オー！マイ・ボス！恋は別冊で（ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『オー！マイ・ボス！恋は別冊で』の概要

『オー！マイ・ボス！恋は別冊で』とは、2021年1月12日から同年3月16日まで、TBS系の「火曜ドラマ」枠で放送された連続ドラマ作品である。略称は「ボス恋」。主人公・鈴木奈未（すずき なみ）を演じた上白石萌音は、2020年放送のドラマ『恋はつづくよどこまでも』以来1年ぶりに同枠ドラマに帰ってきた。また、子犬系御曹司のフリーカメラマン・宝来潤之介（ほうらい じゅんのすけ）を演じた玉森裕太や、鬼編集長・宝来麗子（ほうらい れいこ）を演じた菜々緒とは本作で初共演を果たした。主題歌を務めたのは、玉森が所属している人気アイドルグループ・Kis-My-Ft2。

脚本は、ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』『ボーイフレンド降臨』などを手掛けた田辺茂範（たなべ しげのり）が、編成はドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』『君の花になる』などを手掛けた宮崎真佐子（みやざき まさこ）が務めた。この2人は前述の『恋はつづくよどこまでも』でもタッグを組んでおり、上白石同様、スタッフ陣も再集結して同枠ドラマに帰ってきた。

「仕事も恋も普通が一番」「人並みで普通の幸せを手にしたい」と思っている奈未が、東京の大手出版社に採用されたはいいものの希望していた備品管理部ではなくファッション誌の編集部に配属されてしまうところから物語は始まる。そこで出会った最年少編集長・宝来麗子の雑用係に任命されるのだが、麗子はバリキャリで奈未とは正反対。毒舌で冷徹な麗子から出される無理難題に最初は「ありえない、辞めてやる」と思っていた奈未だったが、麗子の仕事に対する姿勢と情熱を一番近くで見ているうちに、次第に仕事への意識が変わってくる。そんな奈未にさらなる変化をもたらすのが、街で偶然出会った御曹司の潤之介だ。子犬系男子の潤之介に「彼女のふりをしてほしい」とお願いされ、つい了承してしまったことから何かと接点を持つようになる。鬼上司にも子犬系御曹司にも振り回され、望んでいた“人並み”とは程遠い毎日に頭を悩ませながらも、自分のやりたいことや夢を見つけ、生まれ変わっていく奈未の姿は多くの視聴者に勇気を与えた。

本作はサクセスストーリーでもありながらラブコメ要素も満載で、潤之介の胸キュンな仕草や言葉は毎話SNSを賑わせた。毎週世界トレンド1位になるほど反響は大きく、同枠ドラマでは『私の家政婦ナギサさん』以来3作ぶり、史上4作目となる全話視聴率2桁越えを記録した。また、モデルプレス読者が選ぶ「2021年最もハマっているドラマランキング」で第1位に選ばれ、第107回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では菜々緒が助演女優賞を、主題歌であるKis-My-Ft2の『Luv Bias』がドラマソング賞を受賞した。

人並みを求めることは決して悪いことではないが、自分の仕事に誠心誠意向き合い、努力し続けた先に見える特別な景色もきっと悪くないのだろう。「人並み“が“いい」のではなく「人並み“で”いい」と思っているうちはもう少し頑張ってみるか、と思わせてくれる作品だ。

