グランド・イリュージョン（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『グランド・イリュージョン』の概要

『グランド・イリュージョン』とは、2013年5月にアメリカで公開されたクライム映画である。日本での興行収入が4億8千万円の大人気映画で、日本では2013年10月に映画公開された。続編で『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』が公開されている。映画監督はルイ・ルテリエ、脚本はエド・ソロモン、ボアズ・イェーキン、エドワード・リコート、音楽はブライアン・タイラーが担当している。

『グランド・イリュージョン』とは、カードマジックの天才のJ・ダニエル・アトラス、メンタリストのメリット・マッキニー、スリのプロのジャック・ワイルダー、脱出マジックをしているヘンリー・リーブスの選ばれた4人のマジシャンが、フォー・ホースメンとして大掛かりなトリックのマジックショーをしながら、マジックのネタばらしをしている元マジシャンのサディアス・ブラッドリー、保険会社を経営している大富豪のアーサー・トレスラーにマジックを使って復讐を果たすストーリー。たくさんの伏線が張り巡らされている映画で、3つの銀行強盗のマジックショーやカーアクションなど見どころいっぱいの映画である。

フォー・ホースメンの4人は、J・ダニエル・アトラス役をジェシー・アイゼンバーグ、メリット・マッキニー役を ウディ・ハレルソン、ジャック・ワイルダー役をデイヴ・フランコ、ヘンリー・リーブス役をアイラ・フィッシャーが演じ、元マジシャンのサディアス・ブラッドリー役は、モーガン・フリーマンが演じている。

『グランド・イリュージョン』のあらすじ・ストーリー

選ばれた4人のマジシャン

アメリカのニューヨークに3人のストリートマジシャンがいた。
ひとり目はカードマジックの天才、J・ダニエル・アトラス。2人目はメリット・マッキニー。メンタリストであり催眠術のプロだ。そして3人目のジャック・ワイルダーはスリの達人である。以上の3人と、ロサンゼルスで脱出マジックをしているヘンリー・リーブスの元に1枚のタロットカードが届く。

タロットの裏には「3月29日、16時44分、ニューヨークE・エバン通り45」とメッセージが記されていた。タロットの絵柄はホルスの目。ホルスの目はマジシャンにとって重要な意味があった。
そして3月29日、4人はニューヨークE・エバン通りに集う。指定された建物の中で4人が目にしたのは、美しいホログラムの図面であった。

フォー・ホースメンの犯行

1年後、ラスベガス。アトラス、マッキニー、ワイルダー、リーブスの4人は保険業界で有名な大富豪のアーサー・トレスラーの後ろ盾を得て、“フォー・ホースメン”というマジシャングループを結成していた。

その日、フォー・ホースメンが披露するマジックは、海外の銀行から大金を奪うというものだ。
まずは観客の1人に、座席番号が書いてあるボールを選んでもらう。その座席番号に座っていたのは、フランス人のエチエンヌ・フォーシエという男性だ。選ばれたフォーシエはステージ上で、フランスのパリにあるクレディ・レピュブリカン・ドゥ・パリという銀行に自分の口座があると言った。

フォー・ホースメンはフォーシエにヘルメットのような装置をかぶせ、フォーシエを今からパリの銀行に瞬間移動させると説明する。フォー・ホースメンが合図をすると、フォーシエの姿がステージ上から消えた。
フォーシエは一瞬にしてクレディ・レピュブリカン・ドゥ・パリ銀行の地下金庫に移動したのだ。その様子はフォーシエがかぶっているヘルメットのカメラの映像でわかる。

フォー・ホースメンに指示された通りに、フォーシエは自分がサインしたトランプカードとマジックショーの当日チケットを、地下金庫にある札束の中に置いた。エアダクトが動き出し、地下金庫にあるユーロの札束が吸い上げられていく。
ショー会場では大量のユーロ札が降っていた。フォー・ホースメンは、見事に銀行から大金を強奪してみせたのである。

一方、クレディ・レピュブリカン・ドゥ・パリ銀行の地下金庫では、実際に大量の札束がなくなっていた。フォーシエがサインを書いたトランプとマジックショーの当日チケットが見つかり、クレディ・レピュブリカン・ドゥ・パリ銀行は警察へと通報。FBIはフォー・ホースメンの逮捕に踏み切った。

逮捕されたフォー・ホースメン

事件の担当となったのは、FBI特別捜査官のディラン・ローズとCPOの捜査官のアルマ・ドレイだ。警察はフォー・ホースメンの4人を逮捕したが、どんなトリックをつかって札束を盗んだのかは依然として不明のままだ。
証拠をつかむために、フォー・ホースメンのひとりひとりの事情聴取を始める。

メンタリストのマッキニーは事情聴取の最中に、自分の事情聴取担当者へ「ボーシット」の言葉を聞くと楽団員になるという催眠術をかける。時を同じくしてローズとドレイはアトラスの事情聴取を開始した。
アトラスは2人の捜査官に「フォー・ホースメンを逮捕したら、マジックを信じたことになる。メディアが大騒ぎするだろう」と語った。

