龍が如く5 夢、叶えし者(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『龍が如く5 夢、叶えし者』とは、セガゲームスが発売するアクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』シリーズの第5作目に相当する作品である。キャッチコピーは「その生き様に 男たちの血が騒ぐ」。本作は前作『龍が如く4』で桐生一馬と仲間たちが東城会と上野誠和会の抗争事件を解決した後、日本各地を舞台に起きる極道たちの動乱の物語を描いており、新たな主人公に品田辰雄と澤村遥、さらに物語の舞台に大阪、福岡、名古屋、北海道が追加されているのが特徴となっている。

朴にスカウトされた遥は、彼女が社長を務める大阪・蒼天堀の芸能事務所ダイナチェアにて、ボイストレーナー・山浦美沙とダンストレーナー・荻田冠の指導のもと、厳しい歌やダンスのレッスンに日夜打ち込み続けていた。この頃、蒼天堀では人気テレビ番組「プリンセスリーグ」が行われることになっており、決勝戦で優勝すれば大手レコード会社からのメジャーデビューが約束されているというのだ。遥もこのプリンセスリーグに出場しており、まだ経験の浅い新人であるに関わらず決勝戦まで勝ち進んだことで一躍時の人となっていた。そして、プリンセスリーグの決勝戦が1週間後に迫る中にレッスンの合間を縫うように遥には握手会やクイズ番組の出演など地道な営業活動がスケジューリングされていた。
そのため、営業活動にも精を出さなければならないため、遥には休む暇はほとんどないに等しい状況だった。そんな中、荻田はまだ経験の浅い遥が、あと1週間でプリンセスリーグで優勝できるレベルに登り詰めるなんて時間的に無理だと朴に苦言を呈するが、朴は「今さら泣き言? プロなら言われた期日できっちり形にしなさい」と、取り合わない。すると荻田は遥のダンストレーナーとしてダイナチェアと契約する際、最初の話では1年がかりで育てるはずだと言い張り、それが半年だなんて時間が無さ過ぎるとさらなる苦言を呈する。
さらに、歌とダンスのどちらかひとつに遥のレッスンを絞るべきじゃないのかと荻田が言うと、「私は遥をただのアイドルで終わらせるつもりはないの」と、朴はそれでも取り合わなかった。その契約に見合うだけの金なら払っている以上、黙って自分の言う通りにしていればいい。そして、その条件に従えないなら今すぐ契約解除しても構わないと朴が冷酷に言い切ると、憤懣やるかたない思いを抱えながら、やればいいんだろうと吐き捨てて荻田は遥の指導を続行する。

こうして、厳しいレッスンと営業活動で1日が終わる頃には遥は体は疲れ果て、帰りは必ずマネージャーの堀江博にアパートまで送ってもらうことになった。「遥ちゃん、毎日頑張ってるねぇ」と、堀江は遥を労い、プリンセスリーグを決勝まで勝ち進んだ彼女の努力を讃えると、「今までこういうことやったことなかったから、人一倍頑張らないと」と、遥は謙遜する。
そして、仕事の合間に通っている学校でも自分がアイドルをやっていることを良い意味と悪い意味の両方で気にしているクラスメイトたちがいることに、自分がアイドルをやるのは変なのかと遥は悩む。そんな遥に堀江は「遥ちゃんのステージ、ほんまに魅力的やと思う」と言った。そして遥のアイドルとしての仕事は大勢の客に夢を与えるものだと自分は思っているからこそ、遥にはもっと自信を持って欲しいと堀江は励ましの言葉を送った。その堀江の気持ちを受け止めて、桐生やアサガオの仲間たちの為にも遥はアイドルになるという夢を実現させるべく、泣き言ひとつ言わずに厳しい仕事に打ち込み続けた。

プリンセスリーグ決勝戦当日、堀江と共に会場にやってきた遥だったが、すれ違った二人組の少女に足を引っ掛けられて転ばされてしまう。「何やってんの? ちゃんと前見て歩かないと」「ほんと、気をつけたほうがいいですよぉ〜?」と、いかにも見下した感じでそう言い放ってくる二人組は、ダイナチェアのライバル芸能事務所である大阪芸能所属のアイドルユニット「T-SET」の真田まいと大沢あずさだった。そんな露骨な嫌がらせに憤った堀江が食ってかかると、「ダイナチェアさん、何やっとるんですか? ウチのタレントに」と、悪そうな顔つきをしたスーツ姿の男が現れる。その男は、T-SETのマネージャーで大阪芸能の社員・中井だった。堀江がまいの嫌がらせのことを言うが、中井は妙な言いがかりはよせと一蹴する。
そして、これ以上食ってかかるなら出入り禁止などそれなりの対応はさせてもらうと中井が居丈高に言い放つと、堀江は押し黙ってしまった。これを見た遥は、もうこれ以上付き合いきれないとばかりに堀江に促すと、まいとあずさに「沖縄、行ってみて。ストレスいっぺん吹き飛びますよ」と、意味ありげにそう言い残して、控え室へと向かった。それに訝しげになるまいとあずさに、中井が「沖縄行って、心でも洗い直して来いっちゅうことちゃうかぁ?」と、煽り立てるように言った。中井のその煽りに逆上しかかったまいとあずさは、去っていく遥の後ろ姿を忌々しげに見つめた。

ライバルたちとの激しい戦い

その後、プリンセスリーグの決勝戦第1ラウンドをどうにかやり遂げた遥だったが、レッスンの続きをするべくダイナチェアに戻ったところで、荻田が激しく朴に食って掛かる場面を目撃する。「アホぬかしとんちゃうぞ、糞ババァ!! ダンスのことなんか何も分からん素人が、プロの仕事に口出しとんちゃうで!!」と、吠え立てる荻田。荻田は遥へのダンスの指導に朴に口出しをされたことで、ついにその不満を爆発させて彼女に食ってかかったのだ。朴が「わかった……クビよ。今すぐ辞めてもらう」と冷たく言い放つのに対し、遥みたいな田舎者が自分なしでダンスを踊れるのか、金払ってる人間が一番偉いと思ったら大間違いだと荻田はさらに食ってかかる。
これに朴は「残念だけど、間違っているのはあんたの方」と一蹴し、芸能界では金を払ってる人間が一番偉く、使えないと思ったら切り捨てるだけで、金さえあれば荻田の代わりなんていくらでもいるとさらに冷たく言い放った。さらに気色ばんだ荻田は、違約金はきっちり払ってもらうからなと吐き捨てながら去ろうとするが、朴はそんな契約などしていないと切り捨てた。目を剥いて驚く荻田に、朴は自分の依頼をこなせないなら報酬はなかったことにすると契約書に書いてあると言い、これでも文句があるなら弁護士でも通してこいと追い打ちをかけた。それに荻田は激怒し、朴を突き飛ばしてからそのまま事務所を走り去っていった。

目の前の有様に愕然となる遥と堀江に、朴は「クリスティーナ」と呼ばれる凄腕の外国系のダンストレーナーの存在を伝え、彼に荻田の後任を務めてもらうよう説得することをふたりに言った。これに堀江が、プリンセスリーグの決勝戦も始まってしまった以上時間はあまり残されていないと難色を示すが、朴はこれ以上ごねるならクビにすると反論を許さない。そして堀江は遥と共に、クリスティーナがいるとされる蒼天堀の飲み屋街へと向かうのだった。堀江と二手に分かれて飲み屋街で懸命に聞き込みをして回る遥。その途中で会った同級生でダンサーの少女であるアカリの協力を得て、遥はついにクリスティーナと出会う。
「アナタはさっきのダンサー……? アナタともうお話しすることはないと言ったはずですが」と、アカリを見て首を傾げるクリスティーナ。実はアカリは遥より先にクリスティーナと出会っており、彼にダンスの指導を引き受けて欲しいと頼んだが、断られてしまっていたのだ。そこでアカリは、期待の新人アイドルである遥を連れて、彼女と友達であることをアピールしてもう一度説得にやってきたのだ。それにクリスティーナは少し考えた後、「いいでしょう」と頷いたが、自分が興味を持ったダンサーにしか関係は持たず、自分に話を聞いてほしければまずはダンスの腕前を見せてみろと遥とアカリに言い放った。これに遥は一瞬迷った後、クリスティーナの言葉に従い、アカリと共にダンスを踊った。その結果、クリスティーナは「……あなたとなら、良いお話ができそうね」と、遥のほうを見て言った。

この言葉からして、クリスティーナは遥を選んだことに驚愕し、アカリはクリスティーナに食い下がる。「ど、どうして……!? 私との差がそんなにあったとは思えない!!」と、叫んでくるアカリに「言ったはずですよ、アカリさん。私は興味あるダンサーとしか関係は持たないと」と、クリスティーナは取り合わない。そこで気分がいいということでクリスティーナは遥を選んだ理由をアカリにこう教えた。ダンスとはテクニックが全てではなく、観る側に自分の心や感情を表現し、相手にどう伝えて感動させるかが大事である。と。そしてクリスティーナがこれまで見てきたダンサーにはオーディションに落選した者が多くいたが、クリスティーナはその落選したダンサーたちには、ただの「踊る機械」にしか見えないほど、ダンスに心や思いが籠っていないという共通点があると挙げた。
そしてアカリも落選したダンサーたちと同じく、相手を感動させるほどダンスに心が籠っていないとクリスティーナは指摘し、「それが、今のアナタと遥の差よ。人に認めてもらおうとして踊ってもダメ。もっと、心から楽しく踊りなさい」と、言い切った。これにアカリは爆発し、「何なのそれ……もう知らない!! 私、ダンスなんかしないっ!!」と、悲痛に叫んでどこかへ走り去ってしまった。思わず遥が後を追おうとしたが、クリスティーナはそれを止めた。「今のあの子は、自分で気づくしかないの。……つらいけど、それがあの子のためよ」と、クリスティーナに諭された遥はアカリを追うのをやめ、彼に改めてダンスレッスンの依頼を申し出た。

