プレステージ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『プレステージ』とは2006年に公開されたアメリカの映画である。監督はクリストファー・ノーラン。主演をヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールが務める。第79回アカデミー賞において撮影賞と美術賞にノミネートされた。1995年に発売されたクリストファー・プリースト作の小説『奇術師』が原作となっており、2人の奇術師による因縁の戦いが描かれている。彼らのショーの舞台裏で起きていることを観客は知らない。映画には様々な仕掛けが施されており、人知を超えた世界へと誘われていく。
『プレステージ』の概要
『プレステージ』とはクリストファー・ノーランにより2006年に公開されたアメリカの映画である。主演をヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベールが務め、第79回アカデミー賞にて撮影賞と美術賞にノミネートされた。1995年に発売されたイギリス人作家クリストファー・プリーストの代表作『奇術師』が原作となっている。
2人の奇術師、ロバート・アンジャーとアルフレッド・ボーデンが主人公の物語である。まだ見習いであった頃、2人同じ師匠の元で腕を磨き互いを尊敬し合っていた。しかしある事件をきっかけに彼らは憎悪にまみれ、蹴落とし合うようになっていく。師匠の元で助手をしていたアンジャーの妻ジュリア・マッカローが、本番中ボーデンのミスにより溺死してしまったのだ。この事件が発端となり、妻を失ったアンジャーは激しくボーデンを憎むようになった。やがてアンジャーはボーデンの殺害や、手品の盗み、ボーデンの周りの人物にまで危害を加えるようになっていき、アンジャーは何かに取りつかれているかのように暴走していく。対照的な2人の奇術師による戦いは、人々に感動を与えるステージ上の姿とは異なり、惨く深い闇に覆われた者同士のドス黒い戦いであった。全てを犠牲にし奇術師として生きている2人だが、心の奥底に秘めているものから対照的な2人が描かれている。複数の時間軸を行き来しながら、彼らのタネが明かされていく。アンジャーとボーデンの手品、そしてノーラン監督による手品を通して奇術師たちの憎しみにまみれた争いの中、我々は何を見出すのか。想像を絶する仕掛けが用意されていた。
『プレステージ』のあらすじ・ストーリー
アンジャーの溺死
時代は19世紀末のロンドン。奇術師ロバート・アンジャーのステージから始まる。同じ師匠をもつ奇術師のアルフレッド・ボーデンは舞台下に忍び込み、アンジャーの手品のタネを暴こうとしていた。ボーデンの目の前には2人にとって苦い過去をもつ大きな水槽が置かれている。ステージ床の隠し穴から落下してきたアンジャーはなんと、そのまま水槽に落下し溺死してしまったのだ。そばにいたボーデンは殺人の容疑で、そのまま逮捕されてしまう。もちろんボーデンはアンジャーを殺してはいない。しかし2人の過去にはボーデンが殺してもおかしくない、憎悪にまみれた過去が存在していたのである。
アンジャーとボーデンが互いに憎み合うようになった事件
場面は数年前に遡る。奇術師ミルトンの元で、アンジャーとボーデンがまだ修行をしていた頃のことだ。彼らは互いを尊敬し合う関係であった。そして水槽から脱出する手品で、2人は仕掛け人として観客に紛れ、ステージに上がりアンジャーの妻であるジュリア・マッカローの手首と足首をロープで縛る役割を担っていた。ジュリアは縛られた状態で水槽に飛び込み、スルリと縄を解いて脱出するはずだったが、ボーデンが誤って縄を二重結びにしたことでジュリアは解けなくなってしまう。水中で縛られたまま彼女は脱出することができず、溺死したのであった。この時、どのように結んだのかをボーデンは覚えていないと言う。アンジャーの怒りは爆発し、ここから2人の戦いが始まるのであった。復讐に取りつかれたアンジャーはボーデンを殺そうとする。当時人気を得ていたボーデンの手品「銃弾掴み」のトリックを見破ったアンジャーは、ボーデンの舞台の客席に紛れ、彼に銃弾を撃ち込んだ。ボーデンは間一髪死ぬことはなかったものの、この銃弾が原因で薬指と小指を失った。以来互いに激しく憎み合うようになっていく。しかしアンジャーはボーデンの指を2本奪ったにも関わらず、まだ怒りが治らない。何故ならボーデンには妻子がいたのだ。すでに独り身となったアンジャーにとって、家族がいることすらも疎ましい要因なのであった。
