ファイト・クラブ(Fight Club)のネタバレ解説・考察まとめ

『ファイト・クラブ』とは、1996年に発表されたアメリカの小説家チャック・パラニュークによる同名小説が原作となっている、1999年制作のアメリカ映画である。不眠症で悩む会社員「僕(エドワード・ノートン)」はある日火事が原因で住む家を失くし、謎の男タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)の家に居候することになった。「泊めてもいいが条件がある。俺を殴れ」という突拍子ないタイラーの言葉をきっかけに、2人はお互いを殴り合う行為にハマっていく。

持っている物が自分を束縛する

「The things you own end up owning you.」Tyler Durden
「お前は持っている物に縛られている。」

主人公は自宅の高級コンドミニアムが爆発し、持っている家具、家財全てを失う。しかし「また保険で買い戻せる。」と言う。
そんな彼にタイラーは物を持ち執着する事は、持っている物に縛られているのと同じだと伝える。

主人公は、これまで自分の心を満たすため、物(お金で買える商品)を買い込んできた。
彼(ナレーター)の住居は、最新式のライフスタイルを営むためのあらゆる“物”が揃っている。だが彼の心は満たされず、不眠症も患う。

そんな彼の状態を見通したかのように、タイラー・ダーデンはナレーターに主張するのだ。
タイラーの言う、物を持ち揃える事により得られる偽りの幸福感からの脱却は、主人公(ナレーター)に限らず、現代人が抱える悩みである。

この映画のファンは、物質至上主義の現代社会に生きる人々に強烈なアンチテーゼを語る、タイラー・ダーデンという人物に魅力を感じているのだ。

タイラーの主張とプロジェクト・メイヘム

歌って踊るだけのこの世のクズだ。

「You’re not your job. You’re not how much money you have in the bank. You’re not the car you drive. You’re not the contents of your wallet. You’re not your fucking khakis. You’re the all-singing, all-dancing crap of the world.」 Tyler Durden
「職業が何だ。財産が何の評価になる?車も関係ない。人は財布の中身でもファッションでもない。お前らは、歌って踊るだけのこの世のクズだ」
映画中盤、プロジェクト・メイヘムの計画が進められていく中、タイラー・ダーデンの独白が入る。彼の物質至上主義の否定が強く表現されたシーンのセリフ。

場所は、タイラーの家の地下室であろうか?セリフの最後の方では、画面がブレて端の方に、映画フィルムが映る。本作はタイラー=ナレーター、という大どんでん返しが後半にある。意図的にフィルムを見せたのは、この場面は二人の人格が入れ替わり、主人公の意識が眠っている時にタイラーが放ったセリフ、という意味合いからか。物語後半では同じ場面で、ナレーターが同様のセリフを放つシーンも挿入されている。
タイラーの主張は、社会に対する強い拒絶、否定ともとれるが、同時に人の価値は職業や財産でなく、その人個人の意欲や、やる気による、という強いメッセージ性がある。

プロジェクト・メイヘムのメンバーは、タイラーの「人は職業や財産、持っている(所有している)車でもない」という主張に、強く魅かれているに違いない。彼らは社会で必死に働き、テレビや広告に踊らされて、欲しくもない物を買っている。主人公(ナレーター)に接した様に、タイラーはメンバーにも、物を買い込み、偽りの幸福に浸る事の無意味さを説くのだ。
そして“タイラー軍団”は物質至上主義の溢れる社会に対し、次々と破壊活動を着手していく。

「ファイト・クラブへようこそ。ルールその1、ファイト・クラブについて話すな。ルールその2、ファイト・クラブについて絶対に話すな」

ファイト・クラブの設立にあたり、タイラーが最初に作ったルール。ルールその1とその2の内容を重複され「絶対に秘密」というニュアンスが強調されているのが印象的である。

「痛みを感じろ。苦しみと犠牲が尊いんだ。痛みから逃げるな。人生最高の瞬間を味わえ」

タイラーが「僕」に本当の痛みを教える為、手の甲に薬品を浴びせて火傷させるシーンで言ったセリフ。痛みを避けて生きることは容易い。しかし、そんな人生を繰り返していたら最後にとんでもない痛みが襲ってくる。そんなメッセージが込められているように感じられるセリフである。

『ファイト・クラブ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

renote.net

ブラッド・ピットがタイラー・ダーデンを演じるにあたっての役作り

ブラッド・ピットは本作の役作りの為、ウェイトトレーニングだけでなくボクシング、テコンドーと格闘技のレッスンも受けた。タイラー・ダーデンの引き締まった強靭な肉体を作るための役作りだ。ピットは撮影時、体脂肪率が一桁代だった。
またピットは、映画後半のタイラーが死ぬ(消える)シーンで、ゲイリー・オールドマンの演技を参考にしたと言う。ピットはゲイリー・オールドマンの演技を高く評価していた。また“タイラー・ダーデン”という強烈な役柄を演じたからか、ピットは酒場でよく喧嘩を売られ、大変だったという。

ファイト・クラブはエドワード・ノートンお気に入りの映画

エドワード・ノートンは、自身の出演作を見るのが好きではない俳優だ。
しかしファイト・クラブは例外で、彼はこの作品を非常に気に入っているらしい。
また彼は嫌煙家の為、普段タバコは吸わないが、この映画の役の為、喜んでタバコを吸ったという。

ヘレナ・ボナム・カーターが参考にしたジュディ・ガーランド

ヘレナ・ボナム・カーターはマーラ・シンガー役を演ずる際に、ジュディ・ガーランドを参考にして役作りをした。
ジュデイはアメリカの女優で、「オズの魔法使い」の主演女優である。彼女は薬物や、アルコール、精神疾患の問題を抱えていた。

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