こうしてクリスティーナが遥のダンストレーナーを引き受けたことで、一時は雲行き怪しくなりかけたレッスンは何事もなく続行されることになった。そしてさらに芸能活動を続け、決勝戦の第2ラウンドに向けて準備を進める遥だったが、ある日、朴にメイクの拙さを指摘される。早くに母親をなくすことになり、化粧のやり方など今まで誰にも教わったことがなかった遥に呆れながらも、朴は自ら彼女にメイクの手解きをする。そんな突然の朴の行動に遥はつい笑みを漏らしてしまう。
朴がその遥の笑みにに首を傾げると、遥は「嬉しいんです。こんな風に化粧してもらえる事なんて、ないと思ってたから……すごく嬉しいんです」と、言った。それを聞いた朴は、メイクを続けながらも微笑ましそうになって「女の子には、母親が必要よね」と、言ったのだった。その後の休日で、遥は朴に連れられて蒼天堀の街中を歩き、ショッピングやレストラン、ゲームセンターなどいろんなところを回っては楽しんでいた。そうして仕事の疲れも忘れかけ、心がだいぶ安らいだ遥が、朴へのプレゼントとしてとある小物屋で買い物をしていると、「あれぇ? 遥ちゃんじゃない」と、後ろから嫌味ったらしい声を投げかけられた。振り返ると、そこにまいとあずさがいた。

朴との絆・衝撃の事件発生

朴へのプレゼントに買ったブローチをダサいと笑い飛ばし、さらに朴をおばさん呼ばわりするなどあずさと共に我が物顔に振る舞った後、まいがこのようなことを遥に言った。「あのおばさん、昔売れないアイドルだったって。売れなかったアイドルに指導されて、あなた自身が売れると思う?」そんな悪意たっぷりなまいの言葉に内心では驚きながらも、遥は必死に聞き流そうとする。そしてあずさも「決勝戦、勝つつもりじゃないでしょうね? 教えておいてあげる……アンタ、ただの噛ませ犬だから」と、追い打ちに悪意溢れる言葉を遥に投げつけた。あずさによると、自分たちの事務所である大阪芸能はプリンセスリーグのプロデューサーとすでに話をつけており、決勝戦がどうなろうとも必ず自分たちに有利な方向へと転ぶようになっていると言うのだ。
これに我慢できなくなった遥が「やめてください。それ以上、社長の悪口言ったら……」と、反論しようとすると、まいは遥の手からブローチを叩き落とし、それを足で踏みにじった。「だったら、何?」と、まいが睨むと、遥も負けじと睨み返して「それ以上社長の悪口言ったら……許さない!」と、言い放った。そんな遥の気勢をあずさと共に鼻で笑ったまいは、大阪芸能がその気になればダイナチェアぐらいあっという間に潰せると居丈高に言い放つ。それに遥が言葉を失うと、あずさも一緒になって「それが嫌なら、今すぐ土下座して謝りなさい。それともあんたもこの世界から消えちゃう?」と、脅しをかける。そしてついには、携帯を取り出して大阪芸能に言いがかりの電話をかけようとしてきたまいとあずさを前に、怖くなった遥はそのまま土下座しようとした。

すると、「おい、何してんねんお前ら!?」と、堀江の声が聞こえた。まいとあずさが振り返り、遥が顔を上げると、堀江と朴がやってきていた。そのまま食ってかかろうとする堀江を抑えて、朴はまいとあずさに「久しぶりね……二人とも元気?」と、呼びかけた。その呼びかけに、まいとあずさの顔が曇り、朴から視線を逸らした。実はまいとあずさもかつてはダイナチェアにアイドルとして所属していたが、朴のやり方についていけずに大坂芸能に移籍したのだった。朴は遥に構わないから土下座してやれと言いながら、まいとあずさを冷たく見据えてこう言い放つ。「昔と違って、今のタレントにオフはないわ。あるとしたら自分の家の中くらい……一歩外に出たら、そこは営業の場よ」
そして朴は、ブログやSNSなどによって良い噂も悪い噂も一瞬にして世界中に広がる時代となったからこそ、こんなところで他社のタレントである遥に土下座なんてさせたらどうなることかと啖呵を切る。その啖呵に気圧されて、押し黙りそうになるまいとあずさに、朴は自分もライバルを蹴落とそうとして逆に自分が転げ落ちていったタレントを嫌という程見てきたと言い、まいやあずさはその典型だとさらに啖呵を切る。それにさらに気圧されかけたまいとあずさだったが、「……馬鹿みたい」「冗談が通じなかったみたい」と、それぞれ捨て台詞を残して去ろうとする。
そのふたりの後ろ姿に向かって、朴は元事務所仲間のよしみの忠告として最後にこう言った。「実力は嘘をつかない。ライバルを恐れるのは、自分たちの実力に自信を持てないからよ。遥に関わってなんかいないで、自分たちの芸を磨くことね……可愛いだけのアイドルじゃ、すぐに飽きられるわよ」その朴の言葉に一瞬色めき立ちそうになったまいとあずさだったが、何も言わずにそのまま立ち去っていった。

その後、遥は朴にブローチをプレゼントし、さらにふたりだけの時間を過ごしてからタクシーでの帰路に着いた。そのタクシーの車内で、朴は遥にブローチのお礼と早めのデビュー祝いとして万年筆を贈った後、自らの過去をこう語り始めた。朴もかつてはアイドルとして18歳でデビューしたことがあったが、なんとデビューする前に結婚しており、その夫が万年筆を朴に贈ったのだ。そして、その結婚はもちろん、自分が実は韓国籍であること、家庭に問題があったことを隠し続けて朴はアイドルを続けていたが、ある日、自分が妊娠していることに気づいてしまった。朴はアイドルを続けるためにすぐに中絶したが、夫はそれに反発して朴に初めて手を挙げ、さらに自分が傍にいたら朴の夢の妨げになるからと言って離婚し、そのまま去ってしまった。そして、これがきっかけとなって朴が既婚者であることが事務所にバレてしまい、スキャンダルを恐れて朴を芸能界から追放してしまったのだという。
その後、朴はアイドルとしてコンサートをやることが自分の夢だったと語り、遥には迷惑かもしれないけど、自分が叶えられなかったコンサートの夢を遥に叶えてほしいと打ち明けた。そんな朴の自分にかける思いを知った遥は、何としてもプリンセスリーグで優勝することを固く決意するのだった。

翌朝、遥の元に堀江から電話がかかってくる。切羽詰まった声で早くダイナチェアに来てくれと訴えてくる堀江に遥が首を傾げるが、堀江も電話の向こうでひどく混乱しているようで、とにかくダイナチェアへと来てくれとさらに訴えるだけしかない。何か只事ではないと悟った遥は、言われた通りすぐにダイナチェアへ向かうと、ダイナチェアのあるビルの前には大勢の野次馬と警官たちが屯していた。遥が警官のひとりに話を聞くと、このダイナチェアのビルで飛び降り自殺があったらしい。しかもその飛び降り自殺をしたというのが、あの朴だったというのだ。
いてもたってもいられなくなった遥が現場へ駆け込むと、ふたりの現場鑑識員が担架に朴と思しき遺体を乗せてどこかへ運んでいくところだった。「そんな……なんで……? 社長……」遥は泣きそうな声でそう呟いて、どこかへ運ばれていく担架をただただじっと見つめていた。

秋山駿編(第三部・下)

朴の死の真相を探れ

神室町の金融業「スカイファイナンス」の社長である秋山駿は、新たな事業を起こすために蒼天堀を訪れ、その雑居ビルの一室で新店舗を開こうとしていた。この日、一晩飲み歩いていた秋山は、朝帰りすると共にタバコを吹かしながら一息つこうとしていたところで、一本の電話がかかってくる。秋山が出てみると、「もう社長ぉ!! 朝まで携帯繋がらないってどういうことですかぁ!?」と、女の怒鳴り声が聞こえてきた。神室町のスカイファイナンス本店に残っている秘書の女性・花だった。秋山は気付いたら朝になっていたと誤魔化そうとするが、電話の向こうで花はさらにどうせまた飲み歩いていたんだろうと怒鳴り散らす。そして秋山は、新店舗の目処が立ったら日帰りで戻ってくるという約束を花と交わしていたが、結局すっぽかしてしまったので、花は店番として本店に泊まり込みするしかなかったのだという。
そんな秋山の体たらくに、花はさらに呆れ怒鳴り散らそうとした時、突然ドアを叩く音が聞こえた。秋山が花を無視してすぐさま電話を切ると、「やっと御在宅ですなぁ、スカイファイナンスはん」と、近江連合の極道で袴田と名乗る男がドアを開けて、部下たちと共に中へ踏み込んできた。袴田はスカイファイナンスの噂を知っているらしく、一兆円ほど融資しろと秋山に迫るが、秋山は呆れて「アンタ方相手にしてあげるほど暇じゃないんでね……お引き取り願えますか?」と、にべもなく断った。袴田たちは腹を立てて秋山に襲いかかるが、秋山はあっさりとこれらを返り討ちにする。そして袴田たちが捨て台詞を残して逃げ去った後、花からまた電話がかかってきた。「社長! よかった……あの、大変なことが……」と、先ほどとは打って変わって何か深刻そうな花の声に、秋山は訝しげになる。すると花は秋山に、ダイナチェアの堀江から朴が自殺したという知らせがあって、朴がスカイファイナンスから借りたという3億円のことで堀江が話がしたいらしいことを伝えてきた。

