ジョジョ・ラビット(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ジョジョ・ラビット』とは第二次世界大戦下のドイツを舞台にした珠玉のヒューマン・ドラマである。
主人公のジョジョは10歳の少年。空想上の友達であるアドルフの助けを借り立派な兵士になろうと奮闘するが、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず「ジョジョ・ラビット」とあだ名を付けられてしまう。そんなある日、自宅にユダヤ人の少女が匿われていることに気づく。
戦争への辛口のユーモアをきかせたハートフルなコメディの形を取りながら、困難な環境にあっても輝く希望を失わない人々の物語である。
『ジョジョ・ラビット』の概要
『ジョジョ・ラビット』(原題『Jojo Rabbit』)は、2019年のトロント国際映画祭で、大本命『ジョーカー』を抑え観客賞を受賞したことで一躍脚光を浴びた作品だ。
2020年の第92回アカデミー賞でも脚色賞を受賞している。
他にも、第73回英国アカデミー賞でも脚色賞を受賞しており、サウンドトラックは第63回グラミー賞で最優秀ビジュアルメディア向けコンピレーション・サウンドトラック賞を受賞した。
初公開は2019年のトロント国際映画祭。その後、アメリカで2019年10月に公開、日本では2020年に公開された作品だ。
監督・脚本は『マイティ・ソー バトルロワイヤル』を手がけたことで有名なタイカ・ワイティティ。
子役たちの名演技はもちろん、スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル、レベル・ウィルソンと実力派のトップスターたちの共演も見逃せない。
物語の舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。
主人公は、少年らしいまっすぐで素直な気持ちを持つ10歳の少年ジョジョ。カッコよくて強い男の代表である『アドルフ・ヒトラー』に憧れている。
しかし心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことすらできず「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名を付けられてしまう。
家の中の隠し部屋に住む、強く聡明なユダヤ人の少女との出会いをきっかけに、大人たちによって吹き込まれた話が本当ではないと気がつき、価値観を変えていく。
子供の素直な目を通して描かれている本作は、大人たちの語る「事実」がいかに不確実かということを、ブラックジョークを交えながら鮮やかに描き出している。
「認められたい」「早く大人になりたい」「かっこいい」という少年たちの無知や純粋さが利用され、洗脳されていたことに気が付くことができる映画だ。
同じく第二次世界大戦下を舞台にした、強制収容所におけるユダヤ人親子の愛を描いた映画『ライフ・イズ・ビューティフル』に次ぐ名作との呼び声が高い。
なお原作はクリスティン・ルーネンズの『Caging Skies』。映画化する過程で、監督脚本のタイカ・ワイティティによって脚色が加えられている。
『ジョジョ・ラビット』のあらすじ・ストーリー
憧れのヒトラー・ユーゲントの合宿へ
時は第二次世界大戦下、ドイツ。10歳のジョジョはひどく緊張していた。今日から憧れの青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿が始まるのだ。
「僕にはムリかも」と弱音を吐くが、空想上の友達のアドルフに「お前はひ弱で人気もないが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まされ、気を取り直して家を出る。
合宿でジョジョたち青少年を待つのは、戦いで片目を失ったクレッツェンドルフ大尉や、教官のミス・ラームらの指導によるハードな戦闘訓練だった。
合宿1日目を終えたジョジョは、唯一の現実の友達であるヨーキーとテントで眠りにつく。
翌日、ウサギを殺せと言われたジョジョは、その命令をこなすことができなかった。教官から父親と同じ臆病者で「ジョジョ・ラビット」だなと馬鹿にされる。
父親は2年前から音信不通で、ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていたのだ。
森の奥へと逃げ泣いていたジョジョは、「ウサギは勇敢で狡賢くて強い」とアドルフから励まされる。