2人の奇術師の不毛な争い
既にアンジャーは何かに取りつかれているようであった。そこへ小道具の担当をしていたハリー・カッターと手を組む話がやってくる。上手くいくと思っていたが、今度はボーデンがアンジャーのステージを邪魔しにくるのであった。互いを尊敬し自身の手品を磨いていた過去の2人はとうに消え、互いに足を引っ張り蹴落とし合う不毛な争いが始まっていた。しかし争いの日々の中で、ボーデンは新しい手品を生み出す。それは瞬間移動の手品であった。タネが見破れず焦るアンジャーであったが、今度はボーデンに対する対抗心を剥き出しに、自身も同じ瞬間移動の新作を用意したのである。しかしボーデンの完璧なトリックには敵わず、彼にすぐ見破られてしまう。そしてお約束のようにボーデンはアンジャーの舞台の客席に紛れ、アンジャーに大恥をかかせることに成功するのであった。
オリヴィアを失った代わりに手に入れた「テスラ」
大恥をかかされ、いくら考えてもボーデンの瞬間移動のタネが解らないアンジャーは既に正気を失っていた。そこで彼の思い付いた次なる策は助手のオリヴィアをボーデンの所にスパイとして送り込むこと。それもオリヴィアがアンジャーを愛していることを知っていながらである。アンジャーの指示にオリヴィアは従うが、彼女は憤りを感じていた。それでも指示通り瞬間移動のタネが書かれたネタ帳を盗んできたというオリヴィア。しかしそこに書かれていたのは解読困難な暗号の羅列であった。更にオリヴィアの心は既にアンジャーから離れており、彼女はボーデンの側につくという最悪の事態を招くこととなる。そしてあのカッターですら復讐に取りつかれたアンジャーについていくことができず、周りの人との距離は開いていくばかりであった。今のアンジャーに残ったものは何か。それはボーデンを脅すことで得た「テスラ」のワードが指すものだけ。その言葉が科学者のニコラ・テスラを指していることに気づいたアンジャーは、こうしてテスラの元を訪ねるのであった。これが最後の頼みの綱と言わんばかりに、アンジャーはテスラに手品のためのマシンを作ってほしいと要求する。テスラはアンジャーの押しによってマシンの製作に取りかかり、こうしてアンジャーは人知を超えた手品を披露できる強力な装置を手にしたのである。
テスラの装置により迎えた決着の時
完成した装置はアンジャーの身長を越える大きな作りをしており、その中に入ったものを瞬間移動、そして複製することが可能となる。複製の機能は瞬間移動の副産物だ。テスラにとって想定外の機能が装置に加わっていた。この装置の完成と共にテスラと彼の助手であるアリーは姿を消す。残されたのは装置と置き手紙だけであり、そこにはテスラからのメッセージが綴られていた。しかし最後には「これは壊せ。深い海の底に沈めろ。」と警告がされていたのである。しかしアンジャーがここで止まるはずがない。彼は警告を無視し早速ステージで披露した。だがテスラの装置による瞬間移動は、会場をこれまでにない程の歓声で埋め尽くす。観客に紛れていたボーデンもトリックを見破ることができず、彼はここにきて負けを認めるのであった。
しかしボーデンもなんとかしてタネを暴きたいと欲求を抑えることができなかった。彼はこうしてアンジャーのショーのステージ下に忍び込むことなる。そして場面は始まりのアンジャーの溺死へと戻っていく。アンジャーの複製がステージ下に設置されていた水槽内で溺れていたところに居合わせたのはボーデンと、目の見えない老人だけであった。その為ボーデンが容疑者として捕らえられ、死刑宣告をされることとなる。これは最初から全てを見越していたアンジャーによる罠であった。アンジャーとボーデンは似ている。アンジャーがボーデンのタネをなんとしても暴きたいと思うように、ボーデンもタネを探ろうとするはずだと予想していたのだ。アンジャーはボーデンを複製の死亡現場に遭遇させ、その後本体は行方を暗ます。そしてボーデンは死刑を宣告され彼を殺すことに成功し、本体のアンジャーは世間に存在がバレないよう名前を変え、隠居生活に入るというところまでが彼の計画なのであった。
