疎んじている。しかし、年齢とともに次第に天外家の実権を市朗に奪われていき、奇子の幽閉を阻止できなかった。何とかして奇子を助けようとするも脳卒中で倒れてしまい、植物状態となったまま死亡した。遺言書を遺しており、その内容が遺産を全て奇子の生みの母に譲るという内容だったため市朗を激怒させた。

天外ゐば（てんげいば）

作右衛門の妻で、市朗・仁朗・志子・伺朗の実母。典型的な昔気質の女性であり、作右衛門が健在の頃は彼に従順だった。市朗や仁朗にも優しく、また奇子に対しても普通に接していた。後に祐天寺から奇子へ向けて毎月仕送りがあったが、祐天寺の正体を仁朗だと見抜いている。天外家の中で唯一貯蔵穴に行かなかったことで生存しており、天外家再興を固く誓った。

天外市朗（てんげいちろう／演：梶原善）

作右衛門とゐばの長男。長い物には巻かれる性格をしており、天外家の遺産相続と引き換えに妻のすえを作右衛門に献上した。その結果産まれた奇子のことを憎悪していて、作右衛門の目の届かないところでDV行為に及ぶ。仁朗の犯罪を知った時には真っ先に隠蔽工作に走り、仁朗を逃がして奇子を土蔵に幽閉して戸籍から抹消した。作右衛門が約束を破り、すえに遺産を相続させるという遺言書を遺したことに激怒する。すえが奇子を連れて家を出ようとした際に、彼女を殺害した。このようにして天外家の実権を握るも、その後はすえの悪夢に悩ませられる。奥ノ沢貯蔵穴における天外家清算時には、作右衛門とすえの亡霊に怯えた果てに死亡した。

天外すえ（てんげすえ／演：深谷由梨香）

市朗の妻で、奇子の実母。すえと奇子には首元に大きなほくろがあり、顔もよく似ている。戸籍上は奇子の義姉であり、実母だと名乗れないジレンマに苦しんでいた。奇子の土蔵幽閉後も、よく娘の世話をしていた。作右衛門の死亡後に公開された遺言書によって、自身が遺産相続人であることを知ると奇子を伴って天外家を出ようとしたが、激高した市朗に殺害される。

天外志子（てんげなおこ／演：松本妃代）

作右衛門とゐばの長女で、仁朗と伺朗の間に生まれた。社会主義である政党民進党の党員として活動しており、支部長の江野とは恋仲だった。天外家の中では常識的な考えの持ち主だったが、社会主義活動をしていたことを作右衛門に咎められて勘当されてしまう。また、江野を殺害した犯人を恨んでおり、密かに復讐を誓っていた。

天外家を追われた志子は、結婚して神奈川県川崎市に住んでいる。彼の夫は工場に勤めており、夫婦の間に子供はいないもよう。上京した伺朗の話から祐天寺が仁朗かもしれないと知り、その後祐天寺が指名手配になった際に確信へと変わった。仁朗が江野殺害に関わっていたことを知ると隠し持っていた刃物で彼の首を切りつけた。天外家清算の場にもおり、貯蔵穴の中で奇子が歌う子守唄に怯え、そのまま力尽きた。

天外伺朗（てんげしろう／演：三津谷亮）

作右衛門とゐばの三男。幼い頃から非常に頭が良く、正義感が強かった。仁朗や志子とは仲が良い一方で、市朗とは反りが合わない。仁朗が「淀山事件」に関わっていることに真っ先に気がつき、彼を告発するべく警察へ向かったが、市朗と医師山崎（やまざき）の偽装工作に嵌ってしまう。奇子の土蔵幽閉にも最後まで反対しており、市朗によって大木に縛りつけられた。

伺朗は、すえと同様に奇子の世話のために頻繫に土蔵を訪れた。そこで倫理観のない奇子の誘惑を受けて、肉体関係を結んでしまう。その出来事以降は、自らを天外家の汚物を全て飲み込んだ存在と位置付けた。成長した伺朗は、奇子を追って上京しており、波奈夫と奇子のことで争うこともあった。その後、貯蔵穴における天外家清算の場では市朗・仁朗・山崎の悪事を全て暴き出し、ダイナマイトで貯蔵穴を吹き飛ばした際に致命傷を負い、奇子に最後まで生き抜くように伝えて亡くなった。

お涼（おりょう／演：相原雪月花）