それからアトラスは自分に手にかけられている手錠をローズの手首に移動させる。アトラスのマジックによるものだ。結局、札束を盗んだトリックについては分からずじまい。証拠不十分として、フォー・ホースメンは釈放された。

拘置所から帰還する際、アトラスは「また、同じマジックをやる」と告げる。
それはフォー・ホースメンからの警察への挑戦だった。

トリックが暴かれる

フォー・ホースメンがどうやって海外の銀行から大量の札束を盗んだのか。そのトリックを知りたいローズとドレイは、元マジシャンのサディアス・ブラッドリーの元を訪ねる。
2人からマジックショーの様子を聞いたブラッドリーは、「フォー・ホースメンは銀行強盗をしていない」と結論を出す。ブラッドリーはマジックショーをした会場に足を運ぶと、ローズとドレイにマジックのトリックを語って聞かせる。

「マジック用語に、ミスディレクションという言葉がある。観客の注意を別にそらすという意味だ」
そう言ってブラッドリーはステージの下を開けてみせる。そこにあったのはクレディ・レピュブリカン・ドゥ・パリ銀行を模した大掛かりなセットである。
事件の当日、フォーシエは銀行に移動したのではなく、ステージの下に移動しただけだったのだ。

そして、銀行の金庫から大量の札束が消えたトリックはこうだ。
フォー・ホースメンは前もって銀行の現金輸送車に忍び込み、本物の札束と灰を出さずに燃えるフラッシュペーパーとすり替えていた。時間がくると銀行の地下金庫にある札束が燃え尽き、大金は影も形も無く消え失せるというわけだ。

事件のトリックは明らかになった。ニューオリンズで、フォー・ホースメンの次のマジックショーが開催されることを知ったローズとドレイ、ブラッドリーの3人は会場に向かう。
3人で会場に向かう途中で、ドレイは木を割ると中からカードが出てくるというマジックの話をする。それは木が成長する18年前にカードを埋め込んでおくという、時間をかけたマジックだ。

トレスラーの個人資産が奪われる

ニューオリンズでのフォー・ホースメンのマジックショーが始まった。
最初のマジックは箱に入れたウサギが消えるマジック。次のマジックは12人の観客を催眠術でアメフト選手に変えるマジック。その次のマジックでは、リーブスが巨大なシャボン玉の中へと転移する。

マジックショーが休憩に入り、フォー・ホースメンは会場に来ている観客に、自分の口座の預金残高を紙に書いて封筒に入れるように指示を出す。
休憩時間が終わり、最初に観客の中から指名されたのは、ジョセファという女性だった。アトラスはジョセファの預金残高の金額を562ドル（約63,000円）と言い当てる。次に指名したディナの預金残高を1,477ドル（約17万円）、その次に指名したクレメントの預金残高を6,500ドル（約73万円）とアトラスは次々と言い当てた。

続いてアトラスは観客全員に「預金残高が増えるように、金額を書いた自分の封筒を額にあてて念じろ」と言った。そこでフォー・ホースメンは自分たちの後援者で、大富豪のアーサー・トレスラーを観客に紹介する。
トレスラーの個人資産は1億4千457ドル（約163億円）。その個人資産の数字がステージ上にあるパネルに表示される。

パネルに表示された個人資産の金額が7万ドル減ると、代わりにジョセファが持っていた封筒に入っている紙に書かれた預金残高が7万ドル増えた。続いて再びトレスラーの個人資産の金額が28万ドル減り、ディナの預金残高が28万ドル増える。

「今日のマジックショーに集まった観客はハリケーンの大災害にあった人たちで、トレスラーが経営している保険会社に保険金の支払いを断られた人たちだ」
そう言ってフォー・ホースメンはステージから退場する。その時、FBIがマジックショーの会場に突入してくる。

「フリーズ！（動くな！）」
FBIの隊員が叫ぶ。すると、先ほどショーの中で催眠術をかけられていた観客たちがFBIにタックルをかました。「フリーズ」の言葉を聞くとアメフト選手に変えられるよう催眠術をかけられていたからだ。

ホルスの目【アイ】の存在

フォー・ホースメンを追うローズはついにアトラスを追い詰める。しかし、アトラスが銃を持っていないことから、ローズは銃を撃つことができなかった。
アトラスを取り逃がしたローズに対し、ドレイは「捕まえる気があるの！？」と詰め寄った。

その拍子にローズは、ドレイの手帳に目の絵が描かれているのを見つける。ローズが目の絵の意味を聞くと、彼女はそれをホルスの目だと答えた。ホルスの目とは、アイと呼ばれる集団のシンボルだという。
アイとは本当の魔術を何千年もの間に渡って与えられてきた者たちで、アイに迎え入れられるということはマジシャンにとって最高の栄誉だというのだ。

一方、個人資産を盗られたトレスラーは、ブラッドリーにフォー・ホースメンのマジックのトリックを解いてほしいと依頼する。ブラッドリーはフォー・ホースメンはもっと大掛かりなマジックをするだろうと予言する。フォー・ホースメンが大掛かりなマジックをするのは、アイになるためではないかと、ドレイは予想した。

