残響のテロル(アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『残響のテロル』は、MAPPA制作による日本のオリジナルテレビアニメ作品。キャッチコピーは「この世界に、引き金をひけ。」。2014年7月から9月まで、フジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送されていた。2014年には第18回文化庁メディア芸術祭において、審査委員会推薦作品に選出された。ある夏の日、都庁で爆発が起こる。それは、事前に予告された爆破テロで、犯行声明の動画には2人の少年が映っていた。彼らが起こす事件とその動機により現れる国家の闇を見つめる物語。

『残響のテロル』の概要

『残響のテロル』は、MAPPA制作による日本のオリジナルテレビアニメ作品。キャッチコピーは「この世界に、引き金をひけ。」。2014年7月から9月まで、フジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送されていた。2014年には第18回文化庁メディア芸術祭において、審査委員会推薦作品に選出された。2015年には舞台化も果たしている。渡辺監督はアイスランド音楽から本作を発想し、劇中でもナインの好きな音楽を「寒い国の(北の国の)音楽」としたり、アイスランド語のキーワードを登場させたりしている。それに従い菅野、共同音楽プロデューサー冨永恵介らが制作したサウンドトラックも、アイスランドのスタッフやミュージシャンを交えて録音が行われた。2015年には『BLOOD-C』・本作・『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の日本製アニメ3作品が暴力賛美に当たるとして、中国政府から名指しで批判されていると報じられた。本作の、少年が核兵器の原料を強奪、原子爆弾を製造する内容やテーマが問題視されている。

ある夏の日、都庁で爆発が起こる。それは、事前に予告された爆破テロで、犯行声明の動画には2人の少年が映っていた。スピンクスと自らを名乗る彼らは、並外れた知能と運動神経で警察を掻い潜りながら計画を実行していく。犯行予告動画ではなぞなぞを出す子供らしさを感じるが、使用する道具は大人も考えつかない科学的知識を要する複雑なものである。スピンクスに振り回されて混乱する警察。彼らが起こす事件とその動機により、次第に明らかになる国家の闇を見つめる物語。

『残響のテロル』のあらすじ・ストーリー

連続爆破事件、リサとスピンクス

青森県の核燃料再処理施設から「プルトニウム」が盗まれる。2人組の犯人は現場の床に「VON」の文字を残して行方をくらまし、事件は未解決のままだ。その半年後の東京で、2人の男子高校生がとある学校に転校してきた。1人はメガネをかけた長身の九重新(ここのえあらた)。もう1人は茶髪に大きな目の久見冬二(ひさみとうじ)。九重は久見にナインと呼ばれ、久見は九重にツエルブと呼ばれていた。転校初日、ツエルブは校内でいじめに遭う三島リサが「施設にいた子達と同じ目をしている」とナインに告げる。2人は幼少期、とある隔離施設から脱走した。

一方、警視庁の文書課でダラダラと毎日を送っていた元捜査一課の柴崎健次郎(しばさきけんじろう)は、部下の六笠(むかさ)の見つけた動画を聞き流していた。スピンクスと名乗る少年2人が、犯行声明とも取れる内容をアップしていたのだ。「東京は午後3時過ぎから闇に包まれ、新宿方面では所によりでっかい火花が上がるでしょう」の内容通りに午後3時過ぎに東京の広い範囲で停電が起きた。柴崎は動画を思い出し、すぐに調べにかかる。その頃都庁では、ナインとツエルブが建物に爆弾を仕掛けて回っていた。ツエルブがリサに目撃されたことから、ナインは「このまま死ぬか共犯者になるか」とリサに迫る。

爆破が何者かによるテロ行為だとした警察は、直ちに対策本部を立てるが捜査は難航していた。犯人は相当頭の切れる者であると警察は想像する。そして、爆弾に記された「VON」の文字は、警察に半年前の事件を容易に思い出させた。ナインとツエルブは2つ目の爆破のために計画をすでに実行していた。柴崎はすぐに謎を解き、かつての上司に「戻ってこい」と言われて再び捜査一課に復帰する。ところが、2つ目の爆弾は謎を解いていても間に合わず爆発してしまう。その後、柴崎の加わった捜査一課は次の謎を解き、スピンクスの仕掛けた3つ目の爆弾の解除に成功する。4つ目の爆弾の謎も柴崎は解くことができたが謎解き前に警察が勝手に動いたため、スピンクスは一連の爆破事件に関する警察の持つ情報をネットに流し出す。

スピンクス事件に世間が湧く中、娘への干渉が異常な母親に嫌気がさしリサはカバンに荷物を詰めて家出していた。フラフラと街を歩くリサにツエルブが話しかけ、バイクに乗せて自分たちのアジトへと彼女を運ぶ。

