SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)のネタバレ解説・考察まとめ

『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)とは、2013年にPlayStation Vitaで発売したアクションゲーム。発売元はソニー・コンピュータエンタテインメント。作品の略称は「ソルサク」。
本作は牢獄に囚われた主人公が、喋る魔術書リブロムと出会い、運命に抗うためにリブロムの中に記載されたある魔法使いの力を手に入れるまでの物語。
作品の魅力は派手なグラフィックで表現される魔法、プレイヤー同士の共闘といったシステム、グロテスクながらも熱い重厚なストーリーである。

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『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)の概要

『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)とは、2013年3月7日にPlayStation Vita専用ソフトとして発売されたアクションゲーム。その1年後である2014年3月6日には、シナリオや登場人物、システム変更などを多数追加したアッパーバージョンである『SOUL SACRIFICE DELTA』(ソウル・サクリファイス デルタ)も、PlayStation Vitaでリリースされた。いずれの作品も略称は「ソルサク」で共通。
作品の発売元はソニー・コンピュータエンタテインメントとなっているのだが、開発にはSCEジャパンスタジオと株式会社コンセプト、株式会社マーベラスAQLの3社が関わっている。また、プロデューサーの1人にバイオハザードシリーズや鬼武者シリーズを作った稲船敬二、楽曲製作チームに『ゼノギアス』やイナズマイレブンシリーズに関わった光田康典が参加。ゲーム業界では非常に評価の高い人物たちが制作したことにも注目されていた。
東京ゲームショウ2012で世界初プレイアブル出展された際も、その注目度は非常に高く、作品の完成度の高さや斬新さなどから、最終的には日本ゲーム大賞2012フューチャー部門を受賞するに至る。
作品の舞台は魔法が存在するどこかの世界。
主人公はその世界で、暴虐の限りを尽くす、強大な力を持った不老不死の魔法使いマーリンによって囚われている、力無き人物。囚われた人間はいずれマーリンによって生贄(いけにえ)に捧げられ、命を落とす運命にあったのだが、ある日主人公は喋る不思議な魔術書リブロムと出会った。リブロムには、とある魔法使いの日記が記されており、この日記を読んで内容を追体験していけば、魔法使いが習得した魔法の力が手に入るという。主人公は死を待つだけの運命から逃れるだけの力を手に入れるため、リブロムの中に記載された日記を読み進めていくことにするのだった。本作はこのとある魔法使いが体験した過酷かつ苛烈な運命と、死ぬ運命にある主人公が、不老不死の魔法使いマーリンに立ち向い、その存在を打破するまでの物語が描かれている。
本作の魅力は3つ存在する。
1つ目が多彩な効果と、派手な発動グラフィックが魅力の魔法などを駆使したアクションなど、作品独自のシステム。本作の主人公は魔法使いであり、倒した敵や生物の一部、植物、鉱物などを供物として、魔法を発動させることが可能。この魔法は炎や氷などを射出して攻撃するなどの他にも、回避アクションの動きを変化させる、盾を作って攻撃を受け止める、というような、非常に多くの効果が存在。魔法を発動させるための供物は戦場に6つまで持ち込めるため、これにより戦術を組み立てる面白さがあった。更に、瀕死の存在の命を奪い自らの力とする生贄、瀕死の存在を助ける救済といった、作品上でも象徴的なシステムが実装されている。これらの選択によって戦況やプレイヤーの成長などが変化するのも特徴だった。
2つ目の魅力が他プレイヤーとの共闘要素。本作はPlayStation Vitaを持ち寄ったり、PlayStation 3に搭載されたアドホックパーティ機能を用いることで、最大4人まで一緒に遊ぶことが可能。多彩な魔法による戦術構成や役割分担を行い、強大な敵を倒すという、モンスターハンターシリーズやゴッドイーターシリーズに見られる、いわゆる狩りゲー的な楽しさを味わうことができる。しかし、やり込み要素を除けば1人でも十分に遊べる難易度であり、1人でも楽しめるようなコンテンツも多かったことで、共闘しないプレイヤーにも人気を博した。尚、2021年12月24日まではPlayStation Vitaのオンライン機能を用いてパーティを組めていたのだが、サービスは終了されている。そのため、2021年12月24日以降にマルチプレイを楽しむ場合は、実機を持ち寄るか、アドホックパーティを利用するしかない。
3つ目の魅力が、シナリオや設定の重厚さ。本作のストーリーは非常に作りこまれており、重苦しくダークでグロテスクな世界観が特徴。しかし、その実物語の本筋は正統派の熱いファンタジーであり、先が気になるストーリーは多くのプレイヤーの心を掴んで離さなかった。更に登場人物だけでなく、対峙する敵として設定されている魔物1体1体や、戦いの舞台となるステージなどにすら、細かく成り立ちや物語が存在。これらの資料は全てゲーム中で読むことができるため、重厚な設定や世界観に浸ることも可能であった。
尚、本作はメディアミックスにあまり恵まれていない。本作とは違うストーリーを描いた小説『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス) 贖罪の断章』以外には、公式のサウンドトラックしか存在しないのだ。設定資料集すら、本作の予約特典冊子のみとなっているため、多くの作品愛好家によって設定資料集発売が望まれている。

