何でも治せる手腕と心。『ブラック・ジャック』に登場した「人間以外の患者」たち
漫画の神にして医学博士、手塚治虫の遺した医療漫画『ブラック・ジャック』。どんな難病、怪我も手術で治してしまえる手腕を持つ彼のこと、人間以外の動物や、果ては無機物も治療してるんです。
主人公ブラック・ジャックとは
天才的な手術の腕を持つ無免許医。免許がない理由については諸説あり。とはいえ実力はまさに折り紙付きで、名医がさじを投げた患者でさえものの見事に救ってしまう。ただし、それは飽くまで「手術が成功した」という意味であり、ストーリーの都合上患者が死亡することも。もちろん生存し、元気に暮らす患者も多い。一方、自身の持つ医学の限界、人体の意外な力の前に成す術もなく打ちひしがれ「神」に対し叫ぶことも。
「どこの病院からも見捨てられた患者の最後の砦」ではあるが、法外な手術料を請求。これに関しては、彼の容姿がつぎはぎだらけになった原因たる少年時代の事故が関係している。少年時代、戦時中の不発弾の爆発事故に巻き込まれて体がバラバラになった過去があった。成功するか分からない大手術の末に一命をとりとめ、長年にわたるリハビリの中「医者になる」と決意した様子。そんな背景のせいか、命を粗末にすること、無下に奪うことに関して怒りを見せることも。特に、手の施しようのない患者に安楽死を与えるドクター・キリコとは真逆の信念からよく衝突する。本名は間黒男(はざま・くろお)。事故の際、父親は共に大怪我を負った妻子を捨てて逃げた。ちなみに「事故」に関しては「不発弾注意」の看板が撤去されていたというバージョンが存在。高額の手術料は看板撤去に関わった面々への復讐の為とのエピソードもある。
『戦場ガ原のゴリベエ』(患者:猿)
ピクニック、キャンプに訪れる人間を襲っては食べ物を奪う乱暴者の猿として、猟師から狙われていました。遂に撃たれるものの命に別条はなかったようで逃走。血の跡を追ったブラック・ジャックが見たのは、メス猿の死体と子ザル、そして怪我を負ったゴリベエの姿。子供たちの為、危険を承知で人間を襲い食べ物の強奪を行っていたのです。中々に恩義を感じる性格のようで、ブラック・ジャックが忘れていったメスを届けに来てくれたんですが…。
『万引き犬』(患者:犬)
ブラック・ジャックの助手にして自称「奥たん」(見た目幼女)のピノコが連れてきたメスの老犬、ラルゴ。怪我をしてたんで手当てしてしばらく置いていた模様。ものすごーく物臭、怠け者の形容が似合う犬(ラルゴというのも音楽用語で「ものすごくスロー」)ですが、時たま人のものを奪って逃げるという癖が。その時だけは俊敏なんです。
実は彼女には「危機を察知する」鋭い第六感が備わっており、物を盗むのは持ち主を危険から遠ざけるためでした。アニメではレギュラー化してましたが、原作では家の下敷きになって死亡。
『白いライオン』(患者:ライオン)
「珍しい白いライオン」として動物園で人気を得ていましたが、体調不良に。獣医にもさじを投げられた挙げ句ブラック・ジャックの所に来たわけです。
「メラニン色素の欠乏(アニメでは脳腫瘍が原因)により白い体になっている。物珍しさから見世物にされてストレスもたまったせいで弱っている。人間から遠ざければいい」ということでメラニン注入。「普通になったんじゃ意味ねーだろ!」と祖国に送り返されました。ブラック・ジャックの下には抗議の手紙が殺到。その中に一枚だけ感謝と激励の手紙が。「ルナルナが白くなくなった」ことを知るピノコからのもの、というのは明白でした。
『真珠の詩』(患者:シャチ)
漁場付近に現れるシャチです。怪我を負っていたところをブラック・ジャックにより治療。謝礼のつもりか真珠を渡す義理堅い奴です。怪我をするたびブラック・ジャックに治してもらう、真珠を渡すという関係性が出来上がり、ブラック・ジャックの方も「トリトン」と名前を付けたりしてました。しかしそこは腐ってもシャチ。魚を獲るべく漁場を荒らすことも多々あったため、ブラック・ジャックも彼を治すわけにはいかなくなりました。
傷を負った体で真珠を持ってくるトリトンを説得しても効果なし。最後に見た時、トリトンは傷だらけのまま真珠に囲まれて浮かんでいました…。アニメじゃ生きてましたけど(ついでに言えば、漁場を荒らしていたのも他のシャチだった模様)。
『U-18は知っていた』(患者:コンピュータ)
ここに来てブラック・ジャック先生、「機械を治す」羽目にもなりました。「直す」んじゃなくて「治す」んです。つまり修理ではなく治療。設備の整った病院で、医者はU-18という機械のみ。無痛で手術をしてくれるし、治療も健康管理も全て行き届いている。そんな中U-18が故障状態に。U-18は修理技師ではなくブラック・ジャックを呼ぶように要求。
理由は、患者たちから「何でも治せる医者」だと聞いたから。自身を医者と主張するU-18に呼ばれて修理、じゃなく治療することに。コードを血管と見立てれば、まあできないことはない、ということなのか一応は成功。しかし、U-18は「自分にはもう医者の役目はできない」として引退宣言。ブラック・ジャックとは互いに「いい医者」という認識を持って別れるのでした。
『未知への挑戦』(患者:宇宙人)
地球外生命体も手術しました。生き物だからU-18よりは近い、かなあ。患者は女性宇宙人であり、リーダーの妻。ただ彼ら(イウレガ星人とのこと)は発達した科学力を持ち、文化も違うためか手術という物を知らなかった模様。手術し始めるや、「何をするんだ!」。いや、気持ちは分かります。怪我をしている奥さんをさらに斬られたら動揺するのは分かります。幸いにも地球人とほぼ似た身体構造(微妙な違いはありますが)であること、未知の臓器があったもののそれが胎内の赤ん坊であると気づいたこともあって、手術は成功。
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