ハイヴの登場、空港での勝負

警察のデータが公になってすぐ、スピンクスから5つ目の犯行予告がネットにあがる。柴崎は次の爆破が首都新宿線であることを導くが、そこまできて今までの事件が関連性を帯びていることにも気づく。爆破された建物に関わる組織の上層部が皆、「新進平和塾(しんしんへいわじゅく)」と呼ばれる団体のセミナーに参加していたのだ。ナインとツエルブはリサの面倒を見つつ、電車にしかけた爆弾を警察が見つけるのを待っていた。なぞなぞの関連性に柴崎ならきっと気づくだろうとナインは期待して、起爆装置であるスマホを見ると圏外の文字が出ていた。誰かが意図的に圏外にしているようで、ツエルブが直接爆弾を回収しに行く。システムから車両を探ろうとするナインはそこでも何者かによって行手を阻まれた。

ナインは突如耳鳴りに襲われて施設にいた頃の記憶がフラッシュバックする。昔の記憶の中で白髪の子供に追いかけられるナインは意識を取り戻し、その後爆弾が爆発する。煙の残るホームで、突然一斉に携帯電話がなり出した。ナインやツエルブの携帯にもメールが受信され、そこには「見つけた」と英語で記されていた。2人はそれが「ハイヴ」だと気づく。柴崎は爆発を未然に防げたのに動かなかった警察に憤り、上司に詰め寄る。上司の部屋にはクラレンスと呼ばれる金髪の男性と、楽しげに笑う白髪の女性ハイヴがいた。上司によると、この連続事件に米国のFBIが介入することが決まったという。

ナインとツエルブの元にスピンクスを名乗るメールが届く。警察にも届いており、柴崎とナインらは暗号を解いていった。暗号により出てきた座標から羽田空港が示されたが、そこは元々ナインとツエルブの標的にしていた場所だった。一連の偽装メールはハイヴによるもので、ナインたちを誘き寄せるためのものでもあったが、世間や警察はスピンクスからのものとして動いた。爆弾を止めなければ殺人犯になり、止めに行けば捕まる可能性もあるとナインはわかっていた。それでもナインは爆弾を止めるために空港に向かうことにする。その過程でリサも計画に加わることになる。

一方、捜査一課には上層部から「本件は爆弾処理班が対応するため動かないように」との命令がされた。困惑する捜査一課だが、柴崎は従わず空港へ向かい、同じく捜査一課の羽村(はむら)、岡野(おかの)、木下(きのした)は彼に同行することに決める。

ナインとツエルブが空港に入ると、2人が見上げる電光掲示板に空港マップとチェス盤を組み合わせた画像を提示される。ナインはハイヴのチェスの勝負に応じて動き始めた。犯人と警察がチェスをしていることに気づいた柴崎は警察を探すことにした。ハイヴはリサの起こしたボヤ騒ぎに気を取られ、焦ってモニターのあるトラックから飛び出した。ハイヴの居場所を突き止めて拳銃を突きつけるナインに「爆弾の在処である106番ゲートに彼女を招待した」と落ち着いた声でハイヴは言う。そこへリサが爆弾の乗った飛行機に乗せられて106番ゲートに向かっているとツエルブに電話してきた。ナインは柴崎に電話をかけ、管制塔で自動操縦システムの停止を頼む。事態を理解した柴崎により、飛行機は人のいない場所で爆破した。その間に、ナインとツエルブはリサの救出に成功する。

空港での事件後、柴崎は無期限の休職を言い渡され、同行した捜査一課の面々も謹慎処分になった。一時は救出されたリサはハイヴに捕まり、ナインたちにもそのことが伝わる。「行くな」と言うナインに、謝ってツエルブはリサの元にバイクを走らせた。

休職中の柴崎は、新進平和塾が行っていた「アテネ計画」について調べ始めた。全国の孤児の中で優秀な者を施設に集めていたというその計画は中止に終わっているが、公文書のどこにも詳しい内容はない。そして、孤児たちの消息も一向に掴めないままだった。柴崎は当時の関係者である青木という元官僚の情報を得る。

アテネ計画とスピンクス

柴崎はアテネ計画に関与していた青木の元へ行くが青木は動揺する様子がない。アテネ計画は、90年代に脳機能の研究を行っていた製薬会社が発見した新薬によって、人工的にサヴァン症候群を引き起こさせ超人的な人間を作ろうとするものだった。その新薬は5歳未満の子供にしか効果が見られないことから、全国の孤児の中で知能指数の高い子供たちが集められて投薬による人体実験が施設で行われていたのだ。結局アテネ計画は米国によって暴かれて失敗に終わったが、生き残っていたのは26人の孤児のうち1人でその子供がハイヴだった。しかし青木によると施設から脱走した2人の子供がいると聞き、柴崎の中でその2人とスピンクスがつながった。青木は自分の後ろで指図をしていた人物が、間宮俊造(まみやしゅんぞう)だと柴崎に告げる。

一方ツエルブはがハイヴによって攫われたリサがいる観覧車まで行くと、そこには爆弾をくくりつけられたリサがいた。1つずつ解除するが、時限爆弾の時間内に終わらせることは不可能だった。時間ギリギリになってハイヴから「原子爆弾の場所を教えてくれたらリサを助ける」と電話がなる。ツエルブは原子爆弾が学校にあることをハイヴに言った。しかし、FBIが学校に着くとそこに爆弾はなく、ナインが一足先に回収した後だった。その後、ナインは警察に出頭する。休職中の柴崎に代わり倉橋が話を聞くと「原子爆弾を爆破されたくなかったら要求を聞け」とナインは言った。そして、ナインは20時にあらゆるメディアを呼んで記者会見を開くよう倉橋に要求した。