ジョジョは元気を取り戻し、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むが、失敗して大怪我を負ってしまう。
ジョジョの母親ロージーは勇敢で聡明な女性だ。
広場で反ナチの疑いで絞首刑になった人々を見て思わず目を逸らすジョジョに、目を背けさせないようにするロージー。
「この人たちは何をしたの?」と聞くジョジョに、ロージーは「できることをしたのよ」と返す。
ロージーがユーゲントの事務所に抗議に行った結果、ジョジョは怪我が治るまで奉仕活動をすることになったのだった。
ジョジョ、自宅に隠れ住む少女を発見
その日、帰宅したジョジョは亡くなった姉のインゲの部屋で隠し扉を発見する。中にはひとりのユダヤ人の女の子が匿われていた。
驚くジョジョを、少女は「通報すれば?あんたもお母さんも協力者だと言うわ。全員死刑よ」と脅した。
少女の名前はエルサ。インゲの友人である彼女を隠し扉の中に匿ったのは、ジョジョの母親ロージーだった。
予測不能の事態にパニックになるジョジョだったが、考え抜いた末にエルサに「ユダヤ人の秘密を全部話す」と、住み続けるための条件を持ちかける。
ユダヤ人を壊滅させるための本を書けば、ナチスのためになると考えたのだ。
ヒトラーに送って認められれば、親友にもなれるかもしれない。
その日から、エルサによる「ユダヤ人講義」が始まった。
ジョジョ、ユダヤ人少女と秘密の交流を開始
学校やキャンプで「ユダヤ人は下等な悪魔だ」と習っているジョジョは、その考えに基づいてエルサに質問をする。
「ツノはどこにあるの?」「コウモリのように逆さで眠るの?」というように。
しかし聡明で教養とユーモアを持つエルサによってジョジョの洗脳された考えはやがて解け、真実を知ることになる。
ユダヤ人も暖かい肌をもち、赤い血が流れ、愛を知る、同じ人間であるという事実。
大人たちから教えられていたのは、子供を騙すための都合の良い嘘だったことにジョジョは気がついていく。
「世界で一番強いのはミサイル、次がダイナマイトで、その次が筋肉」と語る10歳のジョジョは、戦争と戦争ごっこの違いすら分かっていないのだ。
実際に街が戦場になるその時まで、ジョジョには分からない。
そんなジョジョに母とエルサは愛の強さと大切さを教える。
「恋をした時には分かるわ。感じるのよ、痛みを。(略)お腹によ。まるでチョウチョでいっぱいになったみたいになるの」と語るロージー。
また、ドイツが負けて戦争が終わることを待ち望んでいるロージーは、ジョジョともダンスを踊る。
「人生は贈り物よ。楽しまないとダメ。神に生きていることの感謝を捧げるためにダンスを踊るのよ」
「ダンスは自由な人のすることよ。全てから解放されるの」
母に内緒で交流を続けていく中で、エルサの話とエルサ自身に次第に惹かれていくジョジョ。
自分は顔に傷ができて醜いため、キスのチャンスもないだろうと語るジョジョに、エルサは「キスしてあげようか?」とからかう。
「ナチスとユダヤ人のキスは禁じられている」「同情のキスはいらない」と焦って断るジョジョ。
そんなジョジョに、「あんたはナチスじゃない。カギ十字と軍服と戦争ごっこが好きな10歳の男の子」とエルサは諭すのであった。
秘密警察のゲシュタポが突然ジョジョの家の家宅捜索に訪れた時も、持ち前の機転で「インゲ」になりすましてなんとかその場を誤魔化すことに成功。
ジョジョとエルサの絆は強まっていく。
そんな中、母ロージーの反ナチス運動がバレ、彼女は処刑されてしまった。
ジョジョ、自分のできることをする
たった一人の家族を失ったジョジョは街を回って食べ物を探し、家ではエルサと絵を描いたりして過ごす。
ある日、鉄屑を探すために歩いていたところ、大きな爆発音が聞こえた。アメリカ軍の襲撃が来たのだ。
人の流れに沿っていると親友ヨーキーと再会する。そこでジョジョは、たくさんの戦闘機と兵士が襲ってきていることと、ヒトラーが自殺したことを知った。
街は戦場になっていく。必死に逃げるジョジョは建物の地下に身を潜め、全てが終わるのをじっと待った。
物音が収まりジョジョが外へ出てみると、世界は変わり果てていた。家にエルサが一人でいることを思い出したジョジョは急いで帰宅する。
外で鳴り響く音に、一人怯えていたエルサ。
エルサにどちらが勝ったのか聞かれ、「ドイツ」と嘘をつくジョジョ。そしてエルサにパリへの脱出計画があると告げる。
鏡の中の自分に「ジョジョ・ベッツラー。10歳半。今日、僕はできることをする」と語りかけるジョジョ。
エルサと家を出るために支度をするジョジョをアドルフは止めるが、ジョジョはアドルフを思い切り蹴飛ばして外へ放り出し、玄関で待っているエルサの元へ行く。