『オー！マイ・ボス！恋は別冊で』のあらすじ・ストーリー

潤之介との出会い

熊本で生まれ育ち、片想い中の幼馴染・日置健也（ひおき けんや）を追いかけて上京してきた鈴木奈未（すずき なみ）。「仕事も恋もほどほどに。人並みで普通の幸せを手にしたい」という安定志向の持ち主で、大手企業である音羽堂（おとわどう）出版の備品管理部の面接を受けることに。しかし面接前にペンキが塗りたてのベンチに座ってしまいスーツが台無しになってしまう。すると偶然居合わせたフリーカメラマンの宝来潤之介（ほうらい じゅんのすけ）が服を買えるお店まで案内してくれ、おしゃれなセットアップのスーツまで選んでくれたのだ。そのおかげで面接は無事受けることができたが、結果は不採用。しかし潤之介が選んでくれたスーツが雑誌編集部の人の目に留まり、編集部で採用されることに。そして新たに編集長に就任した宝来麗子（ほうらい れいこ）の雑用係に任命された。右も左も分からないままファッション誌『MIYAVI（みやび）』の創刊に向け麗子の雑用係として頑張る奈未だったが、ずっと片想いしていた健也から婚約者を紹介され落ち込んでしまう。そんな奈未に追い打ちをかけるように、また無理難題を押し付けてくる麗子に我慢の限界が来てしまい、「これじゃ召使い。私は人並みの仕事がしたい。」と告げた奈未。何もかもうまくいかず涙を流していると、奈未の前にまたもや潤之介が現れ、バイクでドライブに連れていってくれた。潤之介のおかげで少し気持ちが落ち着いたところへ、同僚の編集アシスタント・和泉遥（いずみ はるか）から撮影で使うためのバラを間違えて発注してしまったと連絡が。結局バラ園でのロケ撮影に変更するしか手がなく、翌日、奈未と同僚の編集部員・中沢涼太（なかざわ りょうた）がバラ園のスタッフに撮影交渉をすることに。するとそこに麗子がやってきて、スタッフを労いながら土下座までして撮影交渉を行い、撮影は無事行われることになった。この麗子の熱意に心を動かされた奈未は仕事を続けることを決意。それを潤之介に伝えお礼を言うと、「今度は俺のお願い聞いてくれる？俺の彼女のふりをしてくれない？」と頼まれてしまう。潤之介はしつこくお見合いを勧めてくる母・宝来香織（ほうらい かおり）につい「彼女がいる」と嘘をついてしまっていたのだ。色々と助けてもらったお礼にと了承した奈未だったが、後日、姉として紹介されたのがまさかの麗子だった。

仕事も恋もドタバタ

その場しのぎの嘘を重ね、なんとか麗子との顔合わせを乗り切った奈未。しかしその時についた「けん玉チャンピオンだ」という嘘が裏目に出てしまい、けん玉が趣味の人気漫画家・荒染右京（あらぞめ うきょう）の元へカルチャー企画の交渉に行くよう命じられてしまう。一度は交渉に失敗したものの奈未は猛特訓し、荒染はそんな奈未に心打たれ無事交渉は成立。仕事にやりがいを感じた奈未はあらゆることから逃げるのをやめると決意し、潤之介にも「恋人のふりを終わらせたい」とちゃんと伝えたのだ。すると潤之介から自分の写真展のチケットを渡され、「俺のこと嫌いじゃなかったらこれに来て？」と言われてしまう。次の日になってもどうしようか悩んでいる奈未を他所に、編集部ではモデルで柔道家の瀬尾光希（せお みつき）のインタビュー記事を小早川佐和子（こばやかわ さわこ）のインタビュー記事に差し替えると麗子が突然言い出し社員は困惑していた。特に瀬尾のインタビューを担当した中沢は猛反発し出社を拒否するようになり、それに続くように他の社員たちも「編集長にはついていけない」と出社してこなくなってしまった。変わらず出社していた奈未は中沢の集めた資料全てに目を通し、瀬尾が自分の父の記録である7連覇を塗り替えるために、完治していない肩の故障を隠していることに気がついた。奈未は中沢と共に瀬尾の元へ行き想いをぶつけると、瀬尾は嘘をついていたことを認め謝罪した。実は麗子もこのことを見抜いており、そのまま掲載してしまうと瀬尾の選手生命を縮めてしまうと思い、記事の差し替えを決断したのだ。中沢は反省して麗子に謝罪し、他の社員たちも全員編集部に戻ってきた。一仕事終えた奈未は潤之介の写真展に行くことに。潤之介の写真に対して「変な写真ばっかりですよね」と笑いながら正直な感想を言う奈未。すると潤之介は奈未を引き寄せ、額にキスをした。これまでお世辞の感想しかもらってこなかった潤之介は、奈未の素直な感想がとても嬉しかったのだ。