以前、金を融資した顧客である朴の突然の訃報に驚きながらも、秋山はすぐさまダイナチェアへと向かい、待っていた堀江が朴の自殺について話を聞いた。そして朴は仕事面こそ敵が多かったが自殺するような状況や理由がなく、さらに現場に残されていた「もう疲れました。ごめんなさい」という遺書も不自然だと感じた秋山は、朴の死が自殺だとは考えにくいと思った。そして自殺への疑問の決め手となったのは、朴が秋山から借りた3億円が金庫から消えていたことであり、秋山はもしかするとその金目当ての物盗りに出会して殺された可能性があるとも睨んだ。その後、秋山がレッスンスタジオへ向かうと、誰もいないスタジオの片隅に、遥が座り込んでいた。
「君は……遥ちゃんか!? 桐生さんとこの……!」と、遥の顔を見て、驚きを隠せない秋山。遥も秋山の顔を見て、以前の上野誠和会の事件の中で、偶然にも顔見知りとなった秋山との再会に驚いた。そこで秋山は、朴が遥のメジャーデビューの舞台となるコンサートの開催費用の工面のために東京までやってきて、その費用として3億円の融資を依頼してきたことを明かした。そして秋山は、遥に自分が叶えられなかった夢を託そうとする朴の覚悟が本物だと信じることができたからこそ、遥に朴の死は自殺じゃないと言って、遥と共に朴の死の真相を追うことを決意した。

そこで手始めにダイナチェアの調査を進めていく中、秋山と遥はダイナチェアの社長室で一通の封筒に入った手紙を発見する。この手紙は一体、とふたりが疑問に感じた時、ドサッ、と窓の向こうで、ビルの上から何かが落ちる音が聞こえてきた。ふたりが外を見てみると、誰かに上から突き落とされたらしい堀江が地面に倒れていた。秋山が状況を確かめに向かうと、その堀江の近くで何かを確かめていた荻田がいて、荻田は秋山に気づくと共に逃げ出そうとした。秋山が素早く回り込んでその逃走を阻止し、お前が堀江と朴をやったのかと訊ねると、「ちゃ、ちゃう! 俺は脅されただけや! 俺は何も悪くないんや!」と、荻田は後ずさりしながら叫んだ。それに秋山が勝手なことを言うなと切り捨てると、荻田は後ずさりをやめて、懐からナイフを抜き取った。「なら……もうこうするしかねえな……?」と、ふてぶてしい笑いと共に開き直る荻田に、「最初からそのつもりだったんだろ?」と、秋山は不敵な笑みで応じた後、荻田へと挑みかかった。
そして、荻田を叩き伏せた秋山は、堀江の無事を確認しようとしたが、背後から殺気を感じてすぐに振り返る。見ると、どこからかやってきたのか、黒いスーツを着た厳つい顔の大男が、拳銃を構えて立っていた。誰何する秋山に、「知る必要はない……今すぐ楽にしてやる」と、大男は低い声で恫喝すると、拳銃の引き金を引こうとした。すると、大男の頭上に消火器が落下し、消火器を頭にぶつけられた大男は拳銃を取り落とした。大男が上を向くと、遥が非常階段からこちらを見下ろしていた。消火器を落としてきた遥に大男が気を取られると、秋山が大男の懐に素早く飛び込んでくると共に、頭部めがけて蹴りを叩き込む。しかし、大男にはダメージにこたえた様子がない。それに驚いて秋山が距離をとると、大男は頭を左右に動かし、蹴りを受けた個所を軽く撫でると共にゆっくり構えた。秋山が目を瞠った時、大男は秋山に襲いかかってきた。

激しい戦いを繰り広げた後、大男は秋山の攻撃に思わず膝をついたが、それでもダメージにこたえた様子は見られなかった。再び頭を左右に動かしながら、何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がってくる大男を見て、「化けもんか……? タフだね、まったく……」と、秋山はぼやいた。大男は、いつの間にか立ち上がれるほどに回復した荻田が、ヨタヨタどこかへ逃げ去っていくのを見て、戦うのをやめた。そして大男は地面に落ちていた自分の拳銃を拾い上げて、「……その顔、覚えたで」と、言い残すと、荻田の後を追うようにしてその場から立ち去った。
それから堀江を救急車で病院へ運んだ後、秋山は警察に事情を説明するが、警察は荻田は事件の重要参考人として指名手配はするが、一度自殺と決めてしまった以上、朴の死と荻田と結びつけるのは難しいと消極的な態度で相手にせず、結局帰ってしまった。その後秋山は遥から、朴の遺書のことで「ニンベン師」と呼ばれる偽造屋が関わっていることを教えられ、その朴の遺書を誰が偽造したのかを突き止めるべく、調査を再開した。

事故ではなかった朴の死

秋山は、蒼天堀の「クレスト」と呼ばれるバーのマスターがニンベン師の息子であることを突き止め、彼の口利きによってニンベン師に会うことができた。ニンベン師は朴の遺書を偽造したことを認めたが、その偽造を依頼した客の名前については聞いておらず、覚えていることがあるとするならばその客は、厳つい顔つきの極道風の大男だったという。その特徴を聞いた秋山は、ダイナチェアで出会ったあの大男かもしれないと踏むと、ニンベン師はその依頼人である大男は車で誰かと一緒に自分のところを訪れており、その一緒にいた誰かというのが大阪芸能の社長である勝矢直樹だと秋山に教えたのだった。

一方、遥はプリンセスリーグの決勝戦に出場していて、その決勝戦のファイナルラウンドの直前に中井から「朴が死んだのに出場するとは、小さい事務所はなりふり構ってられないらしい」「朴が死んでせいせいした人間もいるし、案外犯人はダイナチェアにいるかも」などと、朴をだしにする形で挑発をかけてくる。そんな中井の悪どい挑発に堪えきれなくなった遥は「私がT-SETに勝ったら、二度と私たちに構わないでください」と啖呵を切ってしまう。
すると中井はしてやったりと言わんばかりに笑って「お前が負けたら、T-SETの後輩としてウチに移籍してもらう。アイツらが姉さんになったら、今以上に可愛がってもらえるでぇ」と、言い放つ。これに一瞬愕然となるも、もう後戻りができなくなった遥は、覚悟を決めて頷いた。その後、中井から話を聞いたらしいまいとあずさも、今まで以上に言葉で遥を嬲りにかかってきたが、遥は決して怯まずに「私……負けません。社長のためにも、絶対に負けるわけにはいきませんから!」と、まいとあずさの言葉を一蹴する。その遥の威勢を前に、まいとあずさは嘲りの笑いを顔から消した。「いいわよ……そのかわりウチに来たら、たっぷり可愛がってあげる。今の言葉、高くつくからね」と、あずさが遥に向かって吐き捨てた後、ファイナルラウンドは始まった。

そして歌とダンスによる熱戦の末、ファイナルラウンドは見事遥に軍配が上がり、プリンセスリーグの優勝者は遥となった。ファイナルラウンドの後、まいとあずさは自分たちの敗北を信じられないでいたが、遥の実力と気概は理解できたようで、それぞれこう言ってきた。「悔しいけどさ……あんたのパフォーマンス、観てて惹きこまれた。とってもよかったよ」「あたしたちも、楽してここまで来たわけじゃない。だから分かる。あのパフォーマンスができるようになるまで、どれだけ練習を積まなきゃいけないかがさ。相当の根性がなきゃ、ああはいかない」
そう言い残して立ち去ろうとするまいとあずさに、遥はありがとうと呼び止めた後、「私……多分、決勝戦があなたたちじゃなかったら、ここまで頑張れなかったと思う! だから……だから……」と、自分の気持ちを伝えようとするが、感涙に囚われるあまりうまくできない。そんな遥を馬鹿だと言いながらも、こんなことでいちいち泣いてたら芸能界はやっていけないけど、それこそが遥の魅力なのだろうとまいとあずさは穏やかな表情で褒め称えた。そして、そのやり取りを近くに隠れて聞いていた中井の表情も、どこか清々しいものに感じられた。

一方、大阪芸能を訪れた秋山は、勝矢と面会していた。秋山は朴の死について何か知っていることはないかと単刀直入に勝矢に尋ねるが、勝矢は朴の自殺については自分も信じられないとは思っているが、自分は彼女の死については関与していないし、何も知らないと否定する。そこで秋山は、偽造された遺書について、依頼人である大男と一緒に勝矢がいたことを持ち出すが、それでも勝矢は「さあ、わかりませんね。冗談はお控え願いたい」と落ち着き払った態度で否定する。そして、自分は芸能事務所の社長を務めている以上色々な人間と関わることがあり、もしかするとその中に朴を殺した人間がいるかもしれないと締めくくってから、勝矢は1000万円分の小切手を秋山に渡し、これでお引き取り願いたいと言った。
小切手を見て、口止め料のつもりかと秋山が訝しげになると、勝矢は「身に覚えのない噂だとしても、人ひとりの死に関わっているなどと騒がれては商売に支障がありますからね。大阪芸能という組織のトップとしてその噂の火種、買い取れるものなら買い取りたい……そういうことです」と答えた。自分は金欲しさのためにここへ来たんじゃないと反論した後、秋山はこれ以上は話にはならないと判断して席を立ち上がり、小切手を受け取らずにそのまま立ち去った。