ローズの携帯に仕掛けられた盗聴器を逆探知し、フォー・ホースメンがニューヨークにいることを突き止める。
FBI特別捜査官とローズがフォー・ホースメンのアジトに突入すると、資料を燃やすワイルダーの姿があった。ワイルダーは残りの資料を持って逃走を開始。ローズたちはワイルダーを追いかける中で建物の地下に辿り着く。

地下でローズは、シュライクという文字を目にする。シュライクとはブラッドリーに、マジックのネタばらしをされ行方不明となったマジシャンの名前だった。
FBIの車を奪ってワイルダーは逃走を開始。追い詰められたワイルダーは橋を渡る途中で横転し車が激しく燃え上がる。
ローズはワイルダーを救出しようとしたが、炎上する車から彼を助け出すことは出来なかった。

フォー・ホースメンの最後のマジックショー

ワイルダーが持って逃げていた資料は、エルコーン社という金庫の製造会社の極秘資料だった。エルコーン社は脱税の疑いのある会社で、FBIが捜査をしていた。
フォー・ホースメンが次に狙っているのがエルコーン社にある金庫だと知ったFBIは、すぐに金庫がある地下倉庫へと向かう。しかし、既に金庫は輸送された後だった。
FBIは輸送された金庫の後を追い、ファイブポインツというビルへと向かう。ファイブポインツはニューヨーク市にある落書きのメッカと呼ばれている有名なビルだ。

一方、フォー・ホースメンはワイルダーが事故死したことを知り、ファイブポインツでワイルダーの追悼ショーをすると言う内容の動画を世間へと公開する。フォー・ホースメンがアップした動画を見たたくさんの人たちが、ファイブポインツに集まってくる。
FBIに協力しているブラッドリーが、ファイブポインツはシュライクがマジックの稽古場にしていた場所だと説明する。

輸送された金庫をFBIが開けると、金庫の中から大量の風船が飛び出して来た。既に金庫の中から現金は消えうせていたのだ。
フォー・ホースメンが現れ、マジックショーが始まる。FBIがフォー・ホースメンを捕まえようとするが、それはフォー・ホースメンを模したマネキンだった。

別の場所から現れたアトラス、マッキニー、リーブスの3人は、今夜のマジックショーを最後にフォー・ホースメンは解散すると言ってビルの上から飛び降る。その途中で3人の姿が紙幣に変わり、マジックショーを見にファイブポインツに集まってきた人たちの頭上へと降り注いだ。

しかし、降り注いだ札束はフォー・ホースメンの顔が印刷されている偽札だ。フォー・ホースメンに盗まれた本物の札束はブラッドリーの車の中から発見される。
こうしてブラッドリーは、裏で糸を引いていた一連の事件の黒幕としてFBIに逮捕された。

5人目のフォー・ホースメン

独房のブラッドリーのもとへローズが訪れる。ブラッドリーは「自分の無実を証明する」と言って、フォー・ホースメンが輸送された金庫から札束を盗んだマジックのトリックを説明し始める。
輸送される金庫は途中で偽物とすり替えられており、それを仕掛けたのは事故死を偽装していたワイルダーであるというものだ。しかし、ブラッドリーにはフォー・ホースメンの目的がわからなかった。

トリックの説明を聞いたローズがブラッドリーに語りかける。
マジシャンのブラッドリーはアイに迎え入れられることを待っていたが、いつまで経ってもアイからの招待状がこなかった。その内にアイへの憧れが憎悪に変わり、アイを探すためにマジシャンたちのトリックを暴く仕事についた。

そんな時、ブラッドリーがマジックトリックを暴いたシュライクの事故が起こる。シュライクが行ったのは金庫からの脱出マジックだったが、失敗して金庫ともども行方不明になっていた。シュライクの脱出マジックが失敗に終わったのは、エルコーン社の金庫が不良品のせいだ。

どうしてローズがそんな話を知っているのか。それは、ローズがシュライクの息子だったからだ。そして、ローズこそがフォー・ホースメンの5人目にして一連の事件の黒幕だった。
ローズはブラッドリーを罠にはめて、シュライクの復讐を果たすためにフォー・ホースメンを結成したのである。

シュライクの復讐

フォー・ホースメンは5人目の正体を知らなかった。フォー・ホースメンはセントラルパークに行き、カードが埋め込まれた木の場所で4枚のカードを重ねる。すると、メリーゴーランドが動き出し、FBI特別捜査官のローズが姿を現した。そしてフォー・ホースメンの4人はアイに迎え入れられたのである。

後日、フォー・ホースメンの捜査が終了したとして、ドレイはフランスに帰還していた。ローズはドレイの元を訪れ、一連の事件の真相を話す。しかし、ドレイはすでにローズの正体に気が付いていたという。しかし、ドレイにはローズを逮捕する気はなかった。ドレイはローズに好意を寄せていたからだ。

セーヌ川に架かる橋に南京錠をかけたドレイは、「秘密にしておいた方がいいこともある」と言って、鍵を川に投げ入れた。

『グランド・イリュージョン』の登場人物・キャラクター

フォー・ホースメン

J・ダニエル・アトラス（演：ジェシー・アイゼンバーグ）