ライバル出現

潤之介と星を見に行く約束をした奈未。しかし当日、潤之介のアシスタント・尾芦一太（おあし いちた）から、潤之助は海外にいる幼馴染に片想いしていると知らされる。奈未はショックで潤之介の元へは行かず家に帰ったのだが、どうしても気になって待ち合わせ場所に向かうとそこには雨の中奈未を待っている潤之介の姿が。待たせたにも関わらず、怒らずに「来てくれてありがとう」と言う潤之介に奈未は思わずキスをした。そして雨に濡れた潤之介を奈未の家に連れて帰ると、潤之助は奈未に「好きだよ」と言いそのまま寝てしまう。その日から、潤之介に「好きだよ」とは言われたものの「付き合おう」とは言われていないし、そもそも姉は麗子だしで頭の中は潤之介のことでいっぱいの奈未。そんな中、潤之介の家で麗子と遭遇し、麗子は奈未が偽装彼女だと見抜いていたことを知る。そこで「まずは麗子に認めてもらうところから始めないと」と思った奈未は、「私は潤之介さんのことが好きです」と麗子に宣言した。すると「あなたに恋と仕事両立できると思ってるの？」と言われてしまい俄然やる気を出した奈未。和泉が任されていた、バイオリニスト・蓮見理緒（はすみ りお）の取材用のドレスをスタイリストに届ける、という仕事も自分が代わると言い、さらに社内報の担当にも立候補した。ドレスの件では少しトラブルもあったが無事に撮影を終えることができ、社内報も麗子のOKをもらえた奈未。そして奈未が告白の言葉を待っていることにようやく気づいた潤之介は想いを伝えようと奈未の元へ向かったのだが、奈未の隣には理緒の姿が。実は今回の取材を通して、奈未は理緒と恋愛相談をするほど仲良くなっていたのだ。潤之介がずっと片思いしていた幼馴染が理緒だと知った奈未は2人を避けるようになってしまう。電話もLINEも無視され続けた潤之介は痺れを切らして奈未の家を訪ね、「避ける理由を教えてくれるまで帰らない」と言い、なぜか2人の半同棲生活がスタートする。

まさかの四角関係

突然の半同棲生活に戸惑いながらも仕事をこなし続け、ついに雑用係を卒業して編集アシスタントへ昇格した奈未。さらに、偶然撮影で一緒になった潤之介に「俺の彼女」と紹介してもらえて気分は最高潮。一方で理緒は「音楽家ジストニア」という脳神経疾患を患っており、過労で倒れた麗子のお見舞いに来ていた潤之介と病院で遭遇。その後2人は食事に行き、そこで初めて理緒の病気のことを知った潤之介。「いつかバイオリンが弾けなくなるかもしれない」と泣きながら抱きついてきた理緒を、潤之介は優しく抱きしめ返した。そんな2人の様子をたまたま見てしまった奈未。ショックを受け、家ではなく編集部に向かい、まだ残って仕事をしていた和泉に泣きながら見たままを話した。和泉が帰ってからも気を紛らわすために仕事を始めた奈未。そんな奈未の元に中沢がいきなりやってきたかと思ったら「俺、お前のこと好きだわ」とまさかの告白。実は、さっきの和泉との会話を中沢は聞いていたのだ。そして奈未に告白する少し前に潤之介に会いに行き、「あんたがそんなんなら、俺遠慮しないから。」と宣戦布告までしていた。中沢に返事をしないままどこか避けるようになっていた奈未だったが、編集部揃って仕事で長野に行くことになり、そこで和泉に「誰とずっと一緒にいたいのかよく考えて」と言われ自分の中沢への態度を反省。ちゃんと返事をしようと決めた矢先、奈未は潤之介からもらったブレスレットを失くしてしまう。編集部の皆には先に帰ってもらい1人で探していたのだが、なんと中沢も探しに戻ってきてくれた。しかし2人で必死に探すも見つからず、終バスまで逃してしまい長野で一泊することに。その頃、ようやく奈未を不安にさせていたことに気がついた潤之介は会社の前で奈未の帰りを待っていたのだが、偶然通りかかった奈未の同僚・和田和美（わだ かずみ）から、奈未が中沢と長野で一泊することを聞かされる。潤之介は急いでバイクで長野へ向かい、翌日の朝、無事に旅館前で奈未と会うことができた。そして2人は想いを伝え合い、ようやくちゃんと結ばれた。その様子を見た中沢は、奈未の鞄の横にそっと失くしたはずのブレスレットだけを置いて立ち去った。中沢は奈未のブレスレットを一晩中探してくれていたのだ。