『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)のあらすじ・ストーリー

『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)のストーリーは、ゲーム内コンテンツ名称・狂人達の「放浪記」(きょうじんたちのほうろうき)を追っていくことで確認することが可能。そして『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)のストーリーを全編クリアした後に、『SOUL SACRIFICE DELTA』(ソウル・サクリファイス デルタ)で追加されたシナリオに着手することができる。
以下、『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)から『SOUL SACRIFICE DELTA』(ソウル・サクリファイス デルタ)までで綴られたストーリーを解説していく。

『SOUL SACRIFICE』(ソウル・サクリファイス)

プロローグ

とある世界のとある大陸、そこは突如現れた不死の魔法使い・マーリンによって支配されており、彼は自らの命を長らえさせるために人々を生贄にし、殺し尽くしていた。主人公はその生贄になるべく牢獄に捕らえられてしまった人物。
そんなある日、隣の牢獄に捕らえられていた男が生贄にされそうになった際、突如魔法を発動させ、炎でマーリンの使い魔を追い払おうとした。健闘虚しく男は生贄にされてしまったが、彼が持っていた1冊の本が自身の傍へと落ちてくる。その本は喋り出し、自身をリブロムと名乗った。かつてマーリンの相棒だったというリブロムは、己の中に書かれたある魔法使いの日記を読み、追体験(ついたいけん)していくことで、その魔法使いが所持していた魔法と知識を受け継ぐことができると語る。マーリンを打ち倒し、逃げ出すための道は他にないと悟った主人公は、意を決してリブロムに手を伸ばし、その中身を読み始めるのだった。

ニミュエ:魔法使いの試練

リブロムを読み始めると、主人公の意識はある魔法使いと同化し、目を覚ます。
ある魔法使いは、魔法使いとして正式に活動を行うため、魔法使いを束ねる組織・アヴァロンの加入試験を受けていた。参加者の半数は死に至ると言われる試験は2人1組で行われ、相棒となった女魔法使いニミュエと出会う。横暴で暴力的、殺意をまき散らす彼女であったが、試験を進める中で、彼女と徐々に打ち解けていく。
しかしアヴァロンの加入試験に合格するためには、相棒となったものを殺害し、その命を生贄に捧げなければならない。ある魔法使いは激しく苦悩しながらもニミュエを殺害し、その命を右腕に取り込んだ。ニミュエの魂を取り込んだ腕は、彼女の感情や記憶、彼女の抱えていた全てを訴える。
後日、ある魔法使いは正式にアヴァロンに所属することとなり、殺戮衝動に飢える彼女の魂を抱え、血みどろの道を歩み出したのだった。

マーリン:あれから数年後

アヴァロンに所属してから数年後、ある魔法使いは相棒となった男性魔法使い、マーリンと共に魔法使いの活動を続けていた。
未来を垣間見るという能力を持ったマーリンは、その代償として3日間生贄を腕に取り込まなければ、急速に老いてしまうという症状を抱えている。ニミュエの魂が抱えていた殺戮衝動を満たすために魔物(まもの)を狩らなければならないある魔法使いと、生贄を欲すマーリン。相棒となり、共に戦うのには、ある理由があった。