柴崎がアテネ計画の黒幕である間宮の元へ向かうと、ベットの上に座る年老いた間宮に「覚悟はできてるのか」と聞かれる。人工的なサヴァン症候群の発症によって、超人的な知性と感性を有する人間兵器を育成することがアテネ計画の目的だった。柴崎はスピンクスが復讐のために、原子爆弾のプロトタイプを盗んだことを間宮に告げる。「何も変わらない」と余裕を見せる間宮に、柴崎は怒りをあらわにした。その頃、記者会見を知ったハイヴは強烈な頭痛に苛まれながらも、ナインを乗せた車をクラレンスと共に追った。ナインに追いついたハイヴは車を攻撃するも、ツエルブが投げた手榴弾により止まる。車から離れるナインを追い詰めるハイヴは、銃を向けるも「あたしの分まで生きて、ナイン」と言ってガソリンに着火して爆死した。会見場に現れないナインを不審に思う柴崎は、スピンクスからの動画が上がっていることに気づく。そこでナインは「最後の爆弾は22時に自動で爆発する原子爆弾です。それでは日本の皆さん、さようなら」と笑った。

動画を受けて政府は緊急事態宣言を出し、人々に避難を要請する。柴崎はスピンクスが無差別殺人を目的としたただのテロリストではないことに目をつけ、娘の晴香(はるか)に「人を殺さない原子爆弾の使用方法」を聞いた。晴香は上空の成層圏での核爆発である「高高度核爆発」を柴崎に伝える。捜査一課は爆弾をくくりつけた気球が飛んでいく映像を確認する。しかし、高度が高く追跡が困難だったため原爆は時間通りに上空で爆発した。ツエルブはリサに「君に会えてよかった」と微笑む。そして全ての電気が落ち、東京は暗闇に包まれて美しいオーロラがナインの目に映る。

ナインとツエルブの最期

爆発が終わって時間が経っても都市機能は停止したままで、街は閑散としていた。ナインはアテネ計画が行われていた施設に行く。いくつも数字が書かれた柱が被検体の子供たちの墓の代わりであり、そこに「5」の数字が書かれた柱をナインはたてた。そこへツエルブとリサもやってくる。ハイヴとの戦いの中、手榴弾を投げたツエルブにナインは感謝した。
夕方、柴崎が施設にいる3人のもとを訪れる。スピンクスのテロ行為が「すべてが白日の元に晒され、誰も握り潰すことのできない状況を作り出すことが目的」と語る柴崎は「初めから捕まる気だったんだな」とナインとツエルブを見る。2人は「それを突きとめて俺たちを捕まえにくる人物が必要だった。あんた自身がオイディプスだったんだ」と柴崎に言った。すると突然米軍のヘリが現れる。そして、米軍は2人の殺害を遂行した。背後から銃弾を受けたツエルブが倒れると、ナインは泣き崩れる。「俺たちを覚えていてくれ。俺たちが生きていたことを」とナインは柴崎に言って、強烈な耳鳴りと目眩に襲われながらその場で死亡した。

『残響のテロル』の登場人物・キャラクター

主要人物

ナイン / 九重新(ここのえあらた)

声:石川界人
本作の主人公で17歳の男子高校生。冷静沈着でIQが高く、爆弾を作ったりパソコンを使ってシステムに侵入する能力を持っており、引き起こす事件を綿密に計画している。長身で黒髪、眼鏡をかけていてあまり笑わない。幼少期に優秀な孤児としてアテネ計画の施設に収容されていたが、8年前にツエルブと共に脱出に成功した。アテネ計画時に投与されていた薬の影響で激しい頭痛と耳鳴りに襲われることが多く、ツエルブを心配させている。よくアイスランドの音楽をイヤホンで聞いている。

ツエルブ / 久見冬二(ひさみとうじ)

声:斉藤壮馬
本作のもう一人の主人公で、17歳の男子高校生。明るく純粋で、よく笑う。音が色で見える共感覚の持ち主で、リサの声を「薄い黄色」と表現している。学校では転校初日に他クラスの人の顔と名前まで覚えたり、建物の地図を暗記したりと記憶力が優れている。バイクやスノーモービルの運転にも長けており、作中で度々ナインやリサを乗せて走っている。ナインのことを慕っており、リサのために仕方なくナインを裏切った時にはひどく落ち込んでいた。ナインと共にアテネ計画の収容施設から8年前に脱出している。

三島リサ(みしまりさ)

声:種﨑敦美
本作のヒロインで、17歳の女子高校生。学校ではいじめられており、家では母の過干渉に苦しんでいた。ナインに都庁爆破時に「そこで死ぬか、共犯者になるか選べ」と言われて共犯者の道を選んだ。気が弱いが、塞ぎ込んだ環境から逃げ出せると思って家出をし、ツエルブに助けられてナインたちの家に居候することになる。

警視庁

柴崎健次郎(しばざきけんじろう)

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