それから秋山が雑居ビルの自室に戻ると、そこには芹沢がいた。「お待ちしてましたよ、秋山社長」と、タバコをふかしながら秋山を出迎えた芹沢は、朴を殺した犯人は荻田で、その荻田のバックにいるのは近江連合のフロント企業にして主力の極道組織「逢坂興業」であり、そして荻田と一緒に行動していたのが逢坂興業の若頭である金井嘉門という男だと教えた。さらに、ニンベン師を使って朴の遺書を偽造したのも金井だと教えてきた芹沢は、自分たち警察が荻田と共に金井を追っている以上、秋山には逢坂興業にクビを突っ込まないでほしいと警告してきた。その警告に秋山は「俺にはクビを突っ込めと言っているようにしか聞こえないんだけどさ」と言うと、芹沢はまともに答えずにそのまま立ち去った。
それに秋山が不可解な気分になっていると、またも袴田が部下たちを引き連れて現れた。この前の仕返しをさせてもらうと息巻く袴田は、問答無用で部下たちと共に秋山に襲いかかるが、逆に返り討ちにあった。そして秋山は袴田から蒼天堀の外れに逢坂興業の事務所があることを教えてもらうと、すぐさま逢坂興業の事務所へと向かった。

そこで待ち受けていた逢坂興業の構成員たちを蹴散らして事務所の中を進んでいくと、血まみれになって倒れている荻田を発見した。荻田は全身に暴行による傷を負っている上に、左腕を切断されるという無残な有様だった。その有様に驚く秋山に、荻田はひどく怯えた様子で「た、頼む……助けてくれ。全部話す……アンタにも、警察にも……! だから俺を、こっから連れ出してくれ……!!」と、懇願してから、自分が知っていることを話し始める。朴を殺したのは自分だと荻田は認め、さらに前々から逢坂興業系の闇金にかなりの借金をしており、朴に契約を解除されてから荻田は首が回らなくなってしまった。そんな中で荻田は金井と出会い、朴の別れた夫の手紙を奪えばその借金を帳消しにしてやってもいいと言われたので、早速その手紙を探しにダイナチェアへと戻った。
しかし、ダイナチェアのどこを探しても見つからなく、荻田は金井と共に戻ってきた朴を捕まえて手紙の在り処を聞き出そうとしたが、朴は答えずに逃げてしまった。このまま逃げられたら自分は大変なことになると感じた荻田は、無我夢中で朴を追いかけ、捕まえたが、その際に誤って彼女の頭部を廊下に叩きつけてしまい、殺害してしまったのだ。

事件の終幕

そして、朴の自殺の偽装をして時間稼ぎを行ってから、改めて荻田は金井と共に手紙探しを再開し、堀江にも手紙がどこにあるのかを尋ねようとした。しかし、堀江も知らないの一点張りで、金井とダイナチェアのビルの屋上で揉み合っているうちに突き落とされてしまったのだという。そして荻田によると、逢坂興業は朴の別れた元夫を探していて、手紙を手掛かりにして居所を突き止めようとしており、荻田はその手紙の入手に失敗した責任を取らされる形で逢坂興業の制裁を受けることとなったのだ。
こうして全てを話した荻田は、秋山に自分も被害者だから助けてくれと惨めたらしく哀願したが、秋山は「お前に被害者ヅラされちゃ朴さんが浮かばれねえよ」と切り捨て、今から自分は騒ぎを起こすからその隙に勝手に逃げろと言い残して、事務所の奥へと向かった。その後、さらに現れる逢坂興業の構成員を蹴散らしながら、秋山はついにあの厳つい顔の大男で、逢坂興業の若頭・金井嘉門と対峙した。「あんたのことは調べさせてもらったで、秋山はん。確か、神室町の金貸しらしいなぁ。何の用や?」と、ふてぶてしい表情でそう問うてくる金井に対し、「あんたをぶちのめしに来たんだ……朴さんによろしく言われてね」と、秋山は威勢良く言い放つ。
その威勢ある言葉を無視して、金井は朴の元夫の手紙の居所を秋山に尋ねるが、秋山は知っていたとしても渡さないと切り捨てる。すると金井は「それやったらやっぱり、あんたに用はないのぉ」と、ふてぶてしい笑いを浮かべてそう言い放ち、遥ならばその手紙の居所を知っているかもしれず、今頃自分の部下が捕まえに行っている頃だと豪語した。それに秋山が驚いた時、先に始末した荻田の死体を秋山への見せしめとばかりにその場に投げ捨てた金井は、部下たちに秋山の始末を任せてその場を去っていった。

部下たちを全員倒した秋山は、すぐに遥の携帯に電話するが、電話に出たのは山浦だった。山浦によると、先ほどダイナチェアに極道たちが押し寄せて、遥をさらっていったというのだ。さらに警察に通報したら遥を殺すと脅しをかけられたので、山浦はどうすればいいのかわからずクリスティーナと共におろおろしているという。それから秋山が急ぎダイナチェアへと戻る中、遥は逢坂興業の本部の一室に囚われており、逢坂興業の構成員たちに手紙の在り処を教えるよう執拗に迫られていた。そこへ戻ってきた金井も加わり、「大人しゅう吐けや……持っとるんやろ? 出さな社長の二の舞やぞ」と、さらに脅しをかけていると、誰かが金井の肩に手をかける。金井が邪魔するなとその手を振り払うと共に拳を振り上げかけた時、その誰かは金井の顔面に鋭い拳の一撃を叩き込んだ。
「悪いな……俺もお前相手に手加減できる余裕はねぇんだ」そう言い放ったその誰かは、なんと勝矢だった。そして勝矢の姿を見た瞬間、遥は急に糸が切れたように気を失ってしまった。その後、気を失った遥を抱えて、勝矢がダイナチェアへと現れた。驚く秋山、そして山浦とクリスティーナに、勝矢は部下である金井の不始末を詫びた後、自分は大阪芸能の社長であると共に、逢坂興業の会長にして近江連合の本部長であることを明かした。その勝矢の裏の顔に驚きのあまり息を呑みながら、秋山は勝矢に朴の別れた元夫について訊ねると、勝矢は朴の元夫は、あの真島であると告白した。それに秋山がさらなる驚きを隠せないでいると、自分たち逢坂興業はどうしても真島を探し出さなければならなく、そのためにも真島の手紙を渡してほしいと秋山に頼んだが、秋山はこれを拒否する。しかし勝矢は手紙を渡したほうがお互いのためだと取り合わず、遥が目を覚ました時、手紙を持っているなら渡すように伝えてほしいと言い残して、ダイナチェアを後にした。

その後、目を覚ました遥は、携帯に見知らぬ電話番号が書かれたメールが送られていることに気づいた。その番号に電話してみると、「澤村遥さんですね? 大阪芸能の社長の勝矢です」と、勝矢の声が聞こえた。驚く遥に、勝矢は朴の元夫の手紙を持っているなら渡してほしいと頼んだが、遥は拒否した。すると勝矢は、遥が桐生に娘同然の存在として育てられたこと、さらに彼と共に沖縄のアサガオで一緒に暮らしたことを挙げて、手紙を渡さないなら桐生やアサガオに手を出すことも厭わないと脅迫してきた。
これに言葉に詰まった遥は、手紙を渡すことを了解したが、代わりにもう自分たちには関わるなと要求するが、「現実的には無理ですよ」と、勝矢は一蹴する。遥とはいつか同じ業界の仕事仲間としてどこかで会うことがあり、その時自分に笑顔のひとつやふたつを振る舞えないようじゃ生き残れないと言い、それが遥が首を突っ込んだ芸能界という世界だとも勝矢は言い放った。それに返す言葉がなくなり押し黙る遥に、手紙の受け渡し場所として新大阪駅の23番ホームを選び、自分もひとりで受け取りに行くから、遥もそこまでひとりで来てほしいと告げてから勝矢は電話を切った。

それから遥は、秋山たちには内緒で新大阪駅の23番ホームへと向かうが、そこにまたしても金井が部下を引き連れて現れる。「また会うたな。さあ、手紙を渡してもらおうか」と、迫る金井に対し、遥は「私が約束したのは勝矢社長です……! 手紙は渡しません!」と、強気になる。それに金井は「ごちゃごちゃ言うなや」と一蹴し、勝矢のやり方が甘いからその手紙ひとつのために部下である自分たちも振り回されていると吐き捨てた。そして部下たちに遥を押さえつけさせ、遥が抱えている鞄から手紙を抜き取った金井は、手紙が本物であることを確認して引き揚げようとする。
するとそこへ、「ちょっと待った!」と、秋山が割って入った。「またお前か……一体何やねん? お前には関係ない話やろが」と、金井が秋山を睨めつけると、秋山は関係ならあると切り返す。秋山は自分は朴から夢を引き継いだと言い、そして遥本人も、朴が亡くなった今でも彼女のために東京でコンサートをやりたいと夢見ていることから、遥の夢は自分の夢でもあると言い切った。だから遥の夢をこんなところで潰させる訳にはいかないと身構える秋山を、「なんやそれ。青臭いこと言いよって」金井は笑い飛ばす。「この世界、なんぼ夢見ても力のある者には敵わへんということ教えたるわ。おう、お前ら!! このガキいてもうたれやっ!!!」金井はそう言い放つと共に、部下たちを率いて秋山へ襲いかかった。
そして大激闘の末、秋山は金井たちを下し、手紙を取り戻した。ひとりで解決しようとしたことは後でたっぷり説教すると遥に言いながら、秋山は近江連合の手から逃れるはもちろん、朴のためにもコンサートを行うべく、一緒に東京へ行こうと促した。遥も秋山の言葉に頷き、彼と共にタクシーを拾い、東京へと向かった。その車中で、遥が封筒から手紙を出して文面を確認してみると、文面には「日本ドームでのコンサート終了後、お会いできることを楽しみにしております。当日は一人で参上するので、遠慮は無用に願います」と書かれており、その最後に真島の名前があった。