マーリン:過去の因縁

過去、ある魔法使いとマーリンは敵対し、矛を交えたことがある。マーリンは自らの未来を垣間見る能力で、呪われた魔法使いが狂暴な魔物と化し、多くの命を奪うと見たのだ。その呪われた魔法使いがある魔法使いではないかと考え、その人物を殺そうと現れたのだった。しかし現れた人型魔物を討伐する中で、互いの身体が非常に難儀な物であり、その共通の願いが普通の身体になりたいというものであると知る。その願いを叶えるために必要なものが、万能の願望器と呼ばれる聖杯(せいはい)。願いに見合った代償を捧げることで、どんな願いでも叶えてくれるという代物。願いを叶えるために、聖杯を求めることにして相棒関係となった、ある魔法使いとマーリン。
そんなマーリンとある魔法使いの前に、かつてのマーリンの相棒だと嘯く女魔法使い、モルガン・ル・フェが現れる。相棒であり、旦那でもあったというマーリンとの心中を望み、ある魔法使いを妬む女だが、マーリン自身はそんな記憶を持ち合わせてはいなかった。ある魔法使いも、彼女の顔を見るだけで気分が悪くなり、右腕が疼くという症状に苛まれる上、かつて生贄にしたニミュエに顔が似ていることから、彼女と顔を合わせたくはない。しかし、奇妙な違和感や不気味さを持つ彼女は、マーリンとある魔法使いの旅路に、これからも立ち塞がることになるのだった。

マーリン:人としての残り時間

魔法使いは人間の魂を腕に取り込むことで力を強めていくが、その魂は徐々に宿主の意識や記憶を侵食していく。そしてその浸食に耐えられなくなって器が崩壊した際に、魔法使いは魔物に転じてしまう。これが魔法使いの寿命と言われていた。時折自らを支配する殺戮衝動を抑えられなくなってしまうある魔法使いは、自らが徐々に人の終わりに近づいていることを悟る。そして、ある魔法使いが魔物になる前に、マーリンは相棒を葬ろうと、その決意を固めていた。
そんなある時、魔物を討伐するために、流行り病で廃れた街を訪れた際、ある魔法使いは母親のことを思い出す。自分の母親は、この街に住んでおり、病が流行する前に街を出た、と聞かされていたのだ。ある魔法使いが母親の記憶を思い出している中で、再び現れるモルガン・ル・フェ。しかし彼女が語った街の話は、ある魔法使いの言う母親のそれと、全く同じである。モルガン・ル・フェと己の母親、不自然な繋がりを感じながら、マーリンとある魔法使いは旅を続けていくことになった。

マーリン:終わりの始まり

殺戮衝動が抑えられなくなることが増えてしまったある魔法使いは、その衝動のまま行動することが多くなってしまい、ついにアヴァロンから殺害対象として認定されてしまう。アヴァロンからの刺客が放たれるものの、ある魔法使いはその刺客すらも退け、諫めるマーリンの声にも耳を貸さない。魔物に近づいていく相棒を殺すため、マーリンはある魔法使いと対峙するが、戦いの最中に突如モルガン・ル・フェが現れる。しかし実はこの戦いはモルガン・ル・フェを誘き寄せるための芝居だったのだ。己とマーリンに浅からぬ因縁を持ち、己の中で衝動をまき散らすニミュエの呪いを解くために必要不可欠な存在こそが、モルガン・ル・フェ。彼女を見ると殺戮衝動が収まらないのも、彼女と己の母親がダブってしまったのも、全てはニミュエの母がモルガン・ル・フェであったからだったのだ。ニミュエは自らが異常な生まれをしたことを知り、まともな世界全てや、母親に対して強い憎悪や殺意を抱いていた。
その原因は、全てモルガン・ル・フェにある。モルガン・ル・フェはかつてマーリンに捨てられた後、酷い孤独感に襲われ、聖杯を用いてニミュエを創造したのだが、ニミュエはその出生を知り、絶望し、世界の全てを恨むようになったのだった。そんなニミュエの魂に引っ張られたため、ある魔法使いはモルガン・ル・フェを母親だと思ってしまったのだという。娘への執着を刺激され、激昂し、魔物となって襲い掛かってきたモルガン・ル・フェを打ち倒したある魔法使いとマーリン。ある魔法使いはニミュエの魂の本懐を遂げさせるため、マーリンはモルガン・ル・フェの抱える真実を知るために、その魂を生贄に捧げることとしたのだった。