アンジャーは、アンジャーとしての人生を失うこととなるが、ボーデンは全てを失うこととなる。2人の因縁の戦いはここで決着がついたように見えた。しかしまだ終わってはいなかったのだ。勝利に浸っていたアンジャーの目の前に、死刑が執行されたはずのボーデンが現れたのである。ボーデンは双子だったのだ。同じ姿の人物が2人いたからこそ完成した瞬間移動の手品だったのである。アンジャーの目でも解けない理由はここにあった。ボーデンは人生の全てを手品に捧げていた。妻のサラにも、不倫関係にあったオリヴィアにも双子の秘密を明かすことはなく、2人の女性との間には悲惨な結末を迎えることとなる。相棒を失ったボーデンを止めるものは何もなかった。彼の手により、2人の奇術師の戦いは終止符を打つこととなる。復讐に燃え命を奪い合うまでにエスカレートした戦い。2人の争いは周囲を巻き込み、ただ失っていくだけの虚しいものであった。多くを失い唯一残った娘の所へ、全てを終えたボーデンは向かうのであった。
『プレステージ』の登場人物・キャラクター
奇術師
ロバート・アンジャー(演:ヒュー・ジャックマン)
出典: filmest.jp
吹替:山路和弘
「偉大なるダントン(グレート・ダントン)」の名前で活躍している奇術師。名付けたのは彼の妻ジュリアであった。貴族の出身であり、立居振る舞いに品性がある。持って生まれた素質から演出力など、ステージ上で人を惹きつける演出力が高い。しかし手品の発想は今一つであり、発想力においてアンジャーを上回るボーデンに嫉妬心を抱いていた。下積み時代に起きた事故によりジュリアが死亡。悲惨な事故の原因となったボーデンをアンジャーは恨んでおり、2人の関係は悪化していく。
アルフレッド・ボーデン(演:クリスチャン・ベール)
出典: filmest.jp
吹替:東地宏樹
「教授(プロフェッサー)」の名前で活動している奇術師。出生などの身元が謎に包まれている孤児である。手品の才能が抜群であり、手品の為なら人生の全てを捧げる程に、彼にとっての全てなのであった。自身の好きなことに対して全力を注ぐ熱心さを持っているように見えるが、度を越えればどのようなことが起こるか。また手品の才能は非常に優れているが演出力が乏しく、どんなに凄い手品を披露しても、大衆ウケが今一つであった。貧しくも妻と子と共に幸せに暮らしている。
ミルトン(演:リッキー・ジェイ)
出典: whatculture.com
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目次 - Contents
- 『プレステージ』の概要
- 『プレステージ』のあらすじ・ストーリー
- アンジャーの溺死
- アンジャーとボーデンが互いに憎み合うようになった事件
- 2人の奇術師の不毛な争い
- オリヴィアを失った代わりに手に入れた「テスラ」
- テスラの装置により迎えた決着の時
- 『プレステージ』の登場人物・キャラクター
- 奇術師
- ロバート・アンジャー(演:ヒュー・ジャックマン)
- アルフレッド・ボーデン(演:クリスチャン・ベール)
- ミルトン(演:リッキー・ジェイ)
- 舞台関係者
- ハリー・カッター(演:マイケル・ケイン)
- オリヴィア(演:スカーレット・ヨハンソン)
- ジュリア・マッカロー(演:パイパー・ペラーボ)
- その他
- ニコラ・テスラ(演:デヴィッド・ボウイ)
- アリー(演:アンディ・サーキス)
- サラ(演:レベッカ・ホール)
- ファロン(キャスト不明)
- 『プレステージ』の用語
- 「確認(プレッジ)」「展開(ターン)」「偉業(プレステージ)」
- 物質転送装置
- 溺死
- 『プレステージ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ハリー・カッター「若者は何かに取りつかれる。」
- テスラの装置を使ったアンジャーの瞬間移動
- アルフレッド・ボーデン「完璧なトリックには犠牲も必要だ。」
- 『プレステージ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 双子かコピーか憶測の飛ぶボーデンの正体
- ノーラン監督による映画を使った壮大な手品
- 水槽に入ったまま地下に並べられていた多数のアンジャーの遺体
- 『プレステージ』の主題歌・挿入歌
- アメリカ版主題歌:トム・ヨーク「アナライズ」
- 日本版主題歌:GACKT「RETURNER 〜闇の終焉〜」