一方、逢坂興業の本部へと戻った金井は、独断で部下たちを連れて手紙を奪いに行ったことを勝矢から咎められていた。「澤村遥とは、俺が一人で会いに行けば手紙を渡すよう話がついていた……そのことは、お前も知っていたはずだ」と、低い声で咎めてくる勝矢に、「それは……あの秋山という男が出しゃばってきよると思ったもんやさかい、ワシらも予防線張っておこう思て……」と、金井は言葉を濁す。そんな金井に勝矢は、組のためにとやったことだろうからこれ以上は咎めはしないと言った直後、いきなり背後から金井の首を締め上げてきた。
突然の行動に驚きもがく金井に、勝矢は低い声で「芸能界で仕事してるとよ……『顔』が気になって仕方ねぇんだ」と切り出した後、金井にこう言い聞かせ始めた。文字通りの偶像であるアイドルは顔も含めた外見が全てであり、ファンの目が外見に集中するからこそアイドルが成り立つのと同じように、脅し文句と並んで相手を震え上がらせる怖さが顔に滲み出ているからこそ極道は成り立っている。そして伝説の極道である桐生に育てられ、彼と共に生きてきた遥は、見飽きるくらいに極道たちと出会ってきている。だからこそ遥は金井たちに手紙を渡せと脅されても怖がらず、むしろ強気な態度を見せてきた。そういう事実から、勝矢は金井は遥から全然怖いと思われておらず、舐められているのだと吐き捨てた。
「極道ってのは、人に恐れられてなんぼだろうが……脅すんだったら一度でちゃんと決めてこいや!!!」と、恫喝した後、勝矢は手に持っていた煙草の火を金井のこめかみに強く押し付けた。激痛に叫び、悶える金井。それから勝矢は、どんな手を使ってでも手紙を奪い、真島も必ず始末すると金井に言い、自分たちも東京へ向かうと宣言した。

品田辰雄編(第四部)

15年前の事件を探れ

ある日、名古屋の錦栄町の一角にあるビルの屋上のペントハウスを住まいに風俗ライターを生業とする品田辰雄は、夕方まで呑気に眠りこけていた。その時、「品田! おい品田っ、いるんだろー!? 品田ぁー、今回は絶対返すって約束だろ〜!?」と、玄関のドアを叩く音と共に中年男の怒鳴り声が聞こえてくる。その声の主である中年男は知り合いの鍼灸師の宇野で、品田が自分から借りた3万円の返済を催促しに来たのだ。「もうちょっと待ってよぉ、宇野さ〜ん。そんなに怒らなくても……俺と宇野さんの仲じゃーん」と、品田が気の抜けた返事を返すと、宇野は自分との腐れ縁を切りたくて仕方がなく、早く3万円を返せとさらに怒鳴る。
しかし品田は、「俺は、宇野さんとの縁を切りたくないのっ!」と、さらに気の抜けた返事を返し、金の切れ目が縁の切れ目という言葉があるからこそ完全返済なんてまだしたくないとごねた後に二度寝を決め込もうとする。するとその時、さらにドアを叩こうとする宇野の手を誰かが掴んで止めた。宇野が振り返ると、そこに黒いスーツを着て、眼鏡をかけた気の良さそうなもうひとりの中年男が立っていた。「お宅もキリトリ? 時間かかるなら、ウチは出直そうか?」と、にこやかに笑いかけてくるその眼鏡の中年男の名は、高杉浩一。名古屋でも名の知れた闇金融にして品田に金を融資しているただひとりの人物であり、さらに名古屋を支配する極道組織「名古屋組」とも繋がりがあることで有名な彼を前に、宇野の表情が突然強張った。宇野は引き攣った笑いと共に高杉にこの場を譲り、品田に出たほうがいいと然りげ無く促した後に逃げるように立ち去った。

それから高杉が、このペントハウスのあるビルの管理人から借りてきた鍵を使って中へ入ってくると、品田は慌てて身を起こした。そして宇野と同じく引き攣った笑いと正座で出迎える品田に、「さっきの彼からも借りてんの? 駄目じゃない……カタギ同士でお金の貸し借りしちゃあ。友達なくすよ?」と、高杉はにこやかに笑いかけながら歩み寄る。それに品田がさらに引き攣った笑いを浮かべて頷いた時、「でも、もっと駄目なのはよ……本業から借りて返さねえことだよなぁ品田あ!!」と、高杉は急に声を荒げて近くにあったゴミ袋を思いっきり蹴飛ばした。その威嚇に品田が震え上がると、高杉は品田に今日が何の日かと訊ねる。品田が利息の返済日だと慌てて言い繕うと、高杉はそばに落ちていた品田の財布を拾い上げて中身を確かめる。しかし、その品田の財布の中に入っていたのは小銭の数枚という雀の涙程度のものでしかなかった。
そんな品田の金銭状況に呆れながら高杉は、「風俗ライターなんて食えねえ仕事してねぇでよ、俺がもっと割りのいい仕事面倒みてやるよ」と、品田に言った。しかしその割りのいい仕事というのは、表向きは板金屋の仕事の正社員となるものだが、実際は指を切り落としてその分の保険金を出して品田の借金を返すというものだった。そう冷酷に告げる高杉に品田は胆を冷やすと共に、今日の夕方から取材の予定が入っていたと慌てて言い繕い、身支度を始める。それに高杉は「ほう、感心じゃねえか……だったらよ、なんでこんな時間まで寝てんだよぉ!?」と、再び声を荒げる。
そして逃げるように家を飛び出そうとする品田の肩を掴み高杉は、自分をこれ以上舐める真似をすると、名古屋組の手を借りてでも借金返済の手伝いをしてもらうことになると恫喝する。それにさらに震え上がり、冗談ならやめてくれと笑って誤魔化そうとする品田だが、「冗談で済ませて欲しけりゃ、さっさと仕事してこいっ!!」という怒号と共に高杉は品田の腰を蹴飛ばして外へ放り出した。

高杉から逃げるように家を飛び出した品田は、錦栄町の風俗店「ふと桃Club」へと取材に向かい、自分のお気に入りの風俗嬢である鳥山美恵子ことみるくの取材を済ませる。そして急ピッチで仕上げた原稿を編集部に提出し、原稿料をなんとかもらうも、その直後に現れた高杉に原稿料をむしり取られる。品田はその原稿料にその日の食費も兼ねていたため、全額持っていくのだけはと哀願するが、高杉はその原稿料も雀の涙ほどのものでしかないことに呆れ、「こんなんじゃ永遠に完済できねぇな……いよいよ板金屋の社員だな?」と、吐き捨てて、原稿料を手にして去っていった。
その後、仕方なしに品田はバッティングセンターに向かい、ホームラン賞の賞金を手に入れるが、そこにまたしても高杉が現れて「ナイスバッティング。俺が小銭を取り上げないのはお情けだと思った?」と、その賞金を横からかっさらう。これだけは勘弁して欲しいと品田は哀願するが、高杉は相手にもせずに去っていった。こうして手元には小銭すらロクに残らない有様となり、品田が途方に暮れかけると、懇意にしているバーのマスター・牛島史哉から連絡が入る。「よっ、ギャラ入ったんだろ? ツケの清算がてら飲みに来やぁ」と、にこやかに呼びかけてくる牛島だが、品田が言葉を濁すと「もうはい金が無いってかぁ? しょうがねえな……今日のお通し、あんたの好きな味噌煮込みを作ったんだ。とにかく店に顔出しゃあ」と、溜め息混じりの牛島の誘いに、地獄に仏とばかりに大変喜んだ品田は、すぐさま牛島のバーへと向かった。

そしてバーに着くと、牛島は用意した味噌煮込みを出そうとしたが、品田が高杉に今日の稼ぎも含めた代金を全部借金として持ってかれたことを知るや否や掌を返し、追い出そうとする。それに泣き付こうとした品田だったが、店内に数人の極道風の男が客としていることに訝しげになる。牛島がその男たちを見るなと釘を刺し、東城会の幹部である安住と、近江連合の幹部の高知がこの錦栄町で事故死したことを話した。そして牛島によると、東城会と近江連合の双方の組員がそれぞれの遺体の引き取りと、その事故を起こした犯人を捕まえようと殺気立っており、町中をうろついているらしく、さらに帽子を深くかぶってマスクで顔を隠した不審な男が誰かを探し回っているというのだ。
その後、結局牛島に何も食べさせてもらえずに追い出された品田がとぼとぼと家路についていると、目の前にひとりの謎の男が現れた。その男は牛島が話した通り、帽子を深くかぶっていて、サングラスとマスクで顔を隠していた。思わずたじろぐ品田に「錦栄町である男を探してる」と、謎の男は言った。関わりたくない品田は「街の人たちも不気味がってるぜ……平和な錦栄に揉め事持ってこないでよね」と、然りげ無く言ってから素通りしようとした時、謎の男は不意にこう言った。「俺が探している男は、一見この街に溶け込んで暮らしているが……誰もその男の過去を知らない。元プロ野球選手である過去を」
その謎の男の言葉に品田は心当たりがあるのか足を止めるが、関わりたくない気持ちからすぐに歩き出そうとする。すると謎の男は、品田の肩を掴んで「元名古屋ワイバーンズ背番号47、品田辰雄……お前に、頼みたいことがある。お前が15年前に全てを失うことになった9回裏のサヨナラホームラン、その真相を調べてほしい」と言った。その言葉を聞いた途端、品田の表情が驚きに強張った。