マーリン:そして記憶が残った

モルガン・ル・フェの魂を取り込んだある魔法使いからは、ニミュエの殺戮衝動が消失する。しかし、彼女から獲得した魂と記憶によって、マーリンはある真実を知ってしまった。かつてマーリンという魔法使いがおり、彼は不老不死を保つために人間を生贄にしていたが、ある無名の魔法使いがマーリンを打ち倒した。無名の魔法使いは犠牲になった人を取り戻すため、聖杯にマーリンの肉体を捧げ、世界を元通りに修復する。しかし、マーリンを生贄にした無名の魔法使いはマーリンの呪いを受け、記憶を侵食され、そして不老不死の特性を得た。それら全てを生まれつきだと思い込んだ無名の魔法使いは、徐々にマーリンに潰され、自身が殺したマーリンになっていく。知ってしまったマーリンは、相棒の前から姿を消してしまった。
マーリンの跡を追うある魔法使いは、老人のような姿となってしまったマーリンを見つけ出し、彼に生贄を与える。マーリンの記憶に浸食され、自分を見失ったマーリンに対し、ある魔法使いはそんなことは関係ないと、彼を大切な相棒と呼び、一喝した。そんな中で突如、マーリンが狂ったように笑い始める。その理由は、彼の前に現れたという聖杯であった。マーリンの欲望と、それに見合うだけの代償が現れたという証左。相棒を生贄にすれば、マーリンの願いは叶う。マーリンはその欲望を叶えるため、相棒である魔法使いを殺すことに決めたのだった。
戦いはある魔法使いに軍配が上がるが、ある魔法使いはマーリンのために自ら生贄になることを選ぶ。しかし、結局マーリンはある魔法使いを生贄にすることなく、どこかへ立ち去ってしまう。その直後、世界は突如おかしくなり始めてしまった。マーリンの中にあった不死の魔法使いマーリンが、彼を完全にマーリンにしてしまったのだ。生贄を求め、人々を捉えては殺す不死の存在となったマーリンを止めるため、ある魔法使いは最早面影もないかつての相棒のもとへと辿り着く。相棒に人間としての死を与え、自らも後を追うことを決意したある魔法使いだが、その力は圧倒的。そのまま死を迎えるかと思ったある魔法使いであったが、なんと不死の化け物は肉塊となったある魔法使いに血を注ぎ、蘇生させてしまう。
殺されては蘇り、蘇っては殺される、そんな戦いが何年も続くうち、ある魔法使いの身体は人型を保てなくなってしまった。そして、マーリンの周囲には生贄に捧げるための人間たちと、それを捕らえるための檻で埋め尽くされていく。ある魔法使いは、そこにいる人間たちにこの思いを、記憶を伝える為に、自らの身体を代償として、1冊の本となった。ある魔法使いは、リブロムであったのだ。

エピローグ:マーリンを生贄にする分岐

リブロムの内容を読み終えた主人公は、最後にリブロムを生贄に捧げる。そして、本の中に綴られていたある魔法使いことジェフリー・リブロムの意思を全て継ぎ、その力を自らの中に蓄えた。
変貌したマーリンに挑んだ主人公とリブロムは、とうとう呪われた魔法使いマーリンを打ち倒すことに成功する。そして彼を生贄にし、聖杯に世界の再生を願う。
無名の魔法使いとマーリンの逸話をなぞるようにして、世界は再生し、平和が訪れる。しかし、その逸話の通りならば、主人公はマーリンと同じように呪われ、その身を侵されてしまう。だが主人公は、何かを犠牲にできる程強い意志を持てば、未来は変えられると信じていた。

エピローグ:マーリンを救済(きゅうさい)する分岐

リブロムの内容を読み終えた主人公は、最後にリブロムを生贄に捧げ、その魂と知識、そして力をその体内に取り込む。そうして変貌したマーリンと対峙し、主人公は右腕に宿ったリブロムと共に、その呪われた存在を討伐する。しかし、主人公はマーリンを生贄にはせず、その左腕を差し出して救済を行う。リブロムの意思を取り込んだ主人公は、相棒を生贄にすることができなかったのだ。
しかし救済したマーリンの意識はそう長くは保たず、再び呪われた不死の魔法使いへと変貌してしまう。そのたびに主人公とリブロムはマーリンと戦い続けていたが、それも最早限界を迎え、主人公の身体も徐々にリブロムと同じ本となる。しかし、主人公はリブロムと同じように、自らの意思を継いでくれる人間が現れることを信じていた。そしてその人物が、未来を変えてくれるとも。

『SOUL SACRIFICE DELTA』(ソウル・サクリファイス デルタ)

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