『MIYAVI』存続の危機

潤之介と順調に交際中の奈未。中沢にもブレスレットのお礼と告白の返事をちゃんと伝え、2人は良き仕事仲間へと戻った。その頃社内では、売上部数が伸び悩む『MIYAVI』の廃刊を阻止するべく編集部一丸となって奮闘していたのだが、麗子のパワハラ疑惑の記事が週刊誌に掲載されてしまう。パワハラ騒動はなんとか落ち着いたものの、結果的に『MIYAVI』は大ヒットを生み出すことができず廃刊が決定した。さらに音羽堂出版の吸収合併も決まり、落ち込む奈未。一方で、潤之介はコンクールの結果が上手くいかず、引退して宝来グループを継ぐことにしたのだが奈未になかなか言い出せずにいた。しかし覚悟を決め、落ち込む奈未をデートに誘った潤之介。そこでプロポーズと同時に、一緒に金沢に来てほしいと伝えた。奈未は驚いたがプロポーズを受け入れ、翌日、晴れやかな気持ちで出社すると編集部に麗子の姿は無かった。実は『MIYAVI』がコラボした化粧品が反響を呼び、大手ブランドからのコラボ依頼が殺到したため音羽堂出版の合併先は『MIYAVI』を存続させるしかなく、廃刊を免れていたのだ。しかし、存続の条件は麗子を編集長から解任すること。麗子は『MIYAVI』を編集部員に託し、備品管理部へ異動した。そうして『MIYAVI』は新体制で始動したのだが、新しい編集長が路線を変えると言い出し編集部員たちは困惑。奈未も頭を悩ませる中、理緒が奈未の元へ結婚を祝福しに来てくれた。しかし仕事の話になり、奈未が「仕事の楽しさがやっと分かってきた」と本音をこぼすと、理緒は「自分の夢に蓋をしたら潤ちゃんが悲しむ。未練があるなら余計に潤ちゃんを悲しませるよ。」と厳しくも愛のある言葉をかけてくれた。そこで奈未はようやく自分の夢を自覚し、潤之介にも涙ながらに打ち明けた。潤之介は奈未の気持ちに本当は気づいており、「奈未ちゃん、元気でね。」と去っていったのだった。

それぞれが選んだ未来

潤之介への気持ちを吹っ切れないまま仕事に励んでいた奈未。新しい編集長は辞任し、副編集長だった半田進（はんだ すすむ）が編集長として奮闘した結果、なんとか新生『MIYAVI』の創刊号を編集部全員で作り上げることができた。麗子の教えを全て出し切った新生『MIYAVI』を奈未や副社長・宇賀神慎一（うがじん しんいち）の説得でようやく見た麗子は、その内容に心を打たれ編集部へと戻ってくる。再び麗子の雑用係に戻り、創刊号の発売に向けて気合いの入っていた奈未の元へ尾芦から電話が。尾芦は今まで潤之介が撮った写真を処分するようにお願いされていたのだが、潤之介には内緒で貸し倉庫に保管しておいてくれたのだ。奈未はその写真を見せてもらい、潤之介との最後のデートの日に「潤之介さんには笑っていてほしい」と伝えた。無理に家を継ごうとしていた潤之介は奈未の言葉を聞いてやっぱり写真で生きていくことを決意し、カンボジアのNGOでカメラマンをしながらもう一度写真の道に進むことに。「奈未ちゃん、待っていてくれる？」と問いかける潤之介に、「いつまでだって待ってます」と返した奈未。2人は抱きしめ合い、潤之介はカンボジアへと旅立った。そして麗子も、「今度は自分が作りたい雑誌を作る」と辞表を提出し、新たな一歩を踏み出したのだった。

3年後、奈未は『MIYAVI』編集部を辞め、宇賀神が立ち上げた会社で変わらず編集長として雑誌を作り続ける麗子の元で再び働くことに。そしてサプライズ帰国した潤之介とあのベンチで再会し、キスを交わしたのだった。

『オー！マイ・ボス！恋は別冊で』の登場人物・キャラクター

主要人物

鈴木奈未（すずき なみ / 演：上白石萌音）

熊本で生まれ育ち、片想い中の幼馴染・日置健也（ひおき けんや）を追いかけて上京。「仕事も恋もほどほどに。人並みで普通の幸せを手にしたい。」という安定志向の持ち主。音羽堂出版の備品管理部の面接を受けるも何故かファッション誌『MIYAVI』の編集部に配属され、鬼編集長・宝来麗子（ほうらい れいこ）の雑用係に任命される。さらに街で偶然出会ったフリーカメラマン・宝来潤之介（ほうらい じゅんのすけ）からも衝撃の提案をされ、仕事にも恋にも振り回されることに。

宝来麗子（ほうらい れいこ / 演：菜々緒）

雑誌『MIYAVI』の編集長で、奈未の鬼上司。仕事第一のバリキャリで、雑誌『マリ・クレール』でヨーロッパ初の日本人編集長として30歳の若さで就任。『MIYAVI』創刊のためにパリから帰国した。麗子が笑う時はお金が動く時と言われており、その笑顔は「悪魔の微笑み」とも呼ばれている。音羽堂出版の副社長・宇賀神慎一（うがじん しんいち）のことが気になっている。