15年前、品田はプロ野球チーム「名古屋ワイバーンズ」にバッターとして所属しており、長年の夢だったプロ野球選手としての活動と人生に情熱の全てをかけていた。そしてワイバーンズのライバルチームである「東京ギガンツ」との試合でサヨナラホームランを打ち、一躍時の人となったが、その直後に身に覚えのないサイン盗と野球賭博の疑いをかけられ、たった一夜で選手生命を絶たれてしまった。それから15年、貧乏風俗ライターに成り下がってしまった品田は、今でも諦めきれない野球への夢と情熱を、高杉も含めた借金取りに追われながらも怠惰を貪る日々を送ることでなんとか忘れようと努めていたのだ。
そんな忘れようとしていた過去を謎の男の依頼の言葉と、彼が投げて寄越した15年前の自分のホームランボールを見た品田は、ただただ困惑、混乱するばかりだった。「返事は後日聞こう」と言い残して去ろうとする謎の男を見て、品田は慌てて追いすがって「サヨナラホームランの真相ってなんだよ……!? あれは実力で打ったんだ! 真相なんて何もねえよっ!」と、呼び止めるが、謎の男は返事をすることなくそのままどこかへ去ってしまった。

その後、品田がもやもやした気分で次の日を迎えると、玄関をノックする音が聞こえる。また高杉が来たのかとうんざりしかけた品田だったが、突然玄関の扉が開き、あの謎の男が入ってきた。驚きを隠せない品田に謎の男は答えを聞かせろと訊ねる。品田は15年前のサヨナラホームランに真相なんてないと繰り返し叫び、帰ってくれと追い返そうとする。すると謎の男は、報酬の2000万円が入ったアタッシュケースを品田に見せて「これは興味本位ではなく、仕事の依頼だ。全ての報酬が明らかになれば報酬として支払う。15年前の真相が俺にとっては、この鐘に値するほど重要なことなんだ」と言った。
さらに驚き困惑する品田は、謎の男に何者かと訊ねたが、謎の男の「それは言えない。引き受けるのか、引き受けないのか?」の一点張りに、ついに業を煮やして感情を露わにする。「あの一件で俺はな……人生を引っ掻きまわされたんだ!! 早く忘れてぇんだよ……どんなに金積まれようが、今更思い出したくねぇんだコノ野郎っ!!」と、喚き散らす品田だったが、その時、「受ける」という一言と共に高杉が割って入る。

自警団との戦い

謎の男が高杉に向けて銃を構えると、高杉はおどけながらも品田の身柄を預かっているような立場の人間だと説明し、借金を返済するチャンスを与えるためにも品田に仕事は受けさせると言った。謎の男が銃を収め、品田が状況をややこしくするなと文句を言おうとしたが、高杉は嫌なら指の保険金での返済にすると脅しをかける。それに品田がちょっと待ってくれとごねようとすると、「ちょっとだろうが沢山だろうが、いくら待っても風俗ライターに返済なんて出来ないだろ。まぁ、他に稼げる仕事でもあるって言うんなら、話は変わるがな?」と、高杉に釘を刺され、返す言葉もなく黙り込んでしまう。そして謎の男が前金と自分の連絡先を教えて去っていった後、迷った末に品田は、借金の返済と、15年前から抱え続けた野球への未練に決着をつけるべく、謎の男の依頼を受けることを決意した。

それから品田は、高杉と共に野球賭博事件の調査を開始した。品田は、ワイバーンズ時代にチーム所属の整体師として付き合いがあった宇野、同じチームメイトで土木作業員の酒井篤志、先輩格のチームメイトで焼肉屋の店長の真鍋幹二に接触を図り、調査を進める。その調査の結果、15年前の野球賭博は名古屋組によって仕組まれたものであり、それ以前に錦栄町は東城会と近江連合の縄張り争いの舞台ともなっていて、さらに双方の勢力が品田の時以前にこの錦栄町で繰り返されていた野球賭博に関与していたことが判明する。そして、品田の野球賭博が起きた時、東城会と近江連合は名古屋から手を引いて、それ以降は野球賭博は起きなくなったことも判明した。
そこで品田は、名古屋組の名前を何度も借りている高杉についてその所在を訊ねるが、高杉は借金取りの仕事を捗らせるための箔として名古屋組の名前を利用していただけで、名古屋組がどこにあるのかは知らなかった。落胆に肩を落としながら、品田は引き続き高杉と共に名古屋組の調査へと踏み込むが、この時から牛島や真鍋が「これ以上探るのはやめろ」「もう帰っていつもの生活に戻れ」と、妙に険しい表情で品田に警告を投げかけられる。
そして酒井が、人気のない工事現場の一角に品田を呼び出して「品田……おみゃーの事は絶対忘れーせん! 許したってちょ!!」と、鉄パイプを片手に襲いかかってきた。酒井を返り討ちにした品田は、酒井に何故自分を殺そうとしたのかと訊ねると、「おみゃーは、名古屋の為に犠牲になってまったんだわ……」と、酒井は意味ありげな一言を発した直後、品田の頭上から工事用の重機が落ちてくるのを目撃する。そして酒井は品田をかばい、全てを話す間もなく重機の下敷きとなり、命を落としてしまった。

さらにその後、宇野が自身が経営する鍼灸院で何者かに襲われて負傷し、みるくまでもが誘拐されるという予想外の展開になる。みるくを救いに名古屋埠頭のとある倉庫へとひとり乗り込んだ品田だったが、直後に背後から一撃を受けて昏倒してしまう。気がついた時には品田は縛られており、周りにはみるく、牛島、ふと桃Clubの店長、バッティングセンターの受付の中年女性が、なぜか冷たい表情で自分を見下ろしていた。
目の前の知人たちの様子に愕然となる品田に、牛島が「忠告に耳を貸さなかったあんたが悪ぃんだわ」、みるくが「手を引いとってくれればこんな事せんで済んだのに」と、冷たい表情で言葉を投げかけてくる。実は牛島たちこそが名古屋組の人間であり、名古屋組とは、極道組織の皮を被った名古屋の住人たちによる自警組織だったのだ。

そして牛島たちは名古屋組と野球賭博事件の真相について探ろうとする品田を始末しろと命令されており、さらに品田への見せしめとして宇野までもを襲ったのだ。牛島たちの正体が信じられない品田は、「アンタら全員、俺に心から接してくれてたじゃねえかよ……!? アンタらがんな事するなんて俺は信じねぇ!! 誰かに命令されたんだろ!? 誰なんだよそいつは!!」と、叫び続ける。そんな品田の叫びに答えず、牛島は手にしていた包丁を品田に向けるが、品田と一緒に過ごしていたことを思い出し、情に邪魔されて品田を殺すことができない。
同じくみるくたちも情に邪魔されて手を出せないでいると、「何もたもたしとるんだ? 錦栄の街守るのに……躊躇はいらんが」と、ひとりの大柄な男が、部下と思しき男たちを引き連れて現れる。同じく名古屋組の一員である大柄な男こと、警備会社の社長である久保田は、牛島から包丁を奪い取ると品田の首めがけて勢い良く振り下ろそうとする。その時、フォークリフトに乗った高杉が壁を突き破って乱入してきた。「テメエら、生命保険もかけてねえ人間……勝手に殺すんじゃねえよ!!」と、牛島たちに向かって吠えた後、高杉は目くらましとして消火器を牛島たちめがけてぶっ放して品田を救出する。

その後、久保田と部下たちが追ってきたが品田は高杉と共にまとめて返り討ちにし、倉庫から命からがら脱出することができた。しかし、牛島やみるくら信じていた町の人間たちが全員敵で、自分を騙し続けていたという事実に品田は自暴自棄になり、自分は錦栄町を出ていく、指の返済金も欲しいならくれてやると高杉に当たり散らす。「またバットを握れる日が来るかもなんて、淡い期待を持ってたけど……俺は最初から野球選手なんかじゃなかったんだ……! ただ利用されただけの馬鹿な駒なんだよ!!」と、品田が涙まじりにそう叫んだ時、高杉は「利用されようがたった一度だけの打席だろうが……お前はプロ野球選手だった。あのホームランに感動して、希望を持てた客だっているんだ。馬鹿野郎が」と、諭すように言った。その時品田は、自分が打ったホームランボールを拾ったひとりの観客の男が、そのボールを持ってきてサインを頼んできたことを思い出した。
そして、あの時サインをねだってきた観客が高杉だったことに気づき、品田が言葉を失う。高杉は今から1年前、自分に品田が金を借りに来た時、その借用書に書かれた品田の名前を見た時はとても驚いたと語り、貧乏風俗ライターに身を落としたことには幻滅させられたが、容赦なく取り立てができる分気持ちは楽だったと吐き捨てた。そして高杉は、品田よりも前に謎の男と会っており、彼が品田を探していると聞いてその手がかりとしてあのホームランボールを渡し、品田に野球賭博事件の調査を引き受けさせるために自分が一役買ったと告白した。
しかしその調査の結果が、品田が信じていた街の人間たちが実は敵だったことを炙り出すものとなってしまったことに自嘲しながらも、高杉は品田に「ちゃんと返せよ……借金とあのボール。結構大切にしてたんだ」と言って締めくくった。するとその時、久保田のスーツの胸ポケットに差さっている携帯が突然鳴り出した。品田がそれに気づいて手に取ろうとすると、横から現れた男の手がその携帯を掴んだ。その男はなんと、真鍋だった。

野球賭博事件の真相

「はい……久保田はしくじりました。代わって私が、確実に始末します……終わりましたら、報告します」と、低い声で電話に応えた後、真鍋は手にしていた包丁を品田に向ける。真鍋までもが名古屋組の一員だったことに驚く品田。「俺らは腐っても野球選手……勝負の世界に引き分けはあれせん。ちゃんと勝負の幕を引くしかにゃあようだ。そろそろゲームセットにしよまいか、品田」と、低い声で恫喝してくる真鍋に、「さすが俺が憧れたバッターは、言うことが違いますね……」と、拳を構えた。
そして激闘の末に、品田は真鍋も下し、野球賭博を仕組み、それを隠すために自分を始末しろと命令している人間は誰かと真鍋に問うた。真鍋は携帯でどこかに電話をかけ、「……その耳で確かめてみろ。声を聞きゃあ分かるはずだわ……」と、携帯を差し出した。品田が携帯を受け取ると、電話の向こうから「どうした真鍋。品田の始末は無事に終わったのか」という男の声が聞こえた。品田はその声を聞いて愕然となった。その声の主は、品田の恩師にしてワイバーンズの元監督である冨士田で、彼こそが名古屋組のリーダーで、野球賭博事件を仕組んだ張本人だったのだ。

