罪か癒しか?『火の鳥』各編の女性キャラ抜粋

手塚治虫氏未完の大作『火の鳥』。永遠の命、愛、名誉。種々の欲望入り乱れるこの物語を、火の鳥同様に彩る女性陣をまとめました。

『火の鳥』という作品

手塚治虫氏の代表作の一つ。漫画家としての初期から晩年に至るまでの「ライフワーク」でもありました。「血を飲めば永遠の命が手に入る」という伝説を持つ火の鳥を巡る物語。単純に言えばそうなりますが、スケールと言い扱われるテーマと言い、壮大の一言に尽きます。愛、命、罪などが主なテーマ。手塚氏が何度も加筆修正を加えた結果、雑誌掲載時、COM版、角川版、朝日ソノラマ版、文庫版などで、ストーリーの展開や結末に違いが見られることも。氏の作品ではよくあることですが、「違いを楽しむ」のも一興。詳しくは記事内で一部記述。

徐々に現代に近づき『現代編』で完結する予定だったのが手塚氏の逝去により、実質『太陽編』で終わっています。ただ日中戦争を描く『大地編』がプロットだけは存在しているとの話があり、噂ではあるが「ブラック・ジャックやアトムが登場する『アトム編』が描かれる予定だった」との情報も。なお、『ブラック・ジャック』に火の鳥にまつわるエピソードが存在します。手塚氏は生前、「現代という時はなく、もし『現代編』を描くことがあるとすれば、自分が死ぬ時だ」といった主旨の言葉を遺していました。なお、『現代編』は一枚絵の予定だったが、結局描かれることはありませんでした。

火の鳥

全編通して超常的存在として描かれる、超生命体。編によってはテレパシーで話したり、人型をとったりするが、登場すらしないこともあります。罪業を成した人物に非情ともいえる制裁を与えることもあれば、気まぐれ的に慈悲を施すことも。「コスモ・ゾーン」と呼ばれる命の集合体とのことですが、大概の編では「永遠の命をもたらす」鳥として人間に狙われる身です。怒ると体から炎を発する、誰にも捕まえられない、と伝承されます。『黎明編』では自分を狙い飛びかかったウラジを焼き殺していました。

『ギリシャ・ローマ編』

【ストーリー】古代エジプトからギリシャ神話のトロイ戦争を経てローマ時代までを描いたもの。『少女クラブ』に掲載されたもので、全体的に少女向け。冒頭で火の鳥は天界にて飼われる「籠の鳥」状態。転生する魂と共にこっそり抜け出します。そのことを知った神が、火の鳥の遁走で人間たちが争うことを危惧していました。事実、火の鳥の血を巡る争いは絶えず、火の鳥自身人間に愛想を尽かすほど。この編では火の鳥の血で3000年生きられるという設定。母から娘へと力が継承されるが、そのためには母が文字通り身を焼かなくてはならないなど、ショッキングなシーン、設定もありました。

ダイア

奴隷の娘ですが、歌声も容姿も極めて美しく、それが為に苦労が絶えません。元はエジプトの出身でしたが王子に愛されます。火の鳥捕縛の為王子のお供をしますが、卵を拾ったことで運命が激変。元々エジプトの王を救うための火の鳥退治(卵のお礼と称しついてきた)でしたが間に合わず。王子とダイア自身が血を飲ませられます。王妃(後妻)の計略で王子が永い眠り(つまり仮死状態)についた時自身も後を追うように眠りにつくのでした。その後火の鳥の「世代交代」が描かれダイアはナイル川を流されてトロヤ兵の船に拾われます。

記憶を失った状態で、敵国スパルタに打ち上げられそこの兵士となった王子と再会。「何か見覚えあるな」と思いつつ惹かれ合うのですが、「兄妹」という認識を抱くようになるのでした。以降、王子はクラブという名を名乗っています。トロイ戦争の元になった絶世の美女ヘレネも登場しますが、ダイアの美貌はヘレネ自身が負けを認めるほど。殺されそうにもなりましたが、男装してクラブ共々トロイ戦争に参加。ここで再び「永い眠りについた」後今度はローマ皇帝に火の鳥を献上する羽目になりました。火の鳥の計略でクラブが次の皇帝になることが示唆されてハッピーエンド。

『黎明編』

【ストーリー】弥生時代辺り。主人公はナギという少年。義兄のウラジが姉であるヒナクの病を治すべく火の鳥の血を得に行き、亡くなったことから、いつか火の鳥を捕らえようと心に決めるのでした。漂流者グズリが医学知識を持っていたことからヒナクは完治。グズリはクマソに歓迎されますが、彼は火の鳥の血を狙う倭(邪馬台国)のスパイでした。

ヒナク

主人公、ナギの姉。病を治してくれたグズリと再婚しますが、彼がスパイであること、彼の手引きによってクマソの民が殺されたことを知り、一時は拒むように。しかし噴火に巻き込まれたところを助けられたこと、グズリが国を捨て自分を選んだことなどから再び夫婦生活を取り戻します。

子供にも恵まれはしましたが、火山噴火に伴う地震や地割れにより子供を二人ほど亡くし、動物たち共々洞穴に閉じ込められてしまいます。精神を病むなどしましたが、成長した息子の一人がラストを飾りました。妻となる女性を探す目的で外の世界へ出る(妹との近親結婚を避ける)為、洞穴を囲む断崖を、葛藤の果て上りきるシーンが描かれて、この編は終了するのでした。

ヒミコ

呪術で国を治める邪馬台国女王。既に初老と言ってもいい年齢で、若く美しかった頃へ戻りたいがため火の鳥討伐の命令を出し、ナギたちの村を襲わせた張本人。弟の名が「スサノオ」である点、皆既日食が起こる点など天照大神を想起させますが、劇中では神でも呪術を持った者でもなく、ただの人間として描かれていました。弓の名人が火の鳥を捕まえ首を切り落とした状態で持って来ますが、血を飲むことなく死亡。

アニメ版のヒミコ様。弟の目を潰して追放します。

ウズメ

えどまち
えどまち
@edono78

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