地球を呑む（手塚治虫）のネタバレ解説・考察まとめ

アメリカのとある場所にある涸れた石油井戸の近くに暮らす青年。没落して死んでいった父親の遺志を継いで、出ることのない石油を求めてボーリングを続けている。ある日、大量の水と黄金を掘り当てたことから人生が一変した。しかし、その黄金はゼフィルスの持ち物であり、調査に来たリーザと出会い彼女に恋をする。世界恐慌の喧騒に巻き込まれて、リーザとともに亡くなった。

マナベ

エール市民病院に勤める青年医師。専門は精神科で、世界恐慌の影響で入院患者が爆発的に増えている現状を憂いている。健忘性失語症を患った女性患者ジャネット・バルーンに恋をしており、彼女を治すためにお互いの脳波を交流させるという危険な治療を行った。その結果、死亡したジャネットと脳内で結婚したが、それをメンタル面の異常と取られてしまい彼自身が入院するという悲劇が起きた。

ジャネット・バルーン

マナベの病院に入院している女性患者。後天的な要因で健忘性失語症を患っていて、マナベの治療法を受け入れた。しかし、彼との脳波の交流後に、思い出したくない出来事がフラッシュバックしてしまい、衝動的に病院の窓から飛び降りて死亡した。

老婆（ろうば）

日本のとある山奥で1人暮らししている老婆。自宅に辿り着いた五本松とミルダを追い出そうとしたが、ミルダが家に住みたがっていることを知ると、五本松に自家製の芋焼酎を振舞った。そして、跡継ぎができたと喜び、夫の頭蓋骨とともに予め掘っていた墓穴に入って自ら土をかけて生き埋めになった。

『地球を呑む』の用語

ゼフィルス

ゼフィルスとは、『地球を呑む』に登場する絶世の美女キャラクターである。元々は夫に裏切られた女性の名前を指しており、彼女が7人の娘たちに世界へ対する復讐を吹き込んだことで、彼女たちがゼフィルスの名前と顔を用いて世の中の男性たちを手玉に取った。7人の娘たちは、人工皮膚のデルモイドZを使って母親そっくりの美女に化け、その一方で母親に酷似したダッチワイフを準備した。そして、誘惑した男性に幻覚剤を飲ませて、ダッチワイフを抱かせることで快楽の世界へと誘ったのだ。ところが、唯一関五本松だけにはこの手法が通じず、ゼフィルスの計画に小さな綻びを作ることとなる。

マムウ共和国（マムウきょうわこく）

マムウ共和国とは、『地球を呑む』に登場する架空の国である。同国は太平洋のどこかに浮かんでいる孤島であり、そこにゼフィルスの7人の娘たちとその下僕たちが住んでいる。また、この国には母親のゼフィルスの遺体がそのままの形で棺に保管されており、娘たちが事あるごとに訪れる神殿のような場所になっていた。世界恐慌、そして世界が崩壊した後では、町や酒場が形成されていることが示唆されたが、この場所を一番古臭いと感じていた関六本松によって滅ぼされたのである。

デルモイドZ

デルモイドZとは、『地球を呑む』に登場する人工皮膚で、開発・製作者はモンテ・クリトスである。合成樹脂で作られており、人間の毛穴まで緻密に再現されている。デルモイドZを被ることで簡単に別人になることができ、モンテ・クリトスから無償で技術提供を受けた安達原コンツェルンによって瞬く間に世界中へ広まった。また、顔ばかりでなく全身用のデルモイドZもあり、これが犯罪の爆発的増加を招いて世界を混乱に陥れる一因となったのだ。欠点は、デルモイドZを身に着けていると入浴ができないため、定期的にクリーニングを行う必要があることである。

『地球を呑む』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

関五本松「うわっ！！こりゃァすごく精巧なダッチワイフじゃんか！？」

『地球を呑む』に登場するゼフィルスは、その美貌と卓抜した性的テクニックを利用して、男性を骨抜きにすることで世界への復讐計画を遂行していた。しかし、稀代の大酒飲みの関五本松は、ゼフィルスが仕込んだ幻覚剤が効かず、また彼女の美貌にも無反応だった。五本松はゼフィルスの誘惑にトリックがあることに気がつき、実は男性がダッチワイフを抱かされていることを突きとめた。その時、彼は驚きの表情を浮かべて、「うわっ！！こりゃァすごく精巧なダッチワイフじゃんか！？」と呟く。このセリフは、後の五本松とミルダの関係のきっかけとなった名言だと評されている。

ゼフィルス「あなたたちが大きくなったらね、これだけは…お願いよ…復讐しておくれね」