翌日、品田は謎の男を自宅に呼び出して、15年前の野球賭博事件の黒幕が名古屋組であること、名古屋組が冨士田によって作られた錦栄町の自警団に近い組織であること、錦栄町が東城会と近江連合の縄張り争いの舞台だったことを報告した。そして昨日の倉庫での一件の後の調査で掴んだ、野球賭博事件が東城会と近江連合を名古屋から追い出すために冨士田が仕組んだものであることと、さらに今朝、牛島とみるくたちが良心の呵責に耐えきれなくなって警察に出頭したことも品田が伝えると、謎の男は「辛いな……お前にとっては」と、慰めるように言った。
それに品田は頷きながら「でも、まだ悲しんでられないよ。真相の奥に眠る『本当の敵』をこの目で見るまではね」と、決意を滾らせた表情で言った。謎の男がどういうことだと聞き返すと、品田は冨士田の指示で動いてはいたが牛島たちが殺しに慣れてる人間ではなく、さらに酒井が何者かに事故に見せかけて殺された時、その事故死を演出できるほど手馴れてもいないと推測する。そして品田は、東城会と近江連合の幹部が揃って事故死したことも挙げ、その事故死も牛島たち名古屋組が仕組んだとは思えないとも言った。それを踏まえて酒井と、東城会と近江連合の幹部の事故死は名古屋組以外の別の誰かが仕組んだことだろうとも品田は推測し、「絶対に、本職の連中が背後にいるはずだ」と結論を出した。

その品田の結論に謎の男は納得して頷くと、「やはり『あの男』が関係しているのは間違いなさそうだな……これ以上のことは、冨士田に直接聞くしかないか」と言った。その「あの男」という単語に品田が引っかかると、謎の男は答えずに「ご苦労だった」と、約束の報酬の2000万を置いて立ち去ろうとする。それに慌てた品田は、自分も冨士田のところへ行くと呼び止めると、「ここから先は……俺の仕事だ。もう手を引くんだ、辰雄」と、謎の男は帽子とサングラス、マスクを外し、素顔を露わにした。
品田はその男の素顔を見て、愕然となった。男の正体はなんと大吾で、しかも品田の高校時代の同級生だったのだ。大吾は当時は学年1位となるほどの成績優秀者だったが、品田が所属していた野球部が、ライバル高校に甲子園の東京予選の決勝戦を辞退しろと脅迫されていた時、大吾は品田を守るためにその脅迫した不良たちを相手に喧嘩騒動を起こした。その後、品田は野球部の仲間たちと共に予選に勝ち抜いて甲子園に行くことができたが、大吾は喧嘩騒動の張本人として少年院に入れられて退学し、それ以降は品田と会うことはなかったのだ。

その過去を思い出した品田は、どうしてそんなことをしたのかと大吾に尋ねると、大吾は「お前らが甲子園に出ること……それはあの頃の俺の夢だったからだ」と言った後、大吾はこう語った。夢は叶える人間がいてこそ思い描けるもので、人間というのは自分の意思に関係なく、勝手に周囲の他人に夢を託す存在となる。高校時代の大吾は夢がなく、何より極道の家に生まれたからこそ、その極道稼業を継ぐことが決まっていたため、極道の跡取り以外の夢を持つことを許されない立場だった。そんな中、友人の品田が甲子園に出ることを聞いて、大吾は品田を羨ましくも誇らしくも思っていた。そして品田が甲子園を夢に見ていたからこそ、大吾はたとえ青春を棒に振ってでも友人の夢を応援することくらいはやってみたいと思ったのだという。
それから甲子園で品田がホームランを打ったのを見たと共に勇気付けられ、目を背けたくなることばかりの極道の人生と向き合って生きていくことができたから、大吾は品田に勝手にだが感謝していると言った。そして、「だからここから先は任せてくれ……今度は、俺がお前の失った夢を取り戻す番だ」と締めくくった大吾は、全てにカタがついたら東城会6代目会長として権力を使ってでも品田の球界の永久追放処分を取り消させると言い残し、その場を去ろうとした。すると品田が、いきなり大吾に殴りかかった。

突然の暴挙に目を見張る大吾に、品田は低い声で「結局は同じかよ」と吐き捨てた。15年前、極道の縄張り争いのために自分が全てをかけてきた野球という夢を失った自分が、今度はその極道に助けられて夢を取り戻す。そんな15年前と同じ極道に関わった流れと、誰かの権力を使って球界に復帰しても意味なんてないと言い張る品田を、「現実を見るんだ。過去にこだわっても、お前の失った時間は取り戻せない」と、大吾は諭す。すると品田は自分の上着をいきなり脱ぎ捨てて、野球選手時代から毎日欠かさず続けてきたトレーニングで鍛え抜いた自分の体を曝け出し、こう言い放った。「勝手に語ってんじゃねえよ……アンタに言われなくても、俺は自分の手で取り返す! 失ったホームランをこの手でな!!」
その品田の言葉から、彼が死を覚悟してでも真実を確かめに向かおうとしていることを悟った大吾は、品田の言葉と覚悟に応えるように自分も上着を脱ぎ捨てた。「死ぬと分かってる場所に行かせるワケにはいかない。極道としても……お前の友人としてもな」そう言い放ち、拳を握り締めた大吾だが、品田は迷わずに彼へと挑みかかった。

澤田との決戦

そして熱戦の末、品田は大吾に打ち勝った。「どうよ……これなら、文句ないでしょ……?」と、ダメージと疲れに顔を引き攣らせながらも笑いかける品田に、「ああ、俺の負けだよ」と大吾は満足そうに笑って頷いた。こうして品田は、大吾と共に東京へ向かうことになり、早速東京行きの新幹線に乗ろうとしたが、そこで駅の売店で買った新聞のある特集記事に目を疑った。その記事の題名は「197勝投手ギガンツ澤田電撃トレード ワイバーンズへ」とあった。その記事を見た途端、表情を変えた品田は大吾に先に東京へと向かってくれと言った後、尾張スタジアムへと向かった。品田が急いで向かった先の尾張スタジアムのグラウンドでは、ひとりの若い男がいた。

「お前なら、俺がここにいるって分かるんじゃないかと思ってたよ……よく来てくれたな、品田」そう言って品田を出迎えた男の名は、澤田有希。名古屋ワイバーンズのライバルチーム「東京ギガンツ」のエースで、197勝という業績を誇ることから名実ともに球界を代表する名投手であり、さらに高校時代の品田と甲子園で対決して以来、心に残るライバルとして認め合い、競い合う仲となった人物だった。品田が「まさか球界のエースであるお前が、万年Bクラスのワイバーンズに移籍するなんてな」と言うと、澤田はその移籍については冨士田との約束であり、15年経った後に自分がこの名古屋組を受け継ぐためのものだと答えた。
品田は牛島たちが自首した今、名古屋組はもう終わりだと叫び、なぜそこまで名古屋組を守ろうとする必要があるとやりきれない表情で問うと、澤田は「やはりお前は、何も現実が見えてないようだな」と品田の言葉を一蹴し、拳銃を取り出して彼に向けた。そして澤田によると、牛島たちなら全員釈放されたらしく、警察は何事もなかったかのように処理する方針を取るということで、その裏には近江連合の出身団体のひとつである「神戸黒羽組」が関わっているという。
さらに名古屋組の創立に関わったのも神戸黒羽組で、その創立の背景には名古屋における近江連合内の縄張り争いがあり、神戸黒羽組は自分たちの他に名古屋に居座る他の組織に対抗するための道具として名古屋組を作った。そして冨士田を通して品田の始末を牛島たちに命令し、さらに酒井を口封じとして事故死に見せかけて殺したのも神戸黒羽組で、牛島たちが失敗した今、澤田に品田の始末を命じたのだ。

澤田がそこまで名古屋組と神戸黒羽組の関係について告白した時、「喋りすぎだぞ、澤田。お前が撃たないなら俺が撃つ」と、観客席のほうから男の声がかかった。品田が振り返ると、観客席の一角に神戸黒羽組の組員と思しき男が拳銃を向けて立っていた。さらにベンチに、同じく神戸黒羽組の組員らしき男が数人座って、品田と澤田の様子を伺っている。その観客席とベンチの男たちを見て、澤田は拳銃の安全装置を解除しながら、品田に名古屋組についてこうも語った。牛島達名古屋組の組員は裏で神戸黒羽組に操られていることを知らず、彼らは名古屋の街を守るために冨士田や自分を信じ、指示に従っただけにすぎない、と。それだけは信じてやってほしいと品田に言ってから、澤田は拳銃の引き金に手をかけた。
その瞬間、品田は澤田の片手が何かの合図を自分に送っているかのように動いているのに気付いた。そして澤田が拳銃の引き金を引いたと同時に、品田は咄嗟に大きく後ろへ体を反らして銃弾をかわし、銃弾は観客席にいた組員に命中した。意外な事態の展開に信じられないまま、観客席の組員が崩れ落ちたのを見届けてから、「やはり知っていたのか……ギガンツのサイン」と、澤田は品田に言うと、品田は「相手のサインを研究するのはバッターの基本だからな」と答えた。実は品田は、澤田の片手の合図が「後ろへ体を反らせ」という意味のサインだということを理解し、銃弾をかわすことができたのだ。