嘘がバレて怒られるかもしれない、愛するエルサも失って一人ぼっちになるかもしれないという不安もあるが、自分のできることをすると決めたのだ。
おそるおそる外に出るエルサが見たのは、アメリカ国旗と大量のアメリカ兵だった。
ジョジョが嘘をついていたことに気がつき、思わず彼の頬を叩くエルサ。
一変した街の中で戦争の終わりを感じた二人は、自由の象徴であるダンスをゆっくりと踊り出すのであった。
『ジョジョ・ラビット』の登場人物・キャラクター
主要人物
ヨハネス・”ジョジョ”・ベッツラー(演:ローマン・グリフィン・デイビス)
吹替版:山崎智史
ナチスが支配する古風で趣のある町フォルケンハイムに暮らす10歳の少年。
夢だったヒトラーユーゲントに入隊するも、合宿2日目に「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名を付けられてしまう。
エルサとの出会いで、価値観を変えていく。
アドルフ・ヒトラー(演:タイカ・ワイティティ)
吹替版:間宮康弘
ジョジョの空想上の友達(イマジナリー・フレンド)
ジョジョが不安になるたびにいつでも叱咤激励してくれる存在。
エルサと次第に仲良くなるジョジョに苦言を呈する。
ジョジョの関係者
エルサ・コール(演:トーマシン・マッケンジー)
吹替版:清水理沙
ジョジョの母親ロージーが隠し部屋に匿っているユダヤ人の少女。
反ナチ運動をしているフィアンセのネイサンの影響で詩人のリルケが好き。
ジョジョが捏造する手紙にも笑って付き合い、持ち前の絵心でジョジョとお手製の本を作る。
ジョジョの目を覚まさせていく、美しくて強い、聡明な少女。
ヨーキー(演:アーチー・イェーツ)
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目次 - Contents
- 『ジョジョ・ラビット』の概要
- 『ジョジョ・ラビット』のあらすじ・ストーリー
- 憧れのヒトラー・ユーゲントの合宿へ
- ジョジョ、自宅に隠れ住む少女を発見
- ジョジョ、ユダヤ人少女と秘密の交流を開始
- ジョジョ、自分のできることをする
- 『ジョジョ・ラビット』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ヨハネス・”ジョジョ”・ベッツラー(演:ローマン・グリフィン・デイビス)
- アドルフ・ヒトラー(演:タイカ・ワイティティ)
- ジョジョの関係者
- エルサ・コール(演:トーマシン・マッケンジー)
- ヨーキー(演:アーチー・イェーツ)
- ロージー・ベッツラー(演:スカーレット・ヨハンソン)
- ナチス党員
- クレンツェンドルフ大尉(演:サム・ロックウェル)
- フロイライン・ラーム(演:レベル・ウィルソン)
- フィンケル(演:アルフィー・アレン)
- ディエルツ(演:スティーブン・マーチャント)
- 『ジョジョ・ラビット』の用語
- ヒトラーユーゲント
- 壁の住人
- ナチスの焚書(ふんしょ)
- 反ナチ運動「白バラ抵抗運動」
- 『ジョジョ・ラビット』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ジョジョ「この人たちは何をしたの?」ロージー「できることをしたのよ」
- ロージー「愛は世界で一番強いの」ジョジョ「世界で一番強いのはミサイルだよ。次はダイナマイトで、その次が筋肉」
- ロージー「恋をした時には分かるわ。感じるのよ、痛みを。(略)お腹によ。まるでチョウチョでいっぱいになったみたいになるの」
- ロージー「人生は贈り物よ。楽しまないとダメ。神に生きていることの感謝を捧げるためにダンスを踊るのよ」「ダンスは自由な人のすることよ。全てから解放されるの」
- エルサ「あんたはナチスじゃない。カギ十字と軍服と戦争ごっこが好きな10歳の男の子」
- ジョジョ「ジョジョ・ベッツラー。10歳半。今日、僕はできることをする」
- R・M・リルケ「すべてを経験せよ。美も恐怖も。生き続けよ。絶望が最後ではない」
- 『ジョジョ・ラビット』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ジョジョ役が決まるまで何ヶ月も要した
- ジョジョ役のデイビスの父親は『スリー・ビルボード』撮影監督ベン・デイビス
- 監督本人がアドルフ・ヒトラー役で出演
- スカーレット・ヨハンソンに脚本を勧めたのはクリス・ヘムズワース
- 『ジョジョ・ラビット』の主題歌・挿入歌
- ED(エンディング):デヴィット・ボウイ「ヒーローズ(ドイツ語版)」
- 『ジョジョ・ラビット』のサウンドトラック
- 『ジョジョ・ラビット』オリジナル・サウンドトラック