そして、この様子を見たベンチの神戸黒羽組の組員たちが一斉に動き出し、殺気立った様子で品田と澤田を取り囲んだ。そんな中、品田がどうして自分を助けるような真似をしたのかと澤田に問うと、「ずっと知りたかったんだ……どうしてお前が俺のあのストレートを打てたのかをな」と、澤田は答えた。15年前の野球賭博事件が起きたあの試合の日、澤田は品田の対戦相手として登板しており、6球ほどカーブを投げて品田を追い詰めるも、その後に繰り出した渾身のストレートを品田に打たれてしまった。それ以来、心のどこかで澤田は品田との再戦を望んでいて、その再戦の機会を得るために危険を覚悟でこうして品田を助けたのだった。その後、大激闘の末に品田は澤田と共に神戸黒羽組の組員を全て打ち倒し、澤田の希望通り、野球での再戦に臨んだ。そこで澤田はストレートで攻めにかかるが品田に悉くカットされ、最後に決め球としてカーブを投げるが、品田は逆にカーブを待ち続けており、そのカーブを見事に打ってホームランを決める。その後で品田は、高校時代に甲子園で澤田と対戦した際、ストレートで三振して負けたからこそ、澤田のストレートを打つことに燃えていたと言った。
そして15年前の試合でストレートを打つという念願は果たせたが、カーブを打てなかったことが心残りだったからこそ、この15年間自分も澤田との再戦を待ち望んでいたと品田は語った後、澤田にこう言いながら手を差し伸べた。「15年間、待った甲斐があったよ……ありがとうな、澤田」その品田の言葉に、澤田は力強い握手で応えたのだった。

同じ頃、とあるビルの一室で、冨士田がひとりの男と会っていた。「おかしなもんですな……もっと早くこの決断ができていれば、こんなことにはならなかったのに」と、冨士田は男に意味ありげな言葉を投げかけると、デスクの上に置いた1枚の手紙を見せた。それは15年前の野球賭博と名古屋組が起こした事件の全容が書かれた告発文で、名古屋を守るためとはいえ品田を裏切ったことも含めた自分のこれまでの行いに、冨士田も良心の呵責を感じていたのだ。
冨士田は明日の新聞にこの告発文が掲載される予定になっていると告げ、「もう終わりにしましょう。それが私たちにとって一番の……」と、男に言いかけた時、男は冨士田の頭めがけて拳銃を放った。そして冨士田が倒れた後、男は冨士田の告発文を燃やし、さらに近江連合の代紋が刻まれたバッジをその場に残して去っていった。

完結編

非情な現実

東京・神室町に辿り着いた桐生は、街の一角にある人気のない空き地で馬場と出会った。そして、彼が青山や森永の協力者であることを知った桐生は、福岡で起きた事件の真実を教えるよう求めるが、その前に馬場からその真実を知るための覚悟があるのかどうかを確かめるための勝負を挑まれる。勝負に勝った桐生は、馬場を連れて馴染みの店「ニューセレナ」へ向かう。ちょうど開店前であったが、ニューセレナのママに頼んで少し席を貸してほしいと桐生は頼み、馬場から話を聞き始めた。
馬場によると大吾は、近江連合との全面戦争に備えるために東城会の力を上げるべく、名古屋の名古屋組に安住、札幌の北方組に真島をそれぞれ五分の盃を交わしに向かわせ、自分は福岡の山笠組に五分の盃を交わしに行った。そこで青山と森永の計画では、大吾は班目と殺されるはずだったが、大吾がその計画に気づいたことで自ら姿をくらましたことで失敗に終わった。結果、大吾と班目を取り逃がした青山は、大吾がいない隙に会長となって東城会を乗っ取る形へ計画を勝手に変更することになったが、青山と森永は実は近江連合に買収された人間であり、青山は自分が会長となって東城会を乗っ取るのも、森永と共に東城会を近江連合へとそのまま売り渡す算段だったという。
最終目標である近江連合への東城会の売り渡しに繋げる青山と森永たちの目的はふたつで、ひとつは大吾と真島ら東城会の幹部たちの排除、もうひとつは桐生と冴島の監視及び東京での暗殺。そして、東城会の拠点は東京にあり、東城会における象徴とも言える桐生と冴島だからこそ、近江連合がふたりを東京に呼び寄せて始末し、そうして東城会を手に入れることに意味がある、と馬場は桐生に語った。

同じ頃、芹沢に連れられて神室町へと戻ってきた冴島は、芹沢が追っている東城会の裏切り者である森永の行方を掴むべく、神室町の地下にあるホームレスの溜まり場「賽の河原」を拠点とする情報屋・サイの花屋のもとへと向かった。冴島と再会したサイの花屋は、すでに冴島の網走からの脱走と札幌での事件について掴んでおり、さらに森永の行方を教えてほしいともう一人の男が自分を訪ねに来ていると言った。
そこでサイの花屋に連れられて、冴島が賽の河原の地下闘技場へと向かうと、その地下闘技場のリングで戦っている相沢の姿があった。相沢こそが森永の行方を探しにサイの花屋を訪ねてきたもうひとりの男で、森永の情報を教えてもらう条件として地下闘技場での試合に勝つことを提示されたのだ。激しい戦いの末、傷だらけになりながらも相沢は対戦相手を打ち倒して勝利をもぎ取ったが、戦いの後にまるで何かに取り憑かれたように倒れた対戦相手の顔面に拳を叩き込み続ける。そして、殴り殺す寸前まで相沢が拳を振るい続けたところで冴島が止めに割って入った。

その後相沢は冴島に、自分が森永に見捨てられたことを打ち明けた。山笠組本部での一件の後、桐生に言われて森永を病院まで連れて行った相沢は、手術が終わるのを待って病室を訪れたが、森永の姿がどこにもなく、代わりに「東京へ逃げろ」という手紙が置かれていたのだ。訳がわからなくなった相沢は、森永を探しに福岡の街を歩き回っていた矢先、青山が森永の手にかかって死んだという急報を耳にした。森永の暴挙に茫然自失となった相沢は、彼の心意を確かめるべく神室町へ戻り、サイの花屋の元に辿り着いた。そして、森永の居場所を教えてほしいとサイの花屋に頼み、条件に出された試合に相沢は勝ったが、先ほどの対戦相手を殴り殺そうとした一幕から、「リングの上で人を殺すような人間は信用できない」とサイの花屋に掌を返されてしまったという。
そうして森永やサイの花屋に見捨てられたことに悲嘆に暮れる相沢に、冴島は「くだらんな。俺らの世界の兄弟の絆っちゅうんは、ガキの好き嫌いを言うとるんとちゃう」と吐き捨てた。相沢がその言葉に顔を上げ、反論しようとした時、冴島は無言でリングへと上がり、上着を脱ぎ捨てた。そして「俺に勝って森永の居場所突き止めろや。森永に会うて、それでも気持ち収まらんかったら……そん時は思い切りぶん殴ったらええ。兄弟が間違うた道進んだ時、それを引き戻したるのも兄弟の務めや」と、冴島は静かに言った。それから、上がってこいと冴島が呼びかけると、相沢も静かに頷いてリングに上がり、決意を表情に滾らせて冴島へと挑みかかった。

そして熱く激しい一騎討ちの末、冴島は相沢を下した。倒されても必死に起き上がろうとしてくる相沢を見て、相沢の森永への思いは本物であることに頷いた冴島は、「最後まで信じたれや、森永のこと。大事なんは兄弟に捨てられたかどうかやない。要は自分がそいつを好きでいられるか……それだけや」と、諭すように言った。その言葉に相沢が胸を打たれた様子を見せると、どこからか拍手が聞こえてきた。ふたりが振り返ると、サイの花屋が手を叩きながら歩いてきた。
「最近の闘技場の試合は、つまらない対決ばかりだったからな。今日は数年ぶりに血が騒ぐような試合を見せてもらったぜ」と、先ほどの冴島と相沢の一騎討ちを褒め称えたサイの花屋は、その一騎討ちを見せてもらった礼として特別に森永の居場所を教えてやるとふたりに行ったのだった。それに相沢が表情を輝かせかけた時、サイの花屋は釘を差すように相沢にこう言った。「現実とは非情なものだ……お前にその現実を受け容れられるだけの勇気があればの話だがな」その言葉の後、サイの花屋が冴島と相沢に教えた森永の居場所とは、警視庁神室署地下2階の霊安室。つまり森永はすでに死んでいるという、サイの花屋の言葉通りの非情な現実だった。

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ぷよぷよテトリス2(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『ぷよぷよテトリス2』とは、『ぷよぷよ』と『テトリス』という2つの落ち物パズルゲームによるコラボレーション作品で、2014年発売のゲーム『ぷよぷよテトリス』の続編である。2020年にセガから発売されたアクションパズルゲームだ。 前作同様『ぷよぷよ』同士・『テトリス』同士・『ぷよぷよ』対『テトリス』の対戦などが行える他、演出が強化され、「スキルバトル」という全く新しい対戦形式が実装されている。ルールが簡単な対戦ゲームとして、配信者の間でも人気となった。ストーリーは前作の続きとなっている。

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サクラ大戦3(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

サクラ大戦3(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜』とは、2001年にセガから発売されたドラマチックアドベンチャーゲーム。『サクラ大戦』シリーズの3作目であり、タイトルにもある通り物語の舞台をパリへと変更し、登場キャラクターも一新。極めて美麗なOPアニメーションが話題となった。 日本で帝国華撃団が悪党を退けた頃、フランスの都パリでも謎の怪人による事件が続発。事態を打開するため帝国華撃団の隊長である大神一郎がパリに派遣される。新しい仲間たちと協力しながら、大神はパリの市民を脅かす怪事件